飲食店コンサル事例|月商500万円をどう作るか?

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

飲食店コンサル事例|月商500万円をどう作るか?
この記事は約 19 分で読めます

飲食店の売上を伸ばそうとすると、多くの経営者は最初に「施策」を考えます。

「SNSを強化しよう」

「広告を増やそう」

「新商品を投入しよう」

「キャンペーンをしよう」

もちろん、どれも間違いではありません。

しかし今回、ある飲食店の経営戦略を組み立てるにあたって、私はそこから考えませんでした。

最初に考えたのは、もっと単純なことです。

「月商500万円とは、具体的にどんな状態なのか?」

ここを数字に変えるところから始めました。

今回の記事では、実際の店舗データをもとに、私がどのように売上を分解し、課題を見つけ、戦略へ落とし込んでいったのか。

その思考過程を、一つの飲食店コンサル事例として紹介します。


第1章 「月商500万円」を感覚ではなく数字に変える

この店の平均客単価は、約1,588円でした。

目標月商は500万円です。

単純計算すると、

5,000,000円 ÷ 1,588円 ≒ 3,149人

現在の客単価のまま月商500万円を作るには、月間約3,149人のお客様が必要になります。

30日営業なら、

3,149人 ÷ 30日 ≒ 105人/日

です。

一方、8月24日時点の実績では、24日間で1,968人が来店していました。

1日平均では、

1,968人 ÷ 24日 = 82人/日

です。

整理するとこうなります。

指標数字
月商目標500万円
平均客単価1,588円
必要月間客数約3,149人
1日必要客数約105人
現在の1日平均客数約82人
表面的な不足約23人/日

ここだけを見ると、

「毎日あと23人、新規客を増やせばいい」

という結論になりそうです。

しかし、私はここで広告を増やす判断をしませんでした。

なぜなら、

不足23人=新規客23人ではないからです。


売上を「新規客」と「リピーター」に分ける

次に確認したのが、来店客の構成です。

この店では、来店客に占めるリピーターの割合が約32.7%。

新規客が約67.3%でした。

※ここでいうリピーター比率とは、来店客に占める既存客の割合です。「新規客のうち何%が再来店したか」を示す再来店率とは異なります。

既存のお客様から発生する売上を無視して、

「500万円作るには何人集めればいい?」

と考えると、必要な新規客数が異常に大きく見えます。

今回、リピーター由来の売上を保守的に月120万円前後と置きました。

すると、

月商500万円の構造売上
リピーター由来約120万円
新たに作る売上約380万円
合計500万円

となります。

つまり攻略すべき数字は、いきなり500万円ではありません。

500万円 − 120万円=380万円

まず、この380万円をどう作るかです。


380万円を客数に変える

平均客単価1,588円なら、

3,800,000円 ÷ 1,588円 ≒ 2,393人

約2,400人/月です。

30日なら、

約80人/日。

では、現在はどうでしょう。

8月24日時点で1,968人が来店。

そのうち新規客を67.3%とすると、

1,968人 × 67.3% ≒ 1,325人

24日間で約1,325人。

つまり、

すでに1日約55人の新規客が来ています。

だから今回の課題は、

「ゼロから毎日80人集める」

ではありません。

現在約55人/日の新規客を、どうやって約80人まで持っていくか。

不足は約25人/日。

ここまで分解すると、

「500万円なんて無理だ」

という話から、

「あと25人をどう作る?」

という経営課題に変わります。

これが数字を分解する意味です。


第2章 売上には3つのレバーしかない

ここで売上の作り方を整理します。

飲食店の売上を動かす大きなレバーは3つです。

① 新規客を増やす

② リピーターを増やす

③ 客単価を上げる

この3つです。

だから、不足している25人をすべて新規集客で埋める必要はありません。

新規客を増やす。

再来店を増やす。

客単価を少し上げる。

この3つを組み合わせればいい。

ここから戦略の自由度が一気に上がります。


第3章 客数を追う前に、客単価を設計する

飲食店の売上を最も単純化すると、

売上=客数×客単価

です。

例えば月間3,000人が来店する店なら、

客単価UP月間売上への影響
+100円+30万円
+200円+60万円
+300円+90万円

となります。

つまり、

「新規客を何百人も増やす」

ことと、

「今いるお客様から、満足度を落とさずあと100円、200円使っていただく」

ことは、同じ売上を作る別ルートです。

そして多くの場合、後者の方が集客コストは低い。

ただし、ここで、

「じゃあ値上げしよう」

と考えてはいけません。

客単価を上げることと、値上げすることは同じではないからです。


980円の商品は、本当に安すぎるのか

