飲食店は、いつからこんなに“手数料”を払う商売になったのか。
Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

- 0-1. 第0章 はじめに|売上が入るたびに、誰かに数%を払う時代
- 0-2. 第1章、飲食店はもともと「現金商売」だった。
- 0-3. 第2章、10年間で「支払手数料」はどれだけ増えたのか。
- 0-4. 第3章、最初の大きな変化、キャッシュレス決済。
- 0-5. 第4章、第二の変化、グルメサイトと予約サイト。
- 0-6. 第5章、第三の変化、デリバリープラットフォーム。
- 0-7. 第6章、第四の変化、POS・モバイルオーダー・SaaS。
- 0-8. 第7章、第五の変化、広告費まで「継続課金」になった。
- 0-9. 第8章 月商500万円の店から、実際にいくら外部へ支払っているのか
- 0-9-1. 月商500万円の内訳
- 0-9-2. デリバリー100万円から35万円が出ていく
- 0-9-3. グルメサイトは月49,500円
- 0-9-4. 広告費は月10万円
- 0-9-5. さらに、店舗を支える外部サービスがある
- 0-9-6. 店内400万円の54%がキャッシュレス
- 0-9-7. 外部への支払いは、月720,879円
- 0-9-8. でも、本当に見るべきなのはここからです
- 0-9-9. でも、この78万円は「利益」ではない
- 0-9-10. さらに「利益」と「会社に残る現金」は違う
- 0-9-11. では、経営者は何を変えられるのか
- 0-9-12. 人件費30%を28%にできれば、年間120万円変わる
- 0-9-13. 人を減らすのではなく、仕事を減らす
- 0-9-14. 外部サービスへ払うなら、人時を減らす
- 0-9-15. 月商500万円より、「500万円をどう作ったか」
- 0-10. 第9章、手数料は必要経費なのか。それとも飲食業界は外部に依存しすぎたのか。
- 0-11. 第10章 「売上」ではなく「手数料控除後売上」で考える
- 0-12. 同じ100万円でも、価値は同じではない
- 0-13. キャッシュレス売上も、現金売上とは違う
- 1. さらに重要なのが「何時間で売ったのか」
- 2. 人件費を下げるのではなく、必要人時を減らす
- 3. 外部サービスへの支払いは、人時まで含めて判断する
- 4. 売上を増やすだけが利益改善ではない
- 5. 「月商500万円」から一歩先を見る
~売上500万円でも利益が残らない。本当の原因は「手数料」かもしれない~
第0章 はじめに|売上が入るたびに、誰かに数%を払う時代

飲食店で、1,000円の商品が売れる。
昔なら、現金1,000円がそのままレジに入りました。
でも今は、そう単純ではありません。
キャッシュレスで売れれば、決済手数料。
デリバリーで売れれば、販売手数料。
予約サイトからお客様が来れば、送客手数料。
さらに店を運営するために、
POSレジ、モバイルオーダー、予約システム、LINE配信、広告。
一つひとつは便利です。
実際、これらのサービスによって店の運営は楽になり、売上を作る方法も増えました。
ただ、その一方で思うんです。
飲食店って、いつからこんなに「手数料」を払う商売になったんやろう。
商品が売れる。
そのたびに数%。
また別のサービスでも数%。
月額で数千円、数万円。
気づけば、売上の周りにたくさんの会社がいて、それぞれに少しずつお金を払っています。
もちろん、手数料そのものが悪いわけではありません。
それ以上の価値を生んでくれるなら、払う意味はあります。
問題は、
「数%だから」と、一つひとつを軽く考えてしまうことです。
飲食店はただでさえ、
食材費、人件費、家賃、水道光熱費。
そこから利益を残す商売です。
そこへ新しく、さまざまな手数料が入り込むようになった。
では、この「数%」が積み重なったとき、
飲食店の利益は実際にどれくらい削られているのでしょうか。
今回は、
飲食店の利益構造が、いつの間にどう変わったのか。
そして、便利なサービスを使いながら利益を残すには、経営者は何を見なければならないのか。
ここを考えていきます。
第1章、飲食店はもともと「現金商売」だった。

昔の飲食店は、今と比べると非常にシンプルな商売でした。
料理を作る。
お客様が食べる。
そしてレジで現金を受け取る。
1,000円の商品が売れれば、レジには1,000円が入る。
もちろん、そこから食材費、人件費、家賃、水道光熱費などを払います。
だから昔の飲食店にも、当然たくさんの経費はありました。
ただ、今と大きく違うのは、
「売上が発生するたびに、第三者へ数%を支払う」
という経費が、今ほど多くなかったことです。
例えば100万円売れば、まず100万円が店に入る。
そこから食材費や人件費などを支払って、残ったものが利益になる。
非常に分かりやすい構造でした。
ところが現在は違います。
同じ100万円を売っても、
「どこで、どうやって売った100万円なのか」
によって、店に残る金額が変わります。
現金なのか。
キャッシュレスなのか。
デリバリーなのか。
予約サイト経由なのか。
売上そのものは同じ100万円でも、その売上を作るために支払うコストが違う。
つまり現在の飲食店経営では、
「いくら売ったか」だけでは、利益構造が見えにくくなっているんです。
まずこの違いを理解しておかないと、売上は伸びているのに、なぜかお金が残らない。
そんなことが普通に起こります。
第2章、10年間で「支払手数料」はどれだけ増えたのか。

では、本当に飲食店が支払う手数料は増えているのでしょうか。
ここは感覚ではなく、実際の数字を見てみます。
2026年4月、帝国データバンクが興味深い調査を発表しています。
小売業を対象に、
売上高に対して「支払手数料」がどれくらい発生しているのか。
約10年間の企業財務データを分析したものです。
その中で、飲食店の数字を見てみると、
2014年度。
売上高に占める支払手数料の割合は、
1.54%でした。
それが10年後の2024年度には、
2.94%。
ほぼ倍になっています。
たった1.4ポイント増えただけやん。
そう見えるかもしれません。
でも、例えば年間売上5,000万円の店で考えてみます。
1.54%なら約77万円。
2.94%なら約147万円。
単純計算では、
年間約70万円の差です。
しかもこれは利益ではありません。
売上に対して発生するコストです。
飲食店の最終利益が数%という世界で、この差は決して小さくありません。
では、なぜこれほど増えたのでしょうか。
大きな要因の一つが、
キャッシュレス決済の普及です。
経済産業省のデータを見ると、日本のキャッシュレス決済比率は、
2020年には29.7%。
2021年、32.5%。
2022年、36.0%。
2023年、39.3%。
そして2024年には42.8%まで上昇しました。
さらに2025年については、算出方法の見直しもあり単純比較には注意が必要ですが、最新の経済産業省公表値では58.0%となっています。
つまり、日本人がお金を使う方法そのものが、この10年で大きく変わったんです。
現金で払っていた売上が、
クレジットカード。
QRコード決済。
電子マネー。
こうした決済に置き換わっていった。
当然そこには、加盟店が負担する決済手数料が発生します。
さらに帝国データバンクは、
コロナ禍で普及したデリバリープラットフォームへの依存度上昇も、飲食店の手数料負担を押し上げた要因として挙げています。
ここで一つ注意しておきたいのは、
この「支払手数料」が、キャッシュレス決済手数料だけを意味する数字ではないことです。
決済代行業者への手数料だけでなく、
販売代行手数料や出店費用、入出金手数料など、企業によってさまざまな手数料が含まれています。
だから、
「キャッシュレスだけで2.94%取られている」
という意味ではありません。
むしろ重要なのは別のところです。
10年前と比べて、
飲食店が外部のサービスを利用して売上を作る機会そのものが増えた。
そしてその結果、
売上に連動して発生する「手数料」という経費が、実際の企業財務でもほぼ倍に膨らんでいる。
これはかなり大きな変化です。
昔の飲食店経営では、
原価率。
人件費率。
家賃比率。
このあたりを見るのが基本でした。
もちろん今も重要です。
でも現在は、そこにもう一つ、
「手数料率」
という数字を見なければならない時代になっているんです。
第3章、最初の大きな変化、キャッシュレス決済。

