黒字なのになぜお金がない?飲食店の資金繰りが苦しくなる本当の理由と抜け出す方法

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

黒字なのになぜお金がない?飲食店の資金繰りが苦しくなる本当の理由と抜け出す方法
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目次 Outline

導入 黒字なのに、支払日が怖い

飲食店を経営していると、不思議なことが起こります。

月末に数字を締めてみる。

売上はある。
原価率もそこまで悪くない。
人件費も大きく崩れていない。

損益計算書を見れば、ちゃんと利益も出ている。

黒字です。

ところが、銀行口座を見ると金がない。

カードの引落日が近づく。
給料日が来る。
家賃の支払いが来る。
食材業者への支払いが来る。

月末が近づくにつれて、口座残高がどんどん減っていく。

そして最後には、

「すみません。支払いを少し待ってもらえませんか」

と取引先に連絡する。

黒字なのに、支払いができない。

経営者からすると、かなり理解しにくい状態です。

「利益が出ているなら、その金はどこにあるんや?」

当然そう思います。

ところが、ここには飲食店経営で非常に重要な勘違いがあります。

利益と、銀行口座に残っている現金は同じものではありません。

ここを理解しないまま経営していると、

「売上をもっと上げれば楽になる」

「原価をもう少し削ろう」

「人件費を減らそう」

と、目の前の損益だけを改善しようとしてしまいます。

もちろん、それらも大切です。

ただし、店が黒字なのに毎月資金繰りに苦しんでいるのであれば、見るべき数字は利益だけではありません。

たとえば、非常に単純化してこんな店があったとします。

項目金額
月商600万円
食材原価▲200万円
人件費▲110万円
家賃▲50万円
水道光熱費▲35万円
その他経費▲155万円
営業利益50万円

これだけを見ると、

毎月50万円ずつ金が増えていく店

に見えます。

1年間続けば600万円。

「これなら少しずつ資金も貯まっていくやろ」

と思います。

ところが、実際にはそうならないことがあります。

たとえば、この店が過去の赤字を抱えていたとします。

さらに、開業時や設備投資で借りた借入金を毎月返済している。

クレジットカードやキャッシュレス決済の売上は、売上が立った日と実際に口座へ入金される日が違う。

税金の支払いもある。

設備が壊れれば修理費も出ていく。

以前に支払いを待ってもらった仕入代金が残っていれば、それも払わなければならない。

つまり、

今月50万円利益が出たからといって、今月50万円現金が増えるとは限らない。

ここが黒字なのに金がない店を理解する最初のポイントです。

経営には、大きく分けて二つの数字があります。

一つは、

「今月の商売は儲かったのか」を見る数字。

もう一つは、

「実際にいくら金が入って、いくら出ていったのか」を見る数字。

前者が利益。

後者がキャッシュです。

この二つは似ていますが、まったく同じ動きをするわけではありません。

だから、

利益が出ているのに、現金が減る。

という現象が普通に起こります。

そして、さらに厄介なのが過去の赤字です。

たとえば、開業から半年間で資金を600万円減らした店が、その後ようやく黒字化したとします。

毎月50万円の利益を出せるようになった。

経営者としては、

「やっと黒字になった」

と感じます。

これは間違いではありません。

ただ、資金繰りという視点では少し違います。

過去に失った600万円が消えたわけではないからです。

仮に毎月50万円ずつ本当に現金を残せたとしても、

600万円 ÷ 50万円=12か月

かかります。

つまり、

黒字化した瞬間に経営が楽になるわけではない。

黒字化は、資金繰り改善のスタート地点になることもあります。

ここを知らないと、

「半年も黒字なのに、なんでまだ金がないんや」

となります。

しかし数字で見れば、不思議でも何でもありません。

過去に空いた穴を、現在の利益で少しずつ埋めている途中なのです。

しかも実際の経営では、そこへ借入返済、税金、設備投資、支払いサイト、キャッシュレス決済の入金タイミングなどが重なります。

だから資金繰りは、損益計算書だけ見ていても分かりません。

この記事では、

「利益は出ているはずなのに、金はどこへ消えた?」

という疑問を、できるだけ単純な数字に分解していきます。

難しい会計の話をしたいわけではありません。

知りたいのはもっと現実的なことです。

なぜ金が残らないのか。

毎月、本当はいくら残せているのか。

過去に空いた穴はいくら残っているのか。

この状態を続ければ、いつ資金繰りが楽になるのか。

そして最終的には、

「今月黒字だった」ではなく、「この店はいつ現金が残る経営になるのか」

そこまで数字で見える状態を作っていきます。

第1章 まず「本当に黒字なのか」を確認する

「黒字なのにお金がない」

この問題を考える前に、最初に確認しなければならないことがあります。

その店は、本当に黒字なのか。

ここを曖昧にしたまま資金繰りの話を始めると、原因を見誤ります。

売上が600万円あった。

月末に口座にもある程度お金が残っていた。

だから黒字だろう。

これは経営上の「黒字」とは違います。

まずは、その月の売上から、その売上を作るためにかかった経費をすべて引いてみます。

たとえば、こんな店があったとします。

項目金額売上比
売上600万円100.0%
原価▲198万円33.0%
人件費▲108万円18.0%
家賃▲50万円8.3%
水道光熱費▲36万円6.0%
広告費▲18万円3.0%
システム費▲6万円1.0%
その他経費▲134万円22.3%
利益50万円8.3%

この場合、

600万円 − 550万円 = 50万円

なので、この店は月50万円の利益を出しています。

ここで初めて、

「黒字なのに現金が残らない」

という次の問題を考えることができます。

逆に、同じ600万円の売上でも、経費が620万円かかっているなら話はまったく違います。

売上経費利益
600万円550万円+50万円
600万円600万円±0万円
600万円620万円▲20万円

3つとも売上は600万円です。

しかし、経営状態はまったく違います。

特に注意したいのが、

「売上がある=儲かっている」

という感覚です。

飲食店では毎日売上が入ってきます。

現金、クレジットカード、QR決済、デリバリー。

毎日のように数字が動くため、月商500万円、600万円と売上が立っていると、それだけで商売が回っている感覚になりやすい。

ところが、その600万円を作るために610万円使っていれば、商売を続けるほど10万円ずつ資金が失われていきます。

この状態で、

「なぜ金が残らないんだろう?」

と考えても答えは単純です。

そもそも利益が出ていないからです。

これは資金繰りの問題ではありません。

収益構造の問題です。

原価が高すぎるのか。

人件費が重すぎるのか。

家賃に対して売上が足りないのか。

広告費を使いすぎているのか。

細かな固定費が積み上がっているのか。

あるいは、それらを全部合わせると利益が消えているのか。

まずはこちらを改善しなければなりません。

そして、もう一つ注意したいのが、経費の見落としです。

原価、人件費、家賃、水道光熱費。

このあたりまでは多くの経営者が把握しています。

しかし実際には、

予約システム、POS、通信費、ゴミ処理費、リース料、消耗品、清掃用品、決済手数料、デリバリー関連費、税理士費用、保険料など、小さな経費が毎月いくつも発生しています。

