
- 0-1. 第1章 常連客がいるのに、なぜ売上が上がらないのか
- 0-2. 「常連がいる」という感覚を、いったん数字に置き換える
- 0-3. 第2章 まず売上を「客数×客単価」に戻して考える
- 0-4. 「常連客が多い」は売上の計算式には入っていない
- 0-5. 第3章 「延べ客数」と「実顧客数」は違う
- 0-6. 「何回来たか」と「何人いるか」を分けて見る
- 0-7. 第4章 リピーター率が高い店ほど安心できるとは限らない
- 0-8. 経営では「率」と「人数」をセットで見る
- 0-9. 第5章 新規客には「常連客の自然減」を補う役割がある
- 0-10. 新規集客は「顧客の補充」でもある
- 0-11. 第6章 問題は「新規客が来ない」のか「2回目がない」のか
- 0-12. ケース1 新規客そのものが少ない
- 0-13. ケース2 新規客は来ているが、2回目がない
- 0-14. 同じ「客数1,000人」でも問題は違う
- 0-15. 問題が起きている場所に施策を打つ
- 0-16. 第7章 常連客中心の店ほど「初回来店客の目線」を失いやすい
- 0-17. 目指したいのは「初めて来ても居場所がある店」
- 0-18. 第8章 新規客を集めるだけでは売上は積み上がらない
- 0-19. 集客には「その月の売上」と「未来の売上」がある
- 0-20. 第9章 顧客を「新規→2回目→3回目→常連」で見る
- 0-21. 新規客が少ないなら、入口に問題がある
- 0-22. 新規は多いのに2回目が少ないなら、初回来店を見る
- 0-23. 2回目はあるのに3回目が少ない店
- 0-24. 店ごとに「詰まっている場所」は違う
- 0-25. 「売上が悪い」を顧客の流れに置き換える
- 0-26. 第10章 そして最後に「客単価」を掛け合わせる
- 0-27. 客単価は「値上げ」だけで作る数字ではない
- 0-28. 売上を3つの数字に分解する
- 0-29. 売上成長は「客を増やす」だけでは完成しない
- 0-30. 第11章 常連客が多いのに売上が伸びない店は、この順番で数字を見る
- 0-31. 9つの数字を一枚に並べる
- 0-32. 前月比較だけで判断しない
- 0-33. 数字は「悪いところを探すため」に見る
- 1. 最終章 強い店は「常連がいる店」ではなく、顧客基盤が大きくなる店
第1章 常連客がいるのに、なぜ売上が上がらないのか

「うちは常連さんが多いですよ」
飲食店の経営者と話していると、よく聞く言葉です。
実際に店へ行ってみると、確かに常連客がいる。
スタッフと親しそうに話しているお客様がいて、入店した瞬間に「いつものですね」と注文が通るお客様もいる。
週末になればそれなりに席も埋まっている。
決して、誰も来ない暇な店には見えません。
ところが売上を見せてもらうと、不思議なことがあります。
3年前も月商300万円。
去年も300万円前後。
今年もやっぱり300万円前後。
常連客はいる。
店も営業を続けている。
それなのに、売上はほとんど成長していない。
これは小さな飲食店では珍しい話ではありません。
「常連が多い店」と「売上が伸びている店」は同じではない
店を毎日見ている経営者ほど、
「知っている顔が多い=お客様が定着している」
と感じやすくなります。
もちろん、何度も来店してくれるお客様がいること自体は非常に大切です。
新規客ばかりで誰も再来店しない店より、はるかに健全です。
ただし、ここで一つ分けて考える必要があります。
常連客が存在していることと、店の売上が成長していることは別の話です。
例えば、こんな店があったとします。
| 項目 | 3年前 | 現在 |
|---|---|---|
| 月商 | 300万円 | 305万円 |
| 店でよく見る常連客 | 多い | 多い |
| 週末の店内 | それなりに埋まる | それなりに埋まる |
| 経営者の感覚 | 常連が多い | 常連が多い |
店内だけを見ていれば、大きな問題はないように感じます。
しかし数字を見ると、3年間ほとんど成長していません。
物価も上がっています。
食材価格も上がっています。
人件費も上がっています。
水道光熱費も上がっています。
その環境で売上がほぼ同じなら、経営としては「現状維持」とすら言えない可能性があります。
忙しいのに、売上が増えない
さらに厄介なのが、
「店が暇に見えない」
ということです。
昼になれば常連客が来る。
夜になればいつものお客様が飲みに来る。
金曜や土曜には席も埋まる。
経営者自身も毎日忙しく働いています。
だから、
うちはそれなりにお客様が付いている。
という感覚になります。
ところが月末に数字を締めると、
「あれ? 今月もこのくらいか」
となる。
翌月も同じ。
半年後も同じ。
気付けば数年間、月商がほとんど変わっていない。
これが「常連客がいるのに売上が伸びない店」で起きている現象です。
常連客は「人数」だけ見ても分からない
ここで重要なのは、常連客という言葉を感覚だけで捉えないことです。
例えば、
- 毎週来てくれるお客様
- 月に一回来てくれるお客様
- 以前は毎週来ていたが、今は3か月に一度のお客様
- 何年も通ってくれているお客様
- 最近2回目の来店をしたお客様
店側から見れば、どのお客様も「常連さん」と呼ぶかもしれません。
しかし、売上という視点から見れば、それぞれの意味は大きく違います。
さらに、毎月10人の新しい常連客が増えていたとしても、同じ月に10人の常連客が来なくなっていれば、店全体の客数は増えません。
店内には相変わらず常連客がいるので、その変化にも気付きにくい。
つまり、
「常連客がいる」という事実だけでは、店が成長しているかどうかは判断できないのです。
売上が横ばいなら、店の中で何かが相殺されている
ここで一度、数字だけを見てみましょう。
3年前の月商が300万円。
現在の月商も300万円。
この数字から確実に言えることがあります。
店の中で起きているプラスとマイナスが、最終的にほぼ相殺されている。
新しいお客様も来ているでしょう。
常連になったお客様もいるでしょう。
客単価が上がった商品もあるかもしれません。
一方で、来なくなったお客様もいる。
来店頻度が落ちたお客様もいる。
売れなくなった時間帯もある。
そのすべてが混ざった結果として、
月商300万円という数字だけが残っています。
だから売上が伸びない店を考えるとき、
「もっと常連客を増やそう」
という一言だけでは、実態を捉えることができません。
まず見るべきなのは、
店の中で、お客様がどう増え、どう残り、どう減っているのか。
その流れです。
「常連がいる」という感覚を、いったん数字に置き換える
飲食店経営では、店内を見ているだけでは分からないことがあります。
顔を覚えているお客様の数。
スタッフと仲の良いお客様の数。
「また来るね」と言ってくれるお客様の数。
これらは店の大切な財産です。
しかし経営を見るなら、それとは別に、
実際に売上がどう作られているのかを数字で確認する必要があります。
常連客がいるのに売上が伸びない。
一見すると矛盾しているように見えるこの現象も、数字に置き換えれば必ず構造があります。
この記事では、その構造を一つずつ分解していきます。
第2章 まず売上を「客数×客単価」に戻して考える

「常連客は多いのに、なぜ売上が伸びないのか」
この問題を考えるとき、いきなり常連客の分析から始める必要はありません。
まず、もっと単純なところまで戻します。
飲食店の売上は、基本的にこの2つで決まります。
売上 = 客数 × 客単価
当たり前の計算式です。
しかし、売上が伸び悩んでいる店ほど、この当たり前の式に戻って考えることが重要です。
月商300万円は、どうやって作られているのか
例えば、月商300万円の店があったとします。
同じ300万円でも、その中身はいくつも考えられます。
| 月間客数 | 客単価 | 月商 |
|---|---|---|
| 3,000人 | 1,000円 | 300万円 |
| 2,500人 | 1,200円 | 300万円 |
| 2,000人 | 1,500円 | 300万円 |
| 1,500人 | 2,000円 | 300万円 |
| 1,000人 | 3,000円 | 300万円 |
すべて同じ月商300万円です。
しかし、経営の中身はまったく違います。
3,000人のお客様を集めて300万円を作っている店と、1,000人のお客様で300万円を作っている店では、必要な席数も回転数も人員も商品構成も変わります。
だから月商だけを見て、
「今月も300万円だった」
と確認していても、店で何が起きているのかまでは分かりません。
売上が伸びない原因は、まず3つに分けられる
売上を「客数×客単価」に戻すと、売上が伸びない状態は大きく3つに分けられます。
| 状態 | 客数 | 客単価 | 結果 |
|---|---|---|---|
| A | 増えていない | 上がっている | 売上の伸びが限定的 |
| B | 増えている | 上がっていない | 客数頼みの成長 |
| C | 増えていない | 上がっていない | 売上が横ばいになりやすい |
ここを分けずに、
「最近売上が弱い」
「もっと集客しないといけない」
「常連客を増やしたい」
と考えてしまうと、改善策がぼやけます。
客数に問題がある店と、客単価に問題がある店では、打つべき施策が違うからです。
客数が増えていない店