飲食店の手数料構造を大きく変えたものの一つが、
キャッシュレス決済です。
クレジットカード。
QRコード。
電子マネー。
今では当たり前になりました。
もちろん、これはお客様にとって非常に便利です。
店舗側にもメリットがあります。
現金を数える作業が減る。
釣銭を準備する手間も減る。
レジ締めも楽になる。
さらに、
「現金を持っていないから、この店はやめておこう」
という機会損失も防げます。
実際、経済産業省もキャッシュレス化のメリットとして、現金管理の削減やレジ業務の効率化、売上機会の拡大などを挙げています。
つまり、
キャッシュレスそのものが悪いわけではありません。
問題は、その便利さにはコストがかかることです。
では実際に計算してみましょう。
月商500万円の飲食店。
そのうち70%がキャッシュレス決済だったとします。
500万円の70%なので、
月350万円。
仮に平均決済手数料を3%とすると、
350万円 × 3%。
月10万5,000円です。
年間では、
126万円。
月商500万円の店でも、キャッシュレス決済だけで年間100万円を超えるコストになる計算です。
もちろん、実際の手数料率は契約する決済サービスや決済方法によって違います。
キャッシュレス比率も店によって違います。
なので、この126万円はあくまで仮定の数字です。
ただ重要なのは、
売上が増えれば、このコストも一緒に増えるということです。
そしてもう一つ忘れてはいけません。
キャッシュレスによって削減できるコストもあります。
現金管理。
両替。
入金。
レジ締め。
会計時間。
こうした作業に使っていた人件費や時間は減らせます。
だから経営者が見るべきなのは、
「3%も取られるからキャッシュレスは損」
という単純な話ではありません。
その3%を払うことで、何を得ているのか。
売上が増えたのか。
会計が速くなったのか。
現金管理の時間が減ったのか。
人件費を削減できたのか。
そこまで含めて判断する必要があります。
キャッシュレス決済は、
無料の便利なサービスではありません。
便利さと効率化を買うために、売上の一部を支払っている。
ここから飲食店に、
「売上を作るために手数料を払う」
という新しいコスト構造が本格的に入り始めたんです。
第4章、第二の変化、グルメサイトと予約サイト。

次に大きく変わったのが、
お客様が飲食店を探す方法です。
昔なら、
店の看板を見て入る。
知人から聞く。
チラシを見る。
地域情報誌を見る。
そんな方法が中心でした。
ところが今は、
Google、Instagram、グルメサイトなど、
お客様が店を知る入口がたくさんあります。
そして、そのままネット予約までできるようになりました。
これは非常に便利です。
ただ、経営者として一つ考えなければならないことがあります。
「店を見つけてもらう場所」と「予約してもらう場所」は、同じである必要があるのか。
ということです。
例えばグルメサイトを見て、
料理写真を見る。
メニューを見る。
口コミを見る。
営業時間を見る。
そして、
「この店に行ってみよう」
と思ってもらう。
ここまでは、グルメサイトに掲載する価値があります。
問題はその先です。
そのままグルメサイト経由で予約されると、
サービスや契約内容によっては、予約人数に応じた送客手数料が発生します。
ここで重要なのが、
すべての予約に、同じように手数料を払っていいのか。
ということです。
実際、私たちが運営する「がぶ飲み食堂」では、
送客手数料が発生するグルメサイトについて、
客単価の高い宴会などの予約は受け付けます。
一方で、
ランチや席のみといった通常予約については、
送客手数料が発生するサイトからは原則として受け付けないようにしています。
理由は単純です。
同じ送客手数料でも、客単価によって重さがまったく違うからです。
例えば、
5,000円の宴会予約を獲得するために数百円を払う。
しかも10人の宴会なら、一度に5万円の売上になる。
これなら新しい宴会需要を獲得するための広告費として成立する可能性があります。
ところが、
1,000円前後のランチ。
あるいは、来店するかどうかも含めて売上額がまだ分からない席のみ予約。
ここに同じような送客コストを乗せれば、
売上に対する手数料負担は一気に重くなります。
だから私たちは、
予約サイトを使うか、使わないか。
という二択では考えていません。
どんな予約なら、手数料を払ってでも獲得する価値があるのか。
ここで線を引いています。
そして通常の予約については、
Google。
Instagram。
自社の予約導線。
こうした別の経路を用意して、できるだけ直接予約してもらう。
グルメサイトは店を知ってもらう場所として活用する。
客単価の高い宴会など、新しい売上を獲得できる部分では予約機能も使う。
でも、利益の薄いランチや通常の席予約まで、何となく送客手数料を払い続けない。
これが重要だと思っています。
グルメサイトが悪いわけではありません。
むしろ、集客力のあるサービスには大きな価値があります。
だからこそ、
「使う・使わない」ではなく、「どこまで使うか」を経営者が決める。
予約件数を増やすことが目的ではありません。
最終的に見るべきなのは、
その予約から、いくら利益が残ったのか。
手数料を払ってでも取りに行く売上と、
自分たちの予約経路へ誘導する売上。
ここを分けて考える。
これも、手数料が増えた時代の飲食店経営では、大切な利益管理の一つなんです。
第5章、第三の変化、デリバリープラットフォーム。

そして、飲食店の売り方を大きく変えたのが、
デリバリープラットフォームです。
Uber Eats。
出前館。
その他のデリバリーサービス。
これによって飲食店は、
店の席数を超えて商品を販売できるようになりました。
これは、かなり大きな変化です。
飲食店の売上は、本来なら席数に制限されます。
満席になれば、それ以上のお客様は入れません。
ところがデリバリーなら、
厨房に調理能力が残っている限り、
店外のお客様にも商品を販売できます。
雨の日でも。
暑い日でも。
店から数キロ離れたお客様にも売れる。
飲食店に、
「店内とは別の売場」ができたようなものです。
ただし、その代わりに大きな手数料が発生します。
契約条件などによって異なりますが、
配達までプラットフォーム側に任せる場合、35%前後の手数料になるケースもあります。
100万円売れば、
約35万円。
こう聞くと、
「高すぎるやろ」
と思う経営者もいるでしょう。
でも、本当に高いのでしょうか。
ここは感情ではなく、
その手数料に何が含まれているのか
を考える必要があります。
例えば自社でデリバリーを始めるとします。
まず配達する人が必要です。
配達員を採用する。
給料を払う。
シフトを組む。
暇な時間にも人件費が発生する。
バイクや自転車も必要です。
車両代。
保険。
ガソリン代。
メンテナンス費用。
さらに、
注文を受ける仕組み。
オンライン決済。
注文管理。
お客様への告知。
新規顧客の獲得。
問い合わせ対応。
こうしたものも自分たちで用意しなければなりません。
一方、デリバリープラットフォームを使えば、
注文システム。
決済。
集客。
そして配達。
こうした機能をまとめて利用できます。
しかも大きいのは、
注文がない時間に、配達員の人件費を抱えなくていいことです。
自社配達なら、
注文がゼロでも人件費は発生します。
プラットフォームなら基本的に、
売れたときに手数料が発生する。
つまり、
固定費ではなく変動費として販売網を持てる。
ここは非常に大きな違いです。
だから、
35%という数字だけを見て、
高い、安いと判断するのは少し違います。
例えば100万円のデリバリー売上を作って、
35万円の手数料を払った。
見るべきなのは、
「35万円も取られた」
ではありません。
その35万円を払わなければ、その100万円の売上は存在したのか。
ここです。
自社だけでは獲得できなかったお客様に商品を販売できた。
店内営業だけなら使われていなかった厨房能力を売上に変えられた。
配達員を自社雇用せずに販売エリアを広げられた。
そう考えると、
30%という手数料にも合理性があります。
もちろん、
だから何でもデリバリーで売ればいいわけではありません。
店内と同じ価格。
店内と同じ原価設計。
そこに35%前後の手数料を乗せれば、
利益がほとんど残らない商品も出てきます。
だから必要なのは、
デリバリー専用の価格設計です。
商品原価。
容器代。
販売手数料。
値引きやキャンペーン負担。
それらを全部含めて、
いくらで売れば利益が残るのかを逆算する。
デリバリー手数料が高いか安いかは、
手数料率だけでは決まりません。
その手数料によって、何を外部化できているのか。
そして、
その手数料を払ったあとに、利益が残っているのか。
ここで判断するべきです。
35%は確かに大きい。
でも、
配達員も、決済も、注文システムも、集客も用意して、
売れたときだけ費用が発生する販売網だと考えれば、
見え方は少し変わります。
デリバリー手数料は、
単純に「取られる35%」ではありません。
店の外にもう一つ売場を持つためのコスト。
そう考えた上で、
使うのか。
使わないのか。
いくらで売るのか。
どの商品を売るのか。
ここまで設計するのが、経営だと思っています。
第6章、第四の変化、POS・モバイルオーダー・SaaS。

