ワンオペ飲食店の売上を伸ばす方法|売上アップの前に見直したい経営の落とし穴 ワンオペ飲食店の売上を伸ばす方法|売上アップの前に見直したい経営の落とし穴

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

ワンオペ飲食店の売上を伸ばす方法|売上アップの前に見直したい経営の落とし穴
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目次 Outline

第1章 ワンオペ店は「売上が増えれば成功」とは限らない

飲食店を経営していれば、売上は高い方がいい。

月商100万円より150万円。
150万円より200万円。

売上が伸びれば、家賃や固定費に対する余裕も生まれ、利益を残せる可能性も高くなります。

ところが、ワンオペ店の場合は少し事情が違います。

売上が増えたことで、逆に経営状態が悪くなることがあるからです。

売上が増えると、仕事も増える

ワンオペ営業では、一人の人間がいくつもの仕事を担当しています。

注文を受ける。
料理を作る。
料理を運ぶ。
会計をする。
食器を下げる。
洗い物をする。
次のお客様を迎える。

暇な時間帯なら、これらを一人で回すことはできます。

問題は、注文が集中したときです。

3組がほぼ同時に来店する。

料理を作っている途中で会計を呼ばれる。

そこへ新しいお客様が来店する。

さらに電話が鳴る。

こうなると、一つひとつは簡単な仕事でも、同時に発生することで一気に処理が難しくなります。

つまりワンオペ店には、

「一人で同時に処理できる仕事量」という物理的な上限があります。

月商だけを見ても、店の状態は分からない

例えば、月商150万円だった店が180万円になったとします。

数字だけを見れば30万円の売上アップです。

しかし、その裏側で、

  • 料理提供が10分から20分になった
  • 洗い物が営業終了後まで残るようになった
  • 清掃が十分にできなくなった
  • 接客する余裕がなくなった
  • 店主の労働時間が毎日1時間増えた

