
1.初めてのお店なのに、料理の味はどうやって分かるのか

皆さんは、初めて行く飲食店を何を基準に選んでいますか。
料理でしょうか。
価格でしょうか。
立地でしょうか。
少しだけ考えてみてください。
実は、その店の料理をまだ一度も食べたことがないのに、「ここにしよう」と決めています。
つまり、お客様は料理の味を知らないまま、お店を選んでいるのです。
では、なぜ選べるのでしょうか。
何を見て、
何を感じて、
「この店なら大丈夫そう」
「ここなら失敗しなさそう」
と判断しているのでしょうか。
飲食店を経営していると、
「もっと料理を良くしよう。」
「もっと美味しい商品を作ろう。」
と考えがちです。
もちろん、それはとても大切なことです。
しかし、その前に知っておかなければならない事実があります。
お客様は、料理を食べる前に店を選びます。
そして、その判断は、料理を口にする前に終わっています。
私は、この事実こそが、現代の飲食店経営で最も重要な考え方の一つだと思っています。
今回は、「人はなぜ初めての店を選べるのか」。
その答えを、お客様の心理から一緒に考えていきたいと思います。
2.お客様が本当に買っているもの

前章では、
お客様は料理を食べる前に、お店を選んでいるという話をしました。
では、お客様は何を基準に、その一軒を選んでいるのでしょうか。
私は、
料理を買っているのではなく、
「失敗しない安心」を買っている。
そう考えています。
外食は、
スーパーで買い物をするのとは少し違います。
お金を払うだけではありません。
その店まで移動する時間。
食事を楽しむ時間。
家族や友人、恋人と過ごす大切な時間。
そのすべてを使って、一つのお店を選びます。
だからこそ、お客様は失敗したくないのです。
「写真と全然違った。」
「思っていたより高かった。」
「店内が汚かった。」
「接客が悪かった。」
「料理が出てくるまで時間がかかった。」
一度でもそんな経験をすると、
失うのは料理代だけではありません。
時間も、気持ちも、一緒に過ごした人との大切な時間までも失ってしまいます。
だから人は、
初めてのお店へ行く前に、
無意識のうちに「安心できる理由」を探しています。
私はこれまで、
飲食店は料理だけでは繁盛しないと何度も書いてきました。
それは、
料理が大切ではないという意味ではありません。
料理を食べてもらうためには、
まず「この店なら大丈夫そう」と思ってもらう必要があるからです。
つまり、
料理が評価されるのは来店したあと。
安心が評価されるのは来店する前。
この順番を理解しているかどうかで、
お店の集客は大きく変わってくるのです。
3.安心は「料理以外」から生まれる

お客様は、
料理の味を確認してから来店することはできません。
だからこそ、
味以外の情報から、
「この店なら大丈夫そう。」
という安心を作っています。
例えば、
外観。
料理写真。
メニュー。
店内の雰囲気。
清潔感。
接客。
駐車場。
口コミ。
どれも料理そのものではありません。
しかし、お客様はその一つひとつを見ながら、
無意識のうちに、
料理まで想像しています。
「外観がきれいだから、きっと店内も丁寧なんだろう。」
「料理写真が美味しそうだから、期待できそう。」
「口コミが良いから、安心して家族を連れて行けそう。」
つまり、お客様は情報を一つずつ評価しているのではありません。
目に入ったすべての情報を組み合わせて、
「この店なら失敗しなさそう。」
という一つの答えを作っているのです。
私は、食べログを見ていても、この傾向を強く感じます。
掲載されている情報の多くは、
料理の味そのものではありません。
外観。
店内写真。
メニュー。
営業時間。
座席。
設備。
そして、お客様の口コミです。
さらに口コミの内容を読んでみても、
漫画に出てくるような食レポばかりが並んでいるわけではありません。
「スタッフの対応が気持ち良かった。」
「店内がおしゃれだった。」
「子ども連れでも利用しやすかった。」
「料理が運ばれてきた瞬間に感動した。」
そんな体験そのものを書いている口コミが数多くあります。
もちろん、「美味しかった」という感想も大切です。
しかし、お客様が評価しているのは料理だけではありません。
その店で過ごした時間。
お店の空気。
スタッフとのやり取り。
料理が運ばれてきた瞬間の期待感。
そうした体験すべてが、「また来たい」という評価につながっています。
だから私は、
飲食店が売っているのは料理だけではないと考えています。
料理の前に、
お客様が安心して扉を開けられる理由を作ること。
その安心があるからこそ、
料理は最高の状態で評価されるのです。
4.広告は期待を作る

