
- 1. 0.はじめに|開業1年で9,263人。これは多いのか、少ないのか
- 2. 第1章 まず9,263人を分解してみる
- 3. 第2章 飲食店は「来店客数」だけ見ても分からない
- 4. 第3章 最大の壁は「1回目→2回目」だった
- 5. 第4章 ところが、2回来た客の行動が変わる
- 6. 第5章 3回来ると、さらに離れにくくなる
- 7. 第6章 「常連客は何回来たら常連なのか」
- 8. 第7章 5回来た503人は何者なのか
- 9. 第8章 新規客9,263人と常連503人、どちらが重要なのか
- 10. 第9章 6,536人の一回来店客は「失客」なのか
- 11. 第10章 新規集客より「二回目」の方が安い可能性
- 12. 第11章 もし「1回→2回」を5ポイント改善したら
- 13. 第12章 売上は「客数」ではなく顧客の積み上げでも作られる
- 13-1. 同じ「100人」でも中身が違う
- 13-2. 毎月ゼロから3,000人を集める店
- 13-3. 一方で、顧客が積み上がる店
- 13-4. 顧客は「消費される」のではなく「積み上がる」
- 13-5. 売上を「顧客構造」から考えてみる
- 13-6. 9,263人は「今年の売上」だけを作ったわけではない
- 13-7. 一人の常連客は、未来の「客数」を持っている
- 13-8. 同じ月商500万円でも強さは違う
- 13-9. 「新規客+既存客」で客数を作る
- 13-10. 一年目と二年目では、同じ売上でも意味が違う
- 13-11. 売上を見るだけでは、この違いは見えない
- 13-12. 売上は「今日来た人数」だけで作られているわけではない
- 14. 第13章 枚方市約39万人に対して9,263人という数字
- 15. 第14章 1年間経営して分かった「顧客を増やす」の意味
- 16. 第15章 RBRとしての最終見解|繁盛店は「客を集める店」ではない
― 開業1年、9,263人の実店舗データを分析して分かったこと ―
0.はじめに|開業1年で9,263人。これは多いのか、少ないのか

がぶ飲み食堂を開業して、約1年。
この1年間で、顧客データに登録された人数は9,263人になりました。
この数字を最初に見たとき、私は正直こう思いました。
「1年やって9,263人。意外と少ないな」
がぶ飲み食堂がある枚方市の人口は約39万人です。
単純に人口と比較すると、こうなります。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 枚方市の人口 | 約390,000人 |
| 1年間の登録顧客数 | 9,263人 |
| 人口に対する割合 | 約2.4% |
| まだ登録されていない人数 | 約380,700人 |
| 人口比で未接触 | 約97.6% |
もちろん、これはあくまで単純比較です。
枚方市民全員が飲食店の商圏に入るわけではありません。
年齢も違えば、生活圏も違う。
外食頻度も違いますし、そもそも当店のような業態を利用しない人もいます。
さらに、市外から来店されるお客様もいるため、「枚方市民の2.4%が来店した」ことを意味する数字でもありません。
それでも、9,263人という数字を人口規模と並べてみると、一つ面白いことが見えてきます。
1年間店を営業しても、地域全体から見れば、まだほんの一部のお客様としか接点を持てていない。
ということです。
9,263人という数字だけでは、店の強さは分からない
では、9,263人は多いのでしょうか。
それとも少ないのでしょうか。
実は、この数字だけでは判断できません。
例えば、1年間で1万人のお客様を獲得した店があったとします。
一見すると、非常に集客力のある店に見えます。
しかし、その1万人が全員1回しか来店していなかったらどうでしょう。
反対に、顧客数は5,000人しかいなくても、そのうち多くのお客様が2回、3回、5回、10回と来店していたらどうでしょう。
飲食店経営としては、まったく違う状態です。
| 店舗 | 顧客数 | 再来店 | 状態 |
|---|---|---|---|
| A店 | 10,000人 | ほぼ1回来店 | 新規集客には強いが、定着していない |
| B店 | 5,000人 | 2回・3回と来店 | 顧客が店に定着し始めている |
| C店 | 3,000人 | 何度も来店 | 強い常連基盤を持っている |
つまり、飲食店を見るときに、
「何人来たか」だけを見ても、本当の店の強さは分からない。
ここが今回の分析で一番重要なところです。
飲食店の顧客は「人数」ではなく「階層」で見る
私は今回、9,263人を単純な顧客数として見るのではなく、
「顧客がどこまで育ったのか」
という視点で見てみることにしました。
飲食店の顧客は、大きく考えると次のように変化していきます。
| 段階 | 顧客の状態 | 店側から見えるもの |
|---|---|---|
| ① 認知 | 店を知っている | 商圏・広告・SNS・口コミ |
| ② 初回来店 | 一度利用した | 新規顧客 |
| ③ 再来店 | もう一度利用した | リピーター |
| ④ 習慣化 | 3回、4回と利用する | 固定客 |
| ⑤ 常連化 | 継続的に利用する | 常連客 |
| ⑥ 推奨 | 他人にも店を勧める | 口コミ・紹介 |
店を知ってもらう。
一度来てもらう。
もう一度来てもらう。
何度も来てもらう。
そして、その店を誰かに紹介してもらう。
飲食店の商売は、実はこの繰り返しです。
だから本当に見るべき数字は、
9,263人という母数そのものではありません。
その9,263人の中から、
何人が2回目に進んだのか。
何人が3回目に進んだのか。
何人が4回、5回と店を利用するようになったのか。
ここを見る必要があります。
「新規客を集める力」と「客を残す力」は別物
飲食店では、どうしても新規集客に目が向きます。
Instagram広告を出す。
Googleマップを強化する。
食べログを改善する。
チラシを撒く。
クーポンを配る。
もちろん、どれも重要です。
しかし、新規客をいくら集めても、そのお客様が二度と来なければ、店は永遠に新規客を探し続けなければなりません。
逆に、一度来たお客様の一定割合が、
2回目。
3回目。
4回目。
5回目。
と残っていけば、顧客基盤は少しずつ積み上がっていきます。
これを簡単な図にすると、こうなります。
認知
↓
初回来店
↓
2回目
↓
3回目
↓
4回目以上
↓
常連化
飲食店経営で重要なのは、この階段をどれだけ多くのお客様に上ってもらえるかです。
だから今回は「9,263人」を分解する
9,263人。
この数字だけを見ると、
「1万人近くも来た」
とも言えますし、
「39万人都市で2.4%しか接点を作れていない」
とも言えます。
どちらも間違いではありません。
しかし、経営判断としてはそれだけでは不十分です。
本当に知りたいのは、その9,263人がその後どうなったのかです。
一回来ただけで終わった人は何人いるのか。
二回来てくれた人は何人いるのか。
三回以上利用している人はどれくらいいるのか。
そして、
どこから「常連客」と呼べる顧客層が形成されているのか。
ここまで分解して初めて、店の現在地が見えてきます。
今回の記事では、がぶ飲み食堂の実店舗データを使って、
「飲食店の顧客は、1年間でどのように育っていくのか」
を分析していきます。
9,263人という数字は、ゴールではありません。
むしろ、この数字を入口にして、
新規客がリピーターになり、リピーターが常連客になっていく過程を数字で追いかけてみたいと思います。
第1章 まず9,263人を分解してみる

では最初に、9,263人という顧客数を来店回数別に分解してみます。
単純な顧客数だけを見ていても、その店にどれくらいお客様が定着しているのかは分かりません。
そこで、
「そのお客様は、これまで何回来店しているのか」
で分類しました。
| 来店回数 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1回 | 6,536人 | 70.6% |
| 2回 | 1,354人 | 14.6% |
| 3回 | 580人 | 6.3% |
| 4回 | 290人 | 3.1% |
| 5回以上 | 503人 | 5.4% |
| 合計 | 9,263人 | 100% |
まず、この数字を見て一番目につくのが、
1回来店のお客様が6,536人いることです。
全顧客9,263人のうち、実に70.6%。
つまり、ざっくり言えば、
10人のお客様が来店したら、約7人は現時点では1回来店で止まっている。
これが、がぶ飲み食堂の開業約1年間の顧客データから見える最初の現実です。
「7割が一度しか来ていない」は悪い数字なのか
この数字だけを見ると、
「7割もリピートしていないのか」
と思うかもしれません。
私自身、最初にこの数字を見たときはそう感じました。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。
1回来店が70.6%だからといって、単純に「リピート率29.4%」と評価して終わることはできません。
なぜなら、顧客にはそれぞれ初回来店した時期が違うからです。
例えば、開業直後に初回来店したお客様には、その後何か月も再来店する機会があります。
一方、昨日初めて来店したお客様には、まだ2回目の来店機会そのものがほとんどありません。
この2人を同じ「1回来店客」として扱って、
「リピートしなかった」
と判断するのは少し乱暴です。
つまり、この70.6%には、
本当に一度で離脱したお客様と、
まだ2回目が発生していない新しいお客様
の両方が含まれています。
一方で、約3割はすでに再来店している
見方を反対にすると、別の景色も見えてきます。
2回以上来店しているお客様を合計すると、
1,354+580+290+503=2,727人。
つまり、
| 顧客区分 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1回来店 | 6,536人 | 70.6% |
| 2回以上来店 | 2,727人 | 29.4% |
| 合計 | 9,263人 | 100% |
約1年間で獲得した9,263人のうち、2,727人がすでにもう一度以上来店していることになります。
さらに、
3回来店以上は、
580+290+503=1,373人。
全顧客の約14.8%です。
そして5回以上来店しているお客様だけでも、
503人。
全体の5.4%存在します。
整理すると、こうなります。
| 見方 | 人数 | 全顧客に占める割合 |
|---|---|---|
| 1回以上来店 | 9,263人 | 100% |
| 2回以上来店 | 2,727人 | 29.4% |
| 3回以上来店 | 1,373人 | 約14.8% |
| 4回以上来店 | 793人 | 約8.6% |
| 5回以上来店 | 503人 | 5.4% |
こうして見ると、
「7割が1回しか来ていない店」
という見方だけではなく、
「約1年で2,727人が再来店し、503人がすでに5回以上利用している店」
という見方もできます。
同じデータでも、意味はかなり変わってきます。
本当に重要なのは「1回来店70.6%」ではない
ここからが今回の分析で面白いところです。
飲食店の顧客分析では、
「何%がリピーターなのか」
という数字がよく使われます。
しかし、それだけでは顧客が育つ構造までは見えてきません。
見るべきなのは、
1回目から2回目へ何人進むのか。
そして、
2回来た人は3回目にも来るのか。
さらに、
3回来た人は4回目にも来るのか。
という変化です。
もし、
1回目→2回目では大量に離脱する。
しかし、
2回目→3回目では離脱が減る。
さらに、
3回目→4回目ではもっと残る。
という現象が起きているなら、そこには飲食店にとって非常に重要な意味があります。
「何回来店すると、そのお客様は店に定着し始めるのか」
が見えてくるからです。
9,263人という大きな数字を眺めるだけでは、これは分かりません。
顧客を来店回数ごとに分解し、
その階段を何人が上っているのか。
そこを見ることで初めて、飲食店の「顧客が育つ過程」が見えてきます。
次は、この9,263人が、
1回目→2回目→3回目→4回目
と進むにつれて、どのように残っていくのかをさらに掘り下げてみます。
第2章 飲食店は「来店客数」だけ見ても分からない