例えば、3年前と現在を比較してみます。
| 3年前 | 現在 | |
|---|---|---|
| 月間客数 | 2,500人 | 2,500人 |
| 客単価 | 1,200円 | 1,200円 |
| 月商 | 300万円 | 300万円 |
この店は非常に分かりやすい。
客数も客単価も変わっていません。
当然、売上も変わりません。
ところが実際の店舗では、この状態でも「常連客が増えた」と感じることがあります。
開業当初より顔見知りのお客様が増えている。
スタッフがお客様の名前を覚えるようになった。
いつもの注文をする人も増えた。
それでも月間客数が2,500人のままなら、売上を作る人数そのものは増えていません。
店側が感じている「常連客が増えた」という感覚と、客数の成長は必ずしも一致しないわけです。
客単価が上がっていない店
もう一つ確認したいのが客単価です。
例えば客数が多少増えていても、客単価が下がれば売上は伸びません。
| 以前 | 現在 | |
|---|---|---|
| 月間客数 | 2,500人 | 2,700人 |
| 客単価 | 1,200円 | 1,110円 |
| 月商 | 300万円 | 約300万円 |
お客様は200人増えています。
現場は以前より忙しくなっているかもしれません。
それでも月商はほぼ同じです。
客単価が下がったことで、客数の増加が打ち消されているからです。
こうなると、
「最近忙しいのに、なぜ売上が増えないんだろう」
という現象が起こります。
忙しさと売上は必ずしも比例しません。
逆の現象も起こる
反対に、客単価を上げたことで客数減少を補っている店もあります。
| 以前 | 現在 | |
|---|---|---|
| 月間客数 | 2,500人 | 2,000人 |
| 客単価 | 1,200円 | 1,500円 |
| 月商 | 300万円 | 300万円 |
月商だけを見ると何も変わっていません。
しかし実際には、
500人のお客様が減っています。
値上げや商品構成の変更によって客単価が上がり、その減少が数字の上では見えなくなっているだけです。
この状態を「売上が維持できているから問題ない」と判断してしまうと、客数の変化を見落とします。
同じ月商300万円でも、
何人のお客様が、いくら使って300万円になったのか。
ここまで見て初めて、売上の状態が分かります。
「常連客が多い」は売上の計算式には入っていない
ここが今回の記事で重要なポイントです。
売上の計算式は、
客数 × 客単価
です。
そこに、
「常連客が多い」
という項目はありません。
常連客というのは、売上を構成する客数の中身です。
例えば月間2,500人のお客様が来ている店なら、その2,500人の中に、
新規のお客様もいれば、2回目のお客様もいる。
毎月来るお客様もいれば、年に数回来るお客様もいる。
そして、しばらく来ていないお客様も存在します。
つまり「常連客が多いのに売上が伸びない」という問題を正確に見るには、客数を一つの数字として眺めるだけでは足りません。
月間2,500人という数字が、どんなお客様によって作られているのか。
そこまで分解する必要があります。
売上を「客数×客単価」に戻すことで、売上停滞の問題をまず客数と客単価に切り分ける。
そして常連客について考えるなら、次に見るべきなのは客数の構造です。
第3章 「延べ客数」と「実顧客数」は違う

飲食店の客数を見るとき、意外と見落とされやすい数字があります。
それが、
「何回来店されたか」と「何人のお客様が来店したか」の違いです。
例えば、POSレジを見て、
「今月は1,000人来店した」
と考えていたとします。
しかし、この1,000という数字。
本当に1,000人のお客様が店を利用したのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
月間1,000回来店でも、中身はまったく違う
極端な例で考えてみましょう。
ある店では、250人のお客様が月に4回来店しました。
すると、
250人 × 4回 = 1,000回来店
です。
別の店では、
- 800人が月1回来店
- 100人が月2回来店
だったとします。
こちらも、
800回 + 200回 = 1,000回来店
です。
比較するとこうなります。
| 店A | 店B | |
|---|---|---|
| 延べ来店数 | 1,000回 | 1,000回 |
| 実際に利用した人数 | 250人 | 900人 |
| 1人あたり平均来店回数 | 4.0回 | 約1.1回 |
売上上の客数だけを見れば、どちらも1,000です。
しかし、その1,000を作っている顧客の母数は、
250人と900人。
3倍以上違います。
これが、常連客の多い店を見るときに注意したい数字の錯覚です。
POS上の「客数」は、顧客の人数とは限らない
飲食店で一般的に使われている「客数」は、多くの場合、延べ客数です。
同じお客様が月曜日に来店して、金曜日にも来店すれば、
客数2
として計上されます。
もちろん売上管理としては、それで問題ありません。
1回来店すれば1回分の売上が発生するため、日商や月商を分析するうえでは延べ客数が必要だからです。
ただし、
「うちにはどれくらいのお客様が付いているのか」
を知りたい場合は、話が変わります。
知りたいのは来店回数ではなく、
その来店を作っている人の数だからです。
ここを同じ「客数」という言葉で扱ってしまうと、店の顧客基盤を実際より大きく見てしまうことがあります。
常連客が多い店ほど、この錯覚が起こりやすい
例えば毎日のように顔を見るお客様が10人いたとします。
月20日営業なら、その10人だけで最大200回来店を作れます。
一方、月に1回だけ来るお客様200人がいても、同じ200回来店です。
店内で感じる印象はかなり違います。
毎日のように同じお客様が来る店では、
「今日も常連さんが来ている」
「うちは固定客が多い」
「お客様がしっかり付いている」
という感覚になりやすい。
それ自体は間違いではありません。
ただし、その常連客が高頻度で来店することで延べ客数を大きく作っている場合、店を利用している実顧客数は思っているほど多くない可能性があります。
例えば月商300万円でも、顧客基盤は違う
客単価を3,000円として考えてみましょう。
月間1,000回来店なら、
3,000円 × 1,000回 = 月商300万円
です。
ここまでは同じです。
しかし、顧客構造を分けると見え方が変わります。
| 店A | 店B | |
|---|---|---|
| 月商 | 300万円 | 300万円 |
| 客単価 | 3,000円 | 3,000円 |
| 延べ来店数 | 1,000回 | 1,000回 |
| 実顧客数 | 250人 | 900人 |
| 平均来店頻度 | 月4回 | 月約1.1回 |
店Aは、比較的少ない人数の高頻度来店によって300万円を作っています。
店Bは、より多くの人に利用されることで300万円を作っています。
同じ売上、同じ客単価、同じ延べ客数でも、顧客基盤はまったく違う。
ここまで数字を分けると、「常連客が多い」という言葉だけでは店の状態を判断できない理由が見えてきます。
高頻度の常連客は、もちろん店の財産
ここで誤解してはいけないのは、来店頻度の高い常連客に問題があるわけではないということです。
月4回来てくれるお客様は、飲食店にとって非常にありがたい存在です。
月1回のお客様が客単価3,000円なら、年間売上は36,000円。
月4回のお客様なら、
3,000円 × 4回 × 12か月 = 年間144,000円
になります。
1人のお客様が作ってくれる売上としては4倍です。
だから、再来店してもらうことも、来店頻度を高めることも重要です。
問題になるのは、
高頻度の常連客が作っている延べ客数を、そのまま「顧客の多さ」と捉えてしまうことです。
「何回来たか」と「何人いるか」を分けて見る
ここから飲食店の客数を見るときは、少なくとも2つに分けて考える必要があります。
延べ客数
→ 店に何回来店されたのか。
実顧客数
→ 何人のお客様が店を利用したのか。
例えば、
実顧客数250人 × 平均来店頻度4回 = 延べ客数1,000回
という形です。
このように分解すれば、
「客数1,000人だった」
という一つの数字から、
誰が、どれくらいの頻度で、その1,000回を作っているのか
まで見えるようになります。
常連客が多い店を分析するとき、まず必要なのはこの区別です。
「何回来たか」と「何人いるか」は、同じ数字ではありません。
この2つを分けて見ることで、初めてその店が持っている顧客基盤の大きさを正しく捉えられるようになります。
第4章 リピーター率が高い店ほど安心できるとは限らない

飲食店の顧客分析で、よく使われる数字の一つがリピーター率です。
「リピーター率が上がりました」
こう聞くと、多くの経営者は良い結果だと感じるでしょう。
実際、再来店してくれるお客様が増えてリピーター率が上がったのであれば、店にとってプラスです。
しかし、ここには注意点があります。
リピーター率は、リピーターが増えなくても上がることがあるからです。
リピーター率30%と60%。どちらの店が良いのか
例えば、A店とB店があったとします。
A店の月間客数は1,000人。
その内訳は、
- 新規客700人
- リピーター300人
です。
リピーター率は30%になります。