となっていたらどうでしょう。

30万円の売上増加だけを見て、「経営が良くなった」と判断するのは少し早い。

ワンオペ店では、

売上と一緒に、店にかかる負荷も見なければならない。

ここが複数人で営業する店との大きな違いです。

売上には「処理できる売上」と「処理できない売上」がある

私はワンオペ店の売上を考えるとき、

「その売上を正常に処理できるか」

という視点が重要だと考えています。

料理が予定通り提供できる。

接客もできる。

会計も滞らない。

店内もある程度きれいに保てる。

そして翌日も同じ営業を続けられる。

ここまで含めて、その店が処理できる売上です。

逆に、売上は増えたものの営業そのものが崩れてしまえば、その数字を長期間維持することは難しくなります。

ワンオペ店には「売上の天井」が存在する

席が空いているから、まだ売れる。

営業時間が余っているから、まだ売れる。

必ずしもそうとは限りません。

10席ある店でも、一人で同時に6人までしか安定して対応できないなら、実質的な営業能力は6席に近いかもしれません。

逆に10席を一人で問題なく回せる仕組みができれば、同じ店でも売上の上限は上がります。

だからワンオペ店の売上を考えるとき、

席数だけでは、その店の売上能力は分かりません。

厨房の能力、商品構成、注文方法、提供時間、会計方法。

それらを含めた「店全体の処理能力」が、本当の売上上限を決めています。

売上を伸ばす前に確認したいこと

ここで一度、自分の店を思い浮かべてみてください。

一番忙しい1時間に、何人のお客様を問題なく対応できるでしょうか。

そして、その人数を超えたときに何が最初に崩れるでしょうか。

料理提供なのか。

接客なのか。

会計なのか。

片付けなのか。

ワンオペ店の売上改善では、この「最初に詰まる場所」を知ることが非常に重要です。

なぜなら、その状態のまま集客だけを強くすると、店の弱い部分にさらに負荷をかけることになるからです。

次章では、ワンオペ店が売上を伸ばそうとしたときに特に起こりやすい、

「いきなり客数を増やしてしまう問題」

について考えていきます。

第2章、いきなり客数を増やす。

売上を増やしたい。

そう考えたとき、多くの飲食店経営者が最初に考えるのが「もっとお客様を呼ぼう」です。

Instagram広告を出す。
Googleマップを強化する。
クーポンを配る。
チラシを撒く。
インフルエンサーに紹介してもらう。

もちろん、集客は飲食店経営にとって重要です。

ただ、ワンオペ店の場合は、集客する前に一つ確認しておかなければならないことがあります。

今のお店には、本当に新しいお客様を受け入れる余裕があるのか。

ここです。

「席が空いている」と「お客様を入れられる」は違う

例えば10席の店で、現在5席しか埋まっていない。

これだけを見ると、

「まだ5人入れる」

と思います。

しかし実際には、

3人分の料理を調理中。
1組はまもなく会計。
テーブルには下げ物が残っている。
洗い場にも食器が溜まっている。

こんな状態かもしれません。

そこへ5人のお客様が一気に入ってきたらどうなるでしょう。

席はあります。

しかし、注文を受けて料理を提供する能力には余裕がありません。

ワンオペ店では、

空席数と受入可能人数が一致しないことがあります。

だから「席が空いているから集客する」という判断だけでは不十分です。

集客が成功したのに、店の評価が下がることもある

広告が当たって、新規客が増えた。

ところが、

「料理がなかなか出てこなかった」

「店員さんが忙しそうで声をかけづらかった」

「食べ終わった食器がずっと置かれていた」

そんな印象を持たれてしまう。

これでは、せっかくお金を使って集めたお客様を再来店につなげにくくなります。

さらに口コミまで悪化すれば、その後の集客にも影響します。

これは非常にもったいない。

集客力が上がったのに、受入能力が追いついていない。

ワンオペ店では、この状態を作らないことが大切です。

まず見るべきなのは「平均」ではなくピーク

「うちは1日30人くらいだから、まだ余裕があります」

これも注意したい考え方です。

ワンオペ営業を苦しくするのは、1日の客数そのものではありません。

問題になりやすいのは、注文が集中する時間帯です。

例えば1日30人でも、

11時台 3人
12時台 15人
13時台 5人
14時台 2人
夜 5人

なら、12時台だけ別の店のような忙しさになります。

この店にさらに10人集客したとして、その10人が12時台に集中すれば営業は一気に苦しくなる。

反対に、14時や夜に来てくれるなら、同じ10人増でも状況はまったく違います。

つまり、

「何人増やすか」だけでなく「いつ増やすか」まで考える必要があります。

集客には順番がある

ワンオペ店で新規集客を強化するなら、最低限確認しておきたいことがあります。

今のピーク時に何人まで対応できるのか。

何組同時に注文が入ると提供が遅れ始めるのか。

どの曜日、どの時間帯なら余裕があるのか。

ここが分かれば、集客の使い方も変わります。

単純に「もっと来てください」と発信するより、

空いている曜日を狙う。

空いている時間帯の商品を作る。

予約時間を分散させる。

そうやって、店に余力がある場所へ売上を足していくことができます。

集客そのものが問題なのではありません。

ワンオペ店では、集客によって発生する注文をどこで受け止めるのかまで設計する。

ここまで考えて、初めて集客が売上につながります。

そして、もう一つ。

売上を増やそうとして客数と一緒に増やしてしまいやすいものがあります。

それがメニュー数です。

次章では、ワンオペ店の商品数を増やすことで起こる問題を見ていきます。

第3章、売上を増やすためにメニューを増やす。

売上を伸ばそうとすると、

「もう少しメニューを増やした方がいいのでは?」

と考えることがあります。

お客様の選択肢が増える。

幅広いニーズに対応できる。

追加注文も狙える。

確かに、メニューを増やすことで売上につながるケースはあります。

しかしワンオペ店では、一品増やしたときに増える仕事を全部見る必要があります。

メニューを一品増やすと、仕事は一つ増えるわけではない

例えば、新しく一品料理を追加するとします。

増えるのは調理だけではありません。

新しい食材を仕入れる。

検品する。

保管場所を作る。

仕込みをする。

注文が入れば調理する。

盛り付ける。

使用した調理器具を洗う。

在庫を確認する。

売れ残れば廃棄する。

つまり、一品の追加によって営業前・営業中・営業後の仕事が少しずつ増えていきます。

一品なら大した負担ではないかもしれません。

しかし、これが5品、10品と増えていけば、その小さな作業が積み重なります。

売れない商品にも仕事は発生する

ここが意外と見落とされます。

新商品を作って月に100食売れた。

これなら、手間が増えても売上への貢献があります。

では、月に5食しか売れない商品ならどうでしょう。

5食しか売れなくても、その商品のための食材は管理しなければなりません。

仕込みが必要なら準備する必要もあります。

メニューにも載せ続けます。

そして注文が入れば、その5食のために調理手順も覚えておかなければならない。

売れない商品は、売上をほとんど作らなくても仕事だけは残ります。

だから商品数を見るときは、

「何品あるか」

だけではなく、

「その商品は、増えた仕事に見合う売上を作っているか」

まで確認したいところです。

食材の共通化で負担は大きく変わる

同じ10品でも、ワンオペへの負担はまったく違います。

例えば10品それぞれに専用食材が必要な店。

一方で、

同じ肉を使う。
同じ野菜を使う。
同じタレを使う。
盛り付けだけ変える。

こうして食材や仕込みを共通化して10品を作る店。

メニュー数は同じでも、管理する仕事量は大きく変わります。

ワンオペ店の商品開発では、

「新しい料理を作れるか」だけでなく「今ある仕込みから何品作れるか」

という視点がかなり重要です。

一つの仕込みから複数の商品を作れれば、メニューを増やしても負担を抑えられます。