飲食店を経営していると、どうしても「今日、何人来たか」を見ます。
「今日は100人来た」
「今月は3,000人来た」
もちろん、客数は重要な数字です。
客数がなければ売上は作れません。
しかし、経営という視点で考えると、客数だけでは店の状態はほとんど分かりません。
例えば、同じ100人でも中身が違います。
| 100人の内訳 | 店の状態 |
|---|---|
| 新規客100人 | 新しい顧客を大量に獲得している |
| 新規50人+既存50人 | 新規獲得と再来店が両立している |
| 既存客100人 | 固定客によって売上が作られている |
レジ上では、すべて同じ「客数100人」です。
しかし、経営上の意味はまったく違います。
新規客100人と常連客100人は同じではない
極端な例で考えてみます。
A店は毎日100人来店する。
しかし、そのほとんどが新規客で、一度来たら戻ってこない。
B店も毎日100人来店する。
こちらは、その多くが何度も利用している既存客。
売上だけを見れば、どちらも同じ100人です。
しかし、店の構造は大きく違います。
| A店 | B店 | |
|---|---|---|
| 1日の客数 | 100人 | 100人 |
| 主な顧客 | 新規客 | リピーター・常連客 |
| 新規集客への依存 | 高い | 低い |
| 広告への依存 | 高くなりやすい | 比較的低い |
| 売上の安定性 | 不安定になりやすい | 安定しやすい |
| 顧客基盤 | 積み上がりにくい | 積み上がる |
A店は、明日も新しい100人を探さなければなりません。
そして明後日も、その次の日もです。
広告を止めた。
SNSからの流入が落ちた。
新規オープン効果がなくなった。
競合店ができた。
それだけで客数が大きく落ちる可能性があります。
一方、B店にはすでに「また来てくれるお客様」がいます。
もちろん新規客は必要ですが、毎日の売上をすべて新規客だけで作る必要はありません。
この違いは、長期的にはかなり大きくなります。
新規客を獲得するにはコストがかかる
新規客は、何もしなくても来てくれるわけではありません。
店を知ってもらうために、
広告を出す。
SNSを運用する。
Googleマップを整備する。
グルメサイトを活用する。
看板を出す。
キャンペーンを行う。
クーポンを配る。
さまざまな方法で、まず「店の存在を知ってもらう」必要があります。
そこから、
「行ってみよう」
と思ってもらい、ようやく初回来店につながります。
つまり、新規客を1人獲得するまでには、何らかの集客コストが発生しています。
ところが、一度来店したお客様が、
「また行こう」
と思ってくれれば話は変わります。
すでに場所を知っている。
料理を知っている。
価格を知っている。
店の雰囲気も知っている。
つまり、初回来店時に存在した**「この店、大丈夫かな?」という不安が小さくなっています。**
だから再来店客が増えるほど、新規集客だけに依存しない経営に近づいていきます。
飲食店には「顧客のストック」がある
私はここが飲食店経営では非常に重要だと思っています。
飲食店の売上は、その日の客数だけで作られているように見えます。
しかし、その裏側には、
過去に獲得してきた顧客の蓄積
があります。
例えば、
1回来店した人が1,000人いる。
その中から300人が2回来る。
さらに150人が3回来る。
その中から何十人かが常連になる。
こうして営業を続けるほど、少しずつ「また来てくれる可能性のある顧客」が蓄積されていきます。
これは店にとって一種の資産です。
建物でも厨房機器でもありません。
帳簿上の資産にも載りません。
しかし、経営上は非常に大きな価値があります。
「この店を知っていて、実際に利用したことがあり、もう一度利用する可能性のある人たち」
という顧客基盤です。
だから「3,000人来た」で終わらせない
月間客数3,000人。
一見すると立派な数字です。
しかし、経営者が本当に知るべきなのは、その先です。
| 見る数字 | 分かること |
|---|---|
| 月間客数 | 店がどれだけ利用されたか |
| 新規顧客数 | 新しい顧客を獲得できているか |
| 再来店顧客数 | 一度来た人が戻ってきているか |
| 来店回数 | 顧客がどこまで定着しているか |
| 常連客数 | 売上を支える顧客基盤が育っているか |
つまり、
客数は「結果」であり、顧客構造は「中身」です。
同じ月商。
同じ客数。
同じ客単価。
それでも、顧客構造が違えば店の強さは違います。
毎月大量の新規客を獲得しなければ売上を維持できない店なのか。
一度来たお客様が繰り返し利用し、売上を積み上げてくれる店なのか。
ここを見なければ、本当の経営状態は分かりません。
だから今回、9,263人という数字を単なる「顧客数」として見るのではなく、
その9,263人が、どのような顧客構造を作っているのか。
そこを分析していきます。
飲食店が見るべき数字は、単純な客数だけではありません。
客数の向こう側にある「顧客構造」です。
第3章 最大の壁は「1回目→2回目」だった

9,263人の顧客データを来店回数別に分解すると、最初に大きな壁が見えてきます。
それが、
「1回目から2回目」
です。
9,263人のうち、2回以上来店した顧客は2,727人。
割合にすると**29.4%**です。
| 顧客の状態 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1回来店で止まっている | 6,536人 | 70.6% |
| 2回以上来店 | 2,727人 | 29.4% |
| 合計 | 9,263人 | 100% |
つまり現時点のデータでは、
10人が初回来店すると、そのうち約3人が2回以上来店している。
逆に言えば、
約7人は、まだ2回目に到達していません。
もちろん前章で触れたように、この6,536人すべてを「離脱客」と断定することはできません。
最近初めて来店したばかりで、まだ2回目の来店機会が十分にないお客様も含まれているからです。
それでも、顧客構造を見る限り、
最も多くのお客様が滞留している場所が「1回目」である
ことは間違いありません。
飲食店は「新規客を増やすこと」に目が向きやすい
客数が足りない。
売上が足りない。
そうなると、多くの飲食店が最初に考えるのは新規集客です。
Instagramを頑張る。
Googleマップを強化する。
食べログを改善する。
チラシを撒く。
クーポンを配る。
広告を出す。
もちろん、これらは必要です。
新規客が入ってこなければ、顧客基盤そのものが広がりません。
しかし今回のデータを見ると、もう一つ考えなければならない問題があります。
それは、
「せっかく一度来てくれたお客様を、どれだけ2回目につなげられているのか」
という問題です。
9,263人を集めるまでに、すでに大きな努力をしている
考えてみれば、初回来店までが一番大変です。
まず店の存在を知ってもらう。
興味を持ってもらう。
他店と比較される。
価格を確認される。
口コミを見られる。
料理写真を見られる。
場所を調べてもらう。
そして最終的に、
「ここに行ってみよう」
と選んでもらう。
そこまでして、ようやく1回来店です。
9,263人という数字の裏側には、それだけの集客活動があります。
ところが、そのうち6,536人が現時点では1回来店にとどまっています。
ここで私は一つ疑問を持ちました。
新しいお客様を探し続ける前に、すでに一度来てくれた6,536人について、もっと考えるべきではないか。
ということです。
「新規100人増やす」と「再来店を増やす」
例えば、初回来店客が1,000人いたとします。
現在と同じ29.4%が2回目以上に到達するとすれば、
約294人が再来店側に進みます。
ここで仮に、初回から2回目への到達率を少し改善できたらどうなるでしょう。
| 2回目到達率 | 1,000人から2回以上になる人数 |
|---|---|
| 29.4% | 294人 |
| 35% | 350人 |
| 40% | 400人 |
| 45% | 450人 |
29.4%から40%まで改善できれば、同じ1,000人を集客しても106人多く2回目へ進む計算になります。
広告でさらに106人の新規客を獲得したわけではありません。
すでに獲得した顧客を、より多く残した結果です。
ここにリピーター対策の大きな意味があります。
※もちろん、これは改善効果を考えるための単純なシミュレーションであり、実際に到達率を40%まで上げられるという意味ではありません。
「集客」には入口と出口がある
飲食店の集客をバケツに例えると分かりやすいかもしれません。
Instagram、Google、食べログ、広告、口コミ。
これらはバケツに水を入れるための蛇口です。
しかし、底に大きな穴が開いていたらどうでしょう。
どれだけ蛇口から水を入れても、なかなか水は貯まりません。
飲食店も同じです。
新規集客だけを増やしても、再来店につながらなければ顧客基盤はなかなか厚くならない。
だから、
「どうやって新規客を増やすか」
と同時に、
「なぜ2回目に来なかったのか」
を考える必要があります。
料理なのか。
価格なのか。
接客なのか。
提供時間なのか。
店内環境なのか。
メニューなのか。
再来店する理由が弱いのか。
単純に店を思い出してもらえていないのか。
ここには、広告分析とはまったく違う改善領域があります。
一度来てくれた人は、すでに店を知っている
新規客と一度来店したお客様には、大きな違いがあります。
一度来店したお客様は、
店の場所を知っています。
価格を知っています。
料理を知っています。
店内の雰囲気も知っています。
つまり、初回来店までに存在した多くの心理的ハードルを、すでに一度越えているのです。
だからこそ、
「2回目に来てもらう仕組み」
には大きな価値があります。
新商品。
LINE。
次回来店クーポン。
季節メニュー。
接客。
料理の満足度。
再訪したくなる店づくり。
こうした施策は単なるサービスではなく、顧客構造を変えるための経営施策として見ることができます。
最大の集客改善は「新規客を増やすこと」だけではない
今回の9,263人というデータから最初に見えてきた大きな課題。
それは、
1回目から2回目への壁です。
新規客を増やすことは重要です。
しかし、新規集客だけを追い続けると、
「すでに一度選んでくれたお客様」
への視点が抜け落ちます。
9,263人を10,000人にすることだけが成長ではありません。
同じ9,263人でも、
2回以上来店する人が増える。
3回来る人が増える。
5回来る人が増える。
それでも店は強くなります。
もしかすると飲食店にとって本当に大きな穴は、新規客が足りないことではなく、
「せっかく一回来てくれた人を失っていること」
なのかもしれません。
そして次に見るべきなのは、
一度この「2回目の壁」を越えたお客様が、その後どうなるのか。
ここから顧客データがさらに面白くなってきます。
第4章 ところが、2回来た客の行動が変わる

前章では、最大の壁が**「1回目→2回目」**にあることが分かりました。
9,263人のうち、2回以上来店したお客様は2,727人。
2回目への到達率は29.4%。
つまり、ここで多くのお客様が止まっています。
ところが、2回目まで来たお客様だけを取り出してみると、少し違った動きが見えてきます。
ここから、このデータが面白くなります。
2回来た人の約半分が、3回目にも来ている
まず数字を確認します。
2回以上来店:2,727人
そのうち、
3回以上来店:1,373人
です。
したがって、
1,373 ÷ 2,727 = 約50.3%
となります。
| 顧客の段階 | 人数 | 次の段階への到達率 |
|---|---|---|
| 1回以上 | 9,263人 | ― |
| 2回以上 | 2,727人 | 29.4% |
| 3回以上 | 1,373人 | 50.3% |
ここで、かなり大きな変化が起きています。
初回来店したお客様のうち、2回目まで進んだのは29.4%。
ところが、
一度再来店したお客様に限ると、その約半分が3回目にも来店している。
29.4%から50.3%。
単純比較では、約20.9ポイント上昇しています。
「2回来店」は単なる2回ではないのかもしれない
なぜ、ここまで数字が変わるのでしょうか。
これは顧客心理を考えると興味深いところです。
1回目の来店は、
「近くにあったから」
「広告を見たから」
「Googleで見つけたから」
「友人に誘われたから」
「クーポンがあったから」
といった、さまざまな理由で発生します。
つまり、初回来店には偶然性もかなり含まれます。
しかし、2回目は少し意味が違います。
一度利用して、
料理を食べた。
価格を知った。
接客を受けた。
店の雰囲気を知った。
それでも、
「もう一度行こう」
と判断して来店しています。
これは店側から見ると非常に重要な行動です。
1回目は「お試し」、2回目は「再選択」
顧客行動を単純化すると、こう考えることもできます。
| 来店段階 | 顧客心理のイメージ |
|---|---|
| 1回目 | 「ちょっと行ってみよう」 |
| 2回目 | 「もう一度行こう」 |
| 3回目 | 「この店、結構使えるな」 |
| 4回目以降 | 「自分の選択肢の一つ」 |
もちろん、すべてのお客様がこの心理で動いているわけではありません。
ただ、データを見る限り、
2回目を経験した顧客は、1回だけのお客様とはその後の行動が明らかに違っています。
ここは非常に重要です。
初回来店は「店を試した」という側面があります。
しかし2回目は、一度経験したうえで再び選んだということです。
言い換えるなら、
1回目は「選ばれた」。
2回目は「もう一度選ばれた」。
この違いは大きい。
顧客は2回目から店との関係が変わり始める
1回しか利用していない段階では、その店はまだ数ある飲食店の一つです。
しかし2回来店すると、
「あそこなら定食が食べられる」
「あの料理が食べたい」
「家族で行きやすい」
「今日はあそこにしよう」
といった形で、店が少しずつ顧客の選択肢の中に入り始めます。
そして今回の数字を見ると、その変化が実際の来店行動にも表れている可能性があります。
1回→2回:29.4%
2回→3回:50.3%
一度2回目まで進むと、次へ進む割合が大きく上昇する。
つまり、
飲食店では「2回来てもらうこと」が、顧客定着の最初の分岐点なのではないか。
という仮説が立てられます。
これは集客戦略の考え方を変える
もしこの傾向が他の期間や顧客群でも確認できるのであれば、店舗側の施策も変わります。
新規客を獲得したところで、
「集客成功」
ではありません。
むしろ、そこはスタート地点です。
本当に重要なのは、
初回来店したお客様を、どうやって2回目まで連れてくるのか。
例えば、
初回来店後にLINEで再訪のきっかけを作る。
次回来店したくなる商品を作る。
季節メニューを投入する。
次回使える特典を用意する。
一度では食べ切れないほど商品選択肢を作る。
「今度はあれを食べたい」と思わせる。
こうした施策の意味は、単なる販促ではありません。
顧客を「1回来店」から「2回来店」へ移動させる施策
と考えることができます。
重要なのは「2回目の壁」を越えてもらうこと
ここまでのデータを整理すると、顧客の流れはこうなります。
| 段階 | 人数 | 前段階からの到達率 |
|---|---|---|
| 1回以上 | 9,263人 | ― |
| 2回以上 | 2,727人 | 29.4% |
| 3回以上 | 1,373人 | 50.3% |
最初の9,263人から2,727人まで、一気に人数が減ります。
しかし、その壁を越えた2,727人のうち、約半分はさらに3回目へ進んでいる。
ここに最初の大きな変化があります。
だから私は、
「新規客を何人集めたか」だけではなく、「何人を2回目まで連れてこられたか」を見るべきではないか
と考えます。
1回来店は、まだ「お客様になった」と言い切れないのかもしれません。
店を一度試してくれた人。
そして2回来店して初めて、
店との関係が始まりかけている人。
今回のデータからは、そんな顧客の変化が見えてきます。
そして、さらに3回目を越えるとどうなるのか。
次の数字を見ると、顧客が「常連」へ変わっていく境目が、もう少しはっきりしてきます。
第5章 3回来ると、さらに離れにくくなる