一方、B店は、
- 新規客200人
- リピーター300人
月間客数は500人。
リピーター率は60%です。
表にするとこうなります。
| A店 | B店 | |
|---|---|---|
| 新規客 | 700人 | 200人 |
| リピーター | 300人 | 300人 |
| 合計 | 1,000人 | 500人 |
| リピーター率 | 30% | 60% |
リピーター率だけを比較すると、
A店30%、B店60%。
B店の方が圧倒的に優秀に見えます。
ところが人数を見ると、両店ともリピーターは300人です。
違うのは新規客。
A店には700人来ているのに対して、B店には200人しか来ていません。
つまりB店のリピーター率が高いのは、
リピーターが多いからではなく、新規客が少ないからです。
「率」は分母が変われば動く
リピーター率は、リピーターだけで決まる数字ではありません。
全体の客数に対して、リピーターがどれくらいの割合を占めているかを表した数字です。
だから分母となる全体客数が変われば、リピーター数が同じでも率は変化します。
例えば、ある店のリピーター数が毎月300人だったとします。
| 月 | 新規客 | リピーター | 総客数 | リピーター率 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 700人 | 300人 | 1,000人 | 30% |
| 2月 | 500人 | 300人 | 800人 | 37.5% |
| 3月 | 300人 | 300人 | 600人 | 50% |
| 4月 | 200人 | 300人 | 500人 | 60% |
リピーターは毎月300人。
1人も増えていません。
それでもリピーター率は、
30% → 37.5% → 50% → 60%
と上昇していきます。
この数字だけを見れば、
「どんどんリピーターが増えている」
「常連客中心の強い店になってきた」
と判断してしまうかもしれません。
実際に起きているのは、新規客が700人から200人まで減少したことです。
同じ「リピーター率上昇」でも意味は正反対
ここが、率を見るときに最も注意したいところです。
例えばリピーター率が30%から40%へ上昇したとしても、その理由はいくつも考えられます。
ケース1 リピーターが増えた
| 以前 | 現在 | |
|---|---|---|
| 新規客 | 700人 | 720人 |
| リピーター | 300人 | 480人 |
| 総客数 | 1,000人 | 1,200人 |
| リピーター率 | 30% | 40% |
新規客も維持しながら、リピーターが300人から480人へ増えています。
総客数も1,000人から1,200人へ増加。
これは店の顧客基盤が拡大した結果として、リピーター率が上昇しているケースです。
一方で、こんな上がり方もあります。
ケース2 新規客が減った
| 以前 | 現在 | |
|---|---|---|
| 新規客 | 700人 | 450人 |
| リピーター | 300人 | 300人 |
| 総客数 | 1,000人 | 750人 |
| リピーター率 | 30% | 40% |
こちらもリピーター率は30%から40%へ上昇しています。
しかしリピーターは増えていません。
新規客が700人から450人へ減少したことで、結果としてリピーターの割合が高くなっただけです。
同じ「30%→40%」でも、店で起きていることは正反対です。
「常連中心の店になってきた」は、本当に良いことなのか
長く営業している店では、
「最近は常連さん中心になってきた」
という話を聞くことがあります。
これも数字を確認する必要があります。
本当に常連客が増えた結果なのか。
それとも、新しいお客様が入ってこなくなった結果なのか。
店内から見える景色は、どちらもよく似ています。
知っている顔が増える。
スタッフと話すお客様が多くなる。
初めて見るお客様が少なくなる。
そのため経営者からすると、
「お客様が定着してきた」
と感じることがあります。
しかし、新規客が減少した結果として常連客の比率が高くなっているのであれば、意味は大きく変わります。
店に新しいお客様が入ってくる力が弱くなっている可能性があるからです。
経営では「率」と「人数」をセットで見る
リピーター率そのものが悪い指標なのではありません。
重要なのは、率だけで判断しないことです。
リピーター率が上がったなら、
「何%になったか」
だけを見るのではなく、
- 新規客は何人だったのか
- リピーターは何人だったのか
- 総客数は増えたのか、減ったのか
この3つを一緒に確認します。
例えば、
リピーター率30% → 40%
という数字よりも、
新規700人 → 720人
リピーター300人 → 480人
総客数1,000人 → 1,200人
と見た方が、店で何が起きているのかははるかに分かりやすくなります。
逆に、
新規700人 → 450人
リピーター300人 → 300人
総客数1,000人 → 750人
であれば、リピーター率が上昇していても安心できません。
飲食店経営で見るべきなのは、きれいな「率」ではありません。
その率を作っている実際の人数です。
リピーター率が高いか低いかだけでは、店の成長は判断できない。
「何%なのか」と同時に「何人なのか」を見る。
それだけで、同じ数字から見える経営の景色は大きく変わります。
第5章 新規客には「常連客の自然減」を補う役割がある

長く店を経営していると、どうしても来なくなるお客様が出てきます。
ここで重要なのは、
来なくなった理由が、必ずしも店にあるとは限らない
ということです。
料理に不満があったわけでもない。
接客で嫌な思いをしたわけでもない。
値段が高いと感じたわけでもない。
それでも、お客様は少しずつ入れ替わっていきます。
飲食店の顧客は、何もしなければ同じ人数のまま残り続けるものではありません。
大好きな店でも、行けなくなることはある
例えば、毎週金曜日に仕事帰りで来てくれていたお客様がいたとします。
料理も気に入っている。
スタッフとも仲が良い。
店に対する不満もない。
ところが勤務先が変わり、通勤経路から店が外れてしまった。
すると来店頻度は、
毎週1回から月1回になり、
そのうち数か月に1回になるかもしれません。
これは店側がどれだけ努力しても、完全には防げません。
同じようなことは日常的に起こります。
- 引っ越した
- 転勤になった
- 結婚した
- 子どもが生まれた
- 子どもが大きくなった
- 勤務先が変わった
- 生活する時間帯が変わった
- 年齢とともに外食頻度が変わった
- 新しくお気に入りの店ができた
お客様の生活そのものが変化するからです。
店が変わらなくても、お客様側の環境は変わり続けます。
常連客100人が、そのまま100人残るとは限らない
非常に単純化して考えてみましょう。
ある店に100人の常連客がいたとします。
そのうち毎月10人が、さまざまな事情によって来店しなくなったとします。
一方、新しく常連客になってくれる人が毎月5人だった場合。
数字はこう動きます。
| 月 | 月初の常連客 | 離れた人 | 新しく常連になった人 | 月末の常連客 |
|---|---|---|---|---|
| 1か月目 | 100人 | ▲10人 | +5人 | 95人 |
| 2か月目 | 95人 | ▲10人 | +5人 | 90人 |
| 3か月目 | 90人 | ▲10人 | +5人 | 85人 |
| 4か月目 | 85人 | ▲10人 | +5人 | 80人 |
毎月、新しい常連客は生まれています。
それでも顧客基盤は、
100人 → 95人 → 90人 → 85人 → 80人
と小さくなっていきます。
理由は単純です。
減っている人数より、増えている人数の方が少ないからです。
「新しい常連客ができている」だけでは足りない
ここにも経営者が気付きにくいポイントがあります。
毎月5人、新しく常連客になってくれている。
現場だけを見れば、
「最近また新しい常連さんが増えたな」
と感じます。
実際、それは間違っていません。
問題は、その裏側で10人が離れていることです。
店内には新しい常連客がいる。
昔からの常連客もいる。
だから大きく変化しているようには見えない。
しかし顧客全体で見ると、毎月5人ずつ減っています。
この状態が1年、2年と続けば、少しずつ客数に影響が出てきます。
顧客基盤は、増えた人数だけでは判断できません。
入ってくる人数と、出ていく人数の両方で決まります。
新規客は「今月の売上」だけを作っているわけではない
新規集客というと、
「今月の客数を増やすため」
「空席を埋めるため」
「売上を上げるため」
と考えがちです。
もちろん、それも重要な役割です。
しかし、新規客にはもう一つ大きな意味があります。
これから店を支えてくれる顧客候補を店の中へ入れることです。
新規客100人が来店したとして、その100人全員が常連客になるわけではありません。
その中から、
2回目に来る人が生まれ、
3回目に来る人が生まれ、
さらに継続して利用する人が生まれていく。
つまり新規客は、現在の売上であると同時に、未来のリピーター候補でもあります。
新規客が止まると、時間差で効いてくる
常連客が多い店ほど、新規集客が弱くなってもすぐには困らないことがあります。
既存のお客様が来てくれるからです。
今日も常連客が来る。