売上を作っている商品を中心に店を組み立てる

一度、店のメニューを売上順に並べてみると面白いことが分かります。

20品あるのに、実際には上位5品で売上の大半を作っている。

そんな店は珍しくありません。

それなら考えたいのは、

21品目を作ることより、

その5品をもっと売りやすくできないか。

セットにする。

トッピングを作る。

サイズを選べるようにする。

関連する追加商品を付ける。

こうした方法なら、新しい仕込みを大量に増やさず売上を伸ばせる可能性があります。

ワンオペ店に必要なのは、メニューの多さではありません。

少ない仕込みと少ない工程から、どれだけ売上を作れる商品構成にできるか。

ここを考えた方が、店はずっと強くなります。

そして商品を増やさず客単価を上げようとすると、次に考えたくなるのが「もっと付加価値の高い料理を売ろう」という方法です。

ただし、ここにもワンオペ店ならではの注意点があります。

次章では、客単価を上げるために手間のかかる商品を増やす問題を考えていきます。

第4章、客単価を上げるために手間のかかる商品を売る。

ワンオペ店には、一度に対応できる客数に限りがあります。

そこで次に考えたいのが客単価です。

例えば1時間に10人のお客様を対応できる店なら、

客単価1,000円で売上10,000円。

客単価1,300円なら売上13,000円。

同じ10人でも、1時間あたり3,000円の差が生まれます。

ワンオペ店にとって客単価を上げることは、非常に有効な売上改善策です。

ただし、ここで注意したいことがあります。

客単価を上げるために、仕事まで大幅に増やしてしまうことです。

300円高く売れても、仕事が倍になれば意味が変わる

例えば、通常の商品が1,000円。

そこへ少し豪華な1,300円の商品を作ったとします。

売価だけを見れば300円アップです。

ところが、その300円のために、

注文が入ってから食材を切る。

別のフライパンを使う。

専用ソースを作る。

盛り付ける皿が増える。

最後にトッピングを追加する。

こんな工程が増えたとします。

一日に数食なら問題ないかもしれません。

しかしピーク中に、この商品が何食も入ったらどうでしょう。

1,300円の商品を売っているのに、その影響で他の料理の提供まで遅くなる。

これでは、300円の単価アップだけでは評価できません。

ワンオペ店では「時間」も原価になる

飲食店では通常、

食材原価30%。

粗利益70%。

このように原価率を見ます。

もちろん重要な数字です。

しかしワンオペ店では、もう一つ見ておきたいものがあります。

その粗利益を作るために何分かかったのか。

例えば、

商品A

売価 1,000円
原価 300円
粗利益 700円
調理時間 5分

商品B

売価 1,500円
原価 450円
粗利益 1,050円
調理時間 15分

粗利益だけを見ると、商品Bの方が350円多く残ります。

ところが調理時間まで見ると話が変わります。

商品Aなら15分で3食作れるとすれば、

700円 × 3食 = 2,100円

の粗利益を作れます。

もちろん実際の厨房では、複数の商品を同時調理するため、こんな単純な計算にはなりません。

それでも、

「高く売れる商品=ワンオペ店にとって優秀な商品」ではない

ことは分かると思います。

強いのは「高単価」より「高単価・低負荷」

ワンオペ店の商品設計で狙いたいのは、

高単価で、原価も低く、手間も少ない。

そんな商品です。

例えば、

既存商品のトッピング。

セットドリンク。

小鉢。

デザート。

サイズアップ。

ご飯の変更。

既に仕込んである食材を使った追加商品。

こうした商品なら、注文が増えても厨房への負荷を比較的小さくできます。

300円の追加注文を取るために5分必要な商品と、

盛り付けるだけで300円の追加注文になる商品。

同じ300円でも、ワンオペ店にとっての価値はまったく違います。

「よく売れる商品」だけで判断しない

ここでもう一つ見ておきたいのが、販売数です。

よく売れる。

単価も高い。

だから残す。

それだけでは判断できません。

その商品がピークタイムの厨房を止めている可能性があるからです。

売上ランキングでは上位でも、

調理時間が長い。

専用工程が多い。

注文が重なると他の商品まで遅れる。

そんな商品なら、価格を上げる、工程を変える、仕込み方法を変えるといった改善を検討する価値があります。

ワンオペ店の商品を見るときは、

売価・原価・販売数・作業時間。

この4つをセットで見る。

そうすると、売上だけを見ていたときには分からなかった「本当に稼いでいる商品」が見えてきます。

客単価を上げること自体は、ワンオペ店と非常に相性のいい戦略です。

だからこそ、

仕事を増やさず、客単価を上げる。

この商品をどれだけ作れるかが重要になります。

では、客数にも限界があり、商品を増やすのにも限界がある。

そうなると次に、

「営業時間を長くすれば、その分売れるのでは?」

と考えるかもしれません。

次章では、営業時間を伸ばして売上を作る方法について考えてみます。

第5章、営業時間を伸ばして売上を作る。

売上を増やす方法として、非常に分かりやすいのが営業時間を伸ばすことです。

ランチ営業を1時間長くする。

夜の閉店時間を遅くする。

定休日を減らす。

あるいは、これまで営業していなかった朝の時間帯を開ける。

営業時間が増えれば、それだけ売上を作れる時間も増えます。

実際、それで売上が伸びる店もあります。

ただ、ワンオペ店では**「営業時間が増えた分だけ、本当に利益も増えているのか」**まで見ておきたいところです。

月商ではなく「1時間いくら売れているか」を見る

例えば営業時間を1時間延長して、月に6万円の売上が増えたとします。

6万円増えた。

これだけを見ると成功に見えます。

しかし月25日営業なら、

60,000円 ÷ 25日 = 2,400円。

つまり、毎日1時間営業を延長して作った売上は平均2,400円です。

ここから食材原価がかかります。

水道光熱費も多少増えます。

さらに、その1時間のために閉店作業の開始も遅くなる。

この6万円を作るために、店主は月25時間を追加で使っていることになります。

それなら同じ25時間を、

メニュー改善。

価格の見直し。

SNS発信。

Googleマップの整備。

店内販促。

仕込みの効率化。

こうした仕事に使った方が、長期的には大きな売上を作れる可能性もあります。

営業時間には「売れる時間」と「売れない時間」がある

飲食店の売上は、営業時間に均等に発生するわけではありません。

12時台に2万円売れる店でも、14時台は3,000円しか売れないことがあります。

夜も同じです。

19時台は忙しい。

20時台も売れる。

しかし21時を過ぎると、ほとんど来店がない。

この状態で22時から23時まで営業時間を延ばしても、売上が大きく増えるとは限りません。

だから営業時間を考えるときは、

「何時間営業しているか」より「その1時間がいくら売っているか」

を見る方が実態をつかみやすくなります。

曜日ごとに見れば、さらに違いが出ることもあります。

金曜日の21時台は売れる。

月曜日の21時台はほとんど売れない。

それなら、すべての曜日を同じ営業時間にする必要があるのかも検討できます。

ワンオペ店には「営業時間外の仕事」がある

もう一つ忘れてはいけないのが、店を閉めている時間です。

飲食店の仕事は、営業終了と同時に終わるわけではありません。

仕込み。

発注。

在庫確認。

清掃。

売上確認。

経理。

メニュー作り。

SNSやGoogleマップの更新。

こうした仕事も店を運営するためには必要です。

営業時間を長くすれば、その時間はどこかへ移動します。

結果として睡眠時間を削ったり、休日に事務作業をまとめたりするようになれば、営業日数だけでは見えない負担が増えていきます。

特に店主一人で経営している店では、

営業する時間と、店を良くするための時間を分けて考える必要があります。

毎日店を開け続けているのに、メニューも価格も販促も何年間も変わらない。