前章では、2回目まで来店したお客様の行動が変わることを見ました。
1回→2回以上:29.4%
だったものが、
2回→3回以上:50.3%
まで上昇しています。
では、3回目まで来たお客様はどうなるのでしょうか。
ここをさらに追いかけると、もっと面白い傾向が見えてきます。
3回来た人の57.8%が、4回目にも来ている
3回以上来店しているお客様は、
1,373人。
そのうち4回以上来店しているお客様は、
793人。
計算すると、
793 ÷ 1,373 = 約57.8%
です。
つまり、
3回以上来店したお客様の半数以上が、4回目にも到達している。
2回→3回の50.3%から、さらに上昇しています。
4回来ると、5回目への到達率は63.4%
さらに先を見てみます。
4回以上来店しているお客様は、
793人。
そのうち5回以上来店しているお客様は、
503人。
したがって、
503 ÷ 793 = 約63.4%
となります。
ここまでの数字をすべて並べてみます。
| 来店ステップ | 前段階の顧客数 | 次段階の顧客数 | 次回来店への到達率 |
|---|---|---|---|
| 1回→2回以上 | 9,263人 | 2,727人 | 29.4% |
| 2回→3回以上 | 2,727人 | 1,373人 | 50.3% |
| 3回→4回以上 | 1,373人 | 793人 | 57.8% |
| 4回→5回以上 | 793人 | 503人 | 63.4% |
きれいに数字が上昇しています。
29.4% → 50.3% → 57.8% → 63.4%
偶然で片付けるには、かなり興味深い並びです。
来店回数が増えるほど「次も来る」
このデータから見えるのは、とてもシンプルです。
来店回数が増えるほど、次回来店へ進む割合が高くなっている。
初回来店した人が2回目まで進む割合は29.4%。
しかし、一度2回来店すると約半数が3回目へ。
3回来店すると57.8%が4回目へ。
4回来店すると63.4%が5回目以上へ進んでいます。
つまり、顧客は毎回同じ確率で来店しているわけではない。
少なくとも今回のデータでは、
来店経験そのものが増えるほど、その後も利用する顧客の割合が高くなっています。
「常連」は突然生まれるわけではない
ここで、飲食店の常連客について考えてみます。
私たちは普段、
「あの人は常連さん」
と簡単に言います。
しかし、当然ながら最初から常連だったわけではありません。
最初は全員、初めて来たお客様です。
そこから、
1回来店
↓
もう一度来店
↓
3回目
↓
4回目
↓
5回以上
と進んでいく。
今回の数字を見ると、その過程で少しずつ離脱しにくい顧客へ変化しているように見えます。
店が「知らない店」から「知っている店」へ変わる
なぜ来店回数が増えるほど、次回来店へ進みやすくなるのでしょうか。
一つ考えられるのは、顧客にとって店を利用する心理的なハードルが下がっていくことです。
初回来店では、
「美味しいかな」
「値段はどうかな」
「入りやすいかな」
「家族で行って大丈夫かな」
「どんな店なんだろう」
といった不安があります。
しかし3回、4回と利用していれば、そうした不安はほとんどありません。
料理を知っている。
価格を知っている。
注文方法を知っている。
店内の雰囲気を知っている。
駐車場も知っている。
自分の好きなメニューも分かっている。
つまり、店が顧客にとって、
「知らない飲食店」から「使い方を知っている飲食店」
へ変わっていきます。
そして「選ぶ店」から「思い出す店」になる
さらに来店回数が増えると、店の位置づけそのものが変わる可能性があります。
初回来店では、
「今日はどこで食べよう?」
と複数の店を比較したうえで選ばれているかもしれません。
しかし何度も利用するようになると、
「今日はがぶ飲み食堂にしよう」
と、最初から候補として思い出してもらえるようになる。
この差は大きい。
毎回ゼロから他店と比較される店と、
最初から選択肢に入っている店。
当然、後者のほうが再来店しやすくなります。
常連化とは単純に来店回数が増えることではなく、
顧客の頭の中で、その店の位置づけが変わっていくこと
なのかもしれません。
顧客は階段状に育っていく
ここまでの9,263人を、顧客が育っていく階段として整理すると分かりやすくなります。
| 段階 | 顧客数 | 次へ進む割合 |
|---|---|---|
| 初回来店 | 9,263人 | 29.4% |
| ↓ 2回以上 | 2,727人 | 50.3% |
| ↓ 3回以上 | 1,373人 | 57.8% |
| ↓ 4回以上 | 793人 | 63.4% |
| ↓ 5回以上 | 503人 | ― |
人数そのものは当然減っていきます。
しかし、残った顧客を見ると、次の段階へ進む割合は逆に上昇しています。
ここが非常に面白いところです。
飲食店の顧客は、
新規客 → リピーター → 常連客
と突然切り替わるわけではありません。
少しずつ来店回数を重ねながら、店との関係が強くなっていく。
今回のデータは、その過程をかなり分かりやすく示しています。
本当に重要なのは「何人来たか」ではなく「何回まで来てもらえたか」
ここまでを見ると、飲食店の顧客分析で見るべき数字が少し変わってきます。
「今月何人来たか」
だけではなく、
何人が2回目まで来たのか。
何人が3回目まで来たのか。
何人が4回目まで来たのか。
そして、
何人が5回以上利用する顧客になったのか。
今回のデータでは、
29.4% → 50.3% → 57.8% → 63.4%
と、来店回数が増えるほど次回来店への到達率が上昇しています。
つまり、店にとって価値が大きいのは単なる「1人の顧客」ではありません。
何度も店を選んでくれる顧客です。
そして、この数字を見る限り、
3回、4回と来店する頃から、顧客はかなり離れにくくなっている。
では、どこからを「常連客」と考えるべきなのか。
このデータを使えば、その境目も感覚ではなく数字から考えることができます。
第6章 「常連客は何回来たら常連なのか」

ここまでのデータを見ると、一つの疑問が出てきます。
「そもそも、何回来たら常連客なのか?」
飲食店では普通に「常連さん」という言葉を使います。
週に何度も来る人。
スタッフと顔なじみの人。
いつも同じ席に座る人。
注文する商品まで覚えている人。
こうしたお客様を、私たちは感覚的に「常連」と呼んでいます。
しかし、経営データとして考えるなら、
どこから顧客が常連化し始めるのか
をもう少し具体的に考えることができます。
来店回数によって、顧客の状態は変わっているのではないか
今回の9,263人のデータから、一つの仮説を立ててみます。
| 来店回数 | 顧客の状態 | 顧客心理の仮説 |
|---|---|---|
| 1回 | お試し | 「とりあえず一回来てみた」 |
| 2回 | 再評価 | 「もう一回行ってみよう」 |
| 3回 | 選択肢入り | 「あそこも候補に入る」 |
| 4回 | 習慣化の入口 | 「困ったらあそこにしよう」 |
| 5回以上 | 常連候補 | 「自分が使う店の一つ」 |
もちろん、これは今回のデータから考えた仮説です。
5回来た瞬間に突然「常連客」になるわけではありません。
来店頻度も違います。
1か月で5回来る人もいれば、1年かけて5回来る人もいます。
それでも、前章までの数字を見ると、顧客行動が段階的に変化していることは非常に興味深いところです。
数字を見ると「2回目」が最初の分岐点に見える
もう一度、次回来店への到達率を並べます。
| 来店ステップ | 次回来店への到達率 |
|---|---|
| 1回→2回以上 | 29.4% |
| 2回→3回以上 | 50.3% |
| 3回→4回以上 | 57.8% |
| 4回→5回以上 | 63.4% |
最も大きな変化が起きているのは、
1回→2回と、2回→3回の間です。
29.4%だった数字が50.3%まで上昇する。
約20.9ポイントの差です。
つまり今回のデータでは、
「一度来た人」と「二度来た人」では、その後の行動がかなり違う。
ここから考えると、2回目の来店には単なる「+1回」以上の意味があるのかもしれません。
1回来店は「お試し」
初回来店には、さまざまな理由があります。
広告を見た。
検索で見つけた。
家族に連れてこられた。
近くを通った。
クーポンがあった。
SNSで料理を見た。
知人に勧められた。
つまり、まだこの段階では、
「この店が好きだから来た」
とは限りません。
初回来店は、言ってみればお試し期間です。
店側は選ばれました。
しかし、まだ顧客の中に定着したとは言えません。
2回来店は「再評価」
ところが2回目は違います。
一度、
料理を食べている。
価格も知っている。
サービスも経験している。
店の雰囲気も分かっている。
そのうえで、
もう一度選ばれた。
ここが大きい。
初回来店が「興味」だとすれば、2回目は評価を通過した結果とも考えられます。
だから私は、
2回来店=再評価
と考えています。
そして実際、この2回目を超えたお客様の50.3%が3回目以上へ進んでいます。
3回来店すると「店の選択肢」に入る
3回目まで来ると、さらに意味が変わってくるのではないでしょうか。
外食するとき、
「今日は何食べよう?」
と考えたときに思い浮かぶ店は、人それぞれある程度決まっています。
ラーメンならここ。
家族で行くならここ。
定食ならここ。
ゆっくりしたいならここ。
その頭の中の選択肢に入ることが、飲食店にとって非常に重要です。
3回来店したお客様の57.8%が4回目へ進んでいることを考えると、
3回目あたりから「たまたま利用した店」ではなく、「自分が利用する店」に変わり始めている
という仮説が立てられます。
4回来店は「習慣化の入口」
さらに4回来店したお客様になると、63.4%が5回以上へ進んでいます。
10人いれば6人以上です。
ここまで来ると、
「一度行ったことがある店」
というより、
普段使う店の候補
になっている可能性があります。
今日は時間がないからあそこ。
家族で食事するならあそこ。
定食を食べたいからあそこ。
近くまで来たからあそこ。
こうした判断の中に店が自然に登場する。
私はこれを、
「習慣化の入口」
と考えています。
5回以上は「常連候補」
今回、5回以上来店しているお客様は503人います。
全顧客9,263人のうち**5.4%**です。
| 指標 | 人数・割合 |
|---|---|
| 全顧客 | 9,263人 |
| 5回以上来店 | 503人 |
| 全顧客に占める割合 | 5.4% |
約1年間で500人以上が5回以上利用している。
この層は少なくとも、単なる「来店経験者」とは違うでしょう。
だから今回の分析では、
5回以上来店=常連候補
と置いてみます。
ただし、「5回来たから常連」と機械的に決めたいわけではありません。
重要なのは回数そのものではなく、その裏側にある顧客の行動変化です。
常連とは「顔を覚えている人」ではない
飲食店側からすると、
スタッフが顔を覚えている。
名前を知っている。
いつもの注文を知っている。
こういう人を常連と呼びたくなります。
しかし、それはあくまで店側から見た常連です。
経営という視点では、少し違う定義もできると思います。
常連とは、
「お客様の選択肢の中に、その店が定着した状態」
ではないでしょうか。
「外食しよう」
と思ったときに店を思い出してもらえる。
他にも店があるのに、また選んでもらえる。
新しい広告を見せなくても、再び利用してもらえる。
これが顧客としての定着です。
常連化とは「店を好きになること」だけではない
さらに言えば、常連になる理由は必ずしも、
「この店が大好きだから」
だけではありません。
近い。
駐車しやすい。
値段がちょうどいい。
家族で使いやすい。
好きなメニューがある。
量が多い。
営業時間が使いやすい。
一人でも入りやすい。
スタッフを知っている。
いろいろな理由があります。
つまり常連化とは、
店への強烈な愛着を作ることだけではなく、顧客の生活の中に店の利用シーンを作ること
とも言えます。
ここは飲食店経営ではかなり重要だと思います。
「2回目」を作り、「3回目」で定着させる
今回のデータから考えると、顧客育成はこんなイメージになります。
1回目|お試し
↓ 29.4%
2回目|再評価
↓ 50.3%
3回目|選択肢入り
↓ 57.8%
4回目|習慣化の入口
↓ 63.4%
5回以上|常連候補
こうして見ると、飲食店が最も力を入れるべきポイントも見えてきます。
まず、
2回目を作る。
そして、
3回目につなげる。
そこを越えると、今回のデータでは次回来店への到達率が少しずつ高くなっています。
常連客は「作る」のではなく「育っていく」
常連客を増やそう。
そう考えると、どうしても特別なサービスや値引きを考えてしまいます。
しかし今回のデータを見ると、もっと基本的な話なのかもしれません。
1回来てもらう。
もう一度来てもらう。
3回目にも選んでもらう。
4回目にも利用してもらう。
その積み重ねの先に、常連客が生まれる。
つまり、
常連客とは突然生まれるものではありません。
来店を重ねながら、少しずつ育っていくものです。
そして今回の9,263人のデータを見る限り、
2回目を超えたあたりから、その顧客行動は明確に変わり始めています。
常連とは、店側が「あなたは常連です」と決めるものではない。
お客様自身の選択肢の中に、その店が定着した状態。
私は今回のデータから、そう考えています。
第7章 5回来た503人は何者なのか