一つひとつは数千円、数万円でも、全部合わせれば大きな金額になります。

だから、

「原価と人件費を引いたら結構残っている」

では不十分です。

経営を見るのであれば、実際に発生している経費をできる限り拾ったうえで利益を確認する必要があります。

ここで重要なのは、完璧な会計知識ではありません。

まず、

売上 − 商売にかかった経費 = いくら残ったのか

を把握することです。

たとえば600万円売って50万円残ったのであれば、

「今月の商売そのものは50万円の黒字だった」

というスタート地点に立てます。

それでも銀行口座の現金が増えていない。

ここまで確認できて初めて、

「では、その50万円はどこへ行ったのか?」

という資金繰りの話になります。

整理すると、最初の分岐は非常に単純です。

利益が残っていない
→ 収益構造を改善する。

利益は残っている。それでも現金が増えない
→ 資金繰りを調べる。

この二つをごちゃ混ぜにしないことです。

黒字なのに支払日が怖い理由を探すなら、まず「本当に黒字なのか」を確認する。

利益が出ていることを確認してから、次に「利益と現金はなぜ一致しないのか」を見ていきます。

第2章 黒字と「お金がある」は別の話

第1章で確認した結果、ちゃんと利益は出ていた。

それでも銀行口座のお金が増えていない。

ここからが、この記事の本題です。

まず理解しておきたいのは、

黒字であることと、お金があることは別の話

だということです。

飲食店経営では、PL(損益計算書)を見る機会が多いと思います。

PLが教えてくれるのは、簡単に言えば、

「その期間の商売で、いくら利益が出たのか」

です。

たとえば今月の売上が600万円、経費が550万円だったとします。

項目金額
売上600万円
経費▲550万円
利益50万円

この店は50万円の黒字です。

ここまでは第1章で確認した通りです。

では、

銀行口座のお金も50万円増えるのか。

必ずしもそうではありません。

なぜなら、

PL上の利益と、実際のお金の出入りは一致しないからです。

代表的なのが「借入金の元本返済」

たとえば、この店が開業するときに金融機関から借入をしていて、毎月30万円の元本を返済しているとします。

先ほどの店は50万円の利益を出していました。

しかし、その後30万円の借入元本を返済すれば、

50万円 − 30万円 = 20万円

単純化すれば、手元に残せる現金は20万円になります。

PL上の利益現金への影響
今月の利益+50万円+50万円
借入元本返済▲30万円
単純化した現金増加+20万円

ここで重要なのが、

借入金の元本返済30万円を、そのまま「今月の経費30万円」として利益から引くわけではない

という点です。

借りたお金を返しているからです。

もちろん借入に伴う利息については費用になりますが、元本返済とは扱いが違います。

経営者の感覚からすると、

「いや、実際に30万円口座からなくなってるやん」

となります。

その通りです。

だからこそ、

PLでは黒字なのに、銀行口座には思ったほどお金が残らない

という現象が起こります。

もっと極端な例なら分かりやすいでしょう。

毎月50万円の利益が出ている店が、借入元本を毎月60万円返済していたとします。

項目金額
PL上の利益+50万円
借入元本返済▲60万円
単純化した現金増減▲10万円

商売そのものは黒字です。

それでも、単純化すれば現金は毎月10万円減ります。

これが、

「黒字なのに金がない」

が起こる仕組みの一つです。

利益は「使えるお金の残高」ではない

ここを混同すると、経営判断がおかしくなります。

たとえば決算書を見て、

「今月50万円儲かった。じゃあ50万円使えるな」

と考えてしまう。

しかし実際には、その50万円から借入返済などによって現金が外へ出ていくかもしれません。

さらに現実の経営では、税金、設備投資、過去から持ち越した支払いなどもあります。

売上についても、今日カードで売れた金額が今日すべて銀行口座に入るわけではありません。

つまり経営者が実際に支払いに使えるのは、

PLに書かれている「利益」という数字ではなく、銀行口座に存在する「現金」です。

給料日に、

「今月は50万円の黒字なので大丈夫です」

と言っても給料は払えません。

家賃も払えません。

仕入先への支払いもできません。

必要なのは現金です。

だから経営者は、

「儲かっているか」と「払えるか」を別々に考える必要があります。

前者を見るのが利益。

後者を見るのが資金繰りです。

まず覚えておきたい式

この段階では、細かな会計の話まで覚える必要はありません。

まずは、

利益 ≠ 現金増加額

これだけ理解してください。

たとえば、

50万円利益が出た
= 50万円自由に使えるお金が増えた

ではありません。

この違いが分かると、

「黒字なのになぜ支払日になると金がないんだ?」

という疑問が少しずつ解けてきます。

そして、ここからもう一段深く考える必要があります。

今月の利益だけではありません。

店の口座には、

過去の経営の結果も積み重なっています。

現在は黒字でも、それ以前に大きな赤字を出して資金を減らしていたなら、その穴が一瞬で元に戻るわけではありません。

次に見るべきなのは、

「今の店が黒字か」ではなく、「これまでにどれだけ現金を失ってきたのか」

という過去から続いている資金の状態です。

第3章 月では黒字でも「支払日の谷」で金がなくなる

ここまでで、

利益が出ていることと、現金が増えることは同じではない

という話をしました。

では、利益も出ている。

借入返済などを考えても、月全体では現金が残るはず。

それなのに、

なぜ支払日になると金が足りなくなるのか。

ここでもう一つ見る必要があるのが、

「いつ入って、いつ出ていくのか」

という時間の問題です。

資金繰りは、月単位だけでは見えません。

月全体では足りているのに、途中で金がなくなる

たとえば、月初の銀行口座に100万円あったとします。

そして、その月に次のようなお金の動きがあったとします。

日付内容入金支払口座残高
1日月初残高100万円
5日キャッシュレス等の入金+100万円200万円
10日カード引落▲80万円120万円
15日給与支払▲100万円20万円
20日キャッシュレス等の入金+150万円170万円
25日売上入金+100万円270万円
31日家賃・仕入先・その他▲200万円70万円