そして現在の飲食店には、
もう一つ大きなコストがあります。
システム利用料です。
POSレジ。
モバイルオーダー。
勤怠管理。
予約管理。
在庫管理。
LINE。
会計ソフト。
各種分析ツール。
今では、小さな飲食店でも複数のシステムを使うことが珍しくありません。
一つひとつを見ると、
月3,000円。
月5,000円。
月1万円。
それほど大きな金額には見えません。
でも、
月5,000円のサービスを5つ使えば、
月2万5,000円。
年間30万円です。
月1万円のサービスが5つなら、
年間60万円。
気づかないうちに、
毎月固定で出ていく経費が積み上がっていきます。
では、
こうしたシステムは削った方がいいのでしょうか。
私は、そう単純には考えていません。
重要なのは、
月額料金ではなく、そのシステムが何円の利益を生んでいるのか。
ここです。
例えば、
月5,000円のシステムを導入したことで、
毎日10分の作業がなくなったとします。
30日なら、
月300分。
5時間です。
仮に人件費を時給1,200円で考えれば、
それだけで6,000円分。
月5,000円払って、
6,000円分の作業を削減できるなら、
少なくとも人件費という観点では元が取れています。
しかも、
人間がやればミスが起こる。
確認作業も必要になる。
管理者の時間も使う。
そこまで考えれば、価値はさらに大きくなるかもしれません。
モバイルオーダーも同じです。
注文を取りに行く回数が減る。
聞き間違いが減る。
追加注文を取りやすくなる。
ホールスタッフの移動が減る。
その結果、
少ない人数で店を回せるのであれば、
月額料金以上の価値があります。
POSレジも、
単に会計する機械ではありません。
商品別売上。
時間帯別売上。
客単価。
販売数。
こうした数字を自動で蓄積して、
経営判断に使えるのであれば、
そこにも価値があります。
逆に問題なのは、
契約しているだけのシステムです。
データを見ていない。
機能を使っていない。
業務時間も減っていない。
売上も増えていない。
でも毎月料金だけ払っている。
これは単純な固定費です。
だから私は、
システムを導入するときに、
「月額5,000円だから安い」
とは考えません。
逆に、
「月額3万円だから高い」
とも考えません。
見るべきなのは、
その3万円によって、何が変わるのか。
人件費が5万円減るなら安い。
売上が10万円増えるなら安い。
ミスによる損失が減るなら、それも価値です。
逆に、
月3,000円でも何も生み出していないなら、
その3,000円は高い。
つまり、
システム料金の高い・安いは、金額では決まりません。
そのシステムによって、
何時間削減できたのか。
何人で営業できるようになったのか。
客単価が上がったのか。
ミスが減ったのか。
売上が増えたのか。
そして最終的に、
何円の利益を生んだのか。
ここまで見る必要があります。
便利そうだから契約する。
みんな使っているから契約する。
月数千円だから、とりあえず残しておく。
これを繰り返せば、
固定費は静かに膨らんでいきます。
これからの飲食店経営では、
システムをたくさん入れることがDXではありません。
人がやらなくていい仕事をシステムに任せて、利益を増やす。
そこまでできて初めて、
システムにお金を払う意味があるんです。
第7章、第五の変化、広告費まで「継続課金」になった。

そしてもう一つ、
飲食店のお金の使い方で大きく変わったものがあります。
広告費です。
昔の飲食店広告といえば、
チラシを撒く。
看板を出す。
地域情報誌に掲載する。
クーポンを配る。
こうした単発型の広告も多くありました。
もちろん今でも使われています。
ただ現在は、
Instagram。
Google。
グルメサイト。
LINE。
インフルエンサー。
さまざまな媒体を継続的に運用する店が増えています。
月1万円。
月3万円。
月5万円。
一つひとつはそれほど大きくなくても、
毎月払い続ければ立派な固定費になります。
ただ、ここでも私は、
広告費を減らせばいいとは考えていません。
むしろ広告は、
正しく使えば売上を作るための投資です。
重要なのは、
1万円使って、何円の売上と粗利を生んだのか。
ここです。
例えば、
Instagram広告に1万円使った。
その広告から50人が来店した。
客単価が2,000円なら、
売上は10万円です。
でも、
「1万円で10万円売れた。10倍になった。」
これだけで喜んではいけません。
食材原価もあります。
人件費もあります。
決済手数料もあります。
場合によってはクーポン値引きもあります。
だから本当に見るべきなのは、
広告費に対して、最終的にどれだけ利益が増えたのか。
さらに飲食店の場合、
一回来店して終わりとは限りません。
広告で初回来店したお客様が、
二回来る。
三回来る。
常連になる。
家族や友人を連れてくる。
そうなれば、
最初の1万円が生み出す価値はもっと大きくなります。
つまり広告を見るときには、
その日の売上だけではなく、
顧客獲得コストと、その後のお客様の価値
まで考える必要があります。
そして現代の広告には、
昔にはなかった大きなメリットがあります。
数字を測りやすいことです。
何人に表示されたのか。
何人がクリックしたのか。
いくらで一人をサイトへ連れてきたのか。
クーポンを何人が使ったのか。
LINEに何人登録したのか。
すべてを完璧に追跡できるわけではありません。
それでも、
昔のチラシや看板だけの時代と比べれば、
広告の効果をかなり細かく確認できるようになりました。
だから、
毎月広告費を払うこと自体が問題なのではありません。
問題なのは、
効果を測らないまま、毎月払い続けることです。
去年もやっていたから。
営業マンに勧められたから。
他の店もやっているから。
何となく止めるのが怖いから。
これでは広告ではなく、
ただの固定費になってしまいます。
広告費は、
使った瞬間に消える経費ではありません。
利益を増やすために投入する投資です。
1万円払って、
何人のお客様を獲得できたのか。
何円の売上になったのか。
何円の粗利になったのか。
そして、そのお客様がその後何回来てくれたのか。
そこまで測る。
広告費が高いか安いかではありません。
払った金額以上の価値を生み出しているのか。
これが、広告費を判断する基準なんです。
第8章 月商500万円の店から、実際にいくら外部へ支払っているのか