ここで、一つ質問があります。
Instagramで美味しそうなお店を見つけたとき、
あなたはそのまま予約しますか。
おそらく、多くの人は違うはずです。
店名を検索し、
口コミを見て、
メニューを見て、
営業時間を確認し、
写真を見比べます。
つまり、広告を見たあとに「確認作業」をしているのです。
これはInstagramだけではありません。
Google広告も。
チラシも。
YouTubeも。
テレビも。
広告の役割は共通しています。
それは、
興味を持ってもらうこと。
そして、
期待を作ること。
ここまでは広告の仕事です。
しかし、期待だけでは人は行動しません。
「本当に大丈夫かな。」
「写真どおりかな。」
「家族を連れて行っても失敗しないかな。」
そんな不安が残っている限り、お客様は店を選びません。
だから人は、
広告を見たあとに、
自分で安心できる理由を探し始めます。
私は、この順番を理解することが、現代の飲食店経営では非常に重要だと思っています。
広告だけを頑張っても、お客様は増えません。
逆に、安心だけを積み重ねても、その存在を知ってもらえません。
広告で期待を作り、
安心でその期待を確信へ変える。
この二つがつながって、初めて「行ってみよう」という行動が生まれるのです。
5.だから人は確認しに行く

広告を見て興味を持つ。
そこで終われば、お客様はすぐに来店するはずです。
しかし、現実は違います。
多くの人は、そのあと必ずと言っていいほど、お店の情報を調べ始めます。
店名を検索し、
ホームページを見て、
Instagramを見て、
口コミサイトを開く。
なぜでしょうか。
それは、お店が発信する情報だけでは、最後の安心まで得られないからです。
もちろん、ホームページもInstagramも大切です。
しかし、お店が発信する情報には、悪いことはほとんど書かれていません。
「美味しい。」
「こだわっています。」
「おすすめです。」
それは当然です。
自分のお店の魅力を伝えるための発信なのですから。
だからこそ、お客様はもう一歩先へ進みます。
「実際に行った人は、どう感じたのだろう。」
その答えを探しに行くのです。
そこで、多くのお客様が判断材料の一つとして見ているのが、食べログやGoogleマップなどの口コミサイトです。
ここで大切なのは、
「どのサイトが一番信用できるか」
という話ではありません。
本当に重要なのは、
多くのお客様が、来店前に第三者の評価を確認するという行動を取っていること。
この事実です。
私自身も、お店を探すときには複数の情報を見比べます。
そして、お客様も同じように、
ホームページだけではなく、
Instagramだけでもなく、
口コミだけでもなく、
いくつもの情報を組み合わせながら、
「この店なら安心して行けそうだ。」
という結論を出しています。
つまり、
お客様が信用しているのは、一つの媒体ではありません。
複数の情報に一貫性があること。
その積み重ねが、「安心」へと変わっていくのです。
6.信用の基準は変わった

少し前までは、
テレビで紹介されたお店。
雑誌に掲載されたお店。
有名人がおすすめしたお店。
そんな情報には、大きな影響力がありました。
「テレビで紹介されたなら間違いない。」
「人気ブロガーが褒めているなら行ってみよう。」
そう考える人も多かった時代です。
しかし、今は少し状況が変わってきています。
情報があまりにも増えたからです。
広告。
SNS。
インフルエンサー。
ショート動画。
AIが作る文章。
毎日、膨大な情報が流れてきます。
だから人は、
情報そのものを信じるのではなく、
「この情報は本当に信用できるのか。」
という視点で見るようになりました。
その結果、
「有名だから信じる。」
という時代から、
「自分と価値観が近い人だから信じる。」
という時代へ少しずつ変わってきています。
これは飲食店選びでも同じです。
たった一人の有名人の投稿より、
何人ものお客様が書いた口コミ。
派手な宣伝より、
普段から積み重ねてきた発信。
そうした小さな情報の積み重ねが、
「この店なら大丈夫そう。」
という安心につながっていきます。
つまり、
変わったのは情報量ではありません。
信用の基準そのものが変わった。
私は、そう感じています。
だからこれからの飲食店は、
一度だけ大きく話題になることよりも、
日々の営業を積み重ね、
少しずつ信用を育てていくことの方が、ずっと大切なのです。
7.安心は広告では作れない