月初には100万円ありました。

月末には70万円残っています。

この例では月間で30万円現金が減っていますが、注目してほしいのはそこではありません。

15日の残高です。

わずか20万円しかありません。

その後20日、25日に250万円が入ってくるので、月末の支払いはできます。

しかし15日から20日までの間に、想定外の50万円の支払いが発生したらどうなるでしょう。

現金が足りません。

月末まで見れば入金予定はある。

売上も立っている。

商売そのものも黒字。

それでも、

今日払う金がない。

これが資金繰りです。

「今月いくら入るか」だけでは足りない

経営者が月次の数字だけを見ていると、

「今月は600万円売れている」

「経費を払っても利益は残る」

「だから大丈夫だろう」

と考えます。

ところが支払い側には、それぞれ期日があります。

10日にカードの引き落とし。

15日に給与。

月末に家賃。

仕入先への支払い。

社会保険や税金の支払いが重なる月もあります。

一方、売上もすべてがその場で現金になるわけではありません。

現金売上ならすぐ手元に入りますが、クレジットカードやQR決済、デリバリーなどは、売上が発生した日と実際の入金日が異なります。

つまり、

売上が発生する日

銀行口座へ入金される日

支払いが発生する日

この3つは一致しません。

だから月間の合計だけを見て、

「入金の方が多いから大丈夫」

とは言えないのです。

資金繰りで怖いのは「一番低いところ」

もう一つ例を見てみましょう。

ある月の資金が、

100万円 → 200万円 → 120万円 → 20万円 → 170万円 → 270万円 → 70万円

と動いたとします。

月初100万円。

月末70万円。

しかし、この店にとって本当に危険だった数字は70万円ではありません。

途中の20万円です。

これが、その月の「資金の谷」です。

資金繰りを見るときは、

月末にいくら残ったか

だけではなく、

月の途中で最低いくらまで落ちるのか

を見る必要があります。

もし最低残高が20万円なのに、毎月30万円程度の支払いのブレがある店なら、かなり危険な状態です。

逆に最低残高が300万円あり、多少支払いが増えても耐えられるなら、同じ黒字店でも資金繰りの安全性はまったく違います。

「来週入ってくる」は、今日の支払いには使えない

資金繰りが苦しくなると、経営者はこんな状態になります。

「20日にはカード売上が入ってくる」

「来週にはデリバリーの入金がある」

「月末までには売上が入る」

確かに、そのお金は入ってくる予定です。

しかし15日に100万円払わなければならないのに、20日に100万円入ってきても、

5日間だけ足りません。

たった5日のズレです。

でも支払う側からすれば、その5日が問題なのです。

だから資金繰りとは、

最終的に金が足りるかどうかだけを見るものではありません。

必要な日に、必要な金額が口座にあるかを見るものです。

ここで初めて「資金繰り表」が必要になる

PLでは、

「今月いくら売った」

「いくら経費がかかった」

「いくら利益が出た」

を見ることができます。

しかし資金繰りで知りたいのは、

「何日に、いくら入って、何日に、いくら出て、その結果いくら残るのか」

です。

見る目的が違います。

見たいこと主に確認するもの
商売そのものが儲かっているかPL・損益
実際に支払いができるか現預金・資金繰り
いつ資金が危なくなるか入出金予定と残高推移

だから、

黒字なのに支払日が怖い店ほど、月商や利益だけではなく「日付」を見る必要があります。

10日のカード引落後はいくら残るのか。

15日の給与支払後はいくら残るのか。

月末の仕入代金を払った後はいくら残るのか。

そして、次の入金日はいつなのか。

これを並べれば、

「なんとなく月末が怖い」

だったものが、

「15日に残高が20万円まで落ちるから危ない」

という具体的な問題に変わります。

具体的になれば、対策も考えられます。

資金繰りとは難しい会計用語ではありません。

突き詰めれば、

「いつ金が入って、いつ金が出て、その日の残高はいくらになるのか」

を先に見ることです。

月全体では黒字でも、途中に深い「支払日の谷」があれば、店はそこで資金不足を起こします。

そして、この支払日の谷をさらに深くしている可能性があるのが、

過去に作ってしまった資金不足の持ち越し

です。

今月だけを見れば黒字なのに、なぜ毎月ギリギリから始まるのか。

次は、その原因を過去まで遡って見ていきます。

第4章 それでも金が増えないなら「過去」を見る

今月は黒字だった。

支払日のタイミングも確認した。

それでも、毎月なぜか口座残高がギリギリになる。

ここまで来たら、見るべきなのは今月ではなく過去です。

今月の経営が悪いから金がないとは限りません。

むしろ現在は利益が出ているのに、

過去に作った資金不足を、今の利益で埋め続けている

という店があります。

黒字化しても、過去の赤字は消えない

たとえば、開業から半年間、赤字が続いた店があったとします。

損益
1か月目▲100万円
2か月目▲80万円
3か月目▲70万円
4か月目▲50万円
5か月目▲30万円
6か月目▲20万円
累計▲350万円

そして7か月目。

ようやく店が軌道に乗り、月50万円の利益が出るようになりました。

これは大きな改善です。

商売としては、

赤字を出す店から、利益を生み出す店に変わった

と言えます。

ただし、ここで一つ問題があります。

過去6か月で失った350万円は、黒字化した瞬間に戻ってくるわけではありません。

7か月目に50万円黒字。

8か月目も50万円黒字。

9か月目も50万円黒字。

利益を積み上げながら、過去に減らした資金を少しずつ取り戻していくことになります。

つまり、

黒字化=資金繰り正常化

ではありません。

黒字化してから、ようやく過去の穴を埋め始める店もあるのです。

開業時の運転資金不足も後から効いてくる

過去の不足は、赤字だけとは限りません。

たとえば開業に2,000万円必要だったとします。

ところが用意できた資金は1,700万円。

不足した300万円を、

「売上が入ってきたら何とかなるだろう」

と考えて開業した。

すると店は、最初から300万円足りない状態でスタートします。

開業後に売上が入ってきても、そのお金は翌月の仕入れ、給与、家賃などに必要です。

ところが開業時に不足していた300万円も、どこかで払わなければならない。

結果として、

未来の売上で過去の支払いを追いかけ続ける

状態になります。

店は繁盛している。

PLも黒字になった。

それなのに、いつまで経っても資金に余裕が生まれない。

その原因が、

そもそもスタート時点で運転資金が足りていなかった

ということもあります。

「待ってもらった支払い」は消えたわけではない

さらに分かりやすいのが、支払いの繰り越しです。

資金が苦しい月に、

「今月の支払い、少し待ってもらえませんか」

と仕入先にお願いしたとします。

100万円の支払いを翌月に回してもらえた。

その月は何とか乗り切れます。

しかし100万円の支払いが消えたわけではありません。

翌月に移動しただけです。

翌月、本来の支払いが200万円あるところへ、前月から繰り越した100万円が加われば、

200万円+100万円=300万円

を払わなければなりません。

そこでまた資金が足りなくなり、一部を翌月へ回す。

すると、

過去の支払いを、未来の売上で払い続ける状態

になります。

これが続くと、経営者からすると非常に分かりにくくなります。

今月はちゃんと利益が出ている。

なのに金がない。

実際には、

今月の商売で生まれた金が、過去から持ち越した支払いに使われている

わけです。

借入返済も同時に続いている

さらに第2章で説明した借入返済もあります。

たとえば現在の店が毎月50万円の利益を出していたとしても、借入元本を毎月30万円返済しているなら、単純化すると残る現金は20万円です。

そこへ過去から繰り越している支払いがあれば、さらに現金は減ります。

たとえば、

内容金額
今月の利益+50万円
借入元本返済▲30万円
過去の未払い解消▲15万円
単純化した今月の現金増加+5万円

PLを見れば50万円の黒字です。

経営者としては、

「50万円も利益が出たのに、なんで5万円しか増えてないんや」

となります。

しかし現金の動きを見れば、不思議ではありません。

45万円が、今月以外の問題を処理するために出ていったからです。

今の利益が「過去の後始末」に使われている

ここが非常に重要です。

現在の店が黒字なら、

今の経営そのものが失敗しているとは限りません。

むしろ改善している可能性があります。

ただし、過去に大きな赤字を出した。

開業資金が足りなかった。

支払いを先送りした。

借入金が残っている。

そうした過去の結果は、現在の口座残高に残っています。

だから今月50万円利益を出しても、

50万円すべてが未来のために貯まるわけではありません。

一部は借入返済へ。

一部は過去の支払いへ。

一部は過去に減らした現金の回復へ。

そうやって使われていきます。

言い換えるなら、

今月の黒字で、過去の不足を返している状態です。

だから「黒字なのに苦しい期間」が存在する

ここまで理解すると、

「黒字になったのに、なんで全然楽にならないんだ」

という疑問にも答えが見えてきます。

黒字化した瞬間から、すべてが正常になるわけではありません。

過去に500万円の穴を作っていた店が、毎月50万円ずつ現金を残せる体質になったとしても、単純計算では、

500万円 ÷ 50万円=10か月

かかります。

10か月間、店は黒字です。

それでも経営者の感覚としては、

「金が増えない」

「まだ余裕がない」

「月末が怖い」

という状態が続く可能性があります。

しかし、この店は悪化しているわけではありません。

毎月50万円ずつ、過去に作った穴から抜け出している途中

なのです。

ここを数字で把握できるかどうかは大きい。

「黒字なのに金がない」という漠然とした不安を抱え続けるのか。

それとも、

「過去の不足があと500万円あって、今は毎月50万円ずつ埋めている」

と認識するのか。

同じ資金状態でも、経営者が見ている景色はまったく変わります。

そして、ここまで来れば次に知りたいことは自然に決まります。

過去の不足は、あといくら残っているのか。

そして、

今の利益を続ければ、あと何か月でそこから抜け出せるのか。

ここを数字にできれば、「いつまでこの苦しさが続くのか」が初めて見えるようになります。

第5章 黒字化と財務回復には時間差がある

ここまでの話を理解すると、

「黒字になったのに、なぜまだ苦しいのか」

という疑問に答えが出てきます。

黒字化と財務回復は、同時には起こらないからです。

ここは、黒字倒産寸前まで資金繰りが苦しくなった経営者にとって、非常に重要なポイントです。

黒字化は「回復した」ではなく「回復が始まった」

たとえば、過去の赤字や資金不足によって、手元資金を300万円減らしてしまった店があるとします。

その後、売上改善や原価、人件費の見直しによって経営状態が改善した。

そして現在は、借入返済など実際の現金支出まで考えたうえで、

毎月50万円ずつ現金を増やせる状態

になったとします。

これは明らかに改善です。

もう赤字を垂れ流している状態ではありません。

しかし、過去に失った300万円がその瞬間に戻ってくるわけではありません。

計算は非常に単純です。

300万円 ÷ 50万円 = 6か月

です。

経過毎月の現金増加残っている過去の不足
黒字化した時点300万円
1か月後+50万円250万円
2か月後+50万円200万円
3か月後+50万円150万円
4か月後+50万円100万円
5か月後+50万円50万円
6か月後+50万円0万円