ここまで、顧客が来店回数を重ねるほど、次回来店へ進む割合が高くなっていることを見てきました。
では、その階段をさらに上ったお客様はどうなっているのでしょうか。
9,263人の顧客のうち、
5回以上来店しているお客様は503人。
全体の**約5.4%**です。
さらに、その中を詳しく見ると、
| 来店回数 | 顧客数 | 全顧客9,263人に占める割合 |
|---|---|---|
| 5回以上 | 503人 | 約5.4% |
| 10回以上 | 128人 | 約1.4% |
| 20回以上 | 26人 | 約0.28% |
| 30回以上 | 7人 | 約0.08% |
30回以上来店しているお客様まで存在しています。
開業から約1年。
この数字は、単なる「来店客数」として扱うには少し意味が違ってきます。
30回来店は、もはや「たまたま」では説明できない
例えば1回来店なら、
近くを通った。
広告を見た。
友人に誘われた。
たまたま入った。
こうした偶然でも説明できます。
2回、3回なら、
「結構よかったから、もう一度」
ということもあるでしょう。
しかし、
10回。
20回。
30回。
ここまで来ると、偶然では説明できません。
そのお客様の生活の中に、店を利用する理由ができていると考えるほうが自然です。
特に30回以上なら、約1年間という期間で考えると、かなり高い頻度で利用していることになります。
店側から見れば一人のお客様ですが、その一人が生み出す年間の来店回数は、初回来店客とはまったく違います。
「1人の顧客」の価値は全員同じではない
顧客数だけを見ると、
1回来店した人も、
30回来店した人も、
どちらも「顧客1人」です。
しかし経営上の意味は同じではありません。
極端に単純化すると、
| 顧客 | 人数としてのカウント | 来店回数 |
|---|---|---|
| Aさん | 1人 | 1回 |
| Bさん | 1人 | 5回 |
| Cさん | 1人 | 10回 |
| Dさん | 1人 | 30回 |
顧客データ上では全員「1人」。
しかし、その店にもたらした利用回数は大きく違います。
だから飲食店では、
「顧客を何人持っているか」
だけではなく、
「その顧客がどれくらい繰り返し利用しているか」
を見る必要があります。
503人は「売上を作り続ける可能性のある顧客」
今回、5回以上利用している503人を、前章では**「常連候補」**としました。
この503人は、新規客とは性質が違います。
すでに店を知っている。
何度も商品を購入している。
複数回、他店ではなくこの店を選んでいる。
そして少なくとも5回以上、実際にお金を使っている。
つまり、この503人は単なる過去の来店実績ではありません。
今後も店を利用してくれる可能性を持った、
「継続顧客の基盤」
として見ることができます。
飲食店にも「顧客資産」という考え方が必要ではないか
ここで私は、飲食店にも「顧客資産」という考え方が必要だと思っています。
もちろん、これは会計上の資産という意味ではありません。
貸借対照表に、
「常連客503人=○○万円」
と計上できるわけではありません。
しかし、経営上の価値として考えればどうでしょう。
例えば、同じ月商500万円の店が2店舗あったとします。
A店は、新規客を大量に集め続けなければ月商500万円を維持できない。
B店は、何百人もの固定客が繰り返し利用することで月商500万円を作っている。
同じ500万円でも、私はこの2店舗を同じ状態だとは考えません。
| A店 | B店 | |
|---|---|---|
| 月商 | 500万円 | 500万円 |
| 売上の中心 | 新規客 | 既存客+新規客 |
| 新規集客への依存 | 高い | 比較的低い |
| 顧客基盤 | 薄い | 厚い |
| 売上の再現性 | 低くなりやすい | 高くなりやすい |
毎月ゼロから500万円を作る店と、
過去に獲得した顧客との関係を使いながら500万円を作る店。
これは経営構造としてかなり違います。
128人の「10回以上」はさらに重要になる
そして503人の中でも、さらに濃い層が存在します。
10回以上来店している128人。
全顧客の約1.4%です。
割合だけを見ると小さく感じます。
しかし、この128人は最低でも10回来店しています。
つまり最低ラインだけで考えても、
128人 × 10回=1,280回来店
です。
実際には10回を超えて利用しているお客様も含まれるため、実来店回数はこれより多くなります。
人数ではわずか128人。
しかし、延べ利用回数で見ると存在感が大きくなる。
ここに、
「顧客数」と「顧客価値」は同じではない
という重要なポイントがあります。
20回、30回来る人は店の「核」になっていく
さらに、
20回以上が26人。
30回以上が7人。
ここまで来ると、かなり強い利用習慣が形成されている可能性があります。
この層は売上だけではなく、別の意味でも重要です。
何度も来店しているからこそ、
店の変化に気づく。
新商品を試してくれる。
スタッフとの関係ができる。
家族や友人を連れてくる。
知人との会話で店の名前を出す。
口コミを書く。
SNSで紹介する。
もちろん、すべての常連客がこうした行動をするわけではありません。
しかし、利用回数が増えるほど、店との接点が増えることは確かです。
つまり常連客は、
売上を作る顧客であると同時に、店と地域をつなぐ存在
にもなり得ます。
新規客1,000人と常連客100人、どちらが重要なのか
これは「どちらか」という話ではありません。
新規客が入らなければ、未来の常連客は生まれません。
しかし、新規客だけでも店は安定しません。
重要なのは、
新規客を獲得し、その一部を継続顧客へ育てていくこと。
つまり、
新規獲得 → 再来店 → 定着 → 常連化
という流れです。
今回の503人も、最初は全員9,263人の中の「初回来店客」でした。
そこから2回目に進み、
3回目に進み、
4回目に進み、
5回以上利用するようになった。
そしてその中から、
10回以上が128人。
20回以上が26人。
30回以上が7人。
という、さらに濃い顧客層が生まれています。
顧客データは「過去の記録」ではない
顧客データというと、
「何人来たか」
「何回来たか」
という過去の記録に見えます。
しかし経営者が見るべきなのは、その先です。
今、店には何人の顧客が蓄積されているのか。
その中に何人のリピーターがいるのか。
何人の常連候補がいるのか。
その顧客基盤を来年さらに厚くできるのか。
こう考えると、顧客データは過去を見るためだけの数字ではありません。
未来の売上を考えるための数字でもあります。
503人は「5.4%しかいない」のか
5回以上来店しているお客様は全体の5.4%。
この数字を、
「たった5.4%」
と見ることもできます。
しかし私は、
「開業約1年で503人が5回以上利用するところまで進んだ」
とも考えます。
重要なのは、この503人という数字そのものだけではありません。
来年、
503人が700人になるのか。
1,000人になるのか。
10回以上の128人がどこまで増えるのか。
そして、新しく獲得した顧客がこの層へどれだけ入ってくるのか。
そこに店の強さが表れてきます。
9,263人という顧客数の中で、本当に注目すべきなのは人数だけではありません。
その奥に存在する、
5回以上503人。
10回以上128人。
20回以上26人。
30回以上7人。
この数百人は、単なる「来店客」ではありません。
店の売上を繰り返し作り、これからの売上にもつながっていく可能性を持った、
飲食店にとっての「顧客資産」
として考える必要があります。
第8章 新規客9,263人と常連503人、どちらが重要なのか

ここまで分析すると、こんな疑問が出てきます。
新規客と常連客、結局どちらが重要なのか。
答えは当然、
両方です。
新規客が入ってこなければ、顧客母数は増えません。
今いる常連客も、最初は全員新規客でした。
だから、新規集客を止めていいという話ではありません。
しかし今回の9,263人というデータを見ると、新規集客とは別に、非常に大きな市場がすでに店の中に存在していることに気づきます。
新しい9,263人を集めるのは簡単ではない
開業から約1年で、9,263人のお客様との接点ができました。
しかし、もう一度まったく新しい9,263人を集めようとすれば、当然コストがかかります。
Instagram。
Google。
食べログ。
SNS。
広告。
チラシ。
口コミ。
キャンペーン。
クーポン。
店舗の認知そのものも、時間をかけて作っていかなければなりません。
つまり新規顧客とは、
「まだ店を知らない人に、知ってもらうところから始める集客」
です。
認知してもらい、
興味を持ってもらい、
比較され、
選んでもらい、
実際に店まで来てもらう。
ここまで進んで、ようやく1回来店です。
一方、すでに店を知っている6,536人がいる
ここで改めて、今回の数字を見てみます。
| 顧客層 | 人数 | 状態 |
|---|---|---|
| 全登録顧客 | 9,263人 | 一度以上利用 |
| 2回以上来店 | 2,727人 | 再来店済み |
| 現時点で1回来店 | 6,536人 | 店を経験済み・2回目未到達 |
| 5回以上来店 | 503人 | 常連候補 |
注目したいのは、6,536人です。
この人たちは、新規客ではありません。
すでに一度店を利用しています。
店の場所を知っている。
料理を食べたことがある。
価格を知っている。
店内の雰囲気も知っている。
駐車場も知っている。
つまり、
「知らない人」ではない。
それでも現時点では、2回目の来店に至っていない人たちです。
これは「知らない市場」ではない
飲食店が集客を考えるとき、多くの場合は外側を見ます。
まだ来たことのない人。
まだ店を知らない人。
まだ商圏の中で獲得できていない人。
もちろん、その市場を取りに行く必要があります。
しかし、今回のデータを見ると、店の内側にも巨大な市場があります。
それが、
「知っているけど、戻ってきていない市場」
です。
これは新規市場とは性質が違います。
| 新規市場 | 1回来店市場 |
|---|---|
| 店を知らない | 店を知っている |
| 料理を知らない | 料理を経験している |
| 価格を知らない | 価格を知っている |
| 店内を知らない | 店内を知っている |
| 来店経験なし | 来店経験あり |
| まず初回来店を作る | 2回目を作る |
この違いはかなり大きいと思います。
6,536人は「失った客」と決めつけない
ただし、この6,536人をすべて、
「一度来て離脱した客」
と考えるのも違います。
最近初めて来店したばかりのお客様もいます。
そもそも外食頻度が低い人もいるでしょう。
遠方から来店した人もいるかもしれません。
利用シーンが限定されている人もいます。
ですから、
6,536人=取り戻すべき失客
ではありません。
ここはかなり重要です。
正確には、
「現時点では2回目に到達していない顧客が6,536人いる」
ということです。
その中に、再来店の可能性が高い人も低い人も混在しています。
だから次に必要なのは、この6,536人をさらに分解することです。
「なぜ戻ってこないのか」で顧客を分ける
例えば、1回来店客にもさまざまなタイプが考えられます。
| 1回来店で止まっている理由 | 店側の対応 |
|---|---|
| 最近初回来店した | 時間を置いて観察 |
| 店を忘れている | LINE・SNSなどで想起 |
| 次回来店の理由がない | 新商品・季節商品 |
| 満足度が低かった | 商品・接客・オペレーション改善 |
| 利用頻度そのものが低い | 長期で見る |
| 商圏外から来店 | 無理に追わない |
| 他店の方が魅力的だった | 競争力を改善 |
こうして考えると、
「リピーターを増やす」
という言葉だけでは少し粗いことが分かります。
なぜ2回目に進んでいないのか。
ここを理解しなければ、単純にクーポンを配ればいいという話にはなりません。
もし6,536人の一部が戻ってきたら
仮に、この6,536人の中から追加で5%が2回目に進んだとします。
単純計算すると、
6,536人 × 5% ≒ 327人
です。
10%なら、
約654人。
| 1回来店客から追加で再来店 | 人数 |
|---|---|
| 5% | 約327人 |
| 10% | 約654人 |
| 15% | 約980人 |
もちろん、これは効果を保証する数字ではなく、規模感を見るための単純なシミュレーションです。
しかし重要なのは、
新しい654人をゼロから探したわけではない
ということです。
すでに店を知っている6,536人の中から、再び店を選んでもらう。
ここに既存顧客施策の可能性があります。
だから新規集客とリピーター施策は役割が違う
新規集客と既存顧客施策は、どちらが上という話ではありません。
役割が違います。
新規集客は、顧客の入口を広げる。
再来店施策は、入ってきた顧客を残す。
そして、
常連化は、その顧客を店の売上基盤へ育てる。
整理すると、
新規獲得
↓
初回来店
↓
2回目
↓
3回目
↓
4回目
↓
5回以上・常連候補
という流れになります。
入口だけ広げても、途中で大量に抜けていけば顧客基盤はなかなか厚くなりません。
反対に、既存客だけを見て新規集客を止めれば、母数はいずれ縮小します。
必要なのは、
入口を増やしながら、途中の離脱を減らすこと。
両方です。
飲食店の市場は「店の外」だけではない
枚方市には約39万人がいます。
その大部分は、まだ当店を利用したことがありません。
当然、そこには巨大な新規市場があります。
しかし同時に、
一度店を利用したにもかかわらず、現時点で2回目に到達していない6,536人
もいます。
この人たちは、まったく知らない市場ではありません。
一度は店を選んでくれた市場です。
だから飲食店の成長を考えるとき、
「まだ来ていない人をどう集めるか」
だけではなく、
「一度来た人に、どうもう一度選んでもらうか」
という視点も必要になります。
新規9,263人をもう一度ゼロから集める。
それも成長です。
しかし、
9,263人の中から2回、3回、5回と利用する人を増やす。
これもまた、立派な成長です。
知らない人を探し続けるだけが集客ではありません。
すでに店を知っている。
すでに料理を食べている。
すでに一度お金を払ってくれている。
それでも、まだ戻ってきていない。
この**「知っているけど、戻ってきていない市場」**をどう考えるか。
ここには、新規集客とはまったく違う飲食店経営の可能性があります。
第9章 6,536人の一回来店客は「失客」なのか

