飲食店はなぜ、売上が落ちるほど「お客様目線」を失うのか
Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

第1章 売上が落ちると、経営者が見ている景色が変わる

飲食店を経営していると、売上によって経営者が見ている景色そのものが変わることがあります。
売上が順調なときは、比較的前向きに店を見ることができます。
「もっとお客様に喜んでもらうには?」
「次はどんな商品を作ろう?」
「店をもっと良くするには?」
「新しいサービスを始めてみようか?」
こうした発想が自然に出てきます。
なぜなら、経営者の頭の中に考える余白があるからです。
ところが、売上が落ち始めると状況は変わります。
月末の給料はいくら必要なのか。
家賃の引き落としはいつなのか。
仕入れ先への支払いはいくらあるのか。
借入金の返済日はいつなのか。
そして、銀行口座には今いくら残っているのか。
店に立ってお客様を見ていても、頭の片隅にはずっと「支払い」があります。
これは飲食店経営者であれば、経験したことがある人も多いのではないでしょうか。
売上が十分にあるときの100万円と、資金繰りが苦しいときの100万円は、同じ100万円でも経営者にはまったく違って見えます。
後者では、
売上が「お客様からの評価」ではなく、「今月の支払いを乗り越えるための数字」に変わっていく。
ここが非常に重要です。
本来、飲食店の売上はお客様の行動の結果です。
来店してもらう。
商品を選んでもらう。
追加注文してもらう。
また来てもらう。
その一つひとつが積み重なって、最終的に売上という数字になります。
ところが資金繰りが苦しくなると、その順番を考える余裕がなくなってきます。
「あと50万円足りない」
「今週20万円作らないと厳しい」
「今日10万円は欲しい」
経営者の視線が、お客様の行動よりも必要な売上金額へ向かっていきます。
すると、店を見る基準も少しずつ変わります。
この商品をお客様はどう感じるだろう。
この価格なら満足してもらえるだろうか。
このサービスならまた来てもらえるだろうか。
そうした問いより先に、
「これをやったら、いくら売上になるだろう」
という問いが出てくるようになります。
もちろん、売上を考えること自体は経営者として当然です。
問題は、売上を作っているのはお客様だという視点まで薄れてしまうことです。
売上が苦しい。
だから売上を作りたい。
売上を作りたいから、施策を打つ。
この流れだけを見れば何も間違っていません。
しかし、その施策がお客様にとって魅力的なのかという確認が抜ければ、経営者の都合だけで店が動き始めます。
そして厄介なのは、経営者本人がその変化になかなか気づけないことです。
本人は店を守ろうとしている。
従業員の給料を払おうとしている。
仕入れ先への支払いを守ろうとしている。
だから必死に考えている。
その必死さゆえに、判断の中心が少しずつ「お客様」から「自分たちの都合」へ移っていく。
私は、売上が落ちている店を見るとき、数字だけではなくここも非常に重要だと考えています。
売上が落ちたから、お客様目線を失う。
そして、お客様目線を失った施策によって、さらに店が選ばれにくくなる。
こうして経営が苦しくなるほど、判断まで苦しくなる循環が生まれていきます。
だから売上が落ちたときほど、一度確認してほしいことがあります。
今、自分は何を見て店を経営しているのか。
お客様の顔なのか。
それとも、口座残高なのか。
資金繰りが苦しい以上、口座残高を見る必要は当然あります。
ただ、その数字を改善してくれるのは最終的にはお客様です。
経営が苦しいときほど、この当たり前の関係を見失わないこと。
ここが、店を立て直す最初の分岐点になります。
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この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。