そんな状態になると、目の前の売上は作れていても、店そのものを成長させる時間がなくなってしまいます。

営業時間を増やすなら、数字を見て判断する

営業時間を延ばすこと自体が悪いわけではありません。

延長した1時間で十分な売上が取れるなら、立派な売上アップ策です。

見るべきなのは、

その1時間を営業に使うことが、一番利益を生む時間の使い方なのか。

ということです。

営業時間を1時間増やす。

その時間の売上を記録する。

原価や追加作業も含めて確認する。

数字が良ければ続ける。

弱ければ元に戻す。

営業時間も、固定されたものとして考える必要はありません。

ワンオペ店にとって店主の時間は、限りのある経営資源です。

だからこそ、

「長く働けば売上が増える」という発想だけで営業時間を決めない。

1時間あたりの価値を見ながら、営業時間そのものを設計することが大切です。

そして営業時間を増やさなくても、今ある営業時間の中にまだ売上を作れる場所が残っていることがあります。

次章では、ピークタイムをさらに混雑させるのではなく、空いている時間をどう売上に変えるかを考えていきます。

第6章、そのワンオペは「戦略」なのか「資金不足の結果」なのか。

ここで一度、売上の伸ばし方から離れて考えてみたいことがあります。

そもそも、なぜ今のお店はワンオペなのでしょうか。

最初から一人で利益を出せる店として設計した。

小さな店舗で、商品を絞り、セルフサービスを取り入れ、一人でも十分な売上と利益を作れる。

こうしたワンオペなら、一つの経営戦略です。

しかし、すべてのワンオペ店がそうとは限りません。

売上が足りない。

利益が残らない。

人件費を払う余裕がない。

だからスタッフを減らした。

そして最後に店主一人が残った。

実際には、こうしてワンオペになった店も少なくないのではないでしょうか。

この二つは、同じ「ワンオペ店」でも経営状態がまったく違います。

人件費を削ったことで、キャッシュが回っているように見える

例えば月商150万円の店があるとします。

二人体制では人件費が重く、毎月資金繰りが苦しい。

そこでスタッフを減らし、店主一人で営業する。

月20万円の人件費が減れば、当然支払いは楽になります。

これでキャッシュが回るようになることはあります。

問題は、

「ワンオペにしたから経営が改善した」と考えてしまうことです。

売上構造は変わっていない。

商品の利益率も変わっていない。

集客力も変わっていない。

客単価も変わっていない。

ただ、人件費20万円を店主自身の労働で吸収しただけかもしれません。

それなら経営改善というより、

資金繰りの問題を店主の労働で一時的に埋めている状態

とも考えられます。

ここは分けて見た方がいい。

一番怖いのは「店側の都合」が判断基準になること

資金繰りが苦しくなると、経営者はどうしても店側の事情を優先して考えるようになります。

人を減らしたい。

仕込みを減らしたい。

営業時間を短くしたい。

サービスを減らしたい。

食材原価を下げたい。

もちろん、経営を続けるためには必要な判断もあります。

しかし、そのときに注意したいのが、

店側にとって都合のいい変更を、お客様にとっても良い変更だと解釈してしまうことです。

例えばスタッフを減らした結果、料理提供が遅くなった。

でも、

「うちは店主一人で丁寧に作る店だから」

と考える。

水を運ぶ余裕がなくなったのでセルフにした。

でも、

「お客様も好きなタイミングで飲めるから、この方が便利だ」

と考える。

商品数を減らした。

でも、

「専門性が高まった」

と考える。

もちろん、本当にそういう価値が生まれている場合もあります。

問題なのは、

それを誰が判断しているのか。

ということです。

経営者にとっての改善と、お客様にとっての改善は違う

店側から見れば、

人件費が下がった。

仕込み時間が減った。

廃棄が減った。

オペレーションが楽になった。

これは改善です。

しかし、お客様から見れば、

料理が出てくるのが遅くなった。

注文しづらくなった。

以前あったサービスがなくなった。

選べる料理が減った。

ということもあります。

つまり一つの変更でも、

経営側から見た評価と、お客様から見た評価は一致するとは限りません。

ワンオペ店では、ここを特に意識する必要があります。

なぜなら店主一人で営業していると、

店を作る人。

料理を作る人。

サービスをする人。

数字を見る人。

改善を判断する人。

そのすべてが同じ人物になるからです。

自分で変更して、自分で「良くなった」と判断できてしまいます。

「楽になった」は改善の証拠ではない

これはワンオペ店の改善で、かなり重要な視点だと思います。

変更した結果、

営業が楽になった。

それ自体は良いことです。

しかし、

店主が楽になった=店が良くなった

とは限りません。

例えば注文方法を変えて、店主の仕事が減った。

その結果、お客様も注文しやすくなった。

これは良い改善です。

一方で、店主の仕事は減ったけれど、お客様には分かりにくくなった。

これは別の評価になります。

だから何かを変更したら、

店主の作業時間だけではなく、

客数。

客単価。

追加注文。

口コミ。

再来店。

クレーム。

こうしたお客様側の反応も見る必要があります。

ワンオペを守るために店を作らない

ここで順番を間違えたくありません。

「ワンオペで営業する」

これを先に決めてしまうと、

ワンオペでできる商品。

ワンオペでできるサービス。

ワンオペでできる営業時間。

というように、すべてがワンオペを維持するための店作りになっていきます。

しかし本来考えたいのは、

どんな店ならお客様に選ばれるのか。

その店を運営するには、どんな商品とサービスが必要なのか。

そのためには何人必要なのか。

そして、その人数を使っても利益が残る売上をどう作るのか。

こちらです。

結果として一人で十分なら、ワンオペでいい。

二人必要なら、二人で利益が出る店を作る必要があります。

ワンオペは目的ではなく、経営の結果です。

「なぜワンオペなのか」を一度問い直してみる

今ワンオペで営業しているなら、一度だけ自分に聞いてみてください。

なぜ、自分の店はワンオペなのか。

一人で営業する方が利益率が高いからなのか。

この業態なら一人で十分だからなのか。

自由な働き方をしたいからなのか。

それとも、

人を入れるだけの売上とキャッシュがないからなのか。

最後の理由なら、問題は「ワンオペをどう上手に続けるか」だけではありません。

人を入れても利益が残るところまで、店の売上構造そのものを変える必要がある。

そう考えた方がいいかもしれません。

ワンオペという形を守るために経営するのではなく、

お客様に選ばれ、利益が残り、その結果として最適な人数が決まる。

この順番を崩さないこと。

ワンオペ店が売上を伸ばしていくときほど、忘れたくない視点です。

第7章、テイクアウト・デリバリーを安易に追加する。

店内の席数には限界がある。

それなら、テイクアウトやデリバリーを始めれば売上を増やせる。

この考え方自体は合理的です。

店内の席を使わずに売上を作れるため、特に小さな飲食店では魅力的に見えます。

ただし、ワンオペ店の場合には一つ大きな問題があります。

客席は使わなくても、厨房は使う。

ここです。

店内10人+デリバリー5件は「10人の営業」ではない

例えば店内に10人のお客様がいるとします。

そこへデリバリーの注文が3件入る。

さらにテイクアウトの注文が2件入る。

客席だけを見れば10人です。

しかし厨房では、

店内10人分
デリバリー3件
テイクアウト2件

を同時に作ることになります。

しかもデリバリーやテイクアウトには、店内飲食にはない作業もあります。

容器を準備する。

料理を詰める。

蓋をする。

商品を確認する。

袋に入れる。

箸や調味料を付ける。

配達員へ商品を渡す。

注文によってはドリンクも準備する。

客席を使わない売上でも、厨房の仕事量は確実に増えます。

売上チャネルが増えるほど「注文の入口」が増える

