飲食店はなぜ潰れるのか。現役経営者が見てきた「潰れるまでの過程」

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

飲食店はなぜ潰れるのか。現役経営者が見てきた「潰れるまでの過程」
この記事は約 33 分で読めます

~売上ではない。本当に失われていくものとは~

1.飲食業は、最も夢があり、最も厳しい業界の一つ

「いつか自分の店を持ちたい。」

飲食業で働く人なら、一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。

自分が考えた料理を提供し、お客様に「美味しかった」と言ってもらう。

常連さんが増え、地域に愛される店になる。

そんな未来を思い描きながら、多くの人が独立という夢に挑戦します。

実際、飲食業は毎年多くの人が新しく店を開業する業界です。

しかし、その一方で、多くの店が静かに姿を消していきます。

公的な統計でも、飲食業は開業率だけでなく廃業率も高い業界であることが示されています。

インターネットでは、

「1年以内に○%が閉店する。」

「3年後には半分以上が残らない。」

そんな数字を目にすることも少なくありません。

もちろん、そのようなデータには一定の意味があります。

しかし、私はその数字だけを見ても、本当の現実は分からないと思っています。

なぜなら、

店はある日突然潰れるわけではないからです。

閉店は結果です。

本当に見るべきなのは、

そこへ至るまでに、経営者が何を失っていくのか。

私は25年以上、飲食業界で現場に立ち続けてきました。

自分の店だけではありません。

繁盛店も。

苦しんでいる店も。

最後にシャッターを閉めることになった店も見てきました。

そこで気づいたことがあります。

潰れる店には、驚くほど似た「過程」があります。

売上が落ちること。

借金が増えること。

それも確かに起こります。

でも、本当に恐ろしいのはそこではありません。

経営者は少しずつ、

考える時間を失い、

挑戦する余裕を失い、

未来を変える力を失っていくのです。

そして、その変化は外からは見えません。

だからこそ、多くの人は「突然潰れた」と感じます。

でも、現場で見ている人間からすると違います。

店は何か月も、何年も前から、静かに壊れ始めています。

この記事では、

「何年で何%が廃業するのか」

そんな数字を並べることが目的ではありません。

現場で本当に起きていること。

私が実際に見てきた、飲食店が潰れるまでの過程を、一つずつお話ししたいと思います。

2.誰も「潰れるつもり」で開業しない

私はこれまで、多くの飲食店の開業を見てきました。

もちろん、閉店する店も見てきました。

その中で一つだけ、断言できることがあります。

最初から潰れるつもりで店を始める人なんて、一人もいません。

誰もが夢を持っています。

「自分の料理で勝負したい。」

「いつか自分の店を持ちたかった。」

「家族を安心させたい。」

「お客様に喜んでもらえる店を作りたい。」

独立する理由は人それぞれですが、その想いは本物です。

だからこそ、多くの人は長年修業を重ね、お金を貯め、勇気を出して一歩を踏み出します。

開業する店の多くは、家賃10万円から20万円程度の小さな店舗です。

決して大きな店ではありません。

席数も20席、30席ほど。

夫婦で始めたり、一人で切り盛りしたり。

アルバイトを数人雇ってスタートする店も多いでしょう。

そして、多くの経営者が最初に目標とするのが、月商100万円から200万円くらいです。

決して贅沢をしたいわけではありません。

家賃を払い、

スタッフに給料を払い、

仕入れをして、

少しでも自分の生活費が残ればいい。

そんな堅実な計画で始める人がほとんどです。

もちろん、不安がないわけではありません。

それでも、

「料理には自信がある。」

「接客なら負けない。」

「人一倍努力すれば何とかなる。」

そう信じて店を開けます。

その気持ちは、決して間違いではありません。

私もそうでした。

多くの経営者も、きっと同じだったと思います。

しかし、現実の経営は、料理の腕前だけでは決まりません。

努力だけでも乗り越えられません。

むしろ、本当に苦しくなるのは、開業してしばらく経ってからです。

オープン当初の勢いが落ち着き、

売上が現実的な数字になり始めた頃、

多くの経営者は初めて、

「店を続けること」と「店を経営すること」は、まったく別の能力なのだ。