ここまでの分析では、
1回来店で止まっている顧客が6,536人いる
という事実を見てきました。
ただ、この数字の扱いは慎重でなければなりません。
なぜなら、
1回来店=不満足
とは限らないからです。
むしろ、飲食店の来店には店側ではコントロールできない理由がかなり多く含まれています。
一回来店で終わる理由は、店への不満だけではない
例えば、
遠方から来た人。
旅行や観光でたまたま近くにいた人。
仕事で近くに来ただけの人。
友人や家族に連れられて来た人。
生活圏がそもそも違う人。
外食頻度そのものが低い人。
まだ初回来店から日が浅い人。
こうしたお客様は、料理や接客に満足していても、すぐに2回目が発生するとは限りません。
整理すると、1回来店客にはさまざまなタイプが混在しています。
| 1回来店で止まっている理由 | 店への評価 |
|---|---|
| 遠方からの来店 | 満足していても再訪しにくい |
| 旅行・観光 | 再来店機会そのものが少ない |
| 仕事で一時的に近くへ来た | 商圏外の可能性 |
| 知人に連れられて来店 | 本人の外食動線に入っていない |
| 生活圏が違う | 距離の問題 |
| 外食頻度が低い | 再来店まで時間がかかる |
| 来店から日が浅い | まだ判断できない |
| 店への満足度が低かった | 改善対象になる可能性 |
| 他店を選んでいる | 競争力の問題かもしれない |
つまり、
6,536人すべてを「失客」と呼ぶのは間違いです。
「来なくなった」と「まだ来ていない」は違う
特に重要なのが、時間の問題です。
例えば、
昨日初めて来店したお客様。
3か月前に初めて来店したお客様。
10か月前に初めて来店したお客様。
この3人は、顧客データ上ではすべて同じ
「1回来店」
に分類されます。
しかし、意味はまったく違います。
昨日来店した人に対して、
「再来店しなかった」
とは言えません。
まだ再来店する時間がほとんど経っていないからです。
逆に、10か月前に一度来店して、それ以降利用がない人なら、再来店可能性を別の角度から考える必要があります。
つまり本来は、
来店回数だけではなく「最終来店日」も合わせて見る必要があります。
本当に見るべきなのは「1回来店客6,536人」の中身
ここから先の分析を深めるなら、6,536人をさらに分解したいところです。
例えば、
| 分解軸 | 見えてくること |
|---|---|
| 初回来店から30日以内 | まだ再来店判定には早い |
| 31〜90日 | 再訪可能性を観察する層 |
| 91〜180日 | 再来店施策の対象候補 |
| 181日以上 | 長期未再来店層 |
| 居住エリア | 商圏内か商圏外か |
| 来店時間 | ランチ客かディナー客か |
| 利用商品 | 何を目的に来店したか |
| 来店経路 | 広告・検索・口コミなど |
| クーポン利用 | 値引き目的の可能性 |
ここまで分ければ、
単純な6,536人ではなく、
「もう一度来てもらえる可能性の高い1回来店客」
が見えてくるはずです。
「失客」という言葉は強すぎる
私は今回、この6,536人を簡単に「失客」と呼ばないほうがいいと考えています。
失客という言葉には、
「店を選ばなくなった」
という意味が含まれるからです。
しかし実際には、
店を嫌いになったわけでもない。
満足しなかったわけでもない。
単純に来店機会が発生していないだけ。
という人もいるでしょう。
だから現時点では、
「2回目未到達顧客」
くらいの表現のほうが正確です。
それでも6,536人を放置していいわけではない
ただし、
「失客とは限らない」
という話と、
「何もしなくていい」
という話は別です。
6,536人という人数は、全顧客9,263人の**70.6%**です。
この中に、
店を気に入っている。
もう一度行ってもいいと思っている。
ただ思い出していない。
次に行く理由がない。
再訪のきっかけがない。
という人が含まれている可能性は十分あります。
つまり、
再来店可能な顧客が大量に眠っている可能性がある。
ここが経営上のポイントです。
「不満客」と「休眠客」を混同しない
もし一回来店客をすべて同じものとして扱うと、施策を間違えます。
例えば、不満足だった人にクーポンを配っても、根本原因は解決しません。
一方、
「店は良かったけど、しばらく思い出していなかった」
という人には、LINEや新商品のお知らせが再来店のきっかけになるかもしれません。
整理すると、
| 顧客タイプ | 必要な対応 |
|---|---|
| 不満足客 | 商品・接客・運営改善 |
| 忘れている客 | 想起施策 |
| 来店理由がない客 | 新商品・イベント |
| 商圏外客 | 無理に追わない |
| 来店直後の客 | 時間を置く |
| 再訪意向あり | 来店のきっかけを作る |
つまり、
再来店率を上げるには、顧客を一括りにしないことが重要です。
「一回来店客」は巨大な中間市場
飲食店では、
新規客。
リピーター。
常連客。
という3分類で考えがちです。
しかし今回のデータを見ると、その間に非常に大きな市場があります。
それが、
「一度来たが、まだ2回目に進んでいない人」
です。
この人たちは、新規ではありません。
かといって、リピーターでもありません。
私はこの層を、
「中間市場」
のようなものとして考えています。
知らない人ではない。
でも、習慣化している人でもない。
一度は店を選んでくれた。
しかし、まだ店が生活の選択肢として定着していない。
この層をどう動かすかが、飲食店の顧客構造を大きく変える可能性があります。
6,536人の中に、次の503人がいる
ここが一番重要です。
現在5回以上来店している503人も、最初は全員1回来店客でした。
2回目へ進み、
3回目へ進み、
4回目へ進み、
5回以上利用するようになった。
つまり、現在の6,536人の中にも、
将来の2回来店客がいる。
将来の3回来店客がいる。
将来の常連候補がいる。
可能性があります。
だから、
6,536人を「戻ってこなかった人」と見るだけではもったいない。
正確には、
「まだ次の段階へ進んでいない人」
です。
失客を数えるより「再来店可能層」を見つける
経営者として重要なのは、
「何人失ったか」
と嘆くことではありません。
その6,536人の中から、
誰ならもう一度来てもらえるのか。
何があれば戻ってくるのか。
どのタイミングなら再訪するのか。
を考えることです。
6,536人すべてが再来店することはありません。
それを目指す必要もありません。
しかし、
この中に再来店可能な顧客が大量に眠っていることも事実です。
飲食店にとって、この層は「失った顧客」ではなく、
これからもう一度関係を作れる可能性を持った顧客
として見るべきなのかもしれません。
第10章 新規集客より「二回目」の方が安い可能性

ここまで顧客データを見てきて、二年目の経営で考えたいことがあります。
それは、
新しいお客様を1人連れてくることと、一度来たお客様にもう一度来てもらうこと。どちらが効率的なのか。
という問題です。
もちろん、今回のデータだけでは実際の顧客獲得単価と再来店獲得単価を比較できません。
ですから、
「再来店の方が必ず安い」
とは断定できません。
しかし、構造的に考えると、再来店には大きな可能性があります。
新規客は「店を知ってもらう」ところから始まる
新規客を1人獲得するまでには、いくつもの段階があります。
まず店を知ってもらう。
興味を持ってもらう。
料理写真を見る。
口コミを確認する。
価格を見る。
場所を調べる。
他店と比較する。
そして、
「ここに行こう」
と決めてもらう。
そのために飲食店は、
Instagram広告。
Google。
食べログ。
SNS。
チラシ。
クーポン。
看板。
口コミ対策。
さまざまな集客施策を行います。
つまり新規集客とは、
まだ自分の店を知らない人の頭の中に、ゼロから店を入れていく作業
でもあります。
ところが、一回来店客はすでに店を知っている
一方、今回のデータには、
1回来店で止まっているお客様が6,536人
います。
この人たちは新規市場とは違います。
すでに、
店を知っている。
場所を知っている。
料理を知っている。
価格を知っている。
雰囲気を知っている。
一度は実際に店を選んでいる。
つまり、ゼロから説明する必要がありません。
必要なのは場合によっては、
「そういえば、あの店また行こう」
と思い出してもらうことだけかもしれません。
ここに、新規集客とは違う効率性が生まれる可能性があります。
「認知を取る広告」と「思い出してもらう広告」は違う
広告というと、
新しいお客様を連れてくるもの
と考えがちです。
しかし、広告や販促にはもう一つ役割があります。
それが、
既存顧客に店を思い出してもらうこと。
例えば、しばらく来店していなかったお客様がInstagramで新商品を見る。
LINEで季節限定メニューが届く。
Googleで店の新しい料理写真を見る。
SNSで店の投稿を偶然目にする。
そこで、
「あ、久しぶりに行こうかな」
となれば、それも立派な集客です。
つまり広告には、
認知を作る広告
と、
再来店を思い出させる広告
の両方があるということです。
二年目は「再来店設計」を加える
開業直後は、当然ながら新規集客が重要です。
そもそも誰も店を知らないからです。
だから一年目は、
認知を取る。
新規客を増やす。
ここに大きな力を使います。
しかし約1年間営業して、9,263人との接点ができた。
そうなると二年目は、少し戦い方を変えられます。
| 一年目の重点 | 二年目に加えたい重点 |
|---|---|
| 店を知ってもらう | 店を思い出してもらう |
| 新規客を獲得する | 2回目を作る |
| 認知を広げる | 再来店理由を作る |
| 初回来店を増やす | 3回目・4回目へつなげる |
| 顧客母数を作る | 顧客基盤を厚くする |
新規集客をやめるわけではありません。
新規集客に「再来店設計」を加える。
ここが重要です。
LINEは「値引きを配る道具」だけではない
例えばLINE。
クーポンを配れば、一時的に来店を作れるかもしれません。
しかし、LINEの役割を値引きだけにすると、
「安いから行く」
という来店理由に偏ってしまいます。
もっと重要なのは、
店を忘れられないこと。
新商品が出ました。
夏限定メニューが始まりました。
人気商品が復活しました。
こんな料理があります。
営業時間が変わりました。
こうした情報を届けることで、顧客の頭の中にもう一度店を登場させる。
つまり、
再来店のきっかけを作る媒体
として使うことができます。
限定メニューや季節商品にも別の意味がある
新商品や季節商品も同じです。
単純に売上を増やすための商品ではありません。
「前に行ったことがあるけど、また同じものを食べに行くほどではない」
というお客様に、
新しい来店理由を作る
ことができます。
春。
夏。
秋。
冬。
期間限定。
新メニュー。
復刻商品。
こうした変化があれば、
「今度はこれを食べてみよう」
という理由が生まれます。
商品開発そのものが、再来店施策になるわけです。
再来店施策は値引きだけではない
再来店というと、
「次回100円引き」
「10%OFF」
のような施策を想像しがちです。
しかし、値引きだけが再来店施策ではありません。
| 施策 | 再来店につながる役割 |
|---|---|
| LINE | 店を思い出してもらう |
| 季節商品 | 新しい来店理由を作る |
| 限定メニュー | 「今行く理由」を作る |
| 次回来店特典 | 2回目へのハードルを下げる |
| 常連施策 | 継続利用する理由を作る |
| 店の変化を継続的に見せる | |
| SNS | 日常的に店との接点を作る |
| 商品改善 | もう一度食べたい理由を強くする |
| 接客・店内改善 | 再訪したくなる体験を作る |
つまり、
再来店設計=クーポン設計
ではありません。
商品、接客、情報発信、販促。
すべてを含めて、
「もう一度選ばれる理由」を作ること
です。
本当に測るべきなのは「広告から何人来たか」だけではない
ここまで考えると、広告効果の見方も変わってきます。
例えばInstagram広告を出して100人来店した。
それだけなら、
新規100人獲得
です。
しかし、その100人のうち、
何人が2回来たのか。
何人が3回来たのか。
何人が5回来たのか。
ここまで追えば、広告の価値はまったく違って見えます。
極端に言えば、
100人集めて全員1回で終わる広告
と、
50人しか集まらなくても、その中から20人が常連化する広告
では、長期的な価値が違う可能性があります。
だから広告は、
「何人連れてきたか」だけではなく、「どんな顧客を連れてきたか」
まで見る必要があります。
二年目は「顧客獲得」から「顧客育成」へ
一年目で9,263人との接点ができました。
その中から、
2回以上が2,727人。
3回以上が1,373人。
4回以上が793人。
5回以上が503人。
そして現時点では、1回来店で止まっている人が6,536人います。
一年目は、この9,263人という顧客母数を作った期間とも言えます。
ならば二年目は、
その母数から、どれだけ2回目、3回目、5回目へ進んでもらえるか。
ここにもう一つの成長余地があります。
新規客を10,000人、11,000人、12,000人と増やしていく。
それと同時に、
2回来店客を増やす。
3回来店客を増やす。
5回来店客を増やす。
10回来店客を増やす。
つまり二年目は、
「顧客数を増やす経営」から、「顧客を育てる経営」へ。
その視点を加えていきたいと思います。
新規集客はこれからも続けます。
ただし、広告・販促の目的を、
「新しい人を連れてくること」だけにはしない。
一度来てくれた人に、
「また行こう」
と思い出してもらう。
そして2回目、3回目へつなげていく。
二年目は、
新規獲得と再来店設計を両輪にする。
今回の9,263人という顧客データから見えてきた、次の一年の大きなテーマです。
第11章 もし「1回→2回」を5ポイント改善したら