店内だけなら、ある程度は注文の状況を目で確認できます。

しかしデリバリーを始めると状況が変わります。

店内で注文が入った直後に、デリバリー端末が鳴る。

その料理を作っている途中で、テイクアウトのお客様が来店する。

さらに別のデリバリー注文が入る。

こうなると問題になるのは、単純な注文数だけではありません。

注文がいつ入るかを自分でコントロールしにくくなることです。

店内が満席だからといって、デリバリーの注文が止まってくれるわけではありません。

だから店内ではそれほど混雑していないように見えても、厨房だけがパンクすることがあります。

デリバリー専用メニューを増やしすぎない

デリバリーを始めると、

「せっかくだから商品数を増やそう」

と考えることがあります。

しかしワンオペ店では、ここでも商品設計が重要になります。

店内では使わない食材。

デリバリー専用の仕込み。

専用容器。

専用の盛り付け。

これらが増えるほど、もう一つ別の店を運営しているような状態になっていきます。

できるだけ、

店内と同じ食材を使う。

同じ仕込みから作れる商品にする。

包装しやすい商品を選ぶ。

この方がワンオペとの相性は良くなります。

店内メニューをそのまま全部デリバリーに載せる必要もありません。

運びやすく、作りやすく、利益が残る商品だけに絞る方法もあります。

「注文を止める」という判断も必要になる

デリバリーサービスによっては、注文受付を一時停止できるものもあります。

これはワンオペ店では非常に重要な機能です。

店内が一気に混んだ。

大量注文が入った。

厨房が追いつかなくなった。

そんなときまで、すべての注文を取り続ける必要はありません。

売上を取りたい気持ちは分かります。

しかし注文を受けすぎて、

店内のお客様を待たせる。

デリバリーの完成も遅れる。

テイクアウトのお客様も待たせる。

すべてのサービス品質が落ちる。

これでは売上チャネルを増やした意味が薄れてしまいます。

ワンオペ店では、

「何件取れるか」だけではなく「どこで受付を止めるか」まで決めておく。

これもオペレーションの一部です。

デリバリーは「暇な時間を売上に変える道具」にもなる

一方で、使い方によってはワンオペ店と非常に相性がいい場合もあります。

例えば店内が弱い14時から17時。

この時間にデリバリー注文が入れば、空いている厨房を使って売上を作れます。

夜も同じです。

店内のピークと重ならない時間帯に注文を取れるなら、席数を増やさず売上を追加できます。

つまり重要なのは、

店内・テイクアウト・デリバリーを別々に考えないことです。

すべて同じ厨房から商品が出ています。

だから、

店内が何件。

テイクアウトが何件。

デリバリーが何件。

ではなく、

「この時間、この厨房で合計何件の注文を処理しているのか」

を見る。

テイクアウトやデリバリーは、ワンオペ店の売上を伸ばせる強力な手段です。

ただし、売上の入口を増やすなら、その入口から入ってくる注文を厨房全体で管理する必要があります。

ここまで、客数、商品、営業時間、時間帯、そして販売チャネルについて見てきました。

では実際にワンオペ店が売上を伸ばすなら、最初にどの数字を動かすべきなのか。

次章では、そこを具体的な数字で考えていきます。

第8章、ワンオペ店が最初に伸ばすべき数字は「客数」ではない。

ここからは、ワンオペ店の売上を実際にどう伸ばしていくのかを考えてみます。

例えば、こんなお店があったとします。

1日の客数 50人
平均客単価 1,000円
1日の売上 50,000円

月25日営業なら、

50,000円 × 25日=月商125万円

です。

この店が月商175万円を目指すとします。

必要なのは、あと50万円。

では、どうやって作るのか。

客数だけで175万円を目指すとどうなるか

客単価1,000円のまま月商175万円を作るには、

1,750人 ÷ 25日=70人

必要です。

つまり、

現在50人 → 70人。

毎日20人のお客様を増やさなければなりません。

客数で見ると、

40%増です。

ワンオペで毎日50人を対応している店が、いきなり70人を対応する。

これはかなり大きな変化です。

では、別の作り方を考えてみましょう。

客単価1,200円なら必要客数は約58人になる

客単価を、

1,000円 → 1,200円

まで上げられたとします。

月商175万円に必要な客数は、

1,750,000円 ÷ 1,200円=約1,458人。

25日営業なら、

1日約58人。

つまり、

50人 → 58人。

客数は1日8人増やせば届きます。

先ほどの20人増と比べると、かなり現実的になってきました。

客単価1,300円ならどうなるか

さらに客単価1,300円なら、

1,750,000円 ÷ 1,300円=約1,346人。

25日営業なら、

1日約54人。

現在50人なので、必要なのは1日約4人の増加です。

整理すると、

客単価月商175万円に必要な1日客数
1,000円70人
1,100円約64人
1,200円約58人
1,300円約54人
1,400円50人

同じ月商175万円でも、必要な客数はこれだけ変わります。

もちろん、客単価400円アップも簡単ではない

ここで、

「だったら1,400円にすればいい」

という単純な話にはなりません。

1,000円の商品を突然1,400円に値上げすれば、お客様が減る可能性があります。

だから客単価は、

価格改定。

セット商品。

追加商品。

トッピング。

ドリンク。

サイズアップ。

商品構成の変更。

こうしたものを組み合わせながら上げていきます。

例えば、

基本商品の価格改定 +100円
追加注文の平均 +150円
セット利用の増加 +100円

これだけでも平均客単価は350円変わります。

一人のお客様から取れる売上を少しずつ積み上げていく考え方です。

客数と客単価を少しずつ動かす

現実的には、どちらか一つだけを大きく動かす必要はありません。

先ほどの店なら、

50人 × 1,000円=50,000円

だったところを、

58人 × 1,200円=69,600円

にできれば、

月25日営業で、

69,600円 × 25日=174万円

になります。

ほぼ月商175万円です。

つまり、

客数+8人。

客単価+200円。

この二つを組み合わせればいい。

売上改善というと、大きな施策を一発当てるイメージを持つかもしれません。

しかし実際には、

複数の数字を少しずつ動かした方が、目標に届きやすいことがあります。

ワンオペ店では「一人のお客様の価値」を上げる

席数を2倍にすることは簡単ではありません。

厨房を2倍にすることも難しい。

営業時間を大幅に増やすにも限界があります。

しかし、

1,000円だった客単価を1,100円にする。

1,100円を1,200円にする。

これは商品設計や価格設計によって改善できる余地があります。

だからワンオペ店の売上改善では、

客数を増やすことだけで目標を作らない。

客数と客単価を掛け合わせて、

「何人 × いくらなら、この売上になるのか」

まで数字に落とす。

そうすると、必要以上に客数を追いかけなくても売上目標を作れることが分かってきます。

ただし、ここで一つ問題があります。

「では、自分の店は1日に何人まで対応できるのか。」

これが分からなければ、適正な客数目標も決められません。

そこで次章では、

ワンオペ店の処理能力を「1時間」という単位で数字にしてみます。

第9章、まず「1時間に何人処理できる店なのか」を数字にする。

前章では、

客数 × 客単価=売上

から、目標売上を作りました。

では、その客数は本当にワンオペで対応できるのでしょうか。

ここで見たいのが、

「1時間に何人のお客様を処理できる店なのか」

という数字です。

ワンオペ店では、この数字が分かると売上目標がかなり具体的になります。

まず、一番忙しい1時間を調べる

難しい分析は必要ありません。

POSレジを使っているなら、時間帯別の客数と売上を確認してみてください。

例えばランチ営業で、