という現実に直面します。

そして、その日から少しずつ、

店は静かに変わり始めるのです。

3.最初に壊れるのは店ではなく、キャッシュフロー

飲食店は、売上がゼロになったから潰れるわけではありません。

実際には、お客様は来ています。

ランチも出ています。

夜も何組かは来店しています。

レジを開ければ、今日も現金が入っています。

だから経営者は思います。

「あと少し売上が増えれば何とかなる。」

「来月はきっと良くなる。」

「もう少し頑張れば乗り越えられる。」

その気持ちは、とてもよく分かります。

私も飲食業に長く携わってきたからこそ、その気持ちを否定することはできません。

しかし、経営は売上だけでは成り立ちません。

店には毎月、必ず支払わなければならないお金があります。

家賃。

人件費。

仕入れ代。

光熱費。

税金。

社会保険料。

そして借入金の返済。

売上はある。

でも、支払いの方が先にやってくる。

この状態が続くと、経営者は少しずつ資金繰りを工夫し始めます。

「今月の仕入れはカードで払おう。」

「支払いを来月に回そう。」

最初は、それだけです。

誰でも考える、ごく普通の資金繰りです。

ところが、その翌月も苦しい。

またカードを使う。

支払いを先送りする。

気付けば、カードの請求日が怖くなる。

一括払いが難しくなり、分割払いやリボ払いを選ぶ。

それでも足りなければ、キャッシングを利用する。

さらに資金が必要になれば、事業資金や消費者金融に手を伸ばす人もいます。

ここで誤解してほしくないことがあります。

私は、カードローンや借入そのものを否定したいわけではありません。

資金調達は、経営に必要な場面もあります。

問題なのは、

借入が「未来への投資」ではなく、「今日を乗り切るためのお金」に変わってしまうことです。

ここまで来ると、経営者の頭の中は毎日同じことでいっぱいになります。

「今月の家賃は払えるだろうか。」

「給料日は乗り切れるだろうか。」

「来週の仕入れ代はどうしよう。」

本来考えるべき、

「どうすればお客様にもっと喜んでもらえるだろう。」

「新しい商品を作ろう。」

「店をもっと良くしよう。」

そんな未来のことを考える余裕が、少しずつ消えていきます。

私はこれまで、多くの飲食店を見てきました。

その中で感じるのは、

赤字になったから店が潰れるのではない。

現金が回らなくなった瞬間から、経営は静かに崩れ始める。

ということです。

店が壊れる前に、

まず経営者の思考が「未来」から「今日をどう乗り切るか」へ変わってしまう。

私は、それこそが本当の危険信号だと思っています。

4.経営者は「もっと働けば何とかなる」と考える

資金繰りが苦しくなると、多くの経営者が最初に考えることがあります。

それは、

「もっと自分が働こう。」

という答えです。

スタッフを一人減らす。

アルバイトのシフトを削る。

自分が朝から晩まで店に立つ。

休みを返上する。

営業時間を延ばす。

人件費を少しでも削ろうとする。

どれも、経営者として無責任だから選ぶのではありません。

むしろ、その逆です。

スタッフの生活を守りたい。

家族を守りたい。

店を守りたい。

その責任感があるからこそ、

「自分が頑張ればいい。」

という結論にたどり着くのです。

私も、その気持ちは痛いほど分かります。

経営者なら誰だって、

まず最初に自分が犠牲になろうとします。

だから私は、

その選択を笑うことも、否定することもできません。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

確かに、自分が働けば人件費は下がるかもしれません。

営業時間を延ばせば、お客様が来る可能性もあります。

休みを減らせば、その日は売上が上がるかもしれません。

でも、それはあくまで今日を乗り切る方法です。

明日も。

来週も。

来月も。

同じことを続けられるでしょうか。

人は機械ではありません。

睡眠を削れば判断力は落ちます。

疲れが溜まれば笑顔も減ります。

焦りはミスを生みます。

そして、その状態が何か月も続けば、心も体も少しずつすり減っていきます。

さらに怖いのは、

店に立つ時間が増えれば増えるほど、

経営者としての仕事をする時間がなくなることです。

新しいメニューを考える時間。

原価を見直す時間。

数字を分析する時間。

SNSを更新する時間。

他店へ勉強に行く時間。

スタッフと向き合う時間。

