
~新商品が売れない本当の理由とは~
1.新商品は最初から完成していない

飲食店で新商品を作るとき、多くの人は「完璧な商品」を目指します。
味を何度も調整し、盛り付けを考え、価格を決め、ようやく納得してから販売を始める。
もちろん、その姿勢は決して間違いではありません。
しかし私は、新商品づくりに対して少し違う考え方を持っています。
私は、商品が80点まで仕上がったら、お客様の前に出します。
「まだ改善点があるのに販売するの?」
そう思われるかもしれません。
ですが、残りの20点は厨房の中では完成させることができないからです。
どれだけ料理人が試作を重ねても、本番のお客様と同じ状況は作れません。
実際に注文されるスピード。
他の料理との組み合わせ。
お客様が最初に箸をつける場所。
食べ終わるまでの時間。
食べ残しはあるのか。
「美味しかった」という一言だけではなく、どんな表情で食べていたのか。
こうした情報は、お客様に提供して初めて見えてきます。
つまり、本当の商品開発は販売を始めてからがスタートなのです。
私はこれまで数え切れないほどの商品を開発してきました。
その中には、試作の段階では自信があったのに売れなかった商品もあります。
反対に、「これはどうだろう」と半信半疑で販売した商品が、お客様の支持を集めて看板商品になったこともあります。
この経験を重ねるたびに、私は確信するようになりました。
商品を完成させるのは料理人ではありません。
お客様です。
だから私は、新商品を「完成品」として世に出すのではなく、「これから育てていく商品」として販売します。
お客様からの反応を受け止め、改善を繰り返しながら、少しずつ完成度を高めていく。
その積み重ねこそが、本当に長く愛される商品を生み出すのだと考えています。
2.答えを持っているのは、お客様

料理人は、美味しい料理を作ることができます。
長年の経験や技術を積み重ねることで、味を整え、盛り付けを工夫し、自分が納得できる一皿を作り上げることができます。
しかし、その料理が「売れる商品」になるかどうかは、料理人だけでは決めることができません。
答えを持っているのは、お客様です。
どれだけ料理人が自信を持っていても、お客様に選ばれなければ商品として成功したとは言えません。
反対に、料理人が「普通かな」と思っていた商品が、お客様から圧倒的な支持を集めることもあります。
だから私は、自分の感覚だけを信じて商品を判断することはありません。
本当の商品開発は、販売を始めた瞬間から始まると考えています。
発売初日から私が見ているのは、売上だけではありません。
まず確認するのは、どれだけ注文されたのか。
既存の人気商品と比べて、お客様はその商品を選んでくれたのか。
そして料理を提供した後も、お客様の様子をできる限り観察します。
料理はどのくらいのスピードで食べ進められているのか。
最後まで美味しそうに食べてもらえているのか。
食べ残しはないか。
一口目を食べた瞬間の表情はどうだったのか。
「これ美味しいね。」
「次もこれにしよう。」
そんな何気ない会話が聞こえてくることもあります。
こうした生の反応は、数字だけでは分からない非常に価値のある情報です。
もちろん、お客様へのアンケートも参考にします。
しかし、それ以上に大切にしているのが、現場で接客をしているスタッフの声です。
「お客様が写真を見て迷っていました。」
「思ったよりボリュームがあると喜ばれていました。」
「女性のお客様からは量が少し多いという声がありました。」
スタッフは、お客様に一番近い場所で反応を見ています。
だからこそ、私はスタッフから上がってくる小さな気付きも商品開発の大切な材料として受け止めています。
料理人が作るのは料理です。
しかし、売れる商品を育てるのは、お客様と現場です。
私はいつも、お客様から教えていただくという姿勢を忘れずに、新商品の改善を続けています。
3.数字だけでは見えないこともある