11時台 4人
12時台 10人
13時台 7人
14時台 3人

だったとします。

一番多いのは12時台の10人です。

この10人を問題なく対応できているなら、現時点では少なくとも、

1時間10人程度を処理できる店

だと考えることができます。

ただし、ここで確認したいのは客数だけではありません。

「回せた」の基準を決める

12時台に10人来た。

売上も作れた。

それだけで「10人処理できた」と判断すると、実態とズレることがあります。

例えば、

料理提供に30分かかった。

会計待ちが発生した。

食器を下げられなかった。

次のお客様を断った。

営業後に大量の洗い物が残った。

これでは、10人を正常に処理できたとは言いにくい。

逆に、

料理提供も予定通り。

会計もスムーズ。

片付けも追いついている。

次のお客様も普通に案内できた。

この状態なら、10人は十分対応可能と考えられます。

つまり見るべきなのは、

「何人来たか」ではなく「何人まで営業品質を維持できたか」

です。

どこで詰まっているのかを探す

次に、一番忙しい時間帯を観察してみます。

例えば12時台に10人を超えると急に料理提供が遅くなる。

その原因を調べると、

焼き台がいっぱいになる。

揚げ物が集中する。

盛り付けが追いつかない。

洗い場が詰まる。

会計対応で調理が止まる。

いろいろな原因が考えられます。

ここで重要なのは、

店全体を漠然と「忙しい」と考えないことです。

どの作業が最初に限界を迎えているのかを見つける。

例えば会計のたびに調理が2分止まっているなら、問題は厨房能力ではなく会計方法かもしれません。

揚げ物が4品重なると止まるなら、フライヤーの能力か商品構成に原因があるかもしれません。

原因が分かれば、改善する場所も具体的になります。

1時間売上に置き換えてみる

処理人数が分かったら、客単価を掛けます。

例えば、

1時間10人
客単価1,200円

なら、

10人 × 1,200円=12,000円

です。

これが現在の1時間あたりの売上能力の一つの目安になります。

ここから売上を増やす方法を考えます。

例えば処理能力を、

10人 → 12人

に改善できれば、

12人 × 1,200円=14,400円。

1時間あたり2,400円増えます。

あるいは人数を変えず、

10人 × 1,400円=14,000円。

これでも1時間あたり2,000円増えます。

さらに、

12人 × 1,400円=16,800円

まで作れるようになれば、同じ1時間でも売上能力は大きく変わります。

月商目標を「1時間」に分解する

月商200万円。

月商300万円。

こうした数字だけを見ていると、大きすぎて何を改善すればいいのか分かりにくいことがあります。

そこで、

月商

日商

ランチ・ディナー

時間帯別売上

客数 × 客単価

まで分解します。

例えば月25日営業で月商200万円なら、

1日平均8万円。

その8万円を、

ランチ4万円。
ディナー4万円。

と作るのか。

ランチ5万円。
ディナー3万円。

と作るのか。

さらにランチ4万円なら、その4万円を11時から15時までの各時間帯でどう作るのか。

ここまで分解すると、

「あと何人必要なのか」「あと客単価をいくら上げるのか」

が具体的になります。

月商という大きな数字だけを追いかけるより、現場で改善できる数字に変換した方が動きやすくなります。

処理能力は固定された数字ではない

ここで大切なのは、

「うちはワンオペだから1時間10人が限界」

と決めてしまわないことです。

現在10人で詰まるなら、

なぜ10人で詰まるのか。

そこを改善すれば、11人、12人と対応できる可能性があります。

注文方法を変える。

盛り付けを簡単にする。

会計時間を短くする。

仕込み方法を変える。

料理の工程を見直す。

一つの作業を30秒短くするだけでも、それが何十回と繰り返されれば営業全体では大きな時間になります。

ワンオペ店の売上上限は、席数だけで決まるものではありません。

今のオペレーションが、1時間にどれだけの売上を処理できるか。

ここを数字にすると、次に改善する場所が見えてきます。

そして処理能力を上げるために最初にやりたいのが、新しい設備を買うことでも、大掛かりな改装をすることでもありません。

まずは、今やっている仕事そのものを減らせないかを考えることです。

次章では、ワンオペ営業の中から「一人でやらなくてもいい仕事」を探していきます。

第10章、売上を伸ばす前に「一人でやらなくていい仕事」を消す。

ワンオペ店の処理能力を上げる。

そう考えると、

「もっと早く料理を作らないと」

と思うかもしれません。

しかし、人間が動くスピードには限界があります。

包丁を2倍の速さで使う。

厨房を走り回る。

休憩を削る。

これでは長く続きません。

それより先に考えたいのが、

そもそも、その仕事は本当に店主がやる必要があるのか。

ということです。

まず営業中の仕事を全部書き出してみる

一度、営業開始から閉店まで自分がやっている仕事を書き出してみてください。

来店したお客様を案内する。

水を出す。

注文を聞く。

厨房へ戻る。

料理を作る。

料理を運ぶ。

追加注文を聞く。

会計する。

食器を下げる。

テーブルを拭く。

洗い物をする。

電話に出る。

予約を確認する。

テイクアウトの商品を渡す。

こうして並べてみると、調理以外にもかなり多くの仕事をしていることが分かります。

ここから一つずつ、

「これは自分が毎回やらなければ成立しない仕事なのか」

を考えていきます。

水を運ぶ仕事は必要か

例えば、お客様が来るたびに水を持っていく店があります。

1回30秒だとします。

1日50人なら、

30秒 × 50人=25分。

月25日営業なら、

625分。約10時間です。

もちろん実際にはグループ単位で提供するため、この通りの時間にはなりません。

それでも、小さな作業が月単位では大きな時間になることは分かります。

セルフの給水機を置く。

卓上に水を置く。

それだけで、その往復を減らせるかもしれません。

一回の作業だけを見ると小さい。

しかしワンオペでは、

「何度も繰り返す小さな仕事」ほど改善効果が大きくなります。

注文を聞く仕事は必要か

注文も同じです。

お客様に呼ばれる。

テーブルへ行く。

注文を聞く。

厨房へ戻る。

この間、調理は止まります。

そこで、

券売機。

QRオーダー。

タブレット。

モバイルオーダー。

こうした仕組みを導入すれば、注文を取る作業そのものを減らすことができます。

もちろん設備には費用がかかります。

店の客層によって向き不向きもあります。

だから導入するかどうかは、

「その設備で月に何時間の仕事を減らせるのか」

まで考えて判断します。

月額1万円かかっても、毎月20時間の作業が減るなら、十分検討する価値があります。

会計も大きな中断ポイントになる

ワンオペ営業では、会計が意外と大きな負担になります。

料理を作っている途中で、

「お会計お願いします」

と呼ばれる。

手を止める。

レジへ移動する。

金額を確認する。

現金を受け取る。

お釣りを渡す。

厨房へ戻る。

この数分で調理の流れが切れます。

セルフレジ。

キャッシュレス。

テーブル決済。

事前決済。

こうした方法を使えば、会計に使う時間を短くできる場合があります。

大切なのは最新設備を入れることではありません。

調理を中断させている仕事を減らすことです。

お客様にやってもらえることもある

セルフサービスというと、

「サービスが悪くなるのでは?」

と心配する人もいるかもしれません。

しかし今では、

水はセルフ。

注文はQRコード。

食器は返却口へ。

会計はセルフレジ。

こうした店は珍しくありません。

重要なのは、店の業態や価格帯に合わせることです。

例えば高価格帯のレストランですべてをセルフにすれば、店の価値と合わない可能性があります。

一方で、定食屋やラーメン店、カフェなどでは、セルフ化がお客様にとっても分かりやすい場合があります。