ここまで読んでいただければ、もうお気付きかもしれません。
私は広告を否定したいわけではありません。
Instagramも必要です。
Google広告も必要です。
チラシも必要です。
インフルエンサーとの取り組みが成果につながることもあるでしょう。
しかし、それらには一つだけ共通する特徴があります。
それは、「知ってもらう力」はあっても、「信用を作る力」ではないということです。
広告を見れば興味は湧きます。
写真を見れば期待も高まります。
動画を見れば「行ってみたい」と思うこともあります。
でも、その瞬間に、
「絶対この店なら大丈夫。」
と確信する人は、ほとんどいません。
だから人は調べます。
口コミを読みます。
ホームページを見ます。
Instagramを見返します。
そして、
それぞれの情報に違和感がないことを確認しながら、
少しずつ安心を積み重ねていくのです。
つまり、安心とは一瞬で生まれるものではありません。
日々の営業。
気持ちの良い接客。
料理写真の見せ方。
正確な情報発信。
そして、お客様が積み重ねてくれた口コミ。
その一つひとつが積み重なって、
初めて「この店なら安心して行けそう」という信用になります。
だから私は、
広告費をかけることよりも、
信用を積み重ねる営業を続けることの方が、はるかに重要だと考えています。
広告は、今日から始められます。
しかし、信用は今日始めても、今日できるものではありません。
毎日の営業を積み重ねた先にしか存在しないものです。
だからこそ、最後にこの言葉を伝えたいと思います。
広告は期待を作る。
安心は積み重ねでしか作れない。
この順番を理解した飲食店だけが、長くお客様から選ばれ続けるのだと、私は信じています。
8.だからガブ飲み食堂は安心を積み重ねる

ガブ飲み食堂でも、来店前の「安心」を意識して情報発信の導線を作っています。
Instagramでは、
料理の魅力を伝えます。
新しいメニューを紹介します。
写真や動画を使って、
「美味しそう。」
「行ってみたい。」
という興味と期待を作ります。
しかし、そこで来店が決まるとは考えていません。
興味を持ったお客様は、そのあとに店の情報を確認するからです。
そこで私たちは、Instagramから食べログへ直接移動できる導線を作っています。
食べログには、
料理写真があります。
メニューと価格があります。
店内の様子があります。
営業時間や座席、駐車場などの情報があります。
そして、実際に来店されたお客様の口コミがあります。
Instagramだけでは伝え切れない情報を確認してもらい、
「ここなら安心して行けそうだ。」
と思っていただくためです。
実際に、ガブ飲み食堂の食べログページは、2026年6月22日から7月21日までの30日間で、合計21,181PV閲覧されました。
内訳は、
PC版が1,637PV。
スマートフォン版が14,557PV。
食べログアプリ版が4,987PVです。
スマートフォンとアプリを合わせると、全体の約92%を占めています。
多くのお客様が、外出先や日常生活の中でスマートフォンを使いながら、お店の情報を確認していることが分かります。
さらに注目すべきなのは、アクセス数の変化です。
6月22日から7月10日までの食べログ閲覧数は、1日平均で約555PVでした。
それが7月11日以降は、1日平均約967PVまで増えています。
約74%の増加です。
7月12日から21日までの10日間に限れば、平均はほぼ1日1,000PV。
1,000PVを超えた日も5日ありました。
ちょうどこの時期、Instagram広告から食べログへ直接移動してもらう取り組みを強化しています。
そのため、Instagram広告によって興味を持ったお客様が、食べログでさらに詳しい情報を確認するようになったことが、アクセス増加の大きな要因の一つだと考えています。
ただし、21,181PVのすべてがInstagramから生まれたとは考えていません。
ガブ飲み食堂のGoogleビジネスプロフィールも、2026年2月から7月までに56,464人に閲覧され、ウェブサイトは10,378回クリックされています。
Googleマップで店を見つける人。
「レストラン」や「ランチ」と検索して見つける人。
Instagramの広告で料理を見つける人。
店名を聞いて検索する人。
お客様がお店を知る入口は、一つではありません。
しかし、入口がどこであっても、そのあとにお客様が行っていることはよく似ています。
料理写真を見る。
メニューと価格を確認する。
店内の雰囲気を見る。
口コミを読む。
そして、複数の情報を照らし合わせながら、
「この店なら大丈夫そうだ。」
という安心を作っているのです。
私たちが増やしたいのは、食べログのPVだけではありません。
Instagramで期待を作り、
Googleやホームページで店を知ってもらい、
食べログで情報を確認してもらう。
それぞれの媒体をつなぎながら、お客様が安心して来店できる環境を作りたいのです。
数字が伸びたから、この考え方がすべて正しいと断定するつもりはありません。
しかし、Instagramから食べログへの導線を強化した時期と、食べログの1日平均PVが約74%増えた時期が重なっていることは事実です。
お客様は、広告を見て終わっているのではありません。
興味を持ったあと、自分で情報を確認し、納得した上で店を選んでいます。
だからガブ飲み食堂は、
料理だけではなく、
写真も、
メニューも、
店舗情報も、
口コミも、
お客様が安心するために必要な材料として、一つずつ積み重ねています。
9.料理は最後に評価される