店を良くするための時間が、

すべて「今日の営業」に吸い取られてしまいます。

一見すると、

以前より一生懸命働いています。

営業時間も長くなっています。

休みもありません。

でも、

店は少しも良くなっていない。

それどころか、

未来を変えるための仕事が、一つずつ止まっていくのです。

私はこれまで、多くの飲食店を見てきました。

そこで感じるのは、

店が苦しくなったとき、

経営者は決して努力をやめているわけではないということです。

むしろ以前より、何倍も働いています。

それでも状況が良くならないのは、

努力が足りないからではありません。

努力する方向が、「経営」ではなく「作業」に変わってしまっているからです。

店を守ろうとして始めた行動が、

結果として経営者から「経営する時間」を奪ってしまう。

私は、この瞬間こそが、

飲食店が本当に苦しくなり始める分岐点だと思っています。

5.店から”未来”が消えていく

ここまで来ると、経営者は毎日が本当に忙しくなります。

朝、店を開ける準備をして、

営業をして、

片付けをして、

仕込みをして、

気付けば夜中。

家に帰る頃には、もう何も考えられないほど疲れています。

だから、

「今日は疲れたから明日にしよう。」

その一日が始まります。

もちろん、

誰も店を悪くしようと思っているわけではありません。

本当はやりたいことがあります。

店をもっと良くしたい。

もっとお客様に喜んでもらいたい。

その気持ちは、今でも変わっていません。

でも、

時間がありません。

だから最初に後回しになるのは、

今すぐ売上にならない仕事です。

例えば、

厨房や客席の細かな掃除。

新しいメニューの開発。

季節商品の企画。

SNSの更新。

Googleビジネスプロフィールの情報発信。

POPや店内販促物の作成。

競合店への視察。

経営の勉強。

スタッフとの面談や教育。

どれも、

「今日はやらなくても営業はできる。」

そんな仕事ばかりです。

だから明日に回す。

また明日に回す。

その繰り返しになります。

しかし、

ここで恐ろしいことが起きています。

営業は続いています。

お客様も来ています。

店も開いています。

外から見れば、

何も変わっていないように見えます。

でも、

店の未来だけが、

少しずつ止まっているのです。

掃除をしなくなったから潰れるわけではありません。

SNSを更新しないから潰れるわけでもありません。

メニュー開発を止めたから潰れるわけでもありません。

その一つひとつは、小さなことです。

しかし、

その小さな「未来への投資」が一年、二年と積み重なると、大きな差になります。

新しいお客様が減る。

常連さんが少しずつ離れる。

店の鮮度が失われる。

スタッフも成長しなくなる。

そして気付けば、

「昔はもっと活気があった店だった。」

そんな状態になってしまうのです。

私は、この状態を何度も見てきました。

だから断言できます。

飲食店は、

売上が落ちたから魅力を失うのではありません。

未来を作る仕事をやめたときから、少しずつ魅力を失っていくのです。

そして一番悲しいのは、

経営者自身がその変化に気付けないことです。

毎日、本気で働いています。

以前より何倍も働いています。

だから、

「自分は努力している。」

その実感があります。

その実感は間違いではありません。

本当に努力しています。

ただ、その努力がすべて「今日を終わらせるための仕事」に向いてしまい、

「半年後、一年後の店を良くする仕事」が消えてしまう。

私は、これこそが飲食店が静かに衰退していく、本当の始まりだと思っています。

6.最後の支えは、常連さんになる

店が苦しくなってくると、

最後まで残ってくれる人たちがいます。

それが、

常連さんです。

毎週来てくれる人。

仕事帰りに顔を出してくれる人。

「今日も頑張ってるね。」

そう笑顔で声を掛けてくれる人。

「この店がなくなったら困るよ。」

そんな言葉をかけてくれる人。

経営者にとって、その一言は本当に嬉しいものです。

売上以上に、

「自分の店を必要としてくれている人がいる。」

そう感じられる瞬間だからです。

だからこそ、

苦しくても店を開けます。

体調が悪くても店を開けます。

休みたい日でも店を開けます。

「あのお客様が来るかもしれない。」

その気持ちが、自分を立たせてくれます。

ここまで来ると、