ここまで分析してきて、最も大きな改善余地が見えているのが、
「1回目→2回目」
です。
現在、9,263人のうち2回以上来店しているお客様は2,727人。
到達率は**29.4%**です。
では、この数字を少しだけ改善できたら、店全体の顧客構造はどれくらい変わるのでしょうか。
ここでは仮に、
29.4% → 34.4%
つまり、5ポイント改善できた場合をシミュレーションしてみます。
5ポイント改善すると約463人が追加で2回目へ進む
計算は単純です。
9,263人 × 5% = 約463人
つまり、同じ9,263人を集客したとしても、2回目への到達率を5ポイント改善できれば、
約463人を追加で2回目へ進められる
計算になります。
| 指標 | 現在 | 5ポイント改善後 |
|---|---|---|
| 顧客数 | 9,263人 | 9,263人 |
| 2回目到達率 | 29.4% | 34.4% |
| 2回以上の顧客 | 2,727人 | 約3,190人 |
| 増加人数 | ― | 約463人 |
ここで重要なのは、
新規客を463人増やしたわけではない
ということです。
新しく広告で463人を連れてくるのではありません。
すでに獲得した9,263人から、もう一度店を選んでもらう人を増やしただけです。
さらに、この463人は2回来店で終わるわけではない
ここからが重要です。
これまでの実績では、2回以上来店した人の**50.3%**が3回以上来店しています。
もし追加で2回目に進んだ463人も、現在と同じような継続行動をすると仮定すると、
463人 × 50.3% ≒ 233人
が3回以上へ進む計算になります。
さらに現在の継続率をそのまま使って計算すると、
| 段階 | 現在の次段階到達率 | 改善によって追加される顧客数 |
|---|---|---|
| 2回以上 | ― | 約463人 |
| 3回以上 | 50.3% | 約233人 |
| 4回以上 | 57.8% | 約135人 |
| 5回以上 | 63.4% | 約85人 |
つまり、
最初の「2回目」を463人増やすことが、その後の3回目、4回目、5回目にも波及する可能性がある
ということです。
もちろん、これは現在の継続率がそのまま維持されると仮定した単純シミュレーションです。
実際には顧客属性や来店時期によって変わるでしょう。
しかし、経営を考えるうえでは非常に面白い数字です。
5ポイントの改善が「約916回以上」の追加来店につながる可能性
さらに、来店回数として考えてみます。
追加で2回目に来る463人は、それぞれ最低1回の追加来店をします。
そのうち約233人が3回目へ。
約135人が4回目へ。
約85人が5回目へ。
単純に追加来店回数を積み上げると、
463+233+135+85=約916回
となります。
つまり、
1回→2回の到達率を5ポイント改善するだけで、少なくとも約916回分の追加来店につながる可能性がある。
しかも、これは5回目までしか計算していません。
5回以上へ進んだ約85人の中から、
6回。
7回。
10回。
20回。
と利用する人が出てくれば、追加来店数はさらに増えます。
売上にすると、どれくらい変わるのか
ここでは分かりやすく、仮に平均客単価を置いてみます。
追加来店が約916回発生すると仮定した場合、
| 仮の平均客単価 | 約916回来店による売上規模 |
|---|---|
| 1,000円 | 約91.6万円 |
| 1,200円 | 約109.9万円 |
| 1,500円 | 約137.4万円 |
| 2,000円 | 約183.2万円 |
これはあくまで売上の規模感を見るためのシミュレーションです。
実際には複数人で来店するケースもありますし、来店回数と会計件数の定義によっても変わります。
逆に、再来店施策にはLINE配信費、クーポン原資、販促費なども発生します。
ですから、この金額がそのまま利益になるわけではありません。
それでも、
再来店率を数ポイント変えることが、年間売上に無視できない影響を与える可能性がある
ことは分かります。
たった5ポイント。でも「5%増」ではない
ここで注意したいのが、
29.4%→34.4%
という変化です。
これは5%増ではなく、5ポイント改善です。
相対的に見ると、
約17%の改善
になります。
だから、5ポイントという数字は見た目以上に大きい。
そして何より重要なのは、
改善効果が2回目だけで終わらない
ことです。
2回目が増える。
その中から3回目が増える。
3回目から4回目が増える。
そして5回以上の常連候補も増える。
最初の改善が、その後の顧客構造全体に波及していきます。
逆に、新規客だけで同じ効果を作ろうとするとどうなるか
ここで新規集客と比較してみます。
現在の2回目到達率29.4%が変わらないとします。
追加で463人の2回来店客を作るためには、単純計算なら、
463 ÷ 29.4% ≒ 1,575人
の新規顧客が必要になります。
つまり、
新規客を約1,575人増やして463人を2回目へ進める
方法と、
既存9,263人の2回目到達率を5ポイント改善して463人を増やす
方法がある。
もちろん実際には単純比較できません。
再来店率を5ポイント改善するためにもコストは必要だからです。
しかし、この比較をすると、
なぜ既存顧客への投資を考える必要があるのか
がよく分かります。
飲食店の成長は「新規客数」だけでは測れない
例えば来年、新規顧客数が今年と同じ9,263人だったとします。
数字だけを見ると、
「新規客が増えていない」
となります。
しかし、
2回目到達率が29.4%から34.4%になった。
3回来店客が増えた。
5回来店客が増えた。
10回来店客が増えた。
結果として年間延べ来店数が増えた。
それなら、店は明らかに強くなっています。
つまり飲食店の成長には、
顧客を増やす成長
と、
顧客が来店する回数を増やす成長
の二つがあります。
二年目に追うべきKPIが見えてきた
今回の分析から、二年目に追いかけたい数字も見えてきました。
| KPI | 現在 | 二年目に見る意味 |
|---|---|---|
| 新規顧客数 | 9,263人 | 顧客母数を増やせているか |
| 2回目到達率 | 29.4% | 最大の離脱ポイントを改善できたか |
| 3回目到達率 | 50.3% | 再来店客が定着しているか |
| 4回目到達率 | 57.8% | 習慣化が進んでいるか |
| 5回目到達率 | 63.4% | 常連候補へ育っているか |
| 5回以上顧客 | 503人 | 顧客資産が増えているか |
単純に、
「今年は何人来た」
だけを追うのではありません。
「その人たちが何回まで来てくれたのか」
を追う。
ここまで見て初めて、顧客構造の改善が数字になります。
数ポイントの改善を積み上げる
飲食店経営では、
「売上を20%上げよう」
「客数を1,000人増やそう」
と大きな目標を立てがちです。
しかし今回のシミュレーションを見ると、別の考え方もできます。
2回目到達率を5ポイント上げる。
たったそれだけでも、
約463人が追加で2回目へ。
約233人が3回目へ。
約135人が4回目へ。
約85人が5回目以上へ進む可能性があります。
その結果、5回目までだけでも約916回分の追加来店につながる計算です。
新規客を増やす。
客単価を上げる。
それだけが売上改善ではありません。
一度来てくれたお客様が、もう一回来る確率を少し上げる。
その数ポイントの改善が積み重なれば、年間の来店数も、売上も、そして店を支える常連客の数も大きく変わっていく。
今回の9,263人というデータから見えてきたのは、
「再来店率」は単なる顧客分析の数字ではなく、売上を動かす経営指標になり得る
ということです。
第12章 売上は「客数」ではなく顧客の積み上げでも作られる