来週も来る。
翌月もそれなりに売上が立つ。
そのため、新規客が減っていることへの危機感が生まれにくい。
しかし、その間にも既存客の自然減は起こります。
そして新しい顧客候補が十分に入ってこなければ、常連客の層を補充できなくなります。
だから新規客の減少は、必ずしもその月の売上だけに現れる問題ではありません。
数か月後、数年後の客数に影響する問題でもあるのです。
新規集客は「顧客の補充」でもある
飲食店には、完全には防げない顧客の自然減があります。
だから店を長く続けるには、
離れていくお客様以上に、新しいお客様との関係を作り続ける必要があります。
毎月10人離れて、毎月10人が新しく常連になれば、顧客基盤は維持されます。
毎月10人離れて、15人が新しく常連になれば、顧客基盤は少しずつ大きくなります。
反対に10人離れて、5人しか生まれなければ、少しずつ縮小していきます。
新規客を集める目的は、目先の売上だけではありません。
未来の顧客を店の中へ補充し続けること。
常連客に支えられている店ほど、この役割を理解しておく必要があります。
第6章 問題は「新規客が来ない」のか「2回目がない」のか

売上が伸びない。
客数も増えていない。
ここまで分かったとき、すぐに広告を増やしたり、SNS投稿を強化したりする店があります。
しかし、その前に確認したいことがあります。
新規客が来ていないのか。
それとも、新規客は来ているのに2回目がないのか。
この二つは、同じ「客数が増えない」という結果になります。
しかし、原因はまったく違います。
当然、改善策も変わります。
まず顧客の流れを単純化する
飲食店のお客様の流れを簡単にすると、こうなります。
店を知る
↓
初回来店
↓
2回目の来店
↓
継続利用
この流れのどこで人数が止まっているのかを確認します。
例えば月間500人の新規客が来ていても、ほとんど2回目につながっていなければ顧客基盤はなかなか大きくなりません。
反対に、来店した人の満足度が高くても、そもそも月間50人しか新規客が来ていなければ、常連客が増えるスピードには限界があります。
だから客数の問題を、
「もっと集客しよう」
だけで考えると、原因を見誤る可能性があります。
ケース1 新規客そのものが少ない
まず確認したいのが、店に新しいお客様が入ってきているかです。
例えば、月間客数1,000人のうち、
- リピーター900人
- 新規客100人
だったとします。
この場合、まず疑うのは新規客との接点が十分に作れているかです。
どれだけ良い料理を出していても、存在を知られていなければ来店にはつながりません。
店を知ってもらえているか。
知った人に興味を持ってもらえているか。
そして実際に「行ってみよう」と思ってもらえているか。
ここを確認します。
新規客が少ない店で見るもの
新規客が少ない場合は、店外での見え方を中心に確認します。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 検索したときに店の魅力が伝わっているか | |
| SNS | 料理や利用シーンが分かりやすく発信されているか |
| 広告 | 商圏の人へ情報が届いているか |
| 看板 | 何の店なのか一瞬で理解できるか |
| 店頭 | 入ってみたいと思える外観になっているか |
| 口コミ | 店選びの判断材料になる情報が蓄積されているか |
| 商品の見え方 | 「これを食べたい」と思える商品が見えているか |
| 認知度 | そもそも地域で店の存在を知られているか |
ここで問題が見つかるなら、主に集客の問題です。
例えばGoogleで検索されても料理写真が弱い。
Instagramを見ても何がおすすめなのか分からない。
店の前を通っても、価格帯や利用シーンが分からない。
地域で店の存在そのものが知られていない。
こうした状態なら、改善すべき場所は店の外側にあります。
ケース2 新規客は来ているが、2回目がない
もう一つは、新規客そのものは十分来ているケースです。
例えば月間1,000人のうち500人が新規客だったとします。
毎月かなりの人数が初回来店している。
それなのに総客数が何か月経っても増えない。
この場合、集客だけを強化しても根本的な改善にはならない可能性があります。
来てもらった後に、十分な人数が残っていないからです。
見る場所は店の外ではなく、店の中へ移ります。
2回目が少ない店で見るもの
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 料理 | また食べたいと思える商品だったか |
| 接客 | 不快感や放置感がなかったか |
| 提供時間 | 待ち時間が期待を超えていなかったか |
| 清潔感 | 客席・トイレ・食器などに違和感がなかったか |
| 価格 | 支払った金額に対して納得感があったか |
| 店内環境 | 温度・音・匂い・座席などにストレスがなかったか |
| 再来店理由 | 次に来る具体的な理由が店にあったか |
こちらは主に店舗体験の問題です。
広告によって初回来店を作ることには成功している。
しかし、そのお客様が、
「また来たい」
と思うところまで店の価値が届いていない。
この状態で広告費だけを増やすと、新規客は増えても、顧客が店に蓄積されにくくなります。
同じ「客数1,000人」でも問題は違う
二つの店を比較してみます。
| A店 | B店 | |
|---|---|---|
| 月間客数 | 1,000人 | 1,000人 |
| 新規客 | 100人 | 500人 |
| リピーター | 900人 | 500人 |
| 主に確認する場所 | 集客 | 店舗体験 |
どちらも月間客数は1,000人です。
しかし、A店とB店に同じ施策を打つのは合理的ではありません。
A店は、新しいお客様との接点を増やす余地が大きい。
B店は、すでに多くの新規客を獲得できています。
B店が先に確認すべきなのは、500人の新規客がその後どうなっているのかです。
広告を増やす前に確認したいこと
例えば、新規客500人のうち50人しか再来店していない店があったとします。
そこで広告を強化して新規客を700人まで増やした。
確かに一時的な客数は増えるでしょう。
しかし、再来店する割合が変わらなければ、毎月大量の新規客を集め続けなければ売上を維持できません。
これは、穴の空いたバケツに水を入れ続けているような状態です。
一方、新規客が月100人しかいないものの、その多くが再来店している店なら、店舗体験より先に認知や集客を強化した方が効果が出る可能性があります。
つまり重要なのは、
「集客を増やすべきか」「店内を改善すべきか」を数字から判断することです。
問題が起きている場所に施策を打つ
客数が増えないときは、まず二つに分けます。
新規客そのものが少ない。
→ Google、SNS、広告、口コミ、看板、店頭、商品の見え方などを確認する。
新規客は来ているが2回目につながらない。
→ 料理、接客、提供時間、清潔感、価格、店内環境、再来店理由などを確認する。
同じ売上停滞でも、原因が違えば必要な施策は変わります。
広告が必要な店もあれば、接客改善が先の店もある。
商品写真を変えるべき店もあれば、提供時間を改善すべき店もある。
売上改善で重要なのは、施策の数ではありません。
どこでお客様の流れが止まっているのかを特定し、その場所に合った施策を打つことです。
第7章 常連客中心の店ほど「初回来店客の目線」を失いやすい

常連客が増えることは、店にとって嬉しいことです。
スタッフはお客様の顔を覚え、お客様も店のことをよく知っている。
「いつもの」で注文が通る。
細かく説明しなくてもサービスの内容を理解している。
スタッフとの会話も自然に生まれる。
店内には親しみのある空気ができていきます。
ただ、店がこの状態に慣れてくると、一つ見えにくくなるものがあります。
初めて来店したお客様から、この店がどう見えているのか。
常連客にとって当たり前になった店ほど、この視点を意識して持つ必要があります。
常連客は「店の説明書」をすでに持っている
常連客は、何度も店を利用するうちに店のルールを覚えていきます。
例えば、
- どこで注文するのか
- どの商品が人気なのか
- 何がおかわりできるのか
- 誰に声をかければいいのか
- どんなサービスがあるのか
- 混雑時はどうすればいいのか
- どの席が使いやすいのか
こうした情報を、常連客はいちいち確認しません。
店側も、
「いつものやつですね」
「ご飯、おかわりできますからね」
「今日はあっちの席空いてますよ」
と自然に対応できます。
つまり常連客は、店を利用するための学習がすでに終わっているお客様です。
だから多少説明が足りなくても困りません。
初回来店客は何も知らない
ところが初めて来たお客様は違います。
入口から入った瞬間から、小さな判断を繰り返しています。
「勝手に座っていいのかな?」
「店員さんが案内してくれるのかな?」
「注文はタブレット?」
「これはセットなのか単品なのか?」
「人気商品はどれ?」
「ご飯のおかわりは有料?」
「会計はどこでするんだろう?」
店側にとっては当たり前のことでも、初回来店客には分かりません。
一つひとつは小さなことです。
しかし、この小さな「分からない」が何度も続くと、店で過ごす時間そのものにストレスが生まれます。
「説明しなくても分かる」は店側の感覚かもしれない
例えば、おかわり自由のサービスがあったとします。