店を開ける理由は少しずつ変わっていきます。

開業した頃は、

夢がありました。

「あんな店にしたい。」

「こんな料理を出したい。」

「地域で一番愛される店になりたい。」

未来を思い描きながらシャッターを開けていました。

しかし、

経営が苦しくなるにつれて、

その夢は少しずつ姿を変えていきます。

今度は、

「迷惑は掛けられない。」

「スタッフの給料を払わなければ。」

「仕入先にも待ってもらっている。」

「常連さんを裏切るわけにはいかない。」

そんな責任感が、自分を動かします。

もちろん、

責任感は経営者にとって大切なものです。

その責任感があるから、多くの人は簡単に店を投げ出しません。

でも私は、ここにも一つの危うさがあると思っています。

責任感だけで走り続けると、

心が休まる日がありません。

「今日は店を閉めよう。」

そう考えることすら、自分を責めてしまいます。

本当は限界に近づいているのに、

「まだ頑張れる。」

「自分が頑張ればいい。」

そう言い聞かせながら、毎日シャッターを開けるのです。

私は、そんな経営者を何人も見てきました。

だから思うのです。

飲食店が苦しくなる最後の局面は、

お客様がいなくなることではありません。

夢だけで店を開けていた経営者が、責任感だけでシャッターを開けるようになること。

私は、その変化こそが、何よりも苦しい現実なのだと思っています。

7.それでも現実は変わらない

もちろん、

ここまでお話ししたすべての店が、そのまま閉店してしまうわけではありません。

中には、そこから立て直す店もあります。

SNSで紹介され、一気にお客様が増える。

テレビや雑誌に取り上げられる。

ある商品が大ヒットする。

口コミが広がり、一気に行列店になる。

そんな話を聞くこともあります。

実際に、私もそういう店を見てきました。

だから、

私は「絶対に立て直せない」と言いたいわけではありません。

飲食店には、奇跡のような出来事が起きることがあります。

だから、この仕事は面白いのだと思います。

しかし、

経営者として一つだけ忘れてはいけないことがあります。

奇跡は、経営計画には入れられない。

ということです。

「いつかSNSでバズるかもしれない。」

「テレビが取材に来るかもしれない。」

「有名人が紹介してくれるかもしれない。」

もちろん、その可能性はゼロではありません。

でも、

それを信じて毎月の家賃は払えません。

スタッフの給料も払えません。

仕入れ代も支払えません。

経営とは、

毎月、毎月、

確実に店を続けられる仕組みを作ることです。

運が良かったから続いた。

たまたま当たった商品があった。

それは結果であって、

経営ではありません。

私がこれまで見てきた繁盛店は、

奇跡を待っていた店ではありませんでした。

毎日、小さな改善を積み重ね、

数字を見て、

お客様の声を聞き、

地道に店を磨き続けてきた店です。

派手さはありません。

劇的な逆転劇もありません。

でも、

その積み重ねがあるからこそ、

長く地域に愛される店になっていくのです。

だから私は、

苦しい状況にいる経営者にこそ伝えたいのです。

奇跡を信じることは悪いことではありません。

でも、

店の未来を奇跡に預けてはいけません。

未来を変えるのは、

たった一度の大きな出来事ではなく、

今日できる小さな改善を積み重ねること。

経営とは、

その積み重ねを続ける仕事なのだと、私は思っています。

8.現状を変えるには「時間」と「現金」が必要

ここまで読んで、

「まさに今の自分だ。」

そう感じた経営者もいるかもしれません。

もしそうだとしても、

私は一つだけ伝えたいことがあります。

まだ終わりではありません。

店は、

売上が落ちたから潰れるのではありません。

未来を変える仕事が止まったときから、少しずつ苦しくなっていきます。

ということは、

もう一度未来を作る仕事ができるようになれば、

状況は変えられる可能性があります。

では、

何が必要なのでしょうか。

新しい料理でしょうか。

広告でしょうか。

SNSでしょうか。

もちろん、それらも大切です。

しかし、

その前に必要なものがあります。

それが、

時間です。

経営者には、

考える時間が必要です。

数字を見る時間が必要です。

お客様の声を聞く時間が必要です。

店内を見渡す時間が必要です。

新しい商品を考える時間。

スタッフと話す時間。

他店へ勉強に行く時間。