つまりこの店は、黒字化してから半年間、

商売は改善しているのに、まだ資金繰りに余裕がない

という期間を過ごすことになります。

この6か月が経営者には長い

ここが精神的にも苦しいところです。

売上は改善した。

原価も見直した。

人件費も適正化した。

毎月ちゃんと利益も出している。

それなのに月末になると、まだ金がない。

すると経営者は、

「まだ何か間違っているんじゃないか」

「もっと売上を上げないとダメなのか」

「こんなに頑張っているのに、なぜ楽にならないんだ」

と考え始めます。

しかし先ほどの店なら、数字上は回復しています。

1か月目より2か月目。

2か月目より3か月目。

確実に過去の不足は小さくなっています。

ただ、

回復途中だから、まだ余裕を感じられない。

それだけです。

黒字化した日と「安全になった日」の間には距離がある

ここを図式化すると分かりやすくなります。

赤字経営

黒字化

過去の不足を埋める期間

不足解消

安全資金を積み上げる

財務的な余力が生まれる

黒字化は、この途中にあります。

ゴールではありません。

だから、

黒字化した日=経営が安全になった日

ではないのです。

むしろ黒字化した日は、

「これ以上穴を広げる経営から、穴を埋められる経営に変わった日」

と考えた方が実態に近いでしょう。

不足がゼロになっても、まだ完全なゴールではない

もう一つ重要なことがあります。

先ほどの300万円を6か月かけて取り戻したとします。

これで過去の不足は解消しました。

しかし、

口座残高がギリギリでいいわけではありません。

飲食店では突然の支出があります。

冷蔵庫が壊れる。

エアコンが故障する。

売上が予想より落ちる。

食材価格が上がる。

人員不足で採用費が必要になる。

税金の支払いが重なる。

こうしたことは普通に起こります。

だから本当の意味で財務状態を回復させるには、

過去の穴をゼロにするだけではなく、その先に安全資金を積み上げる必要があります。

たとえば過去の不足300万円を解消したあと、さらに300万円の現金余力を作りたいのであれば、

毎月50万円残せる店なら、

さらに6か月

必要です。

つまり、

段階必要額50万円/月なら
過去の不足を解消300万円6か月
安全資金を作る300万円さらに6か月
合計600万円12か月

黒字化してから、本当の意味で資金に余裕が生まれるまで1年かかることもあるわけです。

「いつまで苦しいのか」は計算できる

ここで大切なのは、漠然と耐えることではありません。

数字にすることです。

基本的な考え方は非常にシンプルです。

現在抱えている資金不足 ÷ 毎月実際に増やせる現金 = 回復までのおおよその期間

300万円不足していて、毎月50万円増やせるなら6か月。

300万円不足していて、毎月30万円なら10か月。

600万円不足していて、毎月50万円なら12か月です。

資金不足毎月増やせる現金回復目安
300万円50万円6か月
300万円30万円10か月
600万円50万円12か月
600万円30万円20か月

もちろん実際には売上変動や税金、設備投資などがあるため、この通り一直線には進みません。

それでも、

あと何百万円の穴があり、今の経営なら毎月いくら埋められるのか

が分かれば、少なくとも出口の方向は見えます。

「黒字なのに、いつまで経っても金がない」

ではありません。

「あと300万円。今のペースなら約6か月」

と考えられるようになります。

この違いは大きい。

黒字化したのに苦しい期間は存在します。

それは必ずしも、今の経営が失敗しているという意味ではありません。

大切なのは、

今も穴が広がっているのか。
それとも毎月少しずつ穴を埋めているのか。

この違いを数字で確認することです。

そして、ここまで来ると次に必要なのは、

「自分の店には、実際あといくらの穴が残っているのか」

を把握することです。

ここが分からなければ、6か月で抜け出せるのか、1年かかるのか、それとも今の利益では足りないのかも判断できません。

第6章 まず「あといくら足りないのか」を出す

ここまで来たら、次にやることは明確です。

自分の店には、あといくら現金が必要なのか。

これを数字にします。

「金がない」

「毎月ギリギリ」

「月末が怖い」

「もう少し余裕があれば楽になる」

これらはすべて感覚です。

感覚のままでは、対策も立てられません。

300万円足りない店と、1,000万円足りない店では、当然やるべきことも回復までの時間も違います。

だからまず、

「なんとなく金がない」を「あと○○万円足りない」に変える。

ここから始めます。

「口座にいくらあれば安心なのか」を決める

不足額を出すためには、先に基準が必要です。

考え方はシンプルです。

安全に営業するために必要な現金 − 現在持っている現金 = 資金不足額

たとえば、

安全に営業するためには500万円程度の現金を持っておきたい。

しかし現在の預金残高が200万円しかない。

それなら、

500万円 − 200万円 = 300万円

現在の資金不足は300万円です。

項目金額
安全に営業するために必要な現金500万円
現在の現金200万円
不足額300万円

これで初めて、

「うちは金がない」

ではなく、

「うちはあと300万円積み上げれば、ひとまず目標とする安全水準に届く」

と言えるようになります。

では「安全に営業するための現金」はいくらなのか

ここで当然、

「その500万円はどうやって決めるんや?」

という疑問が出ます。

これは店によって違います。

月商200万円の店と月商1,000万円の店では、必要な現金は同じではありません。

家賃、人件費、仕入代金、借入返済など、毎月出ていく金額も違います。

まず確認したいのは、

売上が多少崩れても、支払いを止めずに営業を続けられる金額

です。

たとえば毎月、次のような現金支出がある店を考えてみます。

主な支払い月額
食材・仕入180万円
給与100万円
家賃50万円
水道光熱費35万円
広告・システム等20万円
借入返済30万円
その他35万円
合計450万円

この店は毎月、おおよそ450万円の現金が出ていきます。

もちろん営業していれば売上も入ってきます。

しかし、

売上が一時的に落ちる。

キャッシュレス入金のタイミングがずれる。

大型設備が故障する。

税金の支払いが重なる。

こうしたことを考えると、口座残高10万円、20万円で回し続けるのは危険です。

だから、

「最低限いくらあれば支払いの谷を越えられるのか」

を、自店の入出金に合わせて設定します。

さらにその上に、売上減少や突発支出に耐えるための余力を持たせる。

これが自店にとっての「安全に営業するために必要な現金」です。

一律に「○か月分あれば安全」とは決められない

よく、

「運転資金は固定費の3か月分」

「最低でも半年分持っておいた方がいい」

といった目安があります。

考える入口としては使えます。

しかし、実際の資金繰りでは一律に決めない方がいいでしょう。

同じ月商600万円でも、

現金売上が多い店。

キャッシュレス比率が高い店。

給与支払額が大きい店。

借入返済が重い店。

仕入先への支払いサイトが短い店。

税金の支払いが近い店。

それぞれ必要な現金は違います。

だからこの記事では、

「○か月分持てば絶対安全」

とは考えません。

自店の実際の支払い予定から、

「この金額を下回ると危険」

というラインを決めます。

その方が現実的です。

「最低必要額」と「目標額」を分けてもいい

さらに実務では、二段階で考えると分かりやすくなります。

一つは、

最低必要現金。

ここを割ると、給与や仕入先への支払いなど通常営業に支障が出る可能性があるラインです。

もう一つが、

安全目標現金。

多少売上が落ちたり、設備トラブルが起きたりしても、すぐに資金ショートしないための余力を含めた金額です。

たとえば、

資金水準金額状態
現在の現金200万円支払日のたびにギリギリ
最低必要現金300万円通常の支払いを回す最低ライン
安全目標現金500万円突発支出にもある程度耐えられる
安全目標までの不足300万円ここを埋める

