
1.「料理で選ばれている」と思っている経営者ほど危ない

「うちの店は料理が美味しいから。」
飲食店経営者から、最もよく聞く言葉の一つです。
もちろん、美味しい料理は必要です。
しかし、私はこの考え方こそ、多くの飲食店が苦戦する原因になっていると考えています。
なぜなら今の日本には、「美味しい店」が多すぎるからです。
美味しい店は、もう珍しくない
昔は、美味しい料理を提供するだけでも十分に差別化できました。
しかし現在は違います。
SNSでは全国の人気店をすぐに知ることができます。
YouTubeでは有名シェフのレシピが無料で公開されています。
食材も流通が進み、冷凍技術や調理機器も飛躍的に進化しました。
つまり、
一定以上の美味しさは、多くの店が実現できる時代になっています。
だからお客様は、
「美味しいかどうか」
だけでは店を選ばなくなっています。
同じレベルの料理なら、何で選ばれるのか
例えば、ハンバーグを食べたいと思ったとします。
近所には、
- A店
- B店
- C店
すべて口コミは高評価。
価格もほぼ同じ。
味も大きく変わらない。
この状況で、お客様は何を基準に選ぶのでしょうか。
実際には、料理以外の要素が意思決定を左右しています。
| 比較項目 | A店 | B店 | C店 |
|---|---|---|---|
| 味 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 駐車場がある | ○ | × | ○ |
| 子ども連れで入りやすい | ◎ | △ | ○ |
| 店内の雰囲気 | ○ | ◎ | △ |
| 提供スピード | ◎ | △ | ○ |
| Google口コミの安心感 | ◎ | ○ | △ |
| 行きやすさ | ◎ | ○ | △ |
ここで重要なのは、
料理は比較対象になっているだけで、決定打ではない
ということです。
お客様は「料理」を買っているのではない
お客様は、
料理そのものを買っているように見えます。
しかし実際には、
料理を食べる時間を買っています。
例えば、
家族でゆっくり過ごしたい。
仕事帰りに早く食べたい。
子どもを安心して連れて行きたい。
友人と楽しく話したい。
その目的を実現するために、
料理という手段を選んでいるのです。
つまり、
料理は価値の一部でしかありません。
大手企業は、このことをよく知っている
ここが非常に重要です。
大手外食企業は、
「料理が美味しいから来てください」
という発想では経営していません。
例えば、
- マクドナルドは「家族で安心して利用できる時間」
- スシローは「家族で楽しめるイベント」
- 吉野家は「短時間で満足できる食事」
- サイゼリヤは「気軽に長時間過ごせる場所」
を設計しています。
料理は、その価値を実現するための一つの要素です。
だから何十年も選ばれ続けるのです。
料理を食べてもらう前に、お客様が入店をためらっていませんか。価格や利用しやすさなど、初めてのお客様の不安を減らす視点を、こちらの動画でもお話ししています。
中小飲食店が陥りやすい落とし穴
一方で中小飲食店では、
売上が落ちると、
まず料理を変えようとします。
- 新メニューを作る
- 原価を上げる
- 盛り付けを豪華にする
- 食材を高級化する
もちろん、それが必要な場合もあります。
しかし、
もし料理の評価が十分高いにもかかわらず売上が伸びないのであれば、
問題は料理ではありません。
お客様がその店を選ぶ理由が弱い可能性があります。
例えば、
- 店を知られていない
- 入りにくい
- 駐車場が少ない
- 店内の雰囲気が伝わらない
- Googleマップの写真が少ない
- 「誰と、どんな時に利用する店なのか」が伝わっていない
こうした要素の方が、来店率に大きな影響を与えることは少なくありません。
RBRの見解
料理は、飲食店の最低条件です。
しかし、
繁盛する理由ではありません。
繁盛店は、
料理を売っているのではなく、
「この店なら、この時間を安心して過ごせる」という価値を売っています。
だから私は、
「何を作るか」
よりも、
「誰の、どんな時間を任せてもらう店になるのか」
を先に考えます。
飲食店の競争は、
料理同士の勝負ではありません。
お客様の生活の、どの一場面を任せてもらえるか。
その設計こそが、これからの飲食店経営で最も重要な競争力になるのです。
ブログでの公開はここまでです。続きや実践的な飲食店経営の記事は note へ順次移行しています。公開中の記事・販売内容は note のトップページでご確認ください。
この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。