ここまで、
キャッシュレス。
グルメサイト。
デリバリー。
広告。
POS。
予約システム。
さまざまな外部サービスへの支払いを見てきました。
では実際に、
月商500万円の飲食店では、どれくらいのお金が外へ出ていくのでしょうか。
ここからは、一つのモデル店舗を作って計算してみます。
月商500万円の内訳
今回は、
店内売上400万円。
デリバリー売上100万円。
という店舗を想定します。
| 売上区分 | 月間売上 | 構成比 |
|---|---|---|
| 店内売上 | 4,000,000円 | 80% |
| デリバリー売上 | 1,000,000円 | 20% |
| 合計 | 5,000,000円 | 100% |
まず重要なのは、
500万円すべてが、同じ条件で店に残る売上ではない
ということです。
デリバリー100万円から35万円が出ていく
まず大きいのが、
デリバリープラットフォームです。
今回は、
デリバリー売上100万円。
手数料を35%として計算します。
1,000,000円 × 35%=350,000円。
| デリバリー | 金額 |
|---|---|
| 売上 | 1,000,000円 |
| プラットフォーム手数料 | ▲350,000円 |
| 手数料控除後 | 650,000円 |
100万円売っても、
プラットフォームへの支払いだけで、
35万円。
もちろん、
残った65万円が利益ではありません。
ここから商品原価や容器代、人件費なども発生します。
グルメサイトは月49,500円
次にグルメサイトです。
今回は、
掲載料を、
15,000円+消費税=16,500円。
さらに、
グルメサイト経由で月150人が来店するとします。
送客手数料を、
1人200円+消費税=220円
とすると、
220円 × 150人=33,000円。
| グルメサイト | 月額 |
|---|---|
| 掲載料 | 16,500円 |
| 送客手数料(150人) | 33,000円 |
| 合計 | 49,500円 |
年間なら、
594,000円。
これも毎月、店から外へ出ていくお金です。
広告費は月10万円
さらに、
お客様に店を知ってもらうための広告。
今回はInstagram広告に、
月100,000円
を使うとします。
月商500万円に対して、
2%です。
もちろん、
広告費は悪い経費ではありません。
10万円使って、
それ以上の利益を生み出しているのであれば、
必要な投資です。
ただし、
毎月10万円が外へ出ている
ことには変わりません。
ここまでで、
デリバリー350,000円
+グルメサイト49,500円
+広告100,000円
合計、
499,500円。
すでに約50万円です。
さらに、店舗を支える外部サービスがある
今の飲食店では、
売上を作るサービスだけでなく、
店舗運営そのものにも、
さまざまな外部サービスを利用します。
今回のモデルでは、
| 外部サービス | 月額 |
|---|---|
| Dinii | 53,900円 |
| タイミー | 48,223円 |
| セキュリティ | 20,000円 |
| 予約システム | 16,500円 |
| 店舗保険 | 10,000円 |
| サーバー | 2,772円 |
| 合計 | 151,395円 |
先ほどの499,500円と合わせると、
650,895円。
でも、
まだキャッシュレス決済手数料が入っていません。
店内400万円の54%がキャッシュレス
店内売上400万円のうち、
54%がキャッシュレス決済だとします。
すると、
4,000,000円 × 54%=2,160,000円。
決済手数料を3.24%とすると、
2,160,000円 × 3.24%=69,984円。
| キャッシュレス決済 | 金額 |
|---|---|
| 店内売上 | 4,000,000円 |
| キャッシュレス比率 | 54% |
| キャッシュレス決済額 | 2,160,000円 |
| 決済手数料率 | 3.24% |
| 決済手数料 | 69,984円 |
キャッシュレス決済だけでも、
毎月約7万円です。
外部への支払いは、月720,879円
では、
ここまでの支払いを全部まとめます。
| 外部への支払い | 月額 |
|---|---|
| デリバリープラットフォーム | 350,000円 |
| Instagram広告 | 100,000円 |
| キャッシュレス決済 | 69,984円 |
| Dinii | 53,900円 |
| グルメサイト | 49,500円 |
| タイミー | 48,223円 |
| セキュリティ | 20,000円 |
| 予約システム | 16,500円 |
| 店舗保険 | 10,000円 |
| サーバー | 2,772円 |
| 合計 | 720,879円 |
月商500万円に対して、
約14.4%。
年間では、
8,650,548円。
約865万円です。
もちろん、
この72万円すべてが、
「無駄な手数料」
という意味ではありません。
デリバリーによって生まれた売上もあります。
広告によって獲得できたお客様もいます。
システムによって削減できた仕事もあります。
セキュリティや保険のように、
店舗運営に必要な支払いもあります。
また、
すべての飲食店が、
今回と同じサービスを利用しているわけでもありません。
したがって、
「飲食店は平均14.4%を外部へ払っている」
という話ではありません。
あくまで、
今回設定した月商500万円のモデル店舗で、
実際に起こり得る支払いを積み上げた結果です。
でも、本当に見るべきなのはここからです
外部への支払いが、
月約72万円。
これだけでも大きな数字です。
しかし、
飲食店には当然、
それ以前に大きな店舗経費があります。
食材原価。
人件費。
家賃。
いわゆる、
FLRです。
今回は、
次のような店舗を想定します。
| 項目 | 売上比 | 月額 |
|---|---|---|
| 食材原価(F) | 32% | 1,600,000円 |
| 人件費(L) | 30% | 1,500,000円 |
| 家賃(R) | 8% | 400,000円 |
| FLR合計 | 70% | 3,500,000円 |
月商500万円に対して、
FLRで350万円。
ここへ、
先ほどの外部支払い、
720,879円
を加えてみます。
| 月商500万円の構造 | 金額 | 売上比 |
|---|---|---|
| 売上 | 5,000,000円 | 100% |
| FLR | ▲3,500,000円 | 70.0% |
| 外部支払い | ▲720,879円 | 14.4% |
| ここまでの残額 | 779,121円 | 15.6% |
つまり、
FLR70%+外部支払い14.4%=約84.4%。
月商500万円あっても、
ここまでで残るのは779,121円。
約78万円です。
でも、この78万円は「利益」ではない
ここを間違えてはいけません。
まだ、
水道光熱費
を入れていません。
さらに、
消耗品。
修繕費。
清掃費。
通信費。
その他の店舗経費。
などが発生する店もあります。
つまり、
500万円売った。
そこから、
FLRで350万円。
さらに、
外部への支払いで約72万円。
その時点で、
約78万円。
そして、
そこからまだ店舗経費が出ていく。
これが実際の飲食店経営です。
さらに「利益」と「会社に残る現金」は違う
そして、
もう一段考えなければならないことがあります。
それが、
利益とキャッシュは違う
ということです。
例えば、
借入金の返済。
借入元本の返済は、
通常の店舗経費と同じように利益計算から引くものではありません。
しかし、
会社の口座から現金は出ていきます。
そして、
税金もあります。
法人税などは、
利益が出れば発生します。
さらに、
課税事業者であれば、
消費税の納付
もあります。
消費税は単純に、
「500万円売ったから50万円払う」
というものではありません。
売上で預かった消費税から、
仕入れや対象経費などで支払った控除可能な消費税を差し引くなどして、
納付額が決まります。
だから、
今回のモデルでは、
税金や消費税について、
無理に一つの金額を設定しません。
ただし、
経営者として重要なのは、
PL上で利益が出ているからといって、その金額がそのまま会社の口座に残るわけではない
ということです。
店舗経費を払う。
外部サービスへ払う。
税金を払う。
消費税を納付する。
借入金を返済する。
そうして初めて、
会社に本当に残るキャッシュ
が見えてきます。
では、経営者は何を変えられるのか
ここまで数字を並べると、
一つの問題が見えてきます。
原価32%。
これを無理に25%まで落とせば、
料理の品質やボリュームを落としてしまう可能性があります。
家賃8%。
これは、
来月から簡単に6%へ下げられるものではありません。
デリバリー手数料も、
決済手数料も、
店側が自由に料率を決められるわけではありません。
水道光熱費にも、
削減できる限界があります。
税金や消費税は、
当然払わなければなりません。
では、
経営者自身が改善できる大きな数字はどこにあるのでしょうか。
その一つが、
人件費です。
今回のモデルでは、
人件費率30%。
月額、
150万円。
ただし、
ここで言いたいのは、
人を減らせ。
時給を下げろ。
という話ではありません。
重要なのは、
同じ売上を作るために必要な「人時」を減らすことです。
人件費30%を28%にできれば、年間120万円変わる
例えば、
月商500万円を維持したまま、
オペレーション改善によって、
人件費率を30%から28%へ改善できたとします。
| 人件費率 | 月額 | 年間 |
|---|---|---|
| 30% | 1,500,000円 | 18,000,000円 |
| 28% | 1,400,000円 | 16,800,000円 |
| 改善額 | 100,000円 | 1,200,000円 |
たった2ポイントでも、
年間120万円変わります。
さらに、
25%まで改善できれば、
月125万円。
30%との差は、
月25万円。
年間なら、
300万円です。
もちろん、
無理な人員削減によって、
提供が遅くなる。
サービスが悪くなる。
スタッフが疲弊する。
売上が落ちる。
これでは意味がありません。
だから、
削るべきなのは、
人ではありません。
仕事です。
人を減らすのではなく、仕事を減らす
注文を取りに行く。
会計をする。
予約電話を取る。
売上を転記する。
同じ情報を何度も入力する。
必要以上に複雑な仕込みをする。
メニューが多すぎる。
厨房とホールを何度も往復する。
こうした仕事を、
一つずつ減らしていく。
モバイルオーダー。
セルフ会計。
予約システム。
POS。
メニューの整理。
仕込み工程の見直し。
厨房・ホールの動線改善。
シフト設計。
こうした施策によって、
同じ500万円を、より少ない総労働時間で作れる店にする。
これが、
人件費を圧縮するということです。
外部サービスへ払うなら、人時を減らす
そして、
ここでこの記事のテーマである、
「手数料」
に戻ります。
例えば、
POSやモバイルオーダーに、
毎月お金を払う。
それ自体は、
外部コストを増やしています。
でも、
そのシステムによって、
注文を取りに行く時間が減った。
会計時間が減った。
予約管理が減った。
売上集計が減った。
その結果、
必要な総労働時間が減った。
のであれば、
その外部コストには意味があります。
逆に、
システムを導入した。
毎月利用料も払っている。
でも、
必要な人数は変わらない。
総労働時間も変わらない。
人件費も変わらない。
それなら、
何のためにそのお金を払っているのか
を考える必要があります。
外部サービスを導入する目的は、
「便利になること」
だけではありません。
店の生産性を上げること。
ここまで考える必要があります。
月商500万円より、「500万円をどう作ったか」
今回のモデルでは、
月商500万円。
FLR70%で、
350万円。
外部への支払いが、
約72万円。
ここまでで、
約78万円。
さらに、
水道光熱費やその他経費。
そして、
税金。
消費税。
借入返済。
こうした支払いがあります。
だから、
これからの飲食店経営では、
「月商500万円あります」
だけでは、
経営状態はほとんど分かりません。
本当に見るべきなのは、
500万円を作るために、いくら使ったのか。
そして、
何時間使ったのか。
最後に、
会社へいくらキャッシュを残せたのか。
ここです。
外部への支払いが増えた時代だからこそ、
外部サービスを全部やめるのではなく、
外部の力を使って、店の中の仕事を減らす。
そして、
同じ売上を、より少ない総労働時間で作る。
売上を追うだけではなく、
生産性を高めて、利益とキャッシュを残す。
これが、
今の飲食店経営で、
以前にも増して重要になっているのではないでしょうか。
第9章、手数料は必要経費なのか。それとも飲食業界は外部に依存しすぎたのか。