こうすると、自分が今どこにいるのかが分かります。

現在200万円。

まず300万円まで持っていけば、通常営業の危険度は下がる。

その次に500万円を目指す。

つまり、

いきなり300万円の穴を見るのではなく、まず100万円、次に200万円と段階的に回復させる

こともできます。

借金が500万円あるから「500万円不足」ではない

ここは混同しやすいところです。

借入残高が500万円ある。

だから500万円の資金不足がある。

そういう意味ではありません。

借入が残っていても、返済計画が正常で、十分な現金を持ち、毎月キャッシュを増やせているなら、直ちに500万円不足しているとは言えません。

逆に借入がほとんどなくても、口座残高が10万円しかなく、数日後に100万円の給与支払いがあるなら資金繰りは危険です。

ここで知りたいのは借金の総額ではなく、

今の店を安全に回すための現金が、あといくら不足しているのか

です。

問題を金額に変えると「出口」が見えてくる

ここまで数字を出すと、経営者の見え方が変わります。

これまでは、

「毎月金がない」

「いつまでこんな状態が続くんや」

という漠然とした不安でした。

それが、

安全目標500万円
現在200万円
不足300万円

まで分かる。

すると第5章で説明した計算が使えるようになります。

仮に毎月50万円ずつ現金を増やせるのであれば、

300万円 ÷ 50万円 = 6か月

です。

現在200万円。

1か月後250万円。

2か月後300万円。

3か月後350万円。

そして6か月後には500万円。

もちろん実際の経営では毎月完全に同じ金額が残るわけではありません。

それでも、

「いつまで続くか分からない資金難」から、「あと300万円を積み上げる経営」に変わります。

これは大きな違いです。

資金繰りが苦しいと、どうしても目の前の支払いばかり見てしまいます。

しかし本当に知るべきなのは、

自店が安全に営業するためにはいくら必要なのか。
現在はいくら持っているのか。
その差はいくらなのか。

です。

まず不足額を出す。

「金がない」を「あと300万円必要」に変える。

ここまでできれば、次に考えることは一つです。

では、その300万円を毎月いくらずつ埋められているのか。

ここを計算すれば、自店が本当に回復方向へ進んでいるのか、そしていつ安全圏に入れるのかが見えてきます。

第7章 「いつ抜け出せるのか」を計算する

第6章で、

「あといくら現金が必要なのか」

が分かりました。

たとえば、安全に営業するためには500万円必要。

現在の現金が200万円。

不足しているのは300万円。

ここまで分かれば、次に知りたいことは一つです。

「あと何か月で、この状態から抜け出せるのか」

です。

これは計算できます。

必要なのは「不足額」と「毎月増やせる現金」

考え方は非常にシンプルです。

不足している運転資金 ÷ 毎月増やせる現金 = 財務回復までの期間

たとえば、

不足している運転資金が300万円。

借入返済なども含めたすべての現金支出を終えたあと、毎月50万円ずつ現金を増やせている。

それなら、

300万円 ÷ 50万円 = 6か月

です。

今の経営状態を維持できれば、おおよそ6か月で目標とする資金水準まで到達できる計算になります。

これが月100万円なら、

300万円 ÷ 100万円 = 3か月

です。

不足している資金毎月増やせる現金回復までの目安
300万円30万円約10か月
300万円50万円約6か月
300万円75万円約4か月
300万円100万円約3か月

同じ300万円不足している店でも、

毎月いくら現金を残せるかによって、出口までの距離は大きく変わります。

大事なのは「利益」ではなく「毎月実際に増えた現金」

ここで注意したいことがあります。

計算に使う50万円は、

PL上の利益50万円ではありません。

第2章で説明した通り、

利益 ≠ 現金増加額

だからです。

たとえばPL上では80万円利益が出ていたとしても、

借入元本返済などによって30万円現金が出ていくのであれば、単純化すると、

80万円 − 30万円 = 50万円

この50万円が、実際の回復に使える金額です。

項目金額
PL上の利益+80万円
借入元本返済など▲30万円
実際に増やせる現金+50万円

資金不足300万円を80万円で割ってはいけません。

見るべきなのは、

「すべての支払いを終えたあと、結局いくら現金が増えたのか」

です。

ここを間違えると、

「4か月ぐらいで楽になるはずだったのに、全然金が増えない」

ということになります。

回復速度を毎月確認する

実際の飲食店経営では、毎月きれいに50万円ずつ増えるわけではありません。

繁忙月もあれば閑散月もあります。

設備修理が発生することもあります。

税金の支払いが重なる月もあります。

だから、一度計算して終わりではありません。

たとえば、

現金増減残っている不足額
スタート300万円
1か月目+40万円260万円
2か月目+60万円200万円
3か月目+30万円170万円
4か月目+70万円100万円

