経営者が本当に買うべきものは「時間」なのかもしれない|経営に必要な時間を数字で考える

経営者が本当に買うべきものは「時間」なのかもしれない|経営に必要な時間を数字で考える
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第0章 スーパー経営者なら「時間がかかる」ことは知っている

熟練経営者なら、商売には時間がかかることを知っています。

新しく店を出したからといって、翌月から理想の売上になるとは限りません。

店の存在を知ってもらい、実際に来店してもらい、商品やサービスを評価してもらう。その積み重ねによって、少しずつ店は地域に定着していきます。

設備や内装に使った初期投資も同じです。

数百万円、場合によっては1,000万円を超える資金を投入して店を作っても、その金額を数か月で取り戻せるケースは多くありません。

1年、2年、3年。

事業によっては、さらに長い期間をかけて回収していきます。

人を育てることにも時間が必要です。

新しく入ったスタッフに仕事を教えたからといって、翌日からベテランと同じように働けるわけではありません。

店の評判も、ブランドも、取引先との信用も同じです。

商売には、今日やったことが今日結果になるものと、時間の経過によって初めて形になるものがあります。

だから、

「経営には時間が必要です」

という話だけなら、熟練経営者にとって特別新しい話ではありません。

では、なぜ改めて「時間」について考える必要があるのでしょうか。

私は、重要なのは時間がかかることを知っているかどうかではないと考えています。

重要なのは、

経営に必要な時間を、経営者が管理できているか。

ということです。

たとえば経営では、

「しばらくすれば売上は安定するだろう」

「そのうち投資も回収できるだろう」

「利益が出ていれば、いずれ会社の財務も良くなるだろう」

と考える場面があります。

もちろん、その考え自体が間違っているわけではありません。

問題は「しばらく」「そのうち」「いずれ」が、経営数字になっていないことです。

経営では売上を数字で管理します。

原価率も、人件費率も、利益率も、現預金も数字で確認します。

ところが時間だけは、

「もう少しかかる」

「あとしばらく頑張ろう」

という感覚で扱われることがあります。

しかし本来、時間も経営資源の一つです。

そして金や人と違って、使った時間を後から取り戻すことはできません。

だからこそ、

何を急ぐのか。

何には時間をかけるのか。

どこまで待てるのか。

必要な時間をどう確保するのか。

経営者は、それを判断する必要があります。

この記事では、「時間を大切にしましょう」という話をするつもりはありません。

そんなことは、多くの経営者がすでに知っています。

考えたいのは、

時間を経営の中でどう扱うのか。

ということです。

売上、利益、キャッシュ、人材。

経営者が管理するものはたくさんあります。

そこにもう一つ、

「時間」

という経営資源を加えてみます。

すると、今までとは少し違った角度から、会社の状態が見えてくるはずです。

第1章 経営には「時間でしか解決できない問題」がある

経営が苦しくなれば、経営者は改善策を考えます。

売上が足りなければ、集客を強化する。

客単価が低ければ、商品の構成や価格を見直す。

原価率が高ければ、仕入れ先や使用量、メニュー構成を見直す。

人件費が高ければ、シフトや営業時間、オペレーションを改善する。

このように、多くの経営課題には「打てる施策」があります。

しかし、ここで一つ注意しなければならないことがあります。

施策を打った日と、その効果が完成する日は同じではありません。

たとえば、毎月30万円の利益が出る状態まで経営を改善できたとします。

これは大きな前進です。

しかし、過去に300万円の損失を抱えていたとすれば、30万円の利益が出た瞬間に300万円が戻ってくるわけではありません。

単純計算なら、

300万円 ÷ 30万円 = 10か月。

改善には成功していても、その成果が積み上がるまでには10か月かかります。

ここは経営を考えるうえで非常に重要です。

「改善できた」ということと、「回復した」ということは同じではありません。

顧客についても同じことが言えます。

新規客を増やすために広告を出すことはできます。

再来店を促す仕組みを作ることもできます。

商品や接客を改善することもできます。

しかし、今日初めて来店したお客様が、今日のうちに5回来店した常連客になることはありません。

一度来店してもらい、また来てもらう。

その次も選んでもらう。

こうした結果は、施策だけで作られるものではなく、一定の期間を通過することで形になっていきます。

投資も同様です。

新しい設備を導入した。

店舗を改装した。

新店舗を出した。

その判断が正しく、実際に利益を生み始めたとしても、投入した資金を回収するには利益を積み重ねていかなければなりません。

つまり経営には、

行動によって変えられる部分と、行動したあとに経過を必要とする部分がある。

この二つを分けて考える必要があります。

経営者ができるのは、改善策を考え、実行し、成果が出る状態を作るところまでです。

そこから先は、その成果を積み上げていく期間が必要になることがあります。

ここを無視すると、

「改善したのに、なぜ楽にならないのか」

「利益が出ているのに、なぜ資金が増えないのか」

「評判が良くなっているのに、なぜ売上が一気に伸びないのか」

という疑問が生まれます。

しかし、それは施策が失敗しているとは限りません。

まだ成果が積み上がる途中なのかもしれないのです。

経営では、正しいことをすれば必ずその場で答えが返ってくるわけではありません。

原因を改善する。

成果が生まれる。

その成果が蓄積される。

そして、ようやく経営状態が変わる。

この間には、どうしても省略できない期間が存在します。

だから経営を見るときには、

「何をすれば改善するのか」だけではなく、「改善したあと、結果が完成するまでどれだけかかるのか」まで考える必要があります。

経営には、努力や資金だけでは一瞬で埋めることのできない領域があります。

そこに存在しているもう一つの変数。

それが、

「時間」です。


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この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。