新商品を販売すると、多くの経営者は最初に売上を確認します。
何食売れたのか。
いくら売れたのか。
注文率はどうだったのか。
もちろん、数字は非常に大切です。
私は数字を徹底的に見る経営をしています。
しかし、数字だけで商品を評価することはありません。
「売れた。」
だから成功。
この考え方は、とても危険です。
例えば、新商品がよく売れたとします。
一見すると成功したように見えます。
しかし、その裏で今まで一番売れていた看板商品の注文が減っていたらどうでしょうか。
お客様が新商品に流れただけで、お店全体の売上や利益が変わらなければ、本当の意味で商品力が上がったとは言えません。
これは「カニバリゼーション(共食い)」と呼ばれる現象で、新商品を評価するときには必ず確認しなければならないポイントです。
逆に、発売直後は思うように売れなかった商品が、大人気商品へと成長することもあります。
料理はまったく変えていないのに、
POPを作り直した。
メニュー写真を撮り直した。
商品の説明文を変えた。
スタッフがおすすめするようになった。
たったそれだけで注文数が大きく伸びることは、飲食店では決して珍しいことではありません。
つまり、売れなかった原因が料理ではなく、「伝え方」にあったということです。
だから私は、新商品の結果を一日で判断することはありません。
数字を見る。
お客様を見る。
スタッフの声を聞く。
そして、「なぜこの結果になったのか」を考え続けます。
商品開発とは、一度作って終わりではありません。
数字という結果と、現場で起きている出来事の両方を見ながら改善を積み重ねていくこと。
その繰り返しが、お客様から長く愛される商品を育てていくのだと私は考えています。
4.だから私は何度も改良する

新商品は、一度作ったら終わりではありません。
むしろ販売を始めてからが、本当の商品開発のスタートです。
私は「一度決めたから変えない」という考え方は持っていません。
お客様の反応を見て、「もっと良くできる」と思えば、何度でも手を加えます。
盛り付けを変える。
器を変える。
ソースを変える。
価格を見直す。
メニューの説明文を書き直す。
写真を撮り直す。
提供方法を工夫する。
必要であれば、商品名そのものを変えることもあります。
料理はまったく同じなのに、写真を変えただけで注文数が増えることがあります。
説明文を少し変えただけで、「美味しそう」と感じてもらえることもあります。
器を変えたことで、高級感が伝わり、価格への納得感が生まれることもあります。
つまり、お客様が感じている価値は、料理そのものだけで決まっているわけではありません。
商品とは、お客様の体験そのものだからです。
だから私は、改善を止めません。
「この商品は完成した。」
そう思った瞬間に、成長は止まります。
飲食店は、お客様の好みも、市場の流れも、季節も変わり続ける仕事です。
昨日まで売れていた商品が、来年も同じように売れる保証はありません。
だからこそ、常に変化し続けることが大切なのです。
私にとって商品開発とは、一つの商品を作ることではありません。
一つの商品を、何度も生まれ変わらせること。
その積み重ねが、お客様に長く愛される商品を育て、お店の未来を支えてくれるのだと私は考えています。
5.「失敗した商品」は存在しない

私は、商品開発をしていても「失敗した商品」という言葉はあまり使いません。
あるのは、
売れなかった商品。
ただ、それだけです。
売れなかったという結果には、必ず理由があります。
価格が高かったのかもしれません。
写真が魅力的ではなかったのかもしれません。
商品の名前から魅力が伝わっていなかったのかもしれません。
POPがお客様の目に入っていなかったのかもしれません。
提供まで時間が掛かりすぎたのかもしれません。
あるいは、販売するタイミングが季節と合っていなかっただけかもしれません。
つまり、売れなかった理由は一つではありません。
商品には、必ず原因があります。
だから私は、「売れなかった」という結果だけを見て商品を終わらせることはありません。
なぜ売れなかったのか。
何を変えればもっと伝わるのか。
お客様は何に価値を感じていないのか。
そこを考え続けます。
飲食店経営は、正解を当てる仕事ではありません。
仮説を立て、試し、結果を見て、改善する。
この繰り返しです。
だから、一つの商品が期待通りに売れなかったとしても、それは決して無駄にはなりません。
その経験は、次の商品開発に必ず生きてきます。
私はこれまで、多くの商品を販売してきました。
その中には、発売初日に思うような結果が出なかった商品もあります。
しかし、その経験があったからこそ、お客様の見方や商品の伝え方を学び、今の商品開発につながっています。
本当の失敗とは、売れなかったことではありません。
「売れなかった理由を考えず、改善をやめてしまうこと。」
私は、それだけは絶対にしないと決めています。
6.新商品は「作品」ではなく「経営商品」