4か月で200万円回復しました。

平均すると、

200万円 ÷ 4か月 = 月50万円

です。

残り100万円なら、

100万円 ÷ 50万円 = 約2か月

現在のペースなら、あと約2か月。

こうやって毎月更新していけばいい。

すると資金繰りが、

「なんとなく苦しいもの」から「進捗を測れるもの」

に変わります。

そして「売上を伸ばす意味」が変わる

ここまで数字が見えると、売上に対する考え方も変わります。

たとえば現在、

毎月50万円ずつ現金を増やせている。

不足額は300万円。

回復まで6か月。

ここで売上改善によって、毎月残せる現金を50万円から75万円まで増やせたとします。

すると、

300万円 ÷ 75万円 = 4か月

になります。

月100万円残せるようになれば、

300万円 ÷ 100万円 = 3か月

です。

毎月増やせる現金回復期間50万円/月との差
50万円6か月
75万円4か月2か月短縮
100万円3か月3か月短縮

ここで初めて、

「あと100万円売上を上げたい」

という目標の意味が変わってきます。

売上記録を更新したいからではありません。

繁盛店に見せたいからでもありません。

その売上増によって利益を増やし、実際に残せる現金を増やす。

そして、

財務回復までの時間を短くする。

これが目的です。

売上を上げても現金が残らなければ、回復速度は変わらない

逆に言えば、売上だけ増えても意味はありません。

たとえば月商600万円から700万円になった。

100万円も売上が増えた。

しかし、そのために広告費、人件費、原価などが増え、最終的に残せる現金が50万円のままだった。

それなら、

回復速度は変わっていません。

不足300万円なら、依然として約6か月です。

だから追いかけるべき数字は、

売上そのものではなく、その売上によって毎月いくら現金を増やせるようになったのか。

ここです。

月商600万円でも100万円残せる店なら、300万円の不足を約3か月で埋められる。

月商800万円あっても30万円しか残せない店なら、同じ不足を埋めるのに約10か月かかる。

財務回復という視点では、

売上の大きさより、現金を生み出す力の方が重要

なのです。

「いつまで続くか分からない」を終わらせる

資金繰りが苦しいとき、一番つらいのは、

いつ終わるのか分からないこと

です。

来月も苦しいのか。

半年後も同じなのか。

1年後も取引先に支払いを待ってもらっているのか。

出口が見えないから不安になります。

しかし、

不足額300万円。
平均して毎月50万円回復。
現在の回復予定は約6か月。

ここまで数字にできれば、状況は変わります。

さらに毎月75万円残せる経営に改善できれば4か月。

100万円なら3か月。

すると経営改善の目的も明確になります。

売上を上げる。
利益を増やす。
現金を残す。
回復期間を短くする。

全部が一本につながります。

黒字なのに金がない状態から抜け出すために必要なのは、

ただ「もっと売ること」ではありません。

自分の店にあといくら必要なのかを知り、毎月いくら現金を増やせるのかを測り、その回復速度を上げていくこと。

そうすれば、

「いつ抜け出せるか分からない経営」から、「あと○か月で抜け出す経営」

へ変えることができます。

第8章 本当に怖いのは「回復する前に金が尽きること」

第7章では、

不足している運転資金 ÷ 毎月増やせる現金 = 財務回復までの期間

という考え方を説明しました。

不足している資金が400万円。

毎月50万円ずつ現金を増やせるなら、

400万円 ÷ 50万円 = 8か月

今の経営を続ければ、約8か月で目標とする財務状態まで回復できる。

ここまで分かれば、出口は見えています。

しかし、もう一つ確認しなければならないことがあります。

その8か月を、会社は生き残れるのか。

ここを見なければ、本当の意味で資金繰りを把握したことにはなりません。

黒字でも、途中で現金が尽きれば終わる

たとえば現在、店は黒字化しています。

売上も安定してきた。

原価、人件費も改善した。

PL上でも利益が出ている。

長期的に見れば、経営は回復方向へ向かっています。

しかし、過去から繰り越した支払いが残っている。

借入返済も続いている。

税金の支払いも控えている。

さらに第3章で説明した「支払日の谷」もある。

その結果、

今の現金では、あと3か月程度しか支払いを続けられない

とします。

一方、財務状態が十分に回復するまでには8か月かかる。

すると、

項目期間
財務回復まで8か月
現在の資金で耐えられる期間3か月
5か月不足

問題は明確です。

回復する前に、現金が尽きます。

これが危険なのです。

「黒字だから大丈夫」が通用しない理由

経営者からすると、納得しにくい状態です。

毎月利益は出ている。

先月より経営状態も良くなっている。

このまま続ければ回復できる。

それなのに会社が危ない。

なぜなら会社は、

利益がなくなった日に倒れるのではなく、支払う現金がなくなったときに立ち行かなくなる

からです。

給料日が来た。

払えない。

仕入先への支払日が来た。

払えない。

家賃の支払日が来た。

払えない。

借入の返済日が来た。

払えない。

売上があっても、利益が出ていても、支払期日に必要な現金を用意できなければ経営は続けられません。

これが、いわゆる黒字倒産が起こり得る基本的な構造です。

資金繰りには「二つの時計」がある

ここまでの話を整理すると、資金繰りを見るときには二つの時間を同時に見る必要があります。

一つ目は、

財務回復までの時間。

もう一つは、

現金が尽きるまでの時間。

この二つです。

たとえば、

財務回復まで8か月
現金が尽きるまで12か月

なら、途中の資金変動には注意が必要ですが、単純化すれば回復まで耐えられる可能性があります。

ところが、

財務回復まで8か月
現金が尽きるまで3か月

なら状況は違います。

今の経営をそのまま続けるだけでは間に合いません。

つまり資金繰りとは、

「財務回復までの時間」と「現金が尽きるまでの時間」の競争

でもあるのです。

「あと何か月持つか」を必ず出す

資金繰りが苦しい店ほど、

「来月はいける」

「再来月もなんとかなる」

と、一か月ずつ考えがちです。

しかし必要なのは、もう少し先を見ることです。

今ある現金。

これから確実に入ってくる現金。

給与、家賃、仕入代金、借入返済、税金など、これから確実に出ていく現金。

それらを日付順に並べていきます。

すると、

月末予想現金
現在180万円
1か月後130万円
2か月後70万円
3か月後20万円
4か月後▲30万円

という予測が出ることがあります。

この場合、

4か月後に考え始めてはいけません。

今の時点で、

「このままなら4か月後に資金不足が起きる」

と分かっています。

資金繰り表の大きな意味はここにあります。

未来の資金不足を、実際に金がなくなる前に発見することです。

回復が間に合わないなら、別の手を打つ必要がある

財務回復まで8か月。

しかし現金は3か月しか持たない。

この場合、

「黒字だから、このまま頑張ろう」

では足りません。

5か月の差を埋める必要があります。

考える方向は大きく分ければ、

毎月増やせる現金を増やして回復速度を上げること。

支払いの出方を見直して資金流出を抑えること。

必要であれば、資金調達によって回復までの時間を確保すること。

です。

たとえば400万円の不足を毎月50万円ずつ埋めているなら8か月かかります。

しかし経営改善によって毎月100万円残せるようになれば、

400万円 ÷ 100万円 = 4か月

まで短縮できます。

それでも資金が3か月しか持たないのであれば、まだ1か月足りません。

ならば、

回復速度をさらに上げるのか。
支出時期や支出額を見直すのか。
追加の運転資金を確保するのか。

具体的な対策が必要になります。

重要なのは、ここまで数字で見えていることです。

融資も「赤字だから借りる」とは限らない

この考え方をすると、融資に対する見方も少し変わります。

資金調達というと、

「経営が悪いから金を借りる」

というイメージを持つ経営者もいるかもしれません。

しかし、

店はすでに黒字化している。

毎月現金を増やせる構造にもなっている。

あと8か月あれば財務状態を回復できる。

ただ、現在の手元資金では3か月しか持たない。

こういうケースなら、必要なのは、

赤字を延命するための資金ではなく、回復までの時間を買うための資金

という見方もできます。

もちろん、借りれば返済が増えます。

だから借入後の資金繰りまで計算したうえで判断する必要があります。

それでも、

「何となく金が足りないから借りる」

のと、

「回復まで8か月必要だが、現在の資金では3か月しか持たない。だからその差を埋める」

のでは、資金調達の意味がまったく違います。

黒字化だけをゴールにしない

ここまで来ると、この記事の最初にあった、

「黒字なのに、なぜ支払日が怖いのか」

という疑問の正体がかなり見えてきます。

黒字化しても、過去の資金不足は残る。

その不足を現在の利益で少しずつ埋める。

回復には時間がかかる。

そして、

回復するまで会社が耐えられなければ、黒字でも資金は尽きる。

だから経営者が確認すべきなのは、

「今月黒字だったか」だけではありません。

見るべきなのは、

あといくら不足しているのか。
毎月いくら回復できているのか。
完全回復まで何か月かかるのか。
そして、現在の現金であと何か月耐えられるのか。

この4つです。

そして最後の二つを並べます。

財務回復までの時間 < 現金が尽きるまでの時間

この状態を作らなければなりません。

逆に、

財務回復までの時間 > 現金が尽きるまでの時間

なら、黒字であっても対策が必要です。

資金繰りで本当に怖いのは、

利益が出ていないことだけではありません。

回復する力はあるのに、回復する前に現金が尽きてしまうことです。

ここまで見えて初めて、

「もっと頑張って売ろう」

ではなく、

「会社が回復するまでの時間をどう確保するか」

という経営判断ができるようになります。

第9章 間に合わないと分かったら、利益改善だけを待たない

第8章で確認したのは、

財務回復までの時間と、現金が尽きるまでの時間を比べる

という考え方でした。

たとえば、

財務回復まで8か月。

しかし現在の資金では3か月しか持たない。

この場合、あと5か月足りません。

ここで、

「もっと売上を上げよう」

「利益を増やそう」

と考えること自体は間違っていません。

ただし、それだけを待つのは危険です。

なぜなら、

利益改善が資金繰りに効いてくるまでにも時間がかかるからです。

資金繰りが危ないなら「時間」を作る

資金繰りが苦しいとき、経営者はどうしても、

どうやって売上を増やすか

に意識が向きます。

しかし、あと3か月で現金が尽きると分かっているのであれば、売上改善と同時に、

会社が生き残れる時間そのものを延ばす

必要があります。

そのための方法はいくつかあります。

対策主な目的
金融機関への相談運転資金を確保する
返済条件の相談毎月の現金流出を抑える
支払条件の見直し支払いタイミングを調整する
不要不急の支出・投資停止現金流出を止める
在庫圧縮在庫になっている現金を減らす
粗利改善売上から残る現金を増やす
固定費改善毎月の資金流出を減らす
売上改善現金を生み出す力を上げる

どれか一つで解決するとは限りません。

複数を同時に進めて、

「回復まで8か月必要なのに3か月しか持たない」

という時間差を埋めていきます。

まず金融機関に早く相談する

資金不足が予測できたのであれば、金融機関への相談は早い方がいい。

「あと10万円しかありません」

となってから初めて相談するより、

「このまま推移すると4か月後に資金が不足する見込みです」

という段階で相談する方が、打てる手を検討する時間があります。

しかも、

現在の売上。

現在の利益。

今後の資金繰り予定。

不足する時期。

必要な資金額。

改善計画。

ここまで数字で説明できれば、

単に、

「金がないので貸してください」

という話ではなくなります。

たとえば、

「現在は黒字化しています。ただし過去の資金不足を埋めながら返済を続けているため、このままでは12月に資金が不足する予測です。現在のキャッシュ創出力なら、その後○か月で回復できる見込みです」