ここまで、
キャッシュレス。
予約サイト。
デリバリー。
広告。
POS。
モバイルオーダー。
さまざまな手数料を見てきました。
もちろん、それぞれ便利です。
手数料を払うことで売上が増えることもある。
人件費が減ることもある。
新しいお客様と出会えることもある。
だから、
「利益が残るなら払えばいい」
という考え方もできます。
でも私は、
それだけで、この問題を終わらせてはいけないと思っています。
そもそも、
なぜ飲食店はこれほど多くの外部企業にお金を払わなければ、
商売ができない構造になったのでしょうか。
予約。
集客。
決済。
注文。
配達。
顧客管理。
広告。
一つずつ外部サービスに任せてきました。
もちろん、その時々では合理的な判断だったと思います。
自社で作るより、
既にある便利なサービスを使った方が早い。
しかし、それを何年も積み重ねた結果、
飲食店の売上の周りに、たくさんの外部企業が存在する構造ができました。
ここは一度、考える必要があります。
飲食店は、
店舗を借りる。
厨房設備を用意する。
人を雇う。
食材を仕入れる。
料理を作る。
接客する。
食中毒などのリスクも負う。
売れなければ、その損失も自分たちで背負う。
商売の一番重たい部分を、
飲食店が担っています。
ところが商品が売れた瞬間、
決済で数%。
予約で数百円。
デリバリーなら数十%。
さらに広告やシステムにも継続的にお金を払う。
そう考えると、
飲食業界は、自分たちが作った売上を外部産業へ流出させすぎているのではないか。
私はそう思っています。
もちろん、
だから明日から全部やめよう、
という話ではありません。
現実には、
Googleも使う。
Instagramも使う。
キャッシュレスも使う。
デリバリーも使う。
必要なサービスは利用すればいい。
でも同時に、
外部サービスに依存しなくても売上を作れる仕組みを、自分たちで持つべきです。
例えば予約。
グルメサイトからしか予約が取れない店ではなく、
Google。
Instagram。
自社サイト。
LINE。
直接予約できる経路を育てる。
顧客との関係も同じです。
一回来店したお客様と、
外部プラットフォームを通さなければ二度と接点を持てない。
そんな状態にしない。
自社でお客様との接点を持つ。
そして本来なら、
これは一店舗だけの問題でもなかったのかもしれません。
飲食業界全体で、
予約。
集客。
顧客管理。
共同配送。
共同購買。
こうした仕組みをもっと早く作っていれば、
現在とは違う産業構造になっていた可能性もあります。
飲食店は料理を作るプロです。
でも、
料理を作ることだけに集中しすぎた結果、その周りの利益を生む仕組みを他の業界に作られてしまった。
ここは、飲食業界として反省すべき部分もあると思っています。
だから私は、
手数料を全部否定したいわけではありません。
便利なサービスには、当然対価が必要です。
ただし、
「便利だから払い続ける」ことと、「依存する」ことは違います。
使えるものは使う。
でも、自分たちでも顧客を集める。
自分たちでも予約を取る。
自分たちでも顧客との関係を作る。
そして少しずつ、
外部に流れていた利益を、自社の中へ戻していく。
これから飲食店が考えるべきなのは、
「どの手数料を削るか」だけではありません。
自分たちが失ってしまった機能を、どこまで取り戻せるのか。
そして業界全体として、
外部企業に依存し続けなくても商売ができる仕組みを作れるのか。
ここまで考えなければ、
飲食店の利益率はいつまで経っても上がらない。
私はそう考えています。
第10章 「売上」ではなく「手数料控除後売上」で考える

第8章では、
月商500万円の店でも、
外部サービスへの支払い。
FLR。
水道光熱費などの店舗経費。
さらに税金や借入返済まで考えれば、
「500万円売った」という数字だけでは、経営状態は分からない
という話をしました。
では、これから飲食店経営者は、
何を見ればいいのでしょうか。
私は、
売上の大きさだけではなく、その売上がどれだけ利益を生んでいるのか
を見る必要があると思っています。
同じ100万円でも、価値は同じではない
例えば、
店内で100万円売る。
デリバリーで100万円売る。
帳簿上は、
どちらも100万円の売上です。
しかし、
利益構造はまったく違います。
今回のモデルでは、
デリバリー手数料を35%としています。
つまり、
| デリバリー | 金額 |
|---|---|
| 売上 | 1,000,000円 |
| プラットフォーム手数料 | ▲350,000円 |
| 手数料控除後 | 650,000円 |
100万円売っても、
プラットフォームへの支払いだけで35万円。
そこからさらに、
食材原価。
容器代。
追加人件費。
キャンペーン負担。
こうした費用が発生します。
だから、
「デリバリーで100万円売れた」
だけでは、
その100万円が良い売上だったのか分かりません。
見るべきなのは、
その100万円から最終的にいくら利益が残ったのか。
ここです。
キャッシュレス売上も、現金売上とは違う
店内売上でも同じです。
第8章では、
店内売上400万円のうち、
54%。
216万円がキャッシュレス決済
というモデルにしました。
決済手数料3.24%なら、
69,984円。
同じ216万円を売っても、
現金決済とキャッシュレス決済では、
店に残る金額が少し違います。
だからこれからは、
単純に、
「店内400万円、デリバリー100万円、合計500万円」
と見るだけでは足りません。
その売上が、
どこから生まれ、どんなコストを伴っているのか。
ここまで分解する必要があります。
さらに重要なのが「何時間で売ったのか」
そして、
もう一つ見なければならない数字があります。
それが、
人時です。
例えば、
同じ月商500万円の店が二店舗あったとします。
A店は、
月間5,000時間の労働時間を使って500万円を売る。
B店は、
月間4,000時間で500万円を売る。
売上だけ見れば、
どちらも500万円です。
しかし、
人時売上高を計算すると、
| A店 | B店 | |
|---|---|---|
| 月商 | 500万円 | 500万円 |
| 総労働時間 | 5,000時間 | 4,000時間 |
| 人時売上高 | 1,000円 | 1,250円 |
同じ500万円でも、
経営の中身はまったく違います。
B店は、
A店より1,000時間少ない労働時間で、
同じ500万円を作っています。
これが、
人時生産性の違いです。
人件費を下げるのではなく、必要人時を減らす
ここを間違えてはいけません。
人件費を圧縮すると聞くと、
人を減らす。
時給を下げる。
少ない人数に無理をさせる。
そんな話に聞こえるかもしれません。
私が言いたいのは、
そういうことではありません。
重要なのは、
人がやらなくてもいい仕事を減らすことです。
注文を取りに行く。
会計する。
予約電話に対応する。
売上を転記する。
シフトを手作業で作る。
同じ情報を何度も入力する。
こうした仕事を減らせれば、
スタッフ一人ひとりの負担を増やさなくても、
必要な総労働時間を減らすことができます。
つまり、
人件費を削るのではなく、仕事そのものを削る。
この発想が必要です。
外部サービスへの支払いは、人時まで含めて判断する
ここで、
この記事のテーマである「手数料」に戻ります。
例えば、
POSやモバイルオーダーに、
月5万円払っているとします。
5万円だけ見れば、
経費が増えています。
でも、
そのシステムによって、
月100時間の作業を削減できたとしたらどうでしょうか。
仮に1時間あたりの人件費が1,300円なら、
100時間 × 1,300円=130,000円。
5万円を払って、
13万円分の人時を削減できた。
単純化すれば、
差し引き8万円分の改善余地
があります。
この5万円は、
単なる「高い手数料」とは言えません。
逆に、
月5万円のシステムを導入した。
でも、
必要な人数も変わらない。
総労働時間も変わらない。
売上も増えない。
利益も増えない。
それなら、
何のために毎月5万円払っているのか
を考える必要があります。
売上を増やすだけが利益改善ではない
飲食店では、
売上を伸ばすことばかり考えがちです。
500万円を、
550万円にする。
600万円にする。
もちろん、
売上を伸ばすことは重要です。
でも、
利益を増やす方法はそれだけではありません。
例えば、
月商500万円を維持したまま、
必要な総労働時間を減らす。
オペレーションを改善する。
仕込みを簡素化する。
メニューを整理する。
ピーク時の配置を変える。
セルフ化する。
システムを活用する。
こうした改善によって、
同じ500万円を、より少ないコストで作る。
これも立派な利益改善です。
むしろ、
人口減少と人手不足が進み、
人件費も上がっていく環境では、
売上を増やすことと同じくらい重要になる
と私は考えています。
「月商500万円」から一歩先を見る
だから、
これから飲食店経営者が見るべき数字は、
月商だけではありません。
例えば、
| 見る数字 | 分かること |
|---|---|
| 売上 | いくら売ったか |
| 売上経路 | どこから売上が生まれたか |
| 手数料控除後売上 | 外部へ払ったあと、いくら残ったか |
| 粗利 | 商品からいくら残ったか |
| 人件費 | 労働にいくら使ったか |
| 総労働時間 | 何時間使って売上を作ったか |
| 人時売上高 | 1時間でいくら売ったか |
| 利益 | 最終的に商売としていくら残ったか |
こうして見ると、
「月商500万円」という数字は、
経営を見るための入口にすぎません。
本当に知りたいのは、
500万円を作るために、何円使ったのか。
そして、
何時間使ったのか。
その結果、
いくら利益を残せたのか。
ここです。
売上の大きさではなく、売上の質を見る
手数料が増えたから、
すべての外部サービスをやめる。
これは現実的ではありません。
むしろ、
外部サービスを使うことで、
売上が増える。
仕事が減る。
必要人時が減る。
利益が増える。
のであれば、
積極的に使えばいい。
だからこれからは、
「手数料が高いか、安いか」
だけで判断しない。
その手数料を払った結果、
売上はいくら増えたのか。
利益はいくら増えたのか。
何時間の仕事を減らせたのか。
ここまで見る。
月商500万円を、
600万円にすることだけが経営ではありません。
500万円を、より少ない総労働時間で作る。
そして、
同じ売上から、より多くの利益を残す。
売上の大きさではなく、
売上の質を高める。
手数料が増え、
人件費も上がる時代だからこそ、
この考え方が、
これからの飲食店経営では重要になってくると思います。
第11章 小さな店ほど「数%」を甘く見てはいけない