未来を設計する時間。

これらは、

店を良くするための仕事です。

しかし、

これまでお話ししてきたように、

苦しくなった店ほど、

その時間がなくなっていきます。

だから、

まず取り戻さなければならないのは、

経営者の時間なのです。

そして、

その時間を取り戻すためには、

もう一つ必要なものがあります。

それが、

現金です。

手元に現金があるから、

慌てて売上だけを追わなくて済みます。

資金繰りに追われなくなるから、

目の前の営業だけではなく、

半年後、一年後を考える余裕が生まれます。

つまり、

キャッシュフローが改善されることで、

初めて経営者は、

「今日を生き延びる人」から、「未来をつくる人」へ戻ることができる。

私はそう考えています。

だから、

店を立て直す第一歩は、

売上を何十万円増やすことではありません。

未来を変えるための時間を、もう一度自分の手に取り戻すこと。

そのために、

まずキャッシュフローを改善すること。

私は、それこそが本当の再出発だと思っています。

9.小さな飲食店に残された現実的な選択肢

ここまで読んで、

「じゃあ、どうすればいいんだ。」

そう思われた方もいるかもしれません。

正直に言います。

苦しくなった飲食店を立て直す方法に、魔法はありません。

一発逆転もありません。

だからこそ、

私は現場で実際にできることしか、お伝えしたくありません。

その一つが、

一度、お店の外へ出ることです。

例えば、

昼営業を思い切って休み、

その時間をデリバリーの配達員として働く。

そう聞くと、

「飲食店の経営者が配達員なんて。」

そう思う人もいるでしょう。

でも私は、

これは決して後ろ向きな選択ではないと思っています。

むしろ、

現状を立て直すための現実的な一手です。

まず、

一番大きいのは、

現金が入ること。

今日働けば、

その日の収入が得られる。

資金繰りが苦しい時期ほど、

この現金は経営者の心に大きな余裕を生みます。

次に、

地域の飲食店を知ることができます。

どの店が人気なのか。

どんな料理が売れているのか。

どんな時間帯に注文が集中しているのか。

お客様が何を求めているのか。

机の上では分からない現場の情報が、

毎日のように入ってきます。

さらに、

配達員同士のネットワークもできます。

「あの店、最近すごく注文が入ってるよ。」

「このエリアは夜が強い。」

「この店、急に伸び始めた。」

そんな情報は、

数字だけを見ていても分かりません。

現場で働いている人だからこそ知っている情報があります。

つまり、

配達員として働くことは、

ただ生活費を稼ぐだけではありません。

現金を作りながら、地域市場を学び、自分の店を見つめ直す時間を得ることでもあるのです。

もちろん、

すべての店に当てはまる方法ではありません。

昼営業が好調な店なら、その必要はありません。

しかし、

昼営業で毎日赤字を積み重ね、

体力だけを消耗しているのであれば、

一度立ち止まり、

別の角度から現金と情報を得るという選択も、私は十分に価値があると思っています。

経営者に必要なのは、

意地ではありません。

店を立て直すために、一番合理的な選択をする勇気です。

そして、その勇気が、

もう一度「未来を考える時間」を取り戻すきっかけになることもあるのです。

パターン② 自店でデリバリー事業に参入する

もう一つの選択肢があります。

それが、

自店でデリバリー事業を始めることです。

ここで一つ誤解してほしくないことがあります。

私は、

「デリバリーなら誰でも儲かる。」

そんなことを言いたいわけではありません。

デリバリーも、

商品設計を間違えれば利益は残りません。

価格設定を間違えれば赤字になります。

運営方法を間違えれば、

店内営業まで苦しくなることもあります。

だからこそ、

経営として設計する必要があります。

私自身が運営しているガブ飲み食堂では、

店内営業とは別に、

デリバリー専用の商品設計を行っています。

原価率。

販売価格。

容器代。

調理オペレーション。

配達プラットフォームの手数料。

すべてを踏まえて設計した結果、

月商100万円前後のデリバリー売上で、およそ35万円のキャッシュフローを生み出せる仕組みを構築しています。

もちろん、

この35万円すべてが利益という意味ではありません。

ここから店舗ごとの固定費や経費も発生します。

それでも、

経営者にとって非常に大きいのは、