と説明できます。

資金繰り表を作る意味は、こういうところにもあります。

返済条件も「毎月いくら出ていくか」で考える

借入返済が資金繰りを強く圧迫しているのであれば、金融機関に返済条件について相談することも選択肢になります。

たとえば毎月50万円の現金を生み出せる店が、借入元本を毎月40万円返している。

単純化すれば、残せる現金は10万円です。

仮に返済条件の変更が認められ、一定期間の現金流出を抑えられれば、その間に手元資金を回復させられる可能性があります。

もちろん返済がなくなるわけではありません。

後で返す必要があります。

だから重要なのは、

単なる先送りではなく、その時間を使って財務状態を回復させられるのか

です。

時間を作っても、その間ずっと赤字なら問題は先へ移動するだけです。

一方、すでに黒字化して現金を生み出せる店なら、作った時間に意味を持たせられる可能性があります。

支払条件も資金繰りを変える

仕入先などへの支払いについても、条件によって資金繰りは大きく変わります。

売上の入金より先に大きな支払いが集中すれば、第3章で説明した「支払日の谷」が深くなります。

逆に入金と支払いのタイミングが近づけば、必要な運転資金を抑えられる場合があります。

ただし、これは取引先に一方的に負担を押しつければいいという話ではありません。

取引先との信用は、商売を続けるための重要な資産です。

だから条件変更が必要なら、

支払日を過ぎてから謝るのではなく、事前に相談する。

これが基本です。

不要不急の支出と投資を一度止める

資金繰りが危険な時期には、

「必要な支出」と「今でなくてもいい支出」

を分ける必要があります。

たとえば、

すぐに必要ではない設備投資。

効果が検証できていない広告。

使用頻度の低いサービス。

急ぐ必要のない改装。

過剰な備品購入。

こうした支出がないかを確認します。

ここで大切なのは、何でも削ることではありません。

売上を作るために必要な人員まで削った。

集客できている広告まで止めた。

料理やサービスの品質まで落とした。

その結果、売上と利益がさらに下がった。

これでは資金繰り改善になりません。

止めるのは、

今払わなくても商売の力を大きく落とさない支出

からです。

在庫も現金である

飲食店では、在庫も見落とせません。

食材庫や冷凍庫に30万円分の商品が眠っている。

それは会計上は在庫ですが、資金繰りという視点では、

30万円の現金を食材に変えて保管している

とも考えられます。

必要以上に仕入れる。

売れない商品を抱える。

メニュー数が多く、少量ずつ大量の食材を持つ。

こうした状態では、現金が在庫に固定されます。

だから、

発注量を適正化する。

回転しない食材を減らす。

メニュー構成を整理する。

在庫日数を短くする。

こうした改善も資金繰り対策になります。

そして、本業の利益を強くする

ここまでの対策は重要です。

ただし最終的に店を立て直す力になるのは、

本業から現金を生み出せること

です。

支払いを延ばしてもらう。

返済条件を変更する。

融資を受ける。

支出を止める。

これらは会社が回復するための時間を作ってくれます。

しかし、時間を作っただけでは財務は回復しません。

その時間の中で、

粗利を改善する。

固定費を適正化する。

客数を増やす。

客単価を上げる。

リピートを増やす。

そして、

毎月実際に残せる現金を増やす。

ここまでやって初めて、作った時間を回復につなげることができます。

「延命」と「回復」はセットで考える

ここは非常に重要です。

資金繰り対策には、大きく二つの役割があります。

会社が持つ時間を延ばすこと。

そして、

財務回復までの時間を短くすること。

たとえば、

現状では3か月しか持たない。

金融機関との相談や支出見直しによって6か月持つようになった。

同時に利益改善によって、財務回復まで8か月だったものを5か月まで短縮できた。

すると、

改善前改善後
現金が持つ期間3か月6か月
財務回復まで8か月5か月

改善前は、

3か月 < 8か月

なので間に合いません。

改善後は、

6か月 > 5か月

になります。

これなら回復まで耐えられる可能性が見えてきます。

これが資金繰り改善です。

単純に売上だけを追う話でもなければ、ひたすら支払いを先送りする話でもありません。

会社が持つ時間を延ばしながら、回復までの時間を短くする。

この両方を同時に進めます。

一番危険なのは「足りなくなってから考えること」

そして何より重要なのは、動き始めるタイミングです。

口座残高がほぼゼロになった。

給料が払えない。

仕入先への支払日が明日。

そこで初めて、

「どうしよう」

と考える。

これでは選択肢が非常に少なくなります。

資金繰り表を作って、

「このままなら3か月後に100万円足りなくなる」

と分かったのであれば、その時点が動くタイミングです。

まだ口座に金がある。

まだ給与も払えている。

まだ仕入先への支払いも遅れていない。

だからこそ、打てる手があります。

金融機関へ相談する。

返済計画を確認する。

支払い予定を整理する。

不要な支出を止める。

在庫を圧縮する。

粗利を改善する。

固定費を見直す。

売上を伸ばす。

一つずつ先に動けます。

資金繰りで本当に大切なのは、

金がなくなったときにどうするかではありません。

金がなくなる日を、先に見つけることです。

「このままなら○月に足りなくなる」

そこまで数字で見えた瞬間から、資金繰りはただの不安ではなく、経営者が対策できる問題に変わります。

第10章 PLと資金繰り表は役割が違う

ここまで、

利益は出ているのに現金が増えない理由。

支払日の谷。

過去の資金不足。

財務回復までの時間。

現金が尽きるまでの時間。

そして、間に合わない場合の対策まで見てきました。

では経営者は、日々どの数字を見ればいいのでしょうか。

難しく考える必要はありません。

まず大きく、

二つの表を分けて見る。

これだけです。

一つが、

PL(月次損益)。

もう一つが、

資金繰り表。

この二つは似たような数字が並びますが、見ているものが違います。

PLは「商売そのものが儲かっているか」を見る

PLで確認するのは、

今の商売に利益を生み出す力があるのか

です。

たとえば、

項目金額
売上600万円
原価▲200万円
人件費▲110万円
家賃▲50万円
水道光熱費▲35万円
広告・システム費等▲25万円
その他経費▲130万円
利益50万円

この表を見ることで、

600万円売って50万円利益が残った。

原価率はどうだったか。

人件費率はどうだったか。

固定費は重すぎないか。

売上が増えたことで利益も増えたのか。

といったことが分かります。

つまりPLは、

店の収益構造を見る表

です。

もしPLで毎月赤字が続いているなら、まず本業そのものを改善しなければなりません。

売上を上げる。

原価を改善する。

人件費を適正化する。

固定費を見直す。

客単価を改善する。

こうした経営改善の結果がPLに現れます。

資金繰り表は「支払いを続けられるか」を見る

一方、資金繰り表で確認するのは、

実際の現金がいつ入って、いつ出て、いくら残るのか

です。

たとえば、

日付内容入金出金予定残高
月初前月繰越150万円
5日売上入金+100万円250万円
10日カード引落▲80万円170万円
15日給与▲120万円50万円
20日売上入金+150万円200万円
25日売上入金+100万円300万円
月末家賃・仕入等▲220万円80万円