常連客は当然知っています。
だからスタッフも毎回説明しなくなる。
店内のどこかには書いてあるので、
「見れば分かるだろう」
と思うかもしれません。
しかし初回来店客が、その表示に気付かなければどうでしょう。
そのお客様にとっては、
存在しないサービスと同じです。
せっかく店が用意している価値が、お客様に伝わっていません。
人気商品についても同じです。
常連客なら、
「ここに来たらこれ」
という商品を知っています。
しかし初回来店客がメニューを開いたとき、商品が30種類並んでいるだけなら、その店の一番の魅力が分からないことがあります。
店には価値がある。
サービスもある。
人気商品もある。
それでも、
初めて来た人に伝わっていなければ、初回来店客から見た店の価値は小さくなります。
スタッフと常連客の距離が近すぎる店
もう一つ注意したいのが、店内の空気です。
スタッフと常連客が仲良く話していること自体は、決して悪いことではありません。
むしろ飲食店らしい温かさでもあります。
ただし、その輪が強くなりすぎると、初回来店客からは違った景色に見えることがあります。
カウンターでスタッフと常連客がずっと盛り上がっている。
常連客には名前で声をかける。
常連客とは楽しそうに会話する。
一方、初回来店客には必要最低限の対応だけ。
スタッフ本人にそのつもりがなくても、新規客からすると、
「自分たちは部外者なのかな」
と感じる可能性があります。
常連客同士の内輪ネタが飛び交う店も同じです。
常連客にとっては楽しい空間でも、初めて来た人には入り込めないコミュニティに見えることがあります。
常連客を大切にすることと、新規客を疎外しないこと
ここで難しいのは、
「常連客との会話を減らせばいい」
という単純な話ではないことです。
常連客との関係性は店の大切な財産です。
名前を覚える。
好みを覚える。
会話をする。
こうした積み重ねが再来店にもつながります。
だから考えるべきなのは、常連客への対応を弱くすることではありません。
初回来店客にも同じように「自分も歓迎されている」と感じてもらえる状態を作ることです。
例えば、
| 常連客には自然にできていること | 初回来店客への工夫 |
|---|---|
| 好みを知っている | 人気商品を分かりやすく案内する |
| 店のサービスを知っている | 最初に簡潔に説明する |
| 注文方法を知っている | 席についた時点で案内する |
| スタッフと会話できる | 最初の声かけを丁寧にする |
| 店の使い方を知っている | 店内表示を分かりやすくする |
| 安心して過ごせる | 「分からない」を減らす |
こうして見ると、初回来店客への対応で重要なのは特別扱いではありません。
店を知らない人でも迷わず利用できる状態を作ることです。
一度、初めて来たつもりで自分の店を見る
長く同じ店にいる経営者やスタッフほど、店を初見で見ることが難しくなります。
入口を見ても何も感じない。
メニューを見ても迷わない。
注文方法も知っている。
トイレの場所も知っている。
おすすめ商品も知っている。
つまり、店側の人間も常連客と同じように、店について知りすぎています。
だから、ときどき意識的に初回来店客の目線で店を見ることが必要です。
入口から入ってみる。
案内表示を見る。
初めてメニューを開いたつもりで商品を選ぶ。
注文する。
料理を待つ。
サービスの説明を見る。
会計する。
その一連の流れの中で、
「初めての人でも分かるだろうか」
と確認していきます。
慣れてしまった店側には見えなかった小さな違和感が、そこで見つかることがあります。
目指したいのは「初めて来ても居場所がある店」
常連客が楽しそうに過ごしている店は、本来とても魅力的です。
新規客から見ても、
「この店には何度も来たくなる理由があるんだな」
と感じてもらえる可能性があります。
だから常連客の存在そのものが問題なのではありません。
重要なのは、初めて来た人までその空気の中に自然に入れるかどうかです。
常連客にとって居心地がいい。
そして、初めて来た人にとっても居心地がいい。
この二つが両立している店なら、昔からのお客様を大切にしながら、新しいお客様も受け入れ続けることができます。
常連客の多さを本当の店の強さに変えるためには、「初めて来た人には、この店がどう見えているか」という視点を失わないことが大切です。
第8章 新規客を集めるだけでは売上は積み上がらない

売上が弱くなると、多くの飲食店が最初に考えるのが「集客」です。
Instagramを強化する。
Googleで店を見つけてもらう。
広告を出す。
インフルエンサーに紹介してもらう。
キャンペーンを実施する。
もちろん、新しいお客様に来てもらうための施策は必要です。
実際に新規客が増えれば、その月の客数も売上も増えます。
ただし、ここで一つ考えたいことがあります。
その新規客は、翌月以降の売上にもつながっているでしょうか。
毎月500人集客できている店
例えば、毎月500人の新規客を獲得できている店があったとします。
かなり集客力のある店です。
SNSや広告から毎月多くのお客様が来店している。
ところが、その500人のうち2回目に来店するお客様が20人しかいなかったとします。
数字にすると、
新規客500人 → 2回目20人
です。
初回来店から2回目につながる割合は4%です。
この店は毎月500人もの新しいお客様を獲得していますが、その大部分は一度利用したあと店から離れています。
つまり翌月も500人集めたいなら、また新しい500人を探さなければなりません。
集客を止めると客数まで落ちる
仮に広告によって毎月500人の新規客を獲得していたとします。
| 月 | 新規客 | 2回目につながった客 | 新規客の再来店率 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 500人 | 20人 | 4% |
| 2月 | 500人 | 20人 | 4% |
| 3月 | 500人 | 20人 | 4% |
| 4月 | 500人 | 20人 | 4% |
毎月500人が来店しているので、表面上は集客できています。
しかし、店に残るお客様は毎月わずか20人です。
もし広告を止め、新規客が500人から100人まで減ったらどうなるでしょう。
これまで広告によって作っていた400人分の来店が、一気に消える可能性があります。
つまりこの店の客数は、
店そのものに積み上がった顧客ではなく、毎月の集客活動によって支えられている
ということです。
広告費を使ったことが問題なのではない
ここで誤解したくないのは、広告が悪いわけではないということです。
広告によって新規客を獲得できるのであれば、それは店にとって強い武器になります。
SNSもGoogleも同じです。
問題は、
新規客を獲得した時点で集客が成功したと考えてしまうことです。
例えば広告費10万円を使って500人を獲得できたなら、新規客1人を獲得するために使った費用は200円です。
初回来店だけを見れば、
「200円で1人呼べた」
という非常に優秀な結果に見えるかもしれません。
しかし、その500人のうち480人が一度しか利用しないのであれば、店は翌月も新しいお客様を獲得するための費用を使う必要があります。
広告を見るなら、
いくらで来店してもらえたか
だけではなく、
そのお客様がその後どうなったか
まで見なければ、本当の成果は判断できません。
同じ500人を集めても、その後で大きな差が生まれる
二つの店が、それぞれ500人の新規客を獲得したとします。
| A店 | B店 | |
|---|---|---|
| 新規客 | 500人 | 500人 |
| 2回目来店 | 20人 | 150人 |
| 再来店率 | 4% | 30% |
初回来店の時点では、どちらも500人です。
集客数だけを評価するなら同じ成果です。
しかし2回目まで見ると、
A店は20人。
B店は150人。
同じ500人を獲得しても、130人の差が生まれています。
これを毎月繰り返せば、その差はさらに大きくなっていきます。
B店は新規集客によって、その月の売上を作るだけでなく、翌月以降にも来店する可能性のあるお客様を増やしています。
だから同じ集客数でも、経営に与える価値は同じではありません。
「何人来たか」だけでは集客の成果は分からない
SNS広告を出して、
「今月は300人来店しました」
Googleから、
「200人来店しました」
キャンペーンで、
「100人来店しました」
こうした数字はもちろん重要です。
ただ、その600人が一度来店して終わったのであれば、翌月にはまた別の600人を集める必要があります。
一方、その中から一定数が2回目、3回目と利用してくれるなら、新規集客によって店の顧客基盤そのものが大きくなっていきます。
だから集客の成果を見るときは、
新規客数だけで終わらせない。
新規客を入口として、その後の動きまで確認する必要があります。
集客には「その月の売上」と「未来の売上」がある
新規客500人を獲得すれば、500人分の初回来店売上が生まれます。
これはその月の売上です。
そして、その中から2回目、3回目と来店するお客様が生まれれば、そこから未来の売上が生まれます。
つまり新規集客の価値は、
単純に「何人呼べたか」だけでは決まりません。
獲得した新規客が、どれだけ店に残ったか。
ここまで見て初めて、集客が店の成長につながっているのかが分かります。