飲食店の経費を見ていると、
3%。
5%。
月3万円。
月5万円。
一つひとつは、それほど大きな数字には見えません。
でも、
小さな飲食店ほど、この「少しずつ」を甘く見てはいけません。
第8章で計算した月商500万円の店を、もう一度見てみます。
店内売上400万円。
デリバリー売上100万円。
そして、
デリバリー手数料。
キャッシュレス決済手数料。
グルメサイト。
広告費。
POSなどのシステム利用料。
予約システム。
セキュリティ。
その他の外部サービス。
これらを積み上げると、
月720,879円。
売上500万円に対して、
約14.4%。
では、これを年間にするとどうなるでしょうか。
720,879円 × 12か月=8,650,548円。
約865万円です。
年間売上で考えれば、
500万円 × 12か月=6,000万円。
年間6,000万円を売る店から、
今回のモデルでは、
約865万円が外部へ支払われる。
もちろん、この865万円がすべて無駄な経費という話ではありません。
デリバリーを使ったから生まれた売上もある。
広告を出したから来てくれたお客様もいる。
POSや予約システムによって、人件費や作業時間を削減できているかもしれない。
セキュリティや保険のように、店舗を守るために必要な費用もあります。
だから、
「865万円も取られている。全部やめよう」
という話ではありません。
私が怖いと思うのは、
経営者が、その合計額を知らないことです。
デリバリー35%。
決済3.24%。
予約1人220円。
月額16,500円。
月額53,900円。
一つずつ契約していると、
それぞれ別の経費に見えます。
だから、
「これは必要。」
「これくらいなら安い。」
「月2万円くらいなら。」
「数%なら仕方ない。」
そうやって判断してしまう。
でも経営では、
最後に全部合算されます。
一社に72万円払っているわけではありません。
いろんな会社へ、
数千円。
数万円。
数%。
少しずつ支払っている。
その合計が、
月720,879円。
そして年間では、
約865万円。
ここが、「数%」の怖さです。
さらに重要なのは、
この金額を売上だけと比較しないことです。
仮に月商500万円の店で、
すべての経費を払ったあとに残る利益が月30万円だったとします。
そこで、
月5万円のサービスを一つ増やす。
売上500万円から見れば、
わずか1%です。
でも、
利益30万円から見れば、
約16.7%。
月10万円なら、
売上から見れば2%ですが、
利益から見れば、
約33%です。
飲食店で怖いのはここです。
売上に対する数%と、利益に対する数%は、まったく意味が違う。
飲食店は、
売上のすべてが利益になる商売ではありません。
食材費。
人件費。
家賃。
水道光熱費。
そして今回見てきた、
さまざまな外部サービスへの支払い。
それらを全部払って、
最後に残ったものが利益です。
だから、
売上から数%抜けるということは、
最後に残る利益から見れば、非常に大きな金額になることがある。
特に小さな飲食店では、
その数万円が、
そのまま経営者の所得や、
会社に残せる現金を減らします。
月3万円なら、
年間36万円。
月5万円なら、
年間60万円。
月10万円なら、
年間120万円。
そして今回のモデルのように、
それらを全部積み上げれば、
年間数百万円という金額になることもある。
だから小さな店ほど、
手数料や月額サービスを見るときに、
「何%だから」
「月いくらだから」
だけで判断してはいけません。
必ず、
年間いくら払うのか。
そして、
その金額は、自分の利益の何%なのか。
ここまで見る。
さらに、
その支払いによって、
売上はいくら増えたのか。
人件費はいくら減ったのか。
作業時間はいくら減ったのか。
新しいお客様を何人獲得できたのか。
そこまで確認する必要があります。
小さな飲食店にとって、
「たった数%」は誤差ではありません。
その積み重ねが、
最後に残る利益そのものを左右します。
だからこそ、
小さな店ほど、
一つひとつの金額ではなく、全部を足した金額を見る。
そして、
売上ではなく、利益に対してどれだけ重いのかを見る。
これが、
手数料が増えた時代の飲食店経営では、非常に重要だと思っています。
第12章 手数料には「良い手数料」と「悪い手数料」がある

ここまで読むと、
「結局、手数料はできるだけ削った方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
でも、私はそうは考えていません。
第8章のモデルでは、
月商500万円に対して、
外部への支払いは月720,879円。
年間では、
約865万円。
確かに大きな金額です。
しかし、
この約865万円を全部なくせば、そのまま利益が865万円増えるわけではありません。
なぜなら、
その支払いによって生まれている売上や、削減できている仕事があるからです。
重要なのは、
手数料を払っているかどうかではありません。
払った結果、店に何が残ったのか。
ここです。
35万円のデリバリー手数料は、本当に高いのか
今回のモデルでは、
デリバリー売上100万円に対して、
35万円のプラットフォーム手数料
を支払っています。
35万円だけを見れば、
かなり大きな金額です。
でも、そのプラットフォームを使わなければ、
100万円の売上そのものが存在しなかったかもしれません。
自社で配達員を雇わない。
注文システムも作らない。
決済システムも作らない。
それでも、
店の外に新しい売場を作ることができる。
そして、
35万円を払ったあとに、
商品原価。
容器代。
追加人件費。
キャンペーン負担。
これらを差し引いても十分な利益が残るのであれば、
35万円は単なる「取られた手数料」ではありません。
売上と利益を作るために使ったコストです。
逆に、
100万円売れている。
でも、
全部のコストを引けばほとんど利益が残らない。
それなら、
価格設計や商品構成そのものを見直す必要があります。
だから、
35%という数字だけで、高い・安いを判断することはできません。
広告費も「使った金額」だけでは判断できない
広告も同じです。
今回のモデルでは、
Instagram広告に、
月10万円
を使っています。
10万円という経費だけを見れば、
当然、利益を圧迫します。
でも、
その10万円によって新しいお客様を獲得し、
結果として30万円の利益が増えているのであれば、
削るべき経費ではありません。
むしろ、
さらに広告を増やした方がいい可能性もあります。
逆に、
毎月10万円使っている。
でも、
何人来店したのか分からない。
いくら売れたのか分からない。
利益がいくら増えたのかも分からない。
それなら、
「広告をやっている」という安心感に、毎月10万円払っているだけ
になっている可能性があります。
見るべきなのは、
広告費の金額ではありません。
その10万円が、いくらの利益を生んだのか。
ここです。
そして今後、もう一つ重要になるのが「人時」
ここまでは、
手数料を払って、
売上が増えたのか。
利益が増えたのか。
という話でした。
でも第10章で見たように、
これからの飲食店では、
もう一つ重要な判断基準があります。
それが、
「何時間の仕事を減らせたのか」
です。
例えば、
POSやモバイルオーダーに、
月5万円を払っているとします。
その5万円によって、
注文。
会計。
予約管理。
売上集計。
こうした作業を、
月100時間減らせたとします。
1時間あたりの人件費を1,300円とすれば、
100時間 × 1,300円=130,000円。
月5万円を払って、
13万円分の人時を削減できた。
単純化すれば、
差し引き8万円分の改善余地があります。
この5万円は、
単なるコストではありません。
人時生産性を上げるための投資
と考えることができます。
システムを入れただけでは、人件費は下がらない
ただし、
ここには大きな落とし穴があります。
モバイルオーダーを導入した。
POSを入れた。
予約システムを入れた。
セルフレジを入れた。
だから、
人件費が下がる。
そんなに簡単ではありません。
例えば、
モバイルオーダーによって注文を取りに行く仕事が減った。
でも、
ホールの人数は導入前と同じ。
総労働時間も同じ。
シフトも同じ。
それなら、
システム利用料が増えただけ
になっている可能性があります。
システムは、
導入しただけでは人時を削減してくれません。
導入した結果、
どの仕事がなくなったのか。
何分短縮できたのか。
その結果、
何時間シフトを減らせたのか。
ピーク時に必要な人数を減らせたのか。
ここまで変えて、
初めて人件費に反映されます。
だから重要なのは、
DXすることではありません。
DXした結果、
店の仕事をどう変えたのか。
ここです。
「人を減らす」と「人時を減らす」は違う
そして、
ここも非常に重要です。
人件費を圧縮するというと、
スタッフを減らす。
時給を下げる。
少ない人数で無理に営業する。
そんなイメージを持つかもしれません。
でも、
それでは店が疲弊します。
サービスが悪くなる。
料理提供が遅くなる。
スタッフが辞める。
結果として、
売上まで落ちる可能性があります。
目指すべきなのは、
人を無理に減らすことではありません。
人がやらなくてもいい仕事を減らす。
注文を取りに行く回数を減らす。
会計作業を減らす。
予約電話を減らす。
転記作業を減らす。
仕込み工程を減らす。
メニューを整理する。
動線を改善する。
そして、
同じ売上を作るために必要な総労働時間を減らす。
これが、
人時を減らすということです。
良い手数料には、三つの種類がある
ここまで整理すると、
私は「良い手数料」を、
大きく三つに分けて考えています。
| 良い外部コスト | 生み出すもの |
|---|---|
| 売上を作る | 新規客・新しい販売経路 |
| 利益を増やす | 粗利・客単価・リピート |
| 必要人時を減らす | 省力化・効率化・人時生産性 |
このどれかを、
明確に生み出しているのであれば、
外部へお金を払う意味があります。
逆に、
売上は増えていない。
利益も増えていない。
必要人時も減っていない。
それなのに、
毎月お金だけを払い続けている。
これは、
見直すべき外部コストです。
一番怖いのは「何となく払い続けている手数料」
例えば、
昔から契約しているから。
営業マンに勧められたから。
他店も使っているから。
解約するのが面倒だから。
何となく便利だから。
こうして外部サービスは、
少しずつ増えていきます。
月3,000円。
月1万円。
月5万円。
売上の3%。
予約一人220円。
一つひとつは、
それほど大きくありません。
でも第8章で見たように、
全部を積み上げれば、
今回のモデルでは、
月720,879円。
年間、
約865万円。
だからこそ、
一つひとつについて、
「これは何を生んでいるお金なのか?」
を確認する必要があります。
外部サービスを使いながら、自社にも資産を残す
さらに、
もう一つ重要なことがあります。
外部サービスを使って売上を作ること自体は、
悪いことではありません。
グルメサイトから、
新しいお客様に来てもらう。
広告から、
店を知ってもらう。
デリバリーから、
初めて料理を食べてもらう。
入口は外部でも構いません。
でも、
そのお客様と、
二回目も三回目も、
ずっと外部サービス越しにしかつながれない。
これは考える必要があります。
一度来てくれたお客様に、
LINEなどへ登録してもらう。
店名を覚えてもらう。
直接検索してもらう。
直接予約してもらう。
再来店してもらう。
そうすれば、
最初に払った外部コストが、自社の顧客資産へ変わっていきます。
外部サービスを使う。
でも、
依存はしない。
この考え方が重要です。
「良い手数料」と「悪い手数料」の違い
結局、
良い手数料と悪い手数料の違いは、
金額ではありません。
3%だから悪い。
35%だから悪い。
月5万円だから高い。
そういう話ではありません。
判断基準は、
もっとシンプルです。
払ったお金以上の価値を、店に残しているか。
売上を増やした。
利益を増やした。
必要人時を減らした。
お客様との関係を自社に残した。
こうした結果があるのであれば、
払う価値があります。
逆に、
何を生んでいるのか分からない。
人時も減っていない。
利益も増えていない。
ただ毎月引き落とされている。
それなら、
見直す必要があります。
手数料を払わない店を目指すのではありません。
払う価値のあるものには払う。
そして、
外部へお金を払うのであれば、
売上、利益、人時生産性のどれかを必ず改善させる。
これが、
手数料が当たり前になった時代の飲食店経営では、
ますます重要になっていると思います。
第13章 飲食店の周囲は、さらに「プラットフォーム化」する