料理人は、美味しい料理を追求します。
素材にこだわり、技術を磨き、一皿一皿を丁寧に仕上げる。
その姿勢は飲食店にとって、とても大切なことです。
私も長年、料理人として厨房に立ってきたので、その気持ちはよく分かります。
しかし、お店を経営する立場になると、商品の見方は大きく変わります。
経営者が作るべきものは、「作品」ではありません。
経営商品です。
経営商品とは、美味しいだけの商品ではありません。
お客様に喜んでいただき、
利益を生み、
スタッフが安定して提供でき、
お店を成長させてくれる商品です。
どれだけ美味しい料理でも、原価が高すぎて利益が残らなければ、お店は続きません。
提供時間が長すぎて、お客様を待たせてしまえば、満足度は下がります。
一人の職人しか作れない料理では、店舗が増えても再現することはできません。
つまり、商品とは料理だけを見て作るものではなく、お店全体の仕組みの中で考えなければならないのです。
私は新商品を考えるとき、味だけで判断することはありません。
「お客様は本当に喜んでくれるだろうか。」
「価格に納得していただけるだろうか。」
「スタッフは無理なく提供できるだろうか。」
「利益は残るだろうか。」
「この商品は、お店の未来につながるだろうか。」
そんなことを何度も自分に問いかけながら商品を作っています。
料理人は、美味しい料理を作るプロです。
そして経営者は、その料理をお店を成長させる商品へと育てるプロでなければなりません。
私は、その二つが揃って初めて、本当に価値のある商品開発ができるのだと考えています。
7.ガブ飲み食堂でも今日、新しいランチを投入しました
実はこの記事を書いている今日も、ガブ飲み食堂では新しいランチメニューを販売しました。

今回挑戦したのは、「上天ぷらとふぐ皮ポン酢定食 ~てっさ&いくらミニ丼を添えて~」です。
夏でも楽しめる天ぷらに、さっぱりとしたふぐ皮ポン酢。
さらに、てっさといくらのミニ丼を添えた、少し贅沢な期間限定ランチとしてご用意しました。
もちろん、私にも「売れてほしい」という気持ちはあります。
ですが、今の時点では、この商品が成功するかどうかは分かりません。
だから私は、今日の売上だけで判断することはありません。
今日は何食売れたのか。
どんな年代のお客様が注文してくださったのか。
注文された時間帯はいつだったのか。
食べ終えたお客様の表情はどうだったのか。
スタッフはどんな声を聞いたのか。
そして、一週間後。
一ヶ月後。
数字や現場の反応を見ながら、この商品を少しずつ育てていこうと思っています。
もし思ったような結果が出なければ、改善します。
写真を変えるかもしれません。
POPを書き直すかもしれません。
説明文を変えるかもしれません。
価格や内容を見直すこともあるでしょう。
それでも売れなければ、また考えます。
商品開発とは、一度作って終わる仕事ではありません。
お客様から答えをいただきながら、何度も改善を繰り返し、一つの商品を育てていく仕事です。
この記事を書いている今、この商品がどう育っていくのかは、私にもまだ分かりません。
だからこそ、私はその過程も包み隠さず、このブログで発信していきたいと思います。
成功も、失敗も、改善も。
現場で起きたことをそのまま共有することが、これから商品開発をする飲食店の皆さんのヒントになれば嬉しく思います。
8.まとめ

新商品は、完成してから販売するものではありません。
売りながら、お客様と一緒に育てていくものです。
どれだけ経験を積んだ料理人でも、お客様の反応を100%予測することはできません。
だからこそ、大切なのは「最初から完璧を目指すこと」ではなく、「販売してから改善し続けること」です。
私は新商品を販売した日に、一喜一憂することはありません。
「今日は何食売れた。」
それだけでは、成功とも失敗とも言えないからです。
私が本当に見ているのは、
どれだけ改善できる材料を集められたか。
お客様の反応。
スタッフの声。
数字の変化。
その一つひとつが、次の改善につながる大切な財産になります。
商品開発とは、料理を作る仕事ではありません。
お客様に選ばれ続ける商品を育てる仕事です。
だから私は、これからも現場で挑戦を続けます。
成功したことだけではなく、失敗したことや改善の過程も、このブログで包み隠さず発信していきます。
その経験が、一人でも多くの飲食店経営者の商品開発のヒントになれば、これほど嬉しいことはありません。
この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。