毎月新しいお客様を集め続ける力。
そして、一度来てくれたお客様にもう一度選んでもらう力。
この二つが組み合わさることで、売上は少しずつ積み上がっていきます。
第9章 顧客を「新規→2回目→3回目→常連」で見る

ここまで、客数をいくつかの角度から見てきました。
延べ客数と実顧客数。
新規客とリピーター。
新規客の獲得と再来店。
これらを実際の店舗経営で使える形にまとめると、顧客の流れはシンプルに整理できます。
新規
↓
2回目
↓
3回目
↓
常連
お客様を単純に「新規客」と「常連客」の二つに分けるのではなく、どの段階に何人いるのかを見る考え方です。
これが分かると、「最近売上が悪い」という漠然とした問題を、具体的な数字に置き換えられるようになります。
例えば新規客が500人来ている店
ある月に500人の新規客が来店したとします。
その後の動きを追ってみると、
新規500人
↓
2回目150人
↓
3回目60人
↓
継続的に利用する常連客30人
だったとします。
表にするとこうなります。
| 顧客段階 | 人数 | 前段階から残った割合 |
|---|---|---|
| 新規 | 500人 | ― |
| 2回目 | 150人 | 30% |
| 3回目 | 60人 | 40% |
| 常連 | 30人 | 50% |
この店では、500人の新規客を獲得し、最終的に30人が継続利用する顧客になっています。
ここまで数字を分けると、
「リピーターを増やしたい」
という話より、かなり具体的になります。
どの段階でお客様が大きく減っているのか
が見えるからです。
新規客が少ないなら、入口に問題がある
例えば、
新規100人
↓
2回目40人
↓
3回目20人
↓
常連10人
だったとします。
新規客の40%が2回目に来店し、その後も比較的高い割合で残っています。
一度来店したお客様は、それなりに店を気に入ってくれている。
しかし、そもそもの新規客が100人しかいません。
この場合、優先して確認したいのは入口です。
Googleで見つけてもらえているか。
SNSから店の魅力が伝わっているか。
口コミは十分にあるか。
店頭を見て入りたいと思えるか。
看板や商品写真から何の店なのか伝わっているか。
店を体験した後よりも、店を体験する前に課題がある可能性が高い。
そう判断できます。
新規は多いのに2回目が少ないなら、初回来店を見る
では、こんな店ならどうでしょう。
新規500人
↓
2回目25人
↓
3回目15人
↓
常連10人
新規客は500人来ています。
つまり、店を知ってもらい、初回来店まで動かす力はあります。
それでも2回目は25人。
ここで大きく人数が落ちています。
この場合、広告をさらに増やす前に確認したいのは初回来店時の店舗体験です。
料理は期待に応えられていたか。
価格に納得感があったか。
接客に問題はなかったか。
提供時間は適切だったか。
店内は清潔だったか。
初めての人でも利用しやすかったか。
「また来たい」と思える商品や体験があったか。
500人を集めることには成功しています。
問題は、その500人を次の段階へ進められていないことです。
2回目はあるのに3回目が少ない店
さらに、こんなケースもあります。
新規500人
↓
2回目200人
↓
3回目40人
↓
常連20人
初回来店から2回目には40%が進んでいます。
かなりの人数がもう一度店を選んでくれています。
ところが2回目から3回目になると、大きく減っています。
この場合は、
「初回来店で嫌われている」
という見方だけでは説明できません。
少なくとも200人は、もう一度利用しています。
そこで確認したいのが、継続して来店する理由があるかです。
例えば、
一度食べれば満足する商品になっていないか。
他にも食べてみたい商品があるか。
定期的に新しい発見があるか。
日常的に利用できる価格や使い方になっているか。
来店するたびに同じ体験だけになっていないか。
2回目までは来る。
しかし、その先が続かない。
この場合は、店を継続利用する理由に改善余地がある可能性があります。
同じ「常連客30人」でも中身は違う
例えば、最終的に常連客が30人生まれた二つの店があったとします。
| A店 | B店 | |
|---|---|---|
| 新規 | 1,000人 | 300人 |
| 2回目 | 100人 | 150人 |
| 3回目 | 50人 | 75人 |
| 常連 | 30人 | 30人 |
最終的な常連客数は同じ30人です。
しかしA店は、1,000人の新規客から30人を作っています。
B店は300人から30人です。
同じ30人でも、そこに至る効率は大きく違います。
A店が広告費を大量に使って1,000人を獲得しているなら、集客費への依存度も高くなるでしょう。
一方B店は、新規客を常連客へ変えていく力が比較的強いと考えられます。
だから最終的な常連客数だけを見るのではなく、そこに至るまでの人数の変化を見ることに意味があります。
店ごとに「詰まっている場所」は違う
顧客の流れを並べると、改善する場所を整理しやすくなります。
| 数字の状態 | 主に疑う場所 | 改善の方向 |
|---|---|---|
| 新規が少ない | 認知・集客 | Google・SNS・広告・口コミ・店頭など |
| 新規→2回目が弱い | 初回来店体験 | 料理・接客・価格・提供時間・清潔感など |
| 2回目→3回目が弱い | 継続利用 | 商品の幅・利用動機・再来店理由など |
| 3回目以降が弱い | 定着 | 店との関係性・利用頻度・飽きなど |
こうして見ると、
「売上が悪いから広告を出す」
「客数が減ったからクーポンを配る」
といった一律の判断をする必要がなくなります。
店によって詰まっている場所が違うからです。
「売上が悪い」を顧客の流れに置き換える
月商が落ちた。
客数が伸びない。
常連客が増えない。
これだけでは、まだ問題が大きすぎます。
そこで顧客を、
新規 → 2回目 → 3回目 → 常連
と並べてみます。
すると、
「新規客が足りない」
「500人来ているのに2回目が25人しかいない」
「2回目までは来るのに3回目で急激に減る」
というように、問題を数字で表現できるようになります。
ここまで具体化できれば、改善する場所もかなり絞れます。
飲食店経営で重要なのは、単純に「常連客が何人いるか」だけを見ることではありません。
新しいお客様が入り、そのお客様が次の段階へ進み、最終的に店に定着していく流れが作れているか。
この流れを数字として持つことで、「売上が悪い」という曖昧な問題を、実際に改善できる経営課題へ変えることができます。
第10章 そして最後に「客単価」を掛け合わせる

ここまで、常連客、新規客、再来店、来店頻度について見てきました。
ただし、これだけでは売上の分析は完成しません。
なぜなら、最終的な売上を決めるもう一つの数字があるからです。
客単価です。
お客様が増えた。
再来店する人も増えた。
常連客も増えている。
それでも、1回来店したときに使う金額が下がれば、思ったほど売上は伸びません。
逆に客数が大きく増えていなくても、客単価が上がれば売上は変わります。
客数が増えても、客単価が下がればどうなるか
例えば、以前は月間2,000回来店、客単価1,500円だった店があるとします。
月商は、
2,000回 × 1,500円 = 300万円
です。
その後、集客や再来店施策が成功して、月間来店数が2,300回まで増えました。
15%の増加です。
ところが客単価が1,300円まで下がったとします。
すると、
2,300回 × 1,300円 = 299万円
です。
| 以前 | 現在 | |
|---|---|---|
| 延べ来店数 | 2,000回 | 2,300回 |
| 客単価 | 1,500円 | 1,300円 |
| 月商 | 300万円 | 299万円 |
お客様は300回来店分増えています。
店内は以前より忙しくなっているでしょう。
料理を作る量も増える。
食器を洗う量も増える。
スタッフの作業量も増える。
それなのに、売上はほぼ変わっていません。
客数の増加を、客単価の低下が打ち消しているからです。
客数が横ばいでも売上を伸ばすことはできる
反対のケースも考えてみます。
月間来店数が2,000回から変わらなかったとします。
しかし客単価が、
1,500円 → 1,700円
になったらどうでしょう。
2,000回 × 1,700円 = 340万円
になります。
| 以前 | 現在 | |
|---|---|---|
| 延べ来店数 | 2,000回 | 2,000回 |
| 客単価 | 1,500円 | 1,700円 |
| 月商 | 300万円 | 340万円 |
客数は1人も増えていません。
それでも月商は40万円増えています。
ここに、売上改善を「集客だけ」で考えてはいけない理由があります。
客単価は「値上げ」だけで作る数字ではない
客単価を上げるというと、
「商品の値段を上げる」
と考える人もいるでしょう。
もちろん価格改定も一つの方法です。
しかし、客単価を変える方法はそれだけではありません。
例えば、
- 商品構成を変える
- 追加注文される商品を作る
- ドリンク注文を増やす
- セット商品を作る
- 上位商品を用意する
- 小鉢やサイドメニューを充実させる
- 夜の利用を増やす
こうした方法でも客単価は変わります。