ここまで見てきたように、
今の飲食店は、
料理を作って、お客様に提供する。
それだけでは商売が完結しなくなっています。
キャッシュレス決済。
グルメサイト。
デリバリー。
広告。
POS。
モバイルオーダー。
予約システム。
こうした外部サービスが、
飲食店経営の中に深く入り込んでいます。
そして私は、
この流れは今後さらに進んでいく
と考えています。
お客様と店の間に、多くのサービスが入るようになった
以前なら、
店の前を通る。
看板を見る。
店に入る。
料理を食べる。
現金で支払う。
これだけで商売が成立していました。
でも今は違います。
Googleで店を探す。
Instagramで料理を見る。
グルメサイトで比較する。
予約サイトから席を予約する。
店ではキャッシュレスで支払う。
自宅ならデリバリーで注文する。
つまり、
お客様が店を知ってから、お金を払うまでの間に、いくつもの外部サービスが存在するようになった
ということです。
便利になりました。
その一方で、
店から外へ支払うお金も増えました。
月商500万円の14.4%が外部へ出るモデル
第8章で、
具体的に計算しました。
今回のモデルは、
月商500万円。
そのうち、
店内売上400万円。
デリバリー売上100万円。
そして、
外部サービスなどへの支払いを積み上げると、
月720,879円。
売上の、
約14.4%。
年間では、
約865万円。
ただし、
これは飲食店全体の平均ではありません。
今回設定したモデル店舗での試算です。
それでも重要なのは、
FLRとは別に、これだけの外部支払いが発生する店舗モデルが現実に成立する
ということです。
第8章では、
FLRを70%としました。
| 項目 | 金額 | 売上比 |
|---|---|---|
| 月商 | 5,000,000円 | 100% |
| FLR | ▲3,500,000円 | 70.0% |
| 外部支払い | ▲720,879円 | 14.4% |
| ここまでの残額 | 779,121円 | 15.6% |
つまり、
FLR70%+外部支払い14.4%=約84.4%。
ここまでで、
売上500万円から残るのは、
約78万円です。
しかも、
これが最終利益ではありません。
水道光熱費。
その他の店舗経費。
利益が出れば税負担。
さらにキャッシュフローでは、
消費税の納付や借入金の元本返済などもあります。
だから、
「月商500万円」という数字だけでは、その店がどれだけ儲かっているのかは分かりません。
これから外部サービスは減るのか
では、
こうした外部サービスは今後減っていくのでしょうか。
私は、
逆だと思っています。
飲食店の人手不足が進めば、
省人化サービスが増える。
人件費が上がれば、
セルフ化や自動化が進む。
集客競争が激しくなれば、
新しい広告サービスが出てくる。
予約管理。
顧客管理。
発注。
勤怠。
シフト作成。
売上分析。
さまざまな業務が、
外部のシステムへ置き換わっていくでしょう。
さらに、
AIも入ってきます。
これまで人がやっていた仕事の一部を、
外部のシステムやAIへ任せる。
そうなれば、
人件費とは別に「システムへ払うお金」が増えていく可能性があります。
問題は「外部コストが増えること」ではない
ここまで読むと、
「じゃあ外部サービスを使わない方がいい」
という話に聞こえるかもしれません。
でも、
そうではありません。
むしろこれからは、
外部サービスを使った方が強い店も増える
と思います。
例えば、
月5万円のシステムを導入して、
月10万円分の人時を削減できる。
それなら、
店全体では利益が改善します。
外部コストは、
5万円増えています。
でも内部コストは、
10万円減っています。
結果として、
5万円改善する。
つまり、
外部への支払いが増えること自体が、
悪いわけではありません。
重要なのは、
外部コストを増やした結果、店全体のコストがどう変わったのか。
ここです。
外部サービスを使って「仕事」を減らす
これから飲食店が考えなければならないのは、
外部サービスを使うか、使わないか。
という二択ではありません。
外部サービスを使って、店の中の何をなくすのか。
ここです。
モバイルオーダーを導入した。
なら、
注文を取りに行く仕事をどれだけ減らせたのか。
セルフレジを導入した。
なら、
会計に必要だった時間をどれだけ減らせたのか。
予約システムを導入した。
なら、
電話対応を何時間減らせたのか。
POSを導入した。
なら、
集計や分析の作業を何時間減らせたのか。
システム利用料を払っているのに、
以前と同じ人数。
以前と同じ労働時間。
以前と同じ仕事。
これでは、
外部コストが上乗せされただけ
になってしまいます。
プラットフォーム化と人件費は、別々の問題ではない
ここが、
これからの飲食店経営で重要だと思います。
外部サービスへの支払いが増えている。
人件費も上がっている。
この二つを、
別々の問題として考えない。
むしろ、
外部サービスへの支払いを使って、人時を減らす。
この発想が必要です。
例えば、
人件費150万円。
システム利用料5万円。
合計155万円。
一見すると、
システムを入れたことで経費が増えています。
でも、
そのシステムによって必要人時を減らし、
人件費を140万円にできたなら、
140万円+5万円=145万円。
導入前の150万円より、
店全体では5万円下がります。
見るべきなのは、
システム利用料5万円ではありません。
店全体でいくら残るようになったのか。
ここなんです。
ただし、プラットフォームへの依存には注意が必要
一方で、
外部サービスには、
もう一つ考えなければならない問題があります。
それが、
依存です。
新規集客も外部。
予約も外部。
注文も外部。
決済も外部。
顧客情報も外部。
再来店も外部。
すべてを外部サービスに依存すると、
サービスを止めた瞬間に、
売上まで落ちる可能性があります。
手数料が上がっても、
やめられない。
ルールが変わっても、
従うしかない。
これは、
外部サービスを利用している状態から、
外部サービスに経営を握られている状態
へ変わってしまいます。
だから、
外部の力を借りながら、
自社にも何かを残していく必要があります。
外部から獲得して、自社に残す
Googleから知ってもらう。
Instagramから来てもらう。
グルメサイトから予約してもらう。
デリバリーで初めて商品を食べてもらう。
入口は、
外部サービスでも構いません。
でも、
一度来てくれたお客様に、
店名を覚えてもらう。
直接検索してもらう。
LINEなどでつながる。
直接予約してもらう。
再来店してもらう。
そうやって、
外部サービスから獲得したお客様を、自社の顧客資産へ変えていく。
これが重要です。
同時に、
外部のシステムを使って、
注文。
会計。
予約。
集計。
仕込み。
こうした店内業務を減らしていく。
つまり、
外部サービスを、
「集客の入口」と「省人化の道具」
として使う。
これから必要なのは「プラットフォームを使わない力」ではない
飲食店の周囲は、
これからさらにプラットフォーム化していくでしょう。
その流れそのものを、
店側が止めることは難しいと思います。
そして、
止める必要もありません。
重要なのは、
使われる側にならないことです。
外部サービスに、
いくら払っているのか。
その結果、
いくら売上が増えたのか。
いくら利益が増えたのか。
何時間の仕事が減ったのか。
必要人時は減ったのか。
そして、
自社に何が残ったのか。
ここまで見る。
便利だから使う。
みんな使っているから使う。
ではなく、
利益を残すために使う。
これからの飲食店に必要なのは、
プラットフォームを避ける力ではありません。
プラットフォームを使って、外部コスト以上に内部コストを改善する力。
そして、
外部の力を借りながら、
顧客と利益とノウハウを自社に残していく力。
外部サービスが増えていく時代だからこそ、
この二つが、
飲食店経営の大きな差になっていくと思います。
第14章 手数料を「経費」ではなく「投資」として管理する