実は、昨日こんな出来事がありました。
魂の洗濯をしたくて、城崎温泉の近くへ海水浴に行ってきました。
せっかく日本海まで来たのだから、お昼は海鮮を食べよう。
そう思い、街道沿いのお店へ入りました。
周りには海産物のお土産屋さんが並び、
「この辺りは新鮮な魚が名物なんだ。」
そんな空気が街全体に流れています。
だから私は、
店に入る前から、
「きっと美味しい海鮮丼が食べられる。」
と期待していました。
注文したのは、
海鮮七種丼(2,750円)。
料理が運ばれてきた瞬間。
正直に言うと、
私の期待はそこでピークを過ぎました。
もちろん、美味しくなかった訳ではありません。
でも、
「どこでも食べられる海鮮丼だな。」
そんな印象で終わってしまったのです。
この経験で改めて感じました。
料理は、
口に入れた瞬間から評価が始まるのではありません。
実は、
店に入る前から評価は始まっています。
立地。
街の雰囲気。
外観。
写真。
価格。
そして、
「ここなら美味しいはずだ。」
という期待。
料理は、
その期待を超えた瞬間に感動へ変わります。
逆に、
期待を超えられなければ、
美味しい料理でも、
「普通だった。」
で終わってしまいます。
だから私は、
料理そのものだけではなく、
来店前にお客様が感じる安心や期待まで含めて設計することが、飲食店経営だと考えています。
10.まとめ

飲食店を経営していると、
どうしても料理に目が向きます。
もっと美味しくしよう。
もっと良い食材を使おう。
もっと喜んでもらえる一皿を作ろう。
その姿勢は、とても大切です。
しかし、どれだけ素晴らしい料理を作っても、
初めてのお客様は、その味を知りません。
だから最初は、
味で選ぶことができないのです。
人は、
外観を見て、
写真を見て、
口コミを読み、
メニューを確認し、
店の雰囲気を想像しながら、
「この店なら安心して行けそうだ。」
という理由を積み重ねて、一軒のお店を選びます。
そして来店し、
初めて料理を食べます。
その料理が期待を超えたとき、
「また来たい。」
という気持ちが生まれます。
つまり、
安心は来店理由を作り、
料理は再来店理由を作る。
この順番を理解している飲食店ほど、
長くお客様から選ばれ続けるのではないでしょうか。
私は、
料理だけを磨くことが飲食店経営ではないと思っています。
安心を設計すること。
期待を作ること。
そして、その期待を料理と体験で超えていくこと。
そのすべてが揃って、初めて一軒のお店の価値になります。
だから私は、これからも料理だけではなく、
写真も、
情報も、
接客も、
店づくりも、
一つひとつ積み重ねていきたいと思っています。
飲食店は、料理を売る前に、「安心」を売らなければならない。
それが、現場で経営を続ける中で、私がたどり着いた一つの答えです。
この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。