例えば1,200円の定食だけを注文していたお客様が、300円の小鉢を追加すれば1,500円になります。
1,500円の商品を選んでいたお客様が、魅力的な2,000円の商品を選ぶようになれば500円上がります。
昼だけ利用していたお客様が、客単価3,000円の夜営業も利用してくれるようになれば、そのお客様が店にもたらす売上そのものが変わります。
つまり客単価とは、
単純な価格ではなく、お客様が店でどのようにお金を使っているかを表す数字
でもあります。
常連客ほど「使い方」が固定されることもある
常連客が多い店では、ここにも注意が必要です。
何度も利用しているお客様ほど、
「いつもの定食」
「いつものドリンク」
「いつもの使い方」
が決まっていることがあります。
来店頻度は高い。
しかし毎回同じ1,000円の商品しか注文しない。
それでも大切な常連客であることに変わりはありません。
ただ、売上という視点では、
来店頻度と同時に、1回来店あたりの利用金額も見る必要があります。
常連客が増えているのに売上が伸びない場合、来店人数だけではなく、こうした利用金額の変化が関係している可能性もあります。
売上を3つの数字に分解する
ここまでの内容をまとめると、売上はさらに細かく見ることができます。
基本の式は、
売上 = 客数 × 客単価
でした。
しかし「客数」を実顧客数と来店頻度に分ければ、
売上 = 顧客数 × 来店頻度 × 客単価
と考えることができます。
例えば、
顧客数500人
× 月平均来店頻度2回
× 客単価1,500円
= 月商150万円
です。
ここから顧客数を600人まで増やせば、
600人 × 2回 × 1,500円 = 180万円
来店頻度を2.5回まで高めれば、
500人 × 2.5回 × 1,500円 = 187万5,000円
客単価を1,800円まで上げれば、
500人 × 2回 × 1,800円 = 180万円
となります。
売上を伸ばす場所は、一つではありません。
3つが少しずつ伸びると、売上への影響は大きい
さらに重要なのは、どれか一つだけを大幅に伸ばす必要はないということです。
例えば現在、
500人 × 2回 × 1,500円 = 150万円
だったとします。
これを、
顧客数550人
× 来店頻度2.2回
× 客単価1,650円
まで改善すると、
月商は約199万6,500円になります。
それぞれの改善幅は約10%です。
しかし売上は約33%増えています。
| 指標 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 顧客数 | 500人 | 550人 |
| 来店頻度 | 2.0回 | 2.2回 |
| 客単価 | 1,500円 | 1,650円 |
| 月商 | 150万円 | 約199.7万円 |
これが、売上を分解して考える大きな意味です。
「あと50万円売上を増やす」
だけでは、何をすればいいのか分かりません。
しかし、
顧客数を増やす。
来店頻度を高める。
客単価を上げる。
と分ければ、具体的な施策を考えられるようになります。
売上成長は「客を増やす」だけでは完成しない
新規客を増やす。
その中から2回目、3回目の利用者を増やす。
常連客として定着してもらう。
そして、利用頻度や1回来店あたりの利用金額まで見る。
ここまで揃って初めて、顧客の成長と売上の成長がつながります。
顧客数 × 来店頻度 × 客単価。
売上が伸びないときは、この3つのどこが止まっているのかを見る。
常連客が多いか少ないかという感覚だけでは見えなかったものが、この3つに分解することで具体的な数字として見えてきます。
飲食店の売上成長は、単純に「もっとお客様を集める」という一つの施策で作るものではありません。
何人のお客様がいるのか。
そのお客様が何回来ているのか。
そして、一回来店したときにいくら使っているのか。
この3つを動かしていくことが、売上を積み上げるということです。
第11章 常連客が多いのに売上が伸びない店は、この順番で数字を見る

ここまでの内容を、実際の店舗で使える分析手順に落とし込みます。
「常連客は多いはずなのに売上が伸びない」
そんなときに必要なのは、感覚で原因を探すことではありません。
数字を順番に分解していけば、どこで成長が止まっているのかをかなり具体的に絞り込めます。
私なら、次の順番で見ていきます。
① 月商
↓
② 客単価
↓
③ 延べ客数
↓
④ 実顧客数
↓
⑤ 新規客数
↓
⑥ 2回目来店数
↓
⑦ 3回以上来店数
↓
⑧ 常連客数
↓
⑨ 来店頻度
大切なのは、一つの数字だけで結論を出さないことです。
① 月商を見る
最初に確認するのは、当然ながら売上です。
例えば、
| 前年同月 | 今月 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 月商 | 320万円 | 320万円 | ±0円 |
まず、
「売上が伸びていない」
という事実を確認します。
ここではまだ原因を決めません。
売上が同じでも、その中身は変化している可能性があるからです。
② 客単価を見る
次に客単価です。
例えば、
| 前年同月 | 今月 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 客単価 | 1,600円 | 1,700円 | +100円 |
客単価は上がっています。
それなのに月商が変わっていない。
この時点で、
客数側で何かが起きている
と考えられます。
逆に客数が増えているのに売上が横ばいなら、客単価の低下を疑います。
③ 延べ客数を見る
次に、月間で何回来店があったのかを確認します。
例えば、
| 前年同月 | 今月 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 延べ客数 | 2,000回 | 1,882回 | ▲118回 |
客単価は上がった。
しかし延べ客数は減った。
だから月商が伸びていない。
ここまで来れば、売上停滞の大きな原因が客数側にあることが見えてきます。
ただし、まだ分析は終わりません。
④ 実顧客数を見る
延べ客数が減っているなら、
実際に何人のお客様が店を利用しているのか
を確認します。
例えば、
| 前年同月 | 今月 | |
|---|---|---|
| 延べ客数 | 2,000回 | 1,882回 |
| 実顧客数 | 1,200人 | 950人 |
実顧客数が250人減っています。
ここで初めて、
「同じ人の来店頻度が落ちたのか」
「店を利用する人そのものが減ったのか」
を切り分けられるようになります。
⑤ 新規客数を見る
実顧客数が減っているなら、新規客を確認します。
| 前年同月 | 今月 | |
|---|---|---|
| 新規客 | 600人 | 350人 |
これならかなり分かりやすい。
新しいお客様が250人減っています。
この場合は、認知、Google、SNS、広告、口コミ、看板、店頭など、新規集客につながる部分を調べる必要があります。
一方、新規客が減っていなければ、別の場所を疑います。
⑥ 2回目来店数を見る
例えば新規客は前年と変わらず600人だった。
ところが、
| 前年 | 現在 | |
|---|---|---|
| 新規客 | 600人 | 600人 |
| 2回目来店 | 180人 | 90人 |
となっていたらどうでしょう。
集客には大きな問題がない可能性があります。
600人を初回来店させることには成功しています。
問題はその後です。
2回目につながる人数が半分になっています。
こうなると、料理、接客、価格、提供時間、清潔感、店内環境など、初回来店時の体験を確認する必要があります。
⑦ 3回以上来店数を見る
2回目まで来てくれていても、その先が続いているとは限りません。
例えば、
新規600人
↓
2回目180人
↓
3回以上60人
という店があったとします。
前年は3回以上が100人だったなら、2回目以降の定着が弱くなっています。
この場合は、
「もう一度行ってみよう」
までは作れている。
しかし、
「これからも利用しよう」まで届いていない
可能性があります。
商品の幅、利用シーン、季節商品、日常使いのしやすさなど、継続して来店する理由を確認します。
⑧ 常連客数を見る
ここでようやく常連客の人数を確認します。
例えば店内では、
「常連さんが多い」
と感じていても、
| 前年同月 | 今月 | |
|---|---|---|
| 常連客数 | 400人 | 320人 |
だったらどうでしょう。
いつも来てくれる顔なじみのお客様が目立っているため、感覚では気付きにくかっただけで、実際には常連客の母数が減っています。
逆に400人から450人へ増えているのであれば、顧客基盤そのものは拡大しています。
ここでも重要なのは、
「常連客がいるか」ではなく「常連客が何人いるか」です。
⑨ 最後に来店頻度を見る
常連客数まで確認したら、最後に来店頻度を見ます。
例えば常連客数が400人で変わっていなかったとしても、
前年:平均月2.5回
現在:平均月1.8回
になっていれば、延べ客数は減ります。
400人 × 2.5回なら1,000回来店。
400人 × 1.8回なら720回来店。
常連客の人数は同じでも、280回来店分の差が生まれます。
「常連客は減っていないのに売上が弱い」
という店では、この来店頻度が落ちていることも考えられます。
9つの数字を一枚に並べる