今回、980円以下の商品についても見直しました。

大人のお客様が980円の商品だけを注文すれば、売上は980円です。

では、その980円の商品が「お子様向け」だったらどうでしょう。

子供だけで飲食店へ来ることは基本的にありません。

親が一緒に来ます。

つまり980円の商品が、

2,000円、3,000円以上使ってくれる大人を連れてくる商品

になる可能性があります。

同じ980円でも、経営上の意味はまったく違います。

商品設計経営上の役割
大人も選べる980円商品客単価を押し下げる可能性
子供向け980円商品ファミリー集客商品
大人向け高付加価値商品客単価向上商品

私はメニューを見るとき、

「いくらの商品か」だけでは見ません。

その商品を置くことで、

誰が来て、最終的にいくら使うのか。

ここまで見ます。


大人には「もっと使いたくなる理由」を作る

一方、大人のお客様には高付加価値商品や追加利用の理由を作ります。

今回なら、

  • 大人のドリンクバー
  • 高付加価値商品
  • 季節商品
  • 宴会商品

などです。

重要なのは、

「高いものを売りつける」

ことではありません。

満足度を上げた結果、自然に支払額も上がる構造を作ることです。

例えば客単価を1,588円から1,700円にできれば、

月商500万円に必要な客数は、

約3,149人 → 約2,941人

になります。

約208人減ります。

1日あたり約7人です。

つまり客単価を112円上げることは、売上的には、

毎日約7人のお客様を新しく集めることに近い効果

を持ちます。

ただし、9月のような通常月に無理やり1,800円を狙う必要はありません。

宴会シーズンなら1,700〜1,800円。

通常月なら無理に最大化しない。

季節によって売上の作り方を変えます。

これが客単価設計です。


第4章 新規客1人の価値は「今日の1,588円」ではない

ここで、新規集客の意味も変わってきます。

新規客が1人来店した。

平均客単価1,588円なら、今日の売上は1,588円です。

しかし、その人が再来店したらどうでしょう。

来店回数累計売上
1回1,588円
2回3,176円
3回4,764円
5回7,940円
10回15,880円
30回47,640円

※毎回同じ1,588円を利用した単純計算です。

新規客1人の価値は、初回来店時の1,588円だけではありません。

新規客

満足

再来店

リピーター化

将来売上

へつながります。

だから広告の価値も、

「何人連れてきたか」

だけでは測れません。

そのうち何人が、もう一度来たのか。

ここまで追う必要があります。


第5章 だから「接客」は売上部門である

この考え方に立つと、接客の意味も変わります。

接客を単なるサービス業務として考えると弱い。

経営的には、

接客はリピーターを作る営業活動

です。

広告で新規客を連れてくる。

店頭のぼりで入店してもらう。

キャンペーンで来店理由を作る。

ここまでは集客です。

そのお客様に、

「もう一回来よう」

と思ってもらえるか。

ここからが店内の仕事です。

今回の店舗では、再来店意欲は多くの期間で高い水準を維持していました。

一方、接客評価には時系列で変化がありました。

忙しくなった時期に接客評価が崩れ、その後、現場の指揮体制を変えたタイミングで数字が改善しました。

もちろん、

「指揮を変えたから数字が上がった」

と断定することはできません。

客数も違います。

回答者も違います。

季節要因もあります。

しかし、

数字が動いたタイミングと現場の変化が重なった。

ならば、経営者として検証する価値があります。

数字とは、人を責めるためのものではありません。

店で何かが起きていることを知らせる警報装置です。


第6章 売上を伸ばした結果、店を壊してはいけない

集客が成功する。

客単価が上がる。

売上が増える。

一見、良いことばかりに見えます。

しかし客数が増えすぎると、

料理提供が遅れる。

接客が雑になる。

店内が片付かない。

スタッフに余裕がなくなる。

お客様の満足度が下がる。

すると、

今月の売上を作るために、来月のリピーターを失う

ということが起こります。

だから私は、月商500万円を超えたら無制限に客数を追うつもりはありません。

現場が処理できないなら、必要に応じて入店を制限します。

飲食店経営で探すべきなのは、

最大売上ではなく、最適売上

だからです。

仮に120人を詰め込んで600万円売れるとしても、

100人で550万円売った方が、

接客が良い。

人件費が安定する。

クレームが減る。

リピーターが増える。

スタッフも疲弊しない。

結果として利益が残る。

ならば、

550万円の方が強い店

かもしれません。

売上の高さだけでは、繁盛店かどうかは判断できません。


第7章 ここで初めて「集客施策」を決める

ここまで分析して、ようやく、

「じゃあ何をする?」

を考えます。

今回、非常に重要だったのが「認知経路」です。

ある期間のアンケート83件を見ると、

認知経路人数