ここまで見てきたように、
現在の飲食店経営では、
外部サービスを使わずに営業することは難しくなっています。
キャッシュレス。
グルメサイト。
デリバリー。
広告。
POS。
モバイルオーダー。
予約システム。
そして今後は、
AIを使った集客や予約、顧客管理なども増えていくでしょう。
問題は、
外部サービスを使うことではありません。
問題は、
そのお金が何を生み出しているのか分からないまま、払い続けることです。
月72万円を「全部削る」という話ではない
第8章のモデルでは、
月商500万円に対して、
外部への支払いは、
月720,879円。
年間では、
約865万円。
売上の約14.4%です。
かなり大きな金額です。
でも、
この72万円を全部なくせばいいわけではありません。
デリバリーをやめれば、
100万円の売上がなくなるかもしれない。
広告をやめれば、
新規客が減るかもしれない。
POSやモバイルオーダーをやめれば、
スタッフの仕事が増えるかもしれない。
予約システムをやめれば、
電話対応が増えるかもしれない。
だから、
「72万円も払っている。高い。」
だけでは、
経営判断としては不十分です。
見るべきなのは、
72万円を払って、何を得ているのか。
ここです。
外部への支払いを「投資」として見る
例えば、
Instagram広告に月10万円を使う。
これは会計上は広告宣伝費です。
でも経営判断としては、
10万円を使って、何円の利益を作ったのか
を見る必要があります。
同じように、
POSやモバイルオーダーに月5万円払う。
これも単なるシステム利用料として見るのではなく、
5万円を使って、何時間の仕事を減らしたのか
を見る。
デリバリーに35万円払うなら、
35万円を使って、最終的にいくらの利益を作ったのか
を見る。
つまり、
外部への支払いを、
単なる経費ではなく、
経営を改善するために投入したお金
として考えるんです。
投資効果は「売上」だけではない
ここは重要です。
外部サービスを評価するとき、
売上だけを見ると判断を間違えることがあります。
例えば、
システムを導入しても、
売上は1円も増えないかもしれません。
でも、
毎月100時間あった作業が、
50時間になった。
それなら、
50時間分の人時を削減できています。
あるいは、
予約電話が減った。
レジ締めが早くなった。
注文ミスが減った。
ピーク時に必要だったスタッフが、
5人から4人になった。
こうした改善も、
立派な投資効果です。
だから私は、
外部サービスを少なくとも、
次の視点で評価する必要があると思っています。
| 評価するもの | 確認すること |
|---|---|
| 売上 | 売上はいくら増えたか |
| 利益 | 最終的に利益はいくら増えたか |
| 人時 | 何時間の仕事を減らせたか |
| 人時生産性 | 1時間あたりの売上・粗利は改善したか |
| 顧客資産 | 再来店・直接予約・顧客接点につながったか |
このどれにも効果がないのであれば、
そのサービスは見直した方がいいかもしれません。
「便利になった」で終わらせない
飲食店のDXで、
意外と起こりやすいのがこれです。
モバイルオーダーを入れた。
予約システムを入れた。
POSを新しくした。
勤怠管理をデジタル化した。
確かに、
便利にはなった。
でも、
人員配置は以前と同じ。
総労働時間も以前と同じ。
利益も以前と同じ。
そこに、
システム利用料だけが追加されている。
これでは、
経営改善になっているとは言い切れません。
システムを入れることが目的ではないんです。
システムを入れた結果、仕事を変えることが目的です。
5万円払ったなら、5万円以上を取り返す
例えば、
月5万円のシステムを導入したとします。
その結果、
月100時間の作業を削減できた。
1時間あたりの人件費を1,300円とすれば、
100時間 × 1,300円=130,000円。
5万円を払って、
13万円分の人時を削減できた。
単純化すれば、
8万円分の改善余地があります。
逆に、
5万円払った。
でも、
月10時間しか仕事が減らなかった。
同じ条件なら、
10時間 × 1,300円=13,000円。
人時削減だけで見れば、
5万円払って、
13,000円しか効果が出ていない。
もちろん、
売上増加やミス削減など別の効果があれば話は変わります。
でも、
何の効果も確認できないのであれば、
毎月5万円を払う意味を再検討する必要があります。
こうして初めて、
外部サービスを「投資」として判断できます。
人件費を削るのではなく、「仕事」を削る
第8章、第10章でも触れましたが、
ここで間違えてはいけないのが、
人件費圧縮=人を安く使う
ではないということです。
時給を下げる。
無理に一人減らす。
少ない人数に仕事を詰め込む。
これでは、
提供が遅くなる。
接客が悪くなる。
スタッフが疲弊する。
離職が増える。
結果として、
売上まで落ちる可能性があります。
そうではなく、
人がやらなくてもいい仕事そのものをなくす。
注文を取りに行く仕事を減らす。
会計作業を減らす。
電話予約を減らす。
転記を減らす。
無駄な仕込みを減らす。
メニューを整理する。
動線を改善する。
そして、
同じ売上を作るために必要な総労働時間を減らす。
ここを目指すべきです。
外部コストを使って、内部コストを下げる
ここまで考えると、
手数料に対する見方が少し変わります。
外部へお金を払う。
一見すると、
経費が増えています。
しかし、
その5万円によって、
店内の人件費を10万円減らせる。
その10万円によって、
30万円の利益を増やせる。
そのシステムによって、
100時間の仕事をなくせる。
のであれば、
外部コストを増やすことで、店全体のコストを下げる
ことができます。
これは、
これからの飲食店経営では非常に重要な考え方です。
すべてを自分たちでやることが、
必ずしも安いわけではありません。
逆に、
何でも外部へ任せればいいわけでもありません。
自社でやる方が安いのか。
外部へ任せる方が利益が残るのか。
ここを数字で判断する。
人時生産性まで含めて投資判断する
これから、
人件費はさらに重要な経営課題になるでしょう。
だからこそ、
外部サービスを導入するときには、
「便利そう」
だけではなく、
このサービスによって、必要人時を何時間減らせるのか
まで考える。
例えば、
月商500万円。
総労働時間5,000時間なら、
人時売上高は、
1,000円。
同じ500万円を、
4,000時間で作れるようになれば、
1,250円。
売上は1円も増えていません。
でも、
店の生産性は25%上がっています。
これも、
立派な経営改善です。
売上を増やすことだけが、
経営ではありません。
同じ売上を、より少ない資源で作る。
これも、
利益を増やす重要な方法です。
毎月「外部支払いの棚卸し」をする
だから、
私は外部サービスへの支払いを、
定期的に棚卸しした方がいいと思っています。
毎月、
誰にいくら払っているのか。
年間ではいくらになるのか。
そして、
何のために払っているのか。
売上を作るためなのか。
利益を増やすためなのか。
人時を減らすためなのか。
リスクを減らすためなのか。
顧客との接点を作るためなのか。
その目的を確認する。
さらに、
本当にその目的を達成できているのか
を見る。
達成しているなら、
続ける。
もっと使った方が利益が増えるなら、
増やす。
効果が弱いなら、
改善する。
何も生んでいないなら、
やめる。
この判断を繰り返す。
手数料を減らすことが目的ではない
この記事では、
ここまでずっと手数料について考えてきました。
でも、
最終的な目的は、
手数料を減らすことではありません。
目的は、
利益を残すことです。
35%の手数料でも、
十分な利益が残るなら使えばいい。
月5万円のシステムでも、
10万円以上の人時を削減できるなら使えばいい。
10万円の広告でも、
それ以上の利益を作れるなら使えばいい。
逆に、
1%の手数料でも、
何の価値も生んでいないなら、
見直すべきです。
重要なのは、
「いくら払ったか」ではなく、
「払った結果、何が残ったか」。
売上。
利益。
時間。
顧客。
そして、
自社の力。
外部サービスへの支払いを、
単なる固定費にしない。
利益と生産性を高めるための投資として管理する。
そして、
外部の力を使いながら、
同じ売上を、より少ない総労働時間で作れる店へ変えていく。
これが、
手数料も人件費も上がっていく時代に、
飲食店が利益を残していくための重要な経営判断だと思っています。
この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。