実際に分析するときは、バラバラに見るより一つの表にした方が分かりやすくなります。
| 指標 | 前年同月 | 今月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 月商 | 320万円 | 320万円 | ±0 |
| 客単価 | 1,600円 | 1,700円 | +100円 |
| 延べ客数 | 2,000回 | 1,882回 | ▲118回 |
| 実顧客数 | 1,200人 | 950人 | ▲250人 |
| 新規客数 | 600人 | 350人 | ▲250人 |
| 2回目来店数 | 180人 | 150人 | ▲30人 |
| 3回以上来店数 | 100人 | 90人 | ▲10人 |
| 常連客数 | 400人 | 410人 | +10人 |
| 平均来店頻度 | 2.0回 | 2.0回 | ±0 |
この店なら、
「常連客が減ったから売上が伸びない」
とは考えにくい。
常連客数はむしろ増えています。
客単価も上がっています。
大きく減っているのは実顧客数と新規客数です。
つまり優先して調べるべき場所は、新規集客側にある可能性が高いと判断できます。
前月比較だけで判断しない
数字を見るときは、比較対象にも注意が必要です。
飲食店には季節変動があります。
12月と1月。
平常月とゴールデンウィーク。
夏休みと通常月。
宴会シーズンと閑散期。
これらを単純に前月比だけで比較すると、季節要因まで店舗の問題だと判断してしまうことがあります。
そのため、
前月比と前年同月比の両方を見る。
可能であれば3か月、6か月、12か月と推移も確認する。
一時的な上下なのか、継続して悪化しているのかまで確認すると、より判断しやすくなります。
数字は「悪いところを探すため」に見る
この分析で大切なのは、すべての数字を上げようとすることではありません。
店によって問題が起きている場所は違います。
新規客が足りない店。
2回目につながらない店。
常連客は多いが来店頻度が落ちている店。
客数は増えているのに客単価が下がっている店。
だから、
①月商 → ②客単価 → ③延べ客数 → ④実顧客数 → ⑤新規客数 → ⑥2回目来店数 → ⑦3回以上来店数 → ⑧常連客数 → ⑨来店頻度
と順番に数字を分解していきます。
そうすれば、
「売上が伸びない」
という一つの大きな問題が、
「新規客が前年より250人減っている」
「2回目への移行が弱くなっている」
「常連客数は変わらないが来店頻度が落ちている」
という、具体的な経営課題に変わります。
ここまで分かれば、何を改善すべきかも見えてきます。
常連客がいるのに売上が伸びない店ほど、感覚ではなく、売上が止まっている場所を数字で特定することが重要です。
最終章 強い店は「常連がいる店」ではなく、顧客基盤が大きくなる店

常連客は、飲食店にとって大切な存在です。
毎週来てくれる。
毎月来てくれる。
新商品を出せば食べてくれる。
スタッフとも関係ができている。
何より、店のことを好きで何度も足を運んでくれる。
こうしたお客様がいることで、飲食店の売上は安定します。
だから、常連客を大切にすることに何の異論もありません。
ただ、この記事で考えてきたのは、その先です。
「常連客がいること」と「店が成長していること」は、同じではありません。
常連客は「現在の店」を支えてくれる
例えば、毎月300人の常連客が安定して来店してくれる店があったとします。
これは間違いなく、その店の強さです。
売上の土台になります。
新規客だけで売上を作る店と比べれば、毎月の売上も予測しやすくなります。
しかし、5年前も常連客300人。
3年前も300人。
今年も300人。
さらに新規客も増えていない。
実顧客数も増えていない。
来店頻度も変わっていない。
客単価も変わっていない。
それなら、店の売上が大きく伸びる理由もありません。
現在の顧客を維持できていることと、顧客基盤が拡大していることは分けて考える必要があります。
飲食店の顧客は、ずっと同じではない
飲食店では毎月、お客様が少しずつ入れ替わっています。
新しい人が店を知る。
初めて来店する。
その中の一部が2回目に来る。
さらに3回、4回と利用する。
やがて常連客になる。
一方で、以前まで何度も利用してくれていたお客様が来なくなることもあります。
引っ越し。
転勤。
家族構成の変化。
勤務先の変化。
生活習慣の変化。
年齢。
他店との出会い。
店に大きな問題がなくても、顧客は自然に動いていきます。
だから飲食店の顧客基盤は、固定されたものではありません。
常に、
入ってくる顧客と、離れていく顧客
によって作り変えられています。
重要なのは、最終的に何人残っているのか
例えば、前年に店を利用していた実顧客数が3,000人だったとします。
今年、新しいお客様が800人増えた。
一方で、以前利用していたお客様500人が来なくなった。
すると、
3,000人 + 800人 − 500人 = 3,300人
です。
顧客基盤は300人増えました。
逆に、新規客が500人増えても600人が離れていれば、
3,000人 + 500人 − 600人 = 2,900人
です。
新規客は500人も獲得しています。
それでも顧客基盤は100人縮小しています。
| 成長している店 | 縮小している店 | |
|---|---|---|
| 前年の顧客基盤 | 3,000人 | 3,000人 |
| 新しく加わった顧客 | +800人 | +500人 |
| 離れた顧客 | ▲500人 | ▲600人 |
| 現在の顧客基盤 | 3,300人 | 2,900人 |
| 前年比 | +300人 | ▲100人 |
見るべきなのは、
「今年、新規客が何人来たか」
だけでも、
「常連客が何人いるか」
だけでもありません。
最終的に店を利用してくれる顧客の母数が、前年より大きくなっているか。
ここが重要です。
「常連が多い店」から「顧客が積み上がる店」へ
店の成長を考えるなら、目指したい状態はシンプルです。
新規客が入ってくる。
↓
2回目につながる。
↓
3回目につながる。
↓
継続的に利用する顧客になる。
↓
自然に離れる顧客以上に、新しい顧客が定着する。
↓
店を利用する顧客の総数が大きくなる。
この循環が続いている店は、顧客基盤そのものが成長していきます。
そして顧客基盤が大きくなれば、売上を伸ばせる土台も大きくなります。
そこに来店頻度と客単価が掛け合わされることで、実際の売上へ変わっていきます。
常連客の多さは「現在の強さ」
何度も来てくれるお客様がいる。
これは、その店がこれまで作ってきた価値の結果です。
料理だったかもしれない。
接客だったかもしれない。
価格だったかもしれない。
居心地だったかもしれない。
その店を選び続ける理由があったから、常連客になってくれています。
だから常連客の多さは、
店の現在の強さ
と考えることができます。
ただし経営者として、もう一つ見ておきたいものがあります。
店の未来の強さです。
「新しい常連客」が生まれ続けているか
今いる常連客だけを見るのではなく、
今月、新しいお客様は何人来たのか。
そのうち何人が2回目に来たのか。
何人が3回以上利用しているのか。
新しく常連客になった人は何人いるのか。
以前からの顧客で来なくなった人はどれくらいいるのか。
そして、店を利用している実顧客数は前年より増えているのか。
ここを見ることで、
この店がこれからも顧客を増やしていける状態なのか
が見えてきます。
常連客が多いことが現在の強さなら、
新しい顧客が入り、再来店し、顧客基盤そのものが大きくなっていることは未来の強さです。
売上が伸びないときこそ「客の構造」を見る
「最近、売上が伸びないな」
そう感じたとき、
店内を見れば今日も常連客がいる。
知っている顔も多い。
それなりに忙しい。
すると、
「お客様は付いているから、大きな問題はない」
と思ってしまうことがあります。
そんなときこそ、一段深く数字を見てみてください。
月商はいくらなのか。
客単価はいくらなのか。
延べ客数は何人なのか。
実顧客数は何人なのか。
新規客は何人なのか。
2回目は何人なのか。
3回以上は何人なのか。
常連客は何人なのか。
来店頻度はどう変わっているのか。
そして前年と比較して、
店を利用している顧客の母数は大きくなっているのか。
ここまで見ると、「常連客は多い」という感覚だけでは分からなかった店の姿が見えてきます。
強い店は、顧客が増え続ける仕組みを持っている
飲食店の売上は、突然大きくなるものではありません。
一人のお客様が初めて来店する。
その人がもう一度来る。
何度も利用する。
その間にも新しいお客様が入ってくる。
そして、自然に離れていくお客様を上回る数の顧客が店に残っていく。
この積み重ねが、数年後の店の顧客基盤を作ります。
だから私は、常連客の多さだけで店の強さを判断しません。
見るべきなのは、
顧客が積み上がっているか。
そして、その顧客基盤が前年より大きくなっているかです。
売上が伸びないときほど、
「常連さんは来てくれている」
という感覚から、もう一段深く入ってみる。
自店の顧客構造を数字で見る。
新規、2回目、3回目、常連。
実顧客数、来店頻度、客単価。
その数字のどこが止まっているのかを見つける。
売上改善は、そこから始まります。
この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。