こちらで知りたいのは、

「今月儲かったか」

ではありません。

「支払日に金があるか」

です。

15日に給与を払ったあと、50万円しか残らない。

月末には80万円残る予定。

翌月10日に大きなカード引落がある。

このまま進んだ場合、何日に資金が最も少なくなるのか。

そこを見るための表です。

同じ会社でも、PLと資金繰りでは違う景色が見える

たとえば、こんな会社があったとします。

PL上の利益 +50万円

これだけ見れば、

「今月も黒字。順調だ」

となります。

しかし資金繰り表を見ると、

月末予想残高 80万円
翌月10日の支払い 120万円

だった。

これなら、40万円足りません。

逆に、一時的に融資を受けたことで銀行口座に500万円あったとしても、PLが毎月50万円の赤字なら安心できません。

現金はあります。

しかし本業が毎月その現金を食いつぶしています。

つまり、

利益があるから安全とは限らない。

そして、

現金があるから儲かっているとも限らない。

ここを分けて考える必要があります。

二つの表を並べると経営状態が見える

PLと資金繰りを組み合わせると、経営状態は大きく4つに分けられます。

現金に余裕あり現金に余裕なし
黒字収益・資金とも比較的安定黒字だが資金繰りに注意
赤字現金があるうちに収益改善が必要早急な対策が必要

特にこの記事で扱ってきたのは、

「黒字 × 現金に余裕がない」

という状態です。

商売そのものは利益を生み始めている。

しかし過去の赤字や借入返済、支払いのタイミングなどによって手元資金が薄い。

この状態なら、

PLをさらに改善しながら、資金繰り表で回復まで持つかを管理する

必要があります。

一方、

「赤字 × 現金に余裕がある」

店も安心できません。

今は預金があるので支払いはできます。

しかし毎月赤字なら、その現金は少しずつ減っていきます。

こちらは資金が尽きる前に、PLを改善する必要があります。

PLだけ見ても足りない。通帳だけ見ても足りない

経営者がやりがちな管理があります。

一つは、

PLだけを見ること。

「今月50万円黒字だったから大丈夫」

しかし支払日に現金がなければ危険です。

もう一つは、

銀行口座だけを見ること。

「まだ300万円あるから大丈夫」

しかし毎月100万円ずつ現金が減っているなら、3か月後にはなくなる可能性があります。

だから、

利益と現金を同時に見る。

これが必要です。

非常に単純に言えば、

PLでは「この商売を続ける価値があるか」を見る。

資金繰り表では「この商売を続けられるか」を見る。

この二つです。

経営者が毎月確認する数字をシンプルにする

資金繰りが苦しいときほど、数字を大量に並べても見なくなります。

最低限、毎月この二つを確認します。

PL

今月いくら利益が出たのか。

そして、

その利益は前月より改善しているのか。

資金繰り表

現在いくら現金があるのか。

今後どこまで残高が下がるのか。

このままならいつ資金不足が起こるのか。

ここが分かれば、

「売上は上がっているのに利益が増えていない」

「利益は出ているのに借入返済で現金が増えていない」

「今月は大丈夫だが3か月後に資金不足になる」

といった問題を切り分けられます。

利益と現金、両方が改善して初めて経営は強くなる

この記事の最初では、

「黒字なのに、なぜ金がないのか」

という疑問から始まりました。

その答えは、

黒字と現金は別のものだからです。

だから経営者は、

利益を増やす経営

と、

現金を残す経営

を同時に進めなければなりません。

PLで本業を強くする。

資金繰り表で現金が尽きないようにする。

そして毎月生み出した現金で、過去の資金不足を少しずつ埋めていく。

そうやって、

「利益は出ているのに金がない店」から、「利益も出て、現金も積み上がる店」へ変えていく。

PLと資金繰り表は、どちらか一方を選ぶものではありません。

PLは「儲かっているか」。
資金繰り表は「払い続けられるか」。

経営者は、この二つを同時に管理する必要があります。

最終章 黒字化の先に「財務回復」がある

この記事は、

「黒字なのに、なんで金がないんや?」

という疑問から始まりました。

月次決算では利益が出ている。

原価も人件費も大きく崩れていない。

売上も以前より上がっている。

それなのに、カードの引落日が怖い。

給料日が怖い。

月末になると口座残高がなくなり、仕入先への支払いを待ってもらう。

数字では黒字なのに、経営者の感覚としてはまったく楽にならない。

ここまで読んでもらえれば、その理由はかなり整理できたと思います。

黒字化と、財務回復は別だからです。

赤字から黒字へ。まずここが第一段階

もちろん、最初にやるべきことは黒字化です。

売上より経費の方が大きく、毎月赤字を出している状態では、基本的には営業を続けるほど現金が減っていきます。

だから、

売上を改善する。

粗利を改善する。

人件費を適正化する。

固定費を見直す。

まず本業から利益を生み出せる状態を作る。

これは絶対に必要です。

しかし、

黒字化はゴールではありません。

財務回復のスタート地点です。

黒字になったら、次は過去の穴を埋める

店が黒字化しても、過去は消えません。

開業直後に出した赤字。

不足していた運転資金。

過去から繰り越した支払い。

借入返済。

そうしたものが現在の資金繰りに残っていることがあります。

だから現在50万円利益を出せるようになっても、その50万円をすべて自由に使えるわけではありません。

現在の利益によって、

過去に作った穴を少しずつ埋めている期間

が存在します。

ここが、黒字なのにまだ苦しい理由です。

たとえば過去の不足が300万円。

毎月50万円ずつ現金を増やせるようになった。

なら、

300万円 ÷ 50万円 = 6か月

です。

黒字化してから約6か月かけて、ようやく過去の不足を埋めることになります。

その間は黒字です。

経営も改善しています。

それでも、まだ支払日のたびに資金繰りを気にしなければならないかもしれません。

だから、

黒字になったのに楽にならない=改善していない

とは限りません。

財務が回復する途中にいる可能性があります。

過去の穴を埋めたら、今度は現金を積み上げる

そして、過去の不足をゼロにしただけでも終わりではありません。

店を安全に経営するには、運転資金が必要です。

売上が落ちる月もあります。

大型設備が突然壊れることもあります。

税金の支払いが重なることもあります。

予想外の出費もあります。

だから、

支払いができる最低限の現金

から、

多少のことでは資金繰りに困らない現金

まで積み上げていく。

ここまで来て初めて、

「今月の支払い、足りるかな」

「カードの引落どうしよう」

「仕入先に待ってもらわないと無理かもしれない」

という状態から少しずつ離れていけます。

流れを整理すると、こうなります。

赤字

黒字化

過去の資金不足を埋める

必要な運転資金を確保する

財務回復

余力を積み上げる

黒字化は、この途中にあります。

経営者が確認する数字は、シンプルでいい

ここまでいろいろ説明してきましたが、経営者が確認すべきことを最後に絞ると、非常にシンプルです。

1.今、本当に利益は出ているのか

まずPLを見る。

本業そのものが利益を生み出しているのか。

ここが赤字なら、最初に収益構造を改善します。

2.あといくら現金が必要なのか

安全に営業するために必要な現金はいくらなのか。

現在はいくら持っているのか。

その差額を出します。

必要現金500万円 − 現在200万円 = あと300万円

これで、

「金がない」

が、

「300万円足りない」

に変わります。

3.何か月でそこまで到達できるのか

次に、毎月実際に増やせる現金を確認します。

あと300万円必要。

毎月50万円増やせる。

なら、

300万円 ÷ 50万円 = 約6か月

です。

これで、

「いつまで苦しいんや」

が、

「今のペースなら約6か月」

に変わります。

4.その日まで会社の現金は持つのか

最後に確認するのがここです。

回復まで6か月。

しかし現在の現金では3か月しか持たない。

それなら間に合いません。

利益改善だけを待たず、資金調達、返済条件、支払条件、支出、在庫、粗利、固定費、売上などを見直し、

回復するまで会社が生き残れる状態を作る必要があります。

逆に、

回復まで6か月。

現在の資金なら9か月耐えられる。

それなら、途中の資金変動を確認しながら回復を進められる可能性があります。

「不安」を「数字」に変える

資金繰りが苦しいとき、経営者の頭の中には常に金のことがあります。

今月払えるのか。

来月は大丈夫なのか。

いつになったら楽になるのか。

この状態がいつまで続くのか。

分からないから怖い。

しかし、数字にすると問題の形が変わります。

たとえば、

確認項目現在
本業の利益+80万円/月
実際に増やせる現金+50万円/月
安全目標現金500万円
現在現金200万円
不足額300万円
財務回復まで約6か月
現金が持つ期間約9か月

ここまで分かれば、

「黒字なのに、なんで金がないんや?」

という漠然とした問題ではなくなります。

現在は黒字。

あと300万円必要。

毎月50万円ずつ増やせている。

約6か月で目標に届く。

そして現在の資金なら、そこまで耐えられる。

ここまで見えれば、経営者がやるべきことも明確です。

逆に、

財務回復まで8か月。

現金は3か月しか持たない。

と分かったのであれば、

今すぐ対策が必要だ

ということも分かります。

黒字の先を見る

飲食店経営では、売上が非常に目立ちます。

月商500万円。

600万円。

700万円。

過去最高売上。

もちろん売上は重要です。

利益も重要です。

しかし、商売を続けるためには、その先があります。

利益を現金に変え、現金を積み上げ、支払いに追われない財務状態を作ること。

ここまでが経営です。

赤字から黒字にする。

その利益で過去の不足を埋める。

必要な運転資金を確保する。

そしてようやく、

「今月を乗り切るための経営」から「次の一手を考えられる経営」

へ進めます。

設備に投資する。

人を育てる。

新しい商品を作る。

広告に投資する。

次の店舗を考える。

経営者自身にも余裕が生まれる。

そのためにも、まず支払日に追われる状態から抜け出す必要があります。

確認する数字は、最後までこの4つです。

今、本当に利益は出ているのか。

あといくら現金が必要なのか。

何か月でそこまで到達できるのか。

その日まで会社の現金は持つのか。

「黒字なのに金がない」

その状態を、漠然と怖がり続ける必要はありません。

数字に変えます。

あと○万円。

毎月○万円ずつ。

あと○か月。

そこまで分かれば、資金繰りは「正体の分からない不安」ではなく、

経営者が一つずつ解決していける経営課題

に変わります。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。