毎月まとまった現金が手元に残る状態を作れることです。

この現金があることで、

資金繰りに追われる日々から少し距離を置くことができます。

そして何より、

経営者が「今日を乗り切ること」だけではなく、

「半年後、一年後の店をどう良くするか」を考える時間を取り戻せるようになります。

私は、

デリバリー事業の一番の価値は、

売上を増やすことだけではないと思っています。

経営者に未来を考える余裕を取り戻すこと。

そこに、本当の価値があります。

もちろん、

ここで紹介している数字は、

ガブ飲み食堂の現在の商品構成、原価率、販売価格、プラットフォーム手数料、運営方法を前提とした実例です。

立地も違えば、

客単価も違います。

商品も違います。

そのため、

すべての飲食店で同じ利益率やキャッシュフローが実現できるわけではありません。

しかし、

一つだけ言えることがあります。

私は25年間、飲食店を見てきました。

そして今も現役で経営しています。

だからこそ、

「理論として良さそうな話」ではなく、

実際に現場で試し、数字として結果が出た方法だけをお伝えしたい。

そう考えています。

10.私が本当に伝えたいこと

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この記事を書いた理由は、一つしかありません。

私は、

デリバリーを勧めたいわけではありません。

FCに加盟してほしいわけでもありません。

「この方法なら必ず成功する。」

そんなことを言いたいわけでもありません。

私が本当に伝えたいのは、

飲食店は、潰れる前ならまだ打てる手がある。

ということです。

現場で25年間、多くの飲食店を見てきました。

その中には、

「あと半年早く相談してくれていたら。」

「あと少しだけ資金に余裕があれば。」

「もう少し早く経営を見直していれば。」

そう思った店が、本当にたくさんありました。

逆に言えば、

状況が悪くなったからといって、すぐに終わりではありません。

現状を冷静に見つめ、

キャッシュフローを改善し、

未来を考える時間を取り戻す。

その一歩を踏み出せれば、

店はもう一度前を向ける可能性があります。

だから私は、

この記事が苦しい状況にいる誰かにとって、

「まだできることがある。」

そう思えるきっかけになれば、それだけで十分だと思っています。


11.飲食店が潰れる原因は、売上ではない

この記事では、

飲食店が潰れていく過程をお話ししてきました。

最初はキャッシュフローが苦しくなる。

経営者は誰よりも働く。

未来を作る仕事が止まる。

夢が責任感へ変わる。

そして、

少しずつ店の魅力が失われていく。

もちろん、

売上は大切です。

料理も大切です。

立地も、人材も、価格も、接客も、すべて大切です。

しかし、

私は25年間この仕事をしてきて、一つだけ確信していることがあります。

飲食店は、売上だけで潰れるのではありません。

料理だけでもありません。

立地だけでもありません。

本当に失われていくのは、

未来を変える時間です。

未来を考える時間。

店を磨く時間。

スタッフを育てる時間。

お客様の声を聞く時間。

経営を学ぶ時間。

その時間を失ったとき、

店は少しずつ魅力を失っていきます。

そして、

店の魅力と一緒に、

経営者自身の心も、少しずつすり減っていくのです。

だから私は、

料理だけを学ぶ飲食人ではなく、

経営も学ぶ飲食人が増えてほしいと思っています。

美味しい料理を作れる人が増えることも大切です。

でも、それ以上に、

長く愛され、

利益を残し、

働く人も幸せになれる店を増やしたい。

そのためには、

未来を変える時間を、自分の手で取り戻せる経営者が必要です。

それが、

私がRBRを立ち上げた理由です。

飲食店を増やしたいわけではありません。

利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。

そして、

働く人が誇りを持ち、

夢を持ち続けられる飲食業界をつくりたい。

私は、そのためにこれからも現場で学び、現場で試し、現場で得た経験を発信し続けていきます。

もしこの記事が、

今まさに苦しんでいる誰かの背中を少しでも押すことができたなら、

これほど嬉しいことはありません。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。