飲食店の売上を考えるとき、最も基本的な公式があります。
売上=客数×客単価
これはもちろん正しい。
例えば、
100人来店して客単価1,500円なら売上15万円。
200人なら30万円。
だから飲食店では、
「どうやって客数を増やすか」
「どうやって客単価を上げるか」
を考えます。
しかし今回、9,263人の顧客データを分析していて、もう一つ重要な視点があることに気づきました。
店舗経営を長期で見るなら、
「その客数は、どのように作られているのか」
まで考える必要があります。
同じ「100人」でも中身が違う
例えば、今日100人のお客様が来店したとします。
売上管理上は、
客数100人
です。
しかし、その100人が、
全員初回来店なのか。
半分がリピーターなのか。
ほとんどが常連客なのか。
これによって経営の状態は大きく変わります。
| 1日の客数 | 新規客 | 既存客 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 100人 | 100人 | 0人 | 新規集客への依存が大きい |
| 100人 | 50人 | 50人 | 新規と既存が混在 |
| 100人 | 20人 | 80人 | 顧客基盤から客数が生まれている |
レジから見れば、全部同じ100人です。
しかし経営者から見れば、まったく違います。
毎月ゼロから3,000人を集める店
例えば月間客数3,000人の店があったとします。
極端な話ですが、その3,000人がほぼ毎月新しいお客様だったらどうでしょう。
翌月も3,000人を集める。
その翌月も3,000人。
さらに翌月も3,000人。
毎月、
「新しい3,000人をどこから連れてくるか」
を考え続けなければなりません。
広告を止めれば客数が落ちる。
認知が弱くなれば客数が落ちる。
競合が強くなれば客数が落ちる。
つまり、
売上を維持するために、常に新規顧客を補充し続ける構造
になります。
一方で、顧客が積み上がる店
もう一つの店も、月間客数3,000人だったとします。
しかしこちらは、
過去に来店したお客様が、
2回目。
3回目。
5回目。
10回目。
と繰り返し利用しています。
そこに新規客も加わる。
すると客数の作られ方が変わります。
既存顧客から生まれる客数
+
新規顧客から生まれる客数
によって月間3,000人が作られます。
この店は毎月3,000人をゼロから探す必要がありません。
過去に獲得した顧客が、翌月以降の客数を作ってくれるからです。
顧客は「消費される」のではなく「積み上がる」
ここが、今回の分析で非常に重要だと思っています。
新規客を1人獲得する。
その人が1回来店して終われば、その売上は基本的にはその1回です。
しかし、その人が、
2回来る。
3回来る。
5回来る。
10回来る。
となれば、一度獲得した顧客から複数回の売上が生まれます。
つまり、
顧客獲得は一回の売上を作るためだけのものではありません。
将来の来店を作る可能性を持っています。
売上を「顧客構造」から考えてみる
そこで、通常の
売上=客数×客単価
とは別に、経営を考えるための概念として、
新規顧客 × 再来店率 × 来店頻度 × 客単価
という視点を持ってみます。
厳密な売上計算式としてそのまま使うというより、
「売上を生み出している要因を分解する考え方」
です。
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| 新規顧客 | 顧客母数をどれだけ増やせるか |
| 再来店率 | 一度来た人がどれだけ残るか |
| 来店頻度 | 残った顧客がどれくらい利用するか |
| 客単価 | 1回来店あたりいくら使うか |
こう考えると、売上を伸ばす方法は「客数を増やす」だけではなくなります。
新規顧客を増やす。
再来店率を上げる。
来店頻度を上げる。
客単価を上げる。
複数のレバーが見えてきます。
9,263人は「今年の売上」だけを作ったわけではない
今回のデータでは、
9,263人が一度以上来店しています。
その中から、
2回以上 2,727人
3回以上 1,373人
4回以上 793人
5回以上 503人
さらに、
10回以上 128人
20回以上 26人
30回以上 7人
という顧客が生まれています。
この人たちは、一度来店して消えたわけではありません。
何度も利用することで、複数回の売上を作っています。
つまり9,263人という顧客母数から、
何度も客数が生まれている
ということです。
一人の常連客は、未来の「客数」を持っている
例えば、月2回来店する常連客が100人いたとします。
単純計算なら、
100人 × 月2回=月間200回来店
です。
年間なら、
2,400回来店。
新規客を毎回2,400人集めたわけではありません。
100人の顧客が繰り返し利用することで、年間2,400回の客数を作っています。
これが顧客が積み上がるということです。
だから、
「顧客数」と「客数」は似ているようで違います。
顧客数は人の数。
客数は利用された回数。
一人の顧客が何度も利用すれば、一人から何度も客数が生まれます。
同じ月商500万円でも強さは違う
例えば、どちらも月商500万円の飲食店があるとします。
| A店 | B店 | |
|---|---|---|
| 月商 | 500万円 | 500万円 |
| 新規依存 | 高い | 低い |
| リピーター | 少ない | 多い |
| 常連客 | 少ない | 多い |
| 広告停止の影響 | 大きい可能性 | 比較的小さい可能性 |
| 顧客基盤 | 薄い | 厚い |
| 翌月売上の見通し | 不安定になりやすい | 比較的立てやすい |
損益計算書だけを見れば、同じ500万円です。
しかし、
その500万円を誰が作っているのか
まで見ると、店の強さは違います。
毎月新しいお客様を大量に集めなければ500万円を維持できない店。
過去に獲得した顧客が繰り返し利用し、そこに新規客が加わって500万円になる店。
後者には、
過去の集客が未来の売上につながる構造
があります。
「新規客+既存客」で客数を作る
理想は、新規集客を止めて常連客だけで営業することではありません。
新規客は必要です。
引っ越す人もいる。
生活が変わる人もいる。
競合店へ行く人もいる。
来店頻度が下がる人もいる。
顧客は必ず一定数減っていきます。
だから、新規客を継続的に獲得しなければなりません。
重要なのは、
新規客だけで売上を作らないこと。
新規客を獲得する。
その一部が2回来る。
3回来る。
5回来る。
10回来る。
その間にも新しい顧客を獲得する。
すると、
新規顧客が既存顧客へ変わり、既存顧客の層が少しずつ厚くなっていく。
これが顧客の積み上げです。
一年目と二年目では、同じ売上でも意味が違う
開業一年目は、顧客がほぼゼロからスタートします。
だから新規集客への依存が大きくなるのは当然です。
しかし二年目には、
一年目に獲得した顧客が存在します。
三年目には、
一年目と二年目に獲得した顧客が存在する。
その中から一定数が継続して利用してくれれば、
年数を重ねるほど顧客基盤が厚くなっていく
という状態を作れます。
逆に、何年営業しても毎月ほとんど新規客だけで売上を作っているなら、顧客が積み上がっていません。
ここに、
「長く営業している店」と「長く営業するほど強くなる店」の違い
があるのではないでしょうか。
売上を見るだけでは、この違いは見えない
通常の売上管理では、
売上。
客数。
客単価。
原価率。
人件費率。
こうした数字を追います。
もちろん全部重要です。
しかし、そこにもう一つ、
顧客構造
という視点を加える。
何人の新規客を獲得したのか。
何%が2回目に進んだのか。
何人が3回以上になったのか。
5回以上の顧客は何人いるのか。
10回以上の顧客は増えているのか。
ここまで追えば、
売上の「質」
が見えてきます。
売上は「今日来た人数」だけで作られているわけではない
今日来店した100人。
その中には、
今日初めて店を知った人もいる。
半年前に初めて来た人もいる。
開業当初から何度も利用している人もいる。
つまり今日の売上には、
過去の集客活動の成果も含まれています。
昨日までに獲得した顧客が、今日もう一度来て売上を作る。
その積み重ねが店舗経営です。
だから、
売上=客数×客単価
という公式のさらに奥を見る。
経営を長期で考えるなら、
新規顧客を増やす。
再来店率を上げる。
来店頻度を高める。
そして客単価を作る。
この顧客構造まで見る必要があります。
毎月ゼロから客を集める店と、
毎月、過去の顧客が積み上がっていく店。
たとえ現在の月商が同じでも、経営の強さは同じではありません。
飲食店の売上は、
今日の客数だけではなく、これまで積み上げてきた顧客によっても作られている。
9,263人のデータを分析して、私はそこを改めて重要だと感じました。
第13章 枚方市約39万人に対して9,263人という数字

ここで、最初の疑問に一度戻ってみます。
がぶ飲み食堂を開業して約1年。
顧客データに登録された人数は、
9,263人。
枚方市の人口を約39万人として単純計算すると、
9,263人 ÷ 390,000人 ≒ 2.4%
です。
つまり、市人口全体と比較すれば、約1年間で接点を持った顧客は約2.4%。
この数字だけを見ると、
「まだ97%以上も来ていないのか」
と思ってしまいます。
しかし、ここには大きな問題があります。
そもそも、
枚方市39万人全員が、がぶ飲み食堂の市場なのか。
ということです。
当然、そんなことはありません。
行政区域と飲食店の商圏は違う
枚方市という区分は行政区域です。
しかし、お客様は市境を基準に飲食店を選んでいるわけではありません。
例えば市内でも、店まで車で30分かかる人がいる。
一方、市外でも10分で来られる人がいる。
この場合、どちらが現実的な顧客なのでしょうか。
当然、
市外でも10分で来られる人
のほうが商圏に入る可能性があります。
つまり、
「枚方市民かどうか」と「店の商圏にいるかどうか」は別問題
です。
郊外飲食店の商圏は「距離」だけでも決まらない
では、店舗から半径3kmなら商圏なのでしょうか。
これも、それほど単純ではありません。
郊外型の飲食店では、さまざまな条件によって実際の商圏が変わります。
| 商圏を左右する要素 | 影響 |
|---|---|
| 距離 | 店まで何kmあるか |
| 車での移動時間 | 実際に何分で到着できるか |
| 生活導線 | 通勤・買い物・送迎などの途中にあるか |
| 競合店 | 近隣に代替となる飲食店があるか |
| 駐車場 | 車で利用しやすいか |
| 道路 | 幹線道路・右左折・渋滞など |
| 住宅分布 | 周辺にどれだけ世帯が存在するか |
| 商業施設 | スーパーなど他の来店目的があるか |
例えば同じ3kmでも、
大きな道路で一直線に来られる3kmと、
細い道路や渋滞を通らなければならない3kmでは意味が違います。
距離だけなら近くても、普段の生活導線と反対方向なら来店頻度は下がるでしょう。
逆に5km離れていても、
通勤や買い物の途中に店があれば利用される可能性があります。
つまり郊外店では、
「半径○km」だけではなく、「生活の中でどれだけ店へアクセスしやすいか」
まで考える必要があります。
本当に知りたいのは「商圏の何%を取れているのか」
だから、
9,263人 ÷ 枚方市39万人=約2.4%
という数字は参考にはなりますが、店舗の集客力を評価する数字としては粗すぎます。
本当に知りたいのはこちらです。
実際の商圏人口に対して、何%のお客様を獲得できているのか。
例えば仮に、実質的な商圏人口が10万人だったとします。
そのうち9,263人が顧客なら、
顧客浸透率は約9.3%。
仮に商圏人口が5万人なら、
約18.5%。
母数の設定によって、9,263人という数字の意味は大きく変わります。
| 比較する人口 | 9,263人の割合 |
|---|---|
| 390,000人 | 約2.4% |
| 200,000人 | 約4.6% |
| 100,000人 | 約9.3% |
| 50,000人 | 約18.5% |
| 30,000人 | 約30.9% |
もちろん、この人口は説明のための仮定です。
重要なのは、
「9,263人が多いか少ないか」は、正しい市場規模を設定しなければ判断できない
ということです。
さらに「人口」だけでも足りない
そして、商圏人口が分かったとしても、まだ十分ではありません。
例えば商圏内に10万人住んでいたとしても、その10万人全員がターゲットではありません。
年齢。
世帯構成。
所得。
外食頻度。
子どもの有無。
車の保有。
昼間人口。
夜間人口。
こうした条件によって、実際に利用可能性のある人口はさらに変わります。
つまり市場は、
枚方市人口
↓
店舗商圏人口
↓
業態の対象人口
↓
実際に店を知っている人口
↓
来店経験者
と絞られていきます。
9,263人という数字を見るなら、本来はこの構造まで考える必要があります。
3km商圏と5km商圏で分けてみる
そこで次にやりたいのが、
3km・5km商圏分析
です。
例えば、
| 分析 | 見たい数字 |
|---|---|
| 3km圏人口 | 店舗近隣の基礎人口 |
| 5km圏人口 | 車利用を含めた広域商圏 |
| 世帯数 | ファミリー・単身など |
| 年齢構成 | メイン顧客層との一致 |
| 顧客住所分布 | 実際にどこから来ているか |
| 顧客浸透率 | 商圏人口の何%が利用したか |
| 来店回数 | 近距離ほどリピートするのか |
| 客単価 | 距離による利用方法の違い |
| 競合分布 | 商圏内で何店舗と競争しているか |
ここまで分析できれば、
単純な「9,263人」という数字が、もっと経営に使える数字になります。
距離別にリピート率を見ると、さらに面白い
特に調べてみたいのが、
顧客の距離と再来店率の関係
です。
例えば仮説として、
3km以内のお客様は2回目到達率が高い。
3〜5kmになると少し下がる。
5km以上になると初回来店はあるが再来店率が下がる。
という傾向が出る可能性があります。
逆に、5km以上離れていても何度も来店している顧客が多ければ、
「わざわざ来店するだけの商品力・業態力がある」
という別の評価もできます。
つまり、
距離 × 来店回数
を組み合わせることで、店の本当の商圏が見えてくる可能性があります。
商圏分析と顧客分析をつなげる
一般的な商圏分析では、
「半径3kmに何人住んでいる」
「5km圏に何世帯ある」
というところで終わりがちです。
しかし今回の顧客データと組み合わせれば、その先まで見られます。
例えば、
3km圏人口
↓
そのうち何人が来店したか
↓
そのうち何人が2回来たか
↓
何人が5回以上来たか
まで分析する。
すると、
商圏人口 → 顧客化 → リピーター化 → 常連化
という流れが見えてきます。
これはかなり面白い分析になると思います。
「人口39万人」は市場規模ではない
枚方市人口約39万人。
そこに対して顧客9,263人。
約2.4%。
最初にこの数字だけを見たとき、
「意外と少ないな」
と感じました。
しかし、今回分析を進めてみると、そもそも比較対象が粗すぎたことが分かります。
飲食店の市場は行政人口では決まりません。
距離。
車での移動時間。
生活導線。
競合店。
駐車場。
道路。
住宅分布。
こうした要素によって、
実際に店を利用する可能性のある商圏
が作られます。
だから次に見るべきなのは、
枚方市39万人に対して何%取ったかではありません。
実際の商圏人口に対して、何%の顧客を獲得できたのか。
つまり、
「顧客浸透率」
です。
今回の9,263人という顧客分析は、ここからさらに、
3km商圏・5km商圏の人口分析
へつなげることができます。
そして、
どこから来ているのか。
どの距離のお客様が再来店するのか。
どのエリアにまだ顧客獲得余地があるのか。
ここまで分かれば、広告を「なんとなく枚方市に出す」のではなく、
どのエリアに、何の目的で広告費を投下するのか
まで変えられる。
顧客数を見るだけでは分からなかったものが、
顧客データと商圏データを重ねることで、経営戦略に変わっていきます。
第14章 1年間経営して分かった「顧客を増やす」の意味