通りがかり32人
知人の紹介16人
Instagram8人
Google検索・マップ6人
TikTok6人
食べログ5人

最大の集客媒体は、

Instagramでも、

TikTokでも、

Googleでもありませんでした。

店の前です。

ここで初めて、

「何をすべきか」

が見えてきます。

SNS広告を何十万円も増やす前に、

すでに店の前を通っている人を取り込めないか。

そこで、

1周年記念のぼりを5本設置する。

1周年記念キャンペーンを店頭で見せる。

という施策を考えました。

一見、非常にアナログです。

しかしこれは感覚ではありません。

認知経路の数字から逆算した施策です。


第8章 月商500万円を「願望」から「予算」に変える

ここまで来たら、9月の戦略を一枚にします。

項目9月の設計
店舗売上目標500万円
リピーター由来約120万円
新たに作る売上約380万円
現在の平均客単価約1,588円
新規客の目安約2,400人/月
現在の新規ペース約55人/日
目標新規ペース約80人/日
不足約25人/日
第1集客施策1周年のぼり5本
第2集客施策1周年記念キャンペーン
補助施策SNS広告・最大10万円
客単価施策低価格商品の再設計・大人向け追加商品
冬への布石高付加価値・季節商品の認知

【ここに「9月・月商500万円戦略」の全体図】

これなら、

「9月は頑張って500万円売ろう!」

ではありません。

何のために何をするのかが、全部つながります。

のぼりには役割がある。

キャンペーンにも役割がある。

広告にも役割がある。

商品にも役割がある。

接客にも役割がある。

そして、それぞれが最終的に500万円という数字につながっています。


広告費10万円にも「ノルマ」を持たせる

店頭施策やキャンペーンだけで不足分を埋められないなら、そこで広告を追加します。

例えば10万円の追加広告で300人の新規客を獲得したとします。

広告費10万円を、

「使った」

で終わらせません。

300人来たなら、

新規客1人獲得あたり約333円。

さらに、

その300人がいくら使ったのか。

何人が再来店したのか。

そこまで追います。

広告は経費ではありません。

未来の顧客を獲得する投資です。

だから投資には、必ず役割と検証が必要です。


第9章 「500万円売れた」で終わらせない

仮に9月、月商500万円を達成したとします。

それだけでは成功とは判断しません。

翌月、確認する数字があります。

新規客は何人だったのか。

リピーターは何人だったのか。

客単価はいくらだったのか。

どの認知経路が増えたのか。

広告はいくら使ったのか。

接客評価はどうだったのか。

再来店意欲はどうだったのか。

そして、

9月に獲得した新規客が、10月に何人戻ってきたのか。

ここまで見ます。

同じ500万円でも、

広告費を大量投入して新規客だけで作った500万円と、

新規客がリピーターへ変わりながら作った500万円では、

経営的な価値がまったく違います。

前者は翌月、またゼロから集客しなければならないかもしれません。

後者は、

翌月の売上がすでに一部積み上がっています。

だから見るべきなのは、

売上という「点」ではありません。

新規集客 → 来店 → 商品体験 → 接客 → 再来店 → 次月売上

という「線」です。


最終章 RBRの飲食店コンサルは「施策」から考えない

今回の事例で、最初に広告を増やさなかった理由はここにあります。

売上が足りない。

だから集客。

とは限りません。

客単価かもしれない。

再来店かもしれない。

商品構成かもしれない。

接客かもしれない。

認知かもしれない。

あるいは、すでに店の処理能力が限界に近づいている可能性もあります。

だから、まず数字を分解します。

売上

客数 × 客単価

新規客・リピーター

認知・来店理由

商品・接客・店内体験

再来店

次月以降の売上

こうやって、

「売上が悪い」

という大きすぎる問題を、

「どこが悪いのか」

まで小さくしていきます。

そして、

数字から異常を見つける。

現場から原因を探す。

施策を打つ。

もう一度数字を見る。

この繰り返しによって、

「たまたま売れた店」から「なぜ売れたのか説明できる店」へ変えていく。

私は、これが飲食店経営だと考えています。

月商500万円という数字そのものが重要なのではありません。

重要なのは、

なぜ500万円になるのかを説明できること。

そして、

翌月も、その次の月も、自分たちで売上を設計できること。

それが経営です。


あなたのお店の売上不足は、本当に「集客不足」でしょうか。

売上だけを見ても、原因は分かりません。

客数なのか。

客単価なのか。

新規客なのか。

リピーターなのか。

商品なのか。

接客なのか。

認知なのか。

RBRでは、店舗の数字と現場を分解し、

「何をやるか」より先に、「なぜその施策をやるのか」

を設計します。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。