サービスとは、

店員がすべての作業をすることではありません。

必要なところに人の仕事を残し、それ以外を仕組みに任せるという考え方もできます。

「30秒の仕事」を探してみる

ワンオペ店を改善するとき、私は大きな仕事だけを見る必要はないと思っています。

むしろ、

毎回30秒かかる。

毎回1分かかる。

それを1日に何十回もやっている。

こういう仕事を探します。

例えば1回1分の作業を1日30回やっているなら、

1日30分。

月25日なら、

12時間30分。

この作業を半分にできるだけでも、月6時間以上の余裕が生まれます。

その余裕が、

料理提供を早くする。

追加注文に対応する。

テーブルを早く片付ける。

もう一組のお客様を受け入れる。

そうした売上につながっていきます。

ワンオペ店で売上を伸ばすとき、

「もっと働く」より「やらなくていい仕事を消す」。

こちらを先に考えてみてください。

そして、仕事を減らしていくと、あるところで別の判断が必要になります。

自分一人で改善できるところまでは改善した。

それでも、これ以上売上を増やすと回らない。

そこまで来たら、ワンオペを続けること自体を検討するタイミングです。

次章では、人を一人入れた方が利益が増えるラインについて考えていきます。

第11章、人を一人入れた方が利益が増えるラインを見逃さない。

ワンオペ営業の大きなメリットは、人件費を抑えられることです。

自分一人で営業できれば、アルバイトを一人入れるより当然、人件費は少なくなります。

だから、

「できるだけ一人でやろう」

と考えるのは自然なことです。

ただし、売上がある程度まで伸びてくると、この考え方が逆に利益を止めることがあります。

人件費を使わないことで、取れるはずの売上まで失っている状態です。

ここまで来たら、「ワンオペを続けられるか」ではなく、

「一人入れたら、利益はいくら増えるのか」

で判断した方がよくなります。

アルバイトを3時間入れたら、いくらかかるのか

例えばランチピークの3時間だけ、アルバイトを一人入れるとします。

時給1,300円なら、

1,300円 × 3時間=3,900円。

25日営業なら、

月97,500円。

約10万円の人件費増加です。

この10万円だけを見ると、

「やっぱり自分一人でやった方がいい」

と思うかもしれません。

しかし見るべきなのは、ここからです。

その10万円で、いくら売上を増やせるのか

スタッフが一人増えることで、

料理を運んでもらえる。

食器を下げてもらえる。

会計を任せられる。

洗い物をしてもらえる。

テーブルを早く空けられる。

その結果、店主は調理に集中できます。

仮にこれによって、ランチで1日8人多く対応できるようになったとします。

客単価1,300円なら、

8人 × 1,300円=10,400円。

25日営業なら、

月260,000円の売上増加です。

人件費は約97,500円増えました。

しかし売上は26万円増えています。

もちろん、この26万円がそのまま利益になるわけではありません。

食材原価も増えます。

仮に原価率35%なら、

260,000円 × 35%=91,000円。

増えた売上26万円から、

食材原価91,000円。

人件費97,500円。

を引くと、

71,500円が残ります。

単純化した計算ですが、

人を一人入れたことで、利益が増える可能性があることが分かります。

「人件費率が上がるから採用しない」は正しいのか

人を入れると人件費率が上がる。

これを嫌がる経営者もいます。

しかし、人件費率だけを見て判断すると、本来取れる利益を逃すことがあります。

例えば、

ワンオペで売上100万円、人件費0円。

二人体制にして売上150万円、人件費15万円。

人件費率だけなら、

0% → 10%

に上がっています。

だからといって、後者の経営が悪いとは限りません。

大切なのは、

最終的にいくら利益が残ったのか。

です。

飲食店経営では、経費を減らすことと利益を増やすことは必ずしも同じではありません。

経費を10万円増やすことで利益が20万円増えるなら、その10万円には使う意味があります。

一日中二人体制にする必要もない

ワンオペをやめるとなると、

「毎日スタッフを入れなければならない」

と考える必要はありません。

例えば、

12時〜14時だけ。

金曜日の夜だけ。

土日だけ。

予約が多い日だけ。

このように、売上が集中する時間だけ人を入れる方法もあります。

むしろワンオペ店では、この考え方の方が現実的です。

暇な時間まで二人体制にすれば、人件費だけが増えます。

忙しい時間だけ一人追加して、その時間の処理能力を上げる。

人件費を固定費のように考えるのではなく、

売上を取りにいく時間だけ使う変動費として設計する。

こう考えると、人を入れる判断もしやすくなります。

「あと何人入れば元が取れるか」を計算する

人を入れるか迷ったら、非常に簡単な計算ができます。

例えば、

3時間の人件費 3,900円。

客単価 1,300円。

原価率 35%。

一人のお客様から残る粗利益は、

1,300円 × 65%=845円。

すると、

3,900円 ÷ 845円=約4.6人。

つまり単純計算では、

約5人多く対応できれば、人件費分の粗利益を回収できます。

6人目からは、人を入れたことによる利益が生まれ始めます。

もちろん実際には社会保険、交通費、採用費なども考える必要がありますが、短時間アルバイトを検討する最初の判断材料にはなります。

「人を入れたら高い」

ではなく、

「あと何人売れば、この人件費を回収できるのか」

まで数字にする。

これだけで判断は大きく変わります。

ワンオペを続けることを目的にしない

一人で営業できる店は強い。

固定費を抑えやすく、損益分岐点も低くできます。

しかし店が成長して、

毎日満席になる。

お客様を断る。

電話を取れない。

予約を受けられない。

提供能力が足りない。

そんな状態になっているなら、ワンオペであること自体が売上の制限になっている可能性があります。

ここまで来たら、それは悪いことではありません。

むしろ、

一人で作れる売上の限界まで店が成長した

と考えることもできます。

次に考えるのは、

ワンオペを守ることではなく、

人件費を使って、さらに利益を増やせる段階に入ったのか。

という経営判断です。

ワンオペ店の目的は、一人で働き続けることではありません。

店主が望む利益を、無理なく残せる店を作ること。

そのために一人営業が最適ならワンオペを続ける。

二人にした方が利益が残るなら人を入れる。

ここまで数字で判断できれば、ワンオペ店の売上改善はかなり具体的になります。

次章では、ここまでの内容を実際の改善手順に落とし込み、ワンオペ店が売上を伸ばすときに、何から手をつければいいのかを整理します。

第12章、ワンオペ店の売上アップは、この順番で考える。

ここまで読んで、

「結局、自分の店では何から始めればいいのか」

と思う人もいるでしょう。

そこで、ワンオペ店の売上改善を実際に進める順番を整理します。

ポイントは、いきなり大きな改革をしないことです。

まず現状を数字にする。

一つ改善する。

結果を見る。

次へ進む。

この繰り返しで十分です。

STEP1 まず1週間、時間帯別の数字を取る

最初にやることは、新しい施策ではありません。

現在の営業を記録します。

最低限ほしいのは、

  • 時間帯別客数
  • 時間帯別売上
  • 客単価
  • 注文が集中した時間
  • 提供が遅れた時間

この5つです。

POSレジで確認できるものは、そのデータを使えば十分です。

さらに、

「12時15分から急に料理が遅れた」

「19時30分に会計が3組重なった」

といった現場の状況も簡単にメモしておきます。

まず1週間。

これだけでも、自分が感じている忙しさと実際の数字が一致しているのかが見えてきます。

STEP2 一番詰まっている場所を一つだけ決める

次に、

今の営業で一番売上を止めているものは何か

を一つ決めます。