開業前に「集客」と聞くと、私はもっと単純に考えていました。
たくさんのお客様に来てもらう。
Instagramで知ってもらう。
Googleで見つけてもらう。
口コミを増やす。
広告を出す。
そして来店客数を増やす。
もちろん、今でもそれは重要だと思っています。
しかし、実際に約1年間店を経営し、9,263人の顧客データを見てみると、
「顧客を増やす」という言葉の意味は、それだけではなかった
と感じます。
「来てもらう」だけなら9,263人
この約1年間で、一度以上利用してくれたお客様は9,263人。
これは店にとって非常に大切な数字です。
しかし、その中身を分解すると、
| 来店段階 | 顧客数 |
|---|---|
| 1回以上 | 9,263人 |
| 2回以上 | 2,727人 |
| 3回以上 | 1,373人 |
| 4回以上 | 793人 |
| 5回以上 | 503人 |
| 10回以上 | 128人 |
| 20回以上 | 26人 |
| 30回以上 | 7人 |
同じ「顧客」でも、店との関係はまったく違います。
一度だけ利用した人。
もう一度利用した人。
何度も利用している人。
生活の中に店が入っている人。
9,263人という一つの数字の中に、これだけ違う顧客が存在しています。
開業前は「1回来てもらうこと」がゴールだった
店を開業する前は、とにかくお客様が来てくれるかが不安です。
店を作る。
メニューを作る。
看板を出す。
広告を出す。
そして、
「お客様が来てくれた」
それだけで嬉しい。
当然です。
誰にも知られていない店からスタートするわけですから、最初の課題は認知と初回来店です。
しかし、経営を続けていると分かります。
初回来店はゴールではありません。
むしろ、顧客との関係のスタート地点です。
一回来てもらっただけでは「選択肢」には入っていない
今回のデータでは、
1回→2回以上の到達率は29.4%。
一方、
2回→3回以上は50.3%。
3回→4回以上は57.8%。
4回→5回以上は63.4%。
でした。
| 顧客の変化 | 次へ進んだ割合 |
|---|---|
| 1回→2回以上 | 29.4% |
| 2回→3回以上 | 50.3% |
| 3回→4回以上 | 57.8% |
| 4回→5回以上 | 63.4% |
この数字を見ると、
一度来てもらうことと、その人の選択肢に店が入ることは別なのではないか
と思います。
1回目は、たまたまかもしれない。
広告を見ただけかもしれない。
誰かに連れてこられただけかもしれない。
しかし2回、3回と来店する。
ここから少しずつ意味が変わってきます。
「もう一度来てもらう」
だから最初の目標は、
来てもらう。
そして次は、
もう一度来てもらう。
この2回目が非常に重要です。
一度店を経験したうえで、もう一度選んでもらう。
料理。
価格。
接客。
雰囲気。
利便性。
立地。
駐車場。
営業時間。
何かしらの理由で、
「また行こう」
と思ってもらえたということです。
今回のデータでは、この壁を越えた顧客から次回来店率が大きく上昇しました。
だから二年目は、
「何人来たか」だけではなく、「何人がもう一度来たか」
をもっと重要な数字として見ていきたいと思っています。
そして「思い出してもらう」
しかし、2回来てもらえば終わりでもありません。
飲食店は、お客様の頭の中で大量の競合と戦っています。
今日はラーメン。
今日は焼肉。
今日は家で食べる。
コンビニでいい。
スーパーで買って帰る。
別の店に行こう。
そもそも外食しない。
だから重要なのは、
「外食しよう」と思った瞬間に店を思い出してもらえるか
です。
ここには料理だけではなく、
LINE。
SNS。
Google。
季節商品。
限定メニュー。
店頭での体験。
スタッフとの関係。
さまざまな接点が関係してきます。
店を忘れられないこと。
これも顧客づくりの一部です。
最終的には「選択肢の一つ」になる
私は、ここが常連化の本質なのではないかと思っています。
毎回、
「どこに行こうかな」
とゼロから探される店ではなく、
最初から頭の中に候補として入っている店になる。
「定食なら、あそこ。」
「家族で行くなら、あそこ。」
「今日はあれを食べたいから、あそこ。」
「迷ったから、とりあえずあそこ。」
こうなれば、店はお客様の生活の中に少し入り込んでいます。
常連とは、毎週来る人だけを指すのではない。
私は、
お客様の選択肢の中に店が定着した状態
と考えたほうが、経営としては分かりやすいと思います。
「顧客数」と「来店客数」は同じではなかった
約1年間経営してみて、この違いもよく分かりました。
来店客数を増やすこと。
そして、
顧客を増やすこと。
似ていますが、少し違います。
来店客数は、その日の売上を作ります。
しかし、一度来た人が2回、3回、5回と利用するようになれば、その人は未来の売上にも関係してきます。
つまり、
来店は点。
それが繰り返されると、
顧客との関係が線になる。
私は今回のデータを見て、そんなふうに感じました。
本当に増やしたいのは「人数」だけではない
9,263人を、
来年15,000人にする。
20,000人にする。
もちろん、それも目標になります。
しかし、それだけではありません。
2回以上の2,727人を増やす。
3回以上の1,373人を増やす。
5回以上の503人を増やす。
10回以上の128人を増やす。
つまり、
顧客数を横に広げながら、顧客との関係を縦にも深くしていく。
これが本当の意味での顧客づくりなのではないでしょうか。
「集客」から「顧客づくり」へ
開業前は、
どうやって人を集めるか。
を考えていました。
一年経った今は、
少し違います。
来てもらう。
↓
もう一度来てもらう。
↓
何度か利用してもらう。
↓
生活の中で店を思い出してもらう。
↓
店を選択肢の一つにしてもらう。
ここまで進んで、初めて本当の意味で、
「顧客が作られた」
と言えるのかもしれません。
新規客を集めることは、これからも必要です。
しかし、飲食店経営は人を集め続けるゲームだけではありません。
一度来てくれた人との関係を、少しずつ積み上げていくゲームでもある。
開業から約1年。
9,263人という数字を分解してみて、私が一番大きく感じたのはそこでした。
第15章 RBRとしての最終見解|繁盛店は「客を集める店」ではない

開業から約1年。
顧客データに登録された人数は、
9,263人。
この数字だけを見れば、
「1年で9,263人も来た」
とも言えます。
反対に、枚方市の人口約39万人と比較すれば、
「まだ約2.4%しか接点を作れていない」
とも言えます。
だから最初は、私自身もこの9,263人という数字をどう評価すればいいのか分かりませんでした。
しかし今回、来店回数ごとに顧客を分解してみると、まったく違う景色が見えてきました。
9,263人の中身は、すべて同じではなかった
今回のデータをもう一度整理します。
| 顧客の状態 | 人数 | 全顧客に占める割合 |
|---|---|---|
| 1回来店 | 6,536人 | 70.6% |
| 2回以上 | 2,727人 | 29.4% |
| 3回以上 | 1,373人 | 14.8% |
| 4回以上 | 793人 | 8.6% |
| 5回以上 | 503人 | 5.4% |
| 10回以上 | 128人 | 約1.4% |
| 20回以上 | 26人 | 約0.28% |
| 30回以上 | 7人 | 約0.08% |
9,263人のうち、6,536人は現時点で一回来店。
しかし一方で、
2,727人はもう一度店を選んでくれた。
1,373人は3回以上。
793人は4回以上。
503人は5回以上。
そして128人は、すでに10回以上利用しています。
この数字を見ていると、
一年目に作ったものは売上だけではなかった
ことに気づきます。
一年間営業する中で、少しずつ、
「また来てくれる人の土台」
も作っていたのです。
一番重要だった数字は「9,263人」ではなかった
今回の分析で、私が最も重要だと思った数字があります。
それは、
29.4%。
1回来店したお客様が、2回以上来店した割合です。
そして、その先を見ると、
| 来店ステップ | 次の段階への到達率 |
|---|---|
| 1回→2回以上 | 29.4% |
| 2回→3回以上 | 50.3% |
| 3回→4回以上 | 57.8% |
| 4回→5回以上 | 63.4% |
ここには、かなりはっきりした傾向がありました。
来店回数が増えるほど、次の来店へ進む割合が高くなっている。
特に大きく変わるのが、
1回目から2回目を越えたところです。
29.4%だった数字が、その次では50.3%になる。
だから二年目に改善すべき場所も見えてきました。
二年目の最大のテーマは「二回来てもらう」
もちろん、これからも新規集客は続けます。
まだ店を知らない人に知ってもらう。
新しいお客様に来てもらう。
顧客母数を増やす。
これは絶対に必要です。
しかし、それだけではありません。
二年目は、
一回来てくれたお客様に、二回来てもらう。
ここをもっと考えたいと思っています。
現在、1回来店で止まっているお客様は6,536人います。
全員が再来店可能な顧客ではありません。
遠方客もいる。
生活圏が違う人もいる。
来店したばかりの人もいる。
それでも、この6,536人の中には、
「もう一度来る可能性のある人」
が相当数存在するはずです。
ならば、
新しい人を探すことと同じくらい、
一度来てくれた人に、もう一度選ばれる理由を作る。
ここに経営資源を使ってもいい。
5ポイント改善するだけでも、顧客構造は変わる
前章でシミュレーションしたように、
1回→2回の到達率を、
29.4%から34.4%へ。
わずか5ポイント改善したと仮定すると、
約463人が追加で2回目へ進みます。
さらに現在と同じ継続構造なら、
その中から約233人が3回以上へ。
約135人が4回以上へ。
約85人が5回以上へ進む計算になります。
つまり、
「2回目」を少し改善するだけで、その先の常連候補まで増える可能性がある。
ここが今回の分析で、私が最も面白いと思ったところです。
繁盛店とは「新規客が多い店」なのか
繁盛店というと、
行列ができている。
満席になっている。
SNSで話題になっている。
毎日たくさんの新規客が来る。
そんな店を想像します。
もちろん、それも繁盛店でしょう。
しかし、私は今回のデータを見て、もう一つの繁盛店の姿があると思いました。
それは、
何度も選ばれている店です。
今日初めて100人が来た店。
過去に利用した100人が、今日もう一度来た店。
同じ100人でも、経営上の意味は違います。
本当に強い店は、お客様の生活の中に入っている
飲食店は、お客様に毎日考えてもらえる商売ではありません。
普段、お客様は私たちの店のことなんて考えていません。
仕事をしている。
家事をしている。
買い物をしている。
子どもの送り迎えをしている。
その生活の中で、
「今日、何食べよう?」
となった瞬間に、
店を思い出してもらえるか。
ここが重要です。
「今日はあそこにしよう。」
「家族で行くならあそこ。」
「定食食べたいからあそこ。」
「迷ったから、とりあえずあそこ。」
そうやって、お客様の生活の中に自然に店が登場する。
私は、それが常連化の本質だと思っています。
繁盛店は「客を集め続ける店」だけではない
広告を出す。
新規客を集める。
売上を作る。
また広告を出す。
また新規客を集める。
もちろん、それでも商売は成立します。
しかし毎月ゼロからお客様を集め続けなければ売上が維持できないなら、集客を止めることができません。
一方、
一度来た人が二度来る。
二度来た人が三度来る。
三度来た人が五度来る。
そして、その間にも新しいお客様が入ってくる。
この状態になれば、
過去の集客が未来の売上につながっていきます。
新規客を増やしながら、既存客も積み上がっていく。
私は、こちらのほうが長期的には強い店だと思います。
RBRが自店舗の数字を公開する理由
今回、あえて自店舗の顧客データを使ってこの記事を書きました。
9,263人。
6,536人。
2,727人。
503人。
128人。
良い数字なのか。
悪い数字なのか。
正直、まだ分からない部分もあります。
他店との比較データもありませんし、業態や立地によって適正な再来店率も違うでしょう。
だから、
「この数字が飲食店の正解です」
と言うつもりはありません。
RBRがやりたいのは、そういうことではありません。
自分たちで店を経営する。
実際に広告を出す。
商品を作る。
失敗する。
改善する。
そして、そこで生まれた数字を分析する。
自分たちの店そのものを教材にして、飲食店経営を考える。
それがRBRのスタンスです。
机上で、
「リピーターが大切です」
と言うだけなら簡単です。
しかし実際に店を経営すると、
9,263人集めても、6,536人は現時点で1回来店にとどまっている。
その現実があります。
だったら、その数字から逃げずに、
「なぜなのか」
を考える。
そして次の一年で改善する。
それこそが店舗を持っているRBRだからできる発信だと思っています。
一年目は「店を知ってもらう一年」だった
振り返れば、一年目は、
店を知ってもらう一年
だったのかもしれません。
そして二年目は、
店を生活の選択肢に入れてもらう一年。
新規客を増やす。
2回目を増やす。
3回目を増やす。
5回以上を増やす。
10回以上を増やす。
その結果として、
顧客基盤そのものを厚くしていく。
これを二年目の経営テーマの一つにしたいと思います。
RBRとしての最終見解
繁盛店とは、
毎日たくさんの新規客が来る店だけではありません。
一度来た人が、
二度来る。
三度来る。
五度来る。
そしていつの間にか、
「今日はあそこに行こう」
と、お客様の生活の中で自然に選ばれる店。
そんな店もまた、非常に強い繁盛店だと思います。
開業約1年。
顧客数9,263人。
その数字を分解してみて見えてきたのは、
単純な「集客」の話ではありませんでした。
認知してもらう。
来店してもらう。
もう一度来てもらう。
何度も利用してもらう。
そして、お客様の選択肢の中に店が残る。
この流れを作ること。
つまり、
集客の先にある「顧客化」こそ、飲食店経営の本当の勝負なのではないか。
今回の9,263人という数字から、RBRはそう考えています。
そして二年目。
この仮説が本当に正しいのか。
自分たちの店で、また数字を使って検証していきます。
この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。