例えば、

注文を取る時間。

会計。

洗い物。

盛り付け。

揚げ物。

ドリンク。

バッシング。

全部を同時に改善する必要はありません。

一番影響が大きいところから一つずつ変えます。

会計が原因なら会計。

洗い場なら洗い場。

商品なら商品。

改善する場所が一つなら、結果も判断しやすくなります。

STEP3 一週間だけ改善してみる

例えば、

水をセルフにする。

メニューを3品減らす。

盛り付けを変更する。

QR注文を試す。

ピーク前の仕込み量を変える。

会計方法を変更する。

一つ決めたら、一週間程度試してみます。

そして、改善前と同じ数字を取ります。

ここで大切なのは、

「楽になった気がする」で終わらせないことです。

例えば以前は12時台に10人で提供が遅れていた。

改善後は12人でも遅れなくなった。

ここまで分かれば、改善によって処理能力が上がったと判断できます。

効果がなければ戻す。

効果があれば残す。

これを繰り返します。

STEP4 次に客単価を動かす

営業に少し余裕ができたら、客単価を見ます。

例えば現在、

客単価1,050円。

これをいきなり1,500円にする必要はありません。

まず、

1,050円 → 1,100円。

次に、

1,100円 → 1,150円。

このくらいでも構いません。

重要なのは、

客単価が上がったことで、注文数や再来店にどんな変化が出たか

を見ることです。

値上げ。

セット。

追加商品。

トッピング。

商品構成。

いくつか試しながら、自分の店で無理なく取れる客単価を探します。

STEP5 空いている時間に売上を足す

次に見るのが時間帯別売上です。

例えば、

12時台は限界。

13時台もそこそこ入る。

14時台だけ極端に弱い。

それなら、次に売上を作る場所は14時台です。

夜なら17時台。

曜日なら水曜日。

自分の店の数字から、

まだ売上を入れられる場所

を探します。

この段階で初めて、その時間帯に合わせた商品や販促を考えます。

STEP6 そこで客数を増やす

ここまで整ったら、集客を強くします。

Googleマップ。

SNS。

広告。

チラシ。

口コミ。

地域販促。

どの方法でも構いません。

ただし、

「とにかく来店客を増やす」

ではなく、

何曜日の、何時に、何人増やしたいのか。

ここまで決めてから集客します。

例えば、

水曜日14時〜16時に5人増やしたい。

平日17時台に3組増やしたい。

このように目的が明確なら、販促内容も作りやすくなります。

STEP7 もう一度、処理能力を測る

改善を続けると、最初に測った数字が変わってきます。

以前は、

1時間10人。

客単価1,050円。

だった店が、

1時間12人。

客単価1,200円。

になっているかもしれません。

すると1時間の売上能力は、

10人 × 1,050円=10,500円

から、

12人 × 1,200円=14,400円

になります。

同じワンオペでも、店が作れる売上は変わっています。

ここで再び、

次に詰まっている場所はどこか。

まだ改善できるのか。

人を入れた方がいいのか。

を判断します。

売上改善は一周して終わりではない

この流れは、一度やれば終わりではありません。

数字を取る。

詰まりを見つける。

改善する。

客単価を調整する。

空いている時間を使う。

必要な場所へ集客する。

もう一度数字を取る。

これを繰り返します。

すると、

「なんとなく忙しい」

「最近売上が伸びない」

という感覚だったものが、

どこを変えれば次の売上が作れるのか

という具体的な経営課題に変わっていきます。

ワンオペ店だから、大掛かりな改善が必要なわけではありません。

むしろ小さな店だからこそ、一つの変更が店全体に与える影響を確認しやすい。

一つ変える。

数字を見る。

良ければ残す。

そして次を変える。

この積み重ねで、ワンオペ店の売上上限そのものを少しずつ引き上げていくことができます。

次はいよいよ最終章です。

最後は、「ワンオペだからこれ以上売れない」と考えている店に、本当にそれが店の限界なのかを考えてこの記事を締めます。

最終章、「ワンオペだから売れない」で終わらせない。

ワンオペ店には、確かに限界があります。

一人の人間ができる仕事には限りがありますし、厨房の広さや設備にも限界があります。

だから、どこまでも売上を伸ばせるわけではありません。

ただし、

今の売上が、本当にその店の限界なのか。

これは一度考えてみる価値があります。

「一人の限界」と「今の仕組みの限界」は違う

例えば、月商150万円で毎日忙しい店があったとします。

店主は、

「ワンオペだから150万円くらいが限界だろう」

と考えている。

しかし実際には、

注文を取るために厨房を何度も離れている。

会計のたびに調理が止まる。

ほとんど売れない商品を毎日仕込んでいる。

ピークタイムに手間のかかる商品が集中している。

こうした状態かもしれません。

この場合、150万円という数字は、

ワンオペ営業そのものの限界ではなく、現在の営業方法で作れる売上の限界

です。

仕組みが変われば、同じ一人でも作れる売上は変わります。

月商150万円の店が180万円になれば、それは大きい

飲食店の記事では、

「月商500万円」

「年商1億円」

といった大きな数字が目立ちます。

しかし、小さなワンオペ店にとって重要なのは、他店の売上ではありません。

自分の店が、

月商150万円から160万円になる。

160万円から170万円になる。

170万円から180万円になる。

こちらの方が重要です。

月商が30万円増えれば、年間では360万円の売上差になります。

しかも、その30万円を営業時間の大幅な延長や無理な客数増加に頼らず作れるなら、店の経営力そのものが上がったと考えられます。

小さい店には、小さい店の伸ばし方がある

大きな飲食店なら、人を増やして売上を取りにいくことができます。

席数の多い店なら、団体客を入れて一気に売上を作ることもできます。

ワンオペ店には、その方法がそのまま使えるとは限りません。

だからこそ、

自分の店の大きさ。

厨房能力。

商品構成。

営業時間。

客単価。

そして自分自身の働き方。

これらに合わせて売上の作り方を考える必要があります。

小さな店が、大きな店と同じ方法で売上を追いかける必要はありません。

小さな店には、小さな店だからできる経営があります。

本当に限界まで来たら、次の経営判断をする

改善を続けても、いつか本当の限界は来ます。

商品も整理した。

作業も減らした。

客単価も改善した。

時間帯別の売上も作った。

それでも、これ以上注文が増えれば一人では回らない。

そこまで来たら、次の選択肢を考えるタイミングです。

人を入れる。

営業時間を変える。

設備を増やす。

席数を変える。

場合によっては、次の店舗を考える。

ここまで来れば、

「ワンオペだから売上が伸びない店」ではなく、「ワンオペで作れるところまで売上を作った店」

です。

これは大きな違いです。

売上を増やす前に、店の能力を上げる

ワンオペ店が売上を伸ばそうとするとき、目の前の売上だけを追いかけると営業が苦しくなることがあります。

だから最初に見るのは、

今の店は、どれくらいの売上を無理なく処理できるのか。

そして、

その能力をもう少し上げる方法はないのか。

ここです。

一つの作業を減らす。

一つの商品を見直す。

客単価を50円上げる。

空いている1時間に数人増やす。

一つひとつは小さな改善です。

しかし、その積み重ねによって、

同じ一人、同じ厨房、同じ席数でも、店が作れる売上は変わります。

「ワンオペだから、これくらい。」

そう決める前に、

今見えている売上の天井が、

本当に店の限界なのか。それとも、今の仕組みの限界なのか。

一度、数字で確かめてみてください。

そこに、まだ伸ばせる売上が残っているかもしれません。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。