15坪の飲食店で月商300万円は作れるのか|月商170万円から売上を伸ばす方法

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

15坪の飲食店で月商300万円は作れるのか|月商170万円から売上を伸ばす方法
この記事は約 89 分で読めます
目次 Outline

第0章 15坪・22席、月商170万円の店をモデルに考える

今回は、ある小さな飲食店をモデルに考えてみます。

実在する特定の店舗ではありません。

小規模な飲食店でよく見られる条件をもとにした、架空の店舗です。

条件は次のように設定します。

  • 店舗面積:15坪
  • 客席数:約22席
  • 立地:駅前一等地ではなく、通行量も多くない
  • 坪家賃:7,000円
  • 家賃:月10万5,000円
  • 営業日数:月25日
  • 基本営業:オーナー1人
  • ピーク時のみスタッフを昼夜合計6時間
  • スタッフ時給:1,200円
  • 原価率:35%

1坪あたり約1.5席。

15坪程度の小型飲食店として、それほど特殊な条件ではありません。

そして、この店の売上が次のように推移しているとします。

月商
1月180万円
2月150万円
3月170万円
4月170万円
5月165万円
6月150万円
7月170万円
8月180万円
9月160万円
10月170万円
11月180万円
12月200万円
年間2,045万円
月平均約170万円

この数字を見て、どう感じるでしょうか。

2月や6月は150万円まで落ちています。

一方で、1月、8月、11月は180万円。

12月には200万円まで売れています。

大繁盛店とは言えません。

しかし、まったく売れていない店でもありません。

おそらく、この店を経営している本人の感覚としては、

「この立地で、この店の大きさなら、まあこんなもんかな」

ではないでしょうか。

ここが今回の記事の出発点です。


好立地の小型店の話ではない

最初に一つ、はっきりさせておきます。

今回の記事は、

「小さい店では売上を作れないのか」

という単純な話ではありません。

駅前一等地や駅ナカなど、圧倒的な通行量がある場所なら条件はまったく変わります。

店舗が小さくても、高い回転数を作れる業態なら大きな売上を作ることはできます。

今回考えたいのは、そういう店ではありません。

駅から少し離れている。

店の前を歩く人もそれほど多くない。

家賃は安い。

そして15坪程度の小さな店。

いわゆる、

「立地にはそれほど恵まれていない小型飲食店」

です。

こういう店は全国にたくさんあります。


この店に月商300万円という目標を置いてみる

この店の平均月商は約170万円です。

では、この店に、

「月商300万円」

という目標を置いたらどうでしょうか。

おそらく最初に出てくるのは、

「無理やろ」

という感覚だと思います。

15坪しかない。

22席しかない。

立地も強くない。

今まで一番売れた月でも200万円。

そこから300万円。

確かに、簡単な目標ではありません。

私も、条件を無視して「頑張れば売れる」と言うつもりはありません。

だからこそ、この記事では感覚ではなく数字で考えてみます。

本当に15坪だから300万円が売れないのか。

本当に22席だから売上に限界があるのか。

本当に立地だけが、この店の売上を170万円前後で止めているのか。

そしてもう一つ。

仮に300万円まで売上を伸ばせたとしたら、

この店の経営は何が変わるのか。

今回の記事では、この架空店舗を一つのケースとして、順番に数字を分解していきます。

まず次章では、

そもそも月商170万円前後のこの店は、経営的に苦しい店なのか。

そこから見ていきましょう。

第1章 この店、別に潰れそうではない

まず、この店の数字を見ておきましょう。

平均月商は約170万円。

悪い月は150万円。

良い月なら180万円。

12月には200万円まで売れています。

この数字だけを見ると、

「経営、大丈夫なの?」

と思う人もいるかもしれません。

しかし、この店には大きな特徴があります。

固定費が低い。

15坪で坪家賃7,000円ですから、家賃は月10万5,000円です。

そして基本的にはオーナー1人で営業。

スタッフを使うのはピーク時間だけ。

昼と夜を合わせて1日6時間。

時給1,200円、月25日営業なら、

1,200円 × 6時間 × 25日=18万円。

つまり、家賃とアルバイト人件費を合わせても、

月28万5,000円。

ここが、この店の強さでもあります。


月商150万円でも、すぐには潰れない

例えば売上が150万円まで落ちた月を考えてみます。

原価率35%なら、原価は52万5,000円。

そこから、

家賃10万5,000円。

アルバイト人件費18万円。

ここまでを引くと、

69万円残ります。

もちろん、この69万円が利益ではありません。

ここから水道光熱費、決済手数料、通信費、消耗品、販促費、修繕費など、さまざまな経費が出ていきます。

それでも、

月商150万円になった瞬間に経営が成立しなくなるような店ではない。

これが今回のモデル店舗の特徴です。

家賃が月30万円、40万円かかる店とは、損益構造がまったく違います。


だから「危機」が見えにくい

これがもし毎月赤字なら、経営者も動きます。

メニューを変える。

価格を変える。

営業時間を見直す。

集客方法を変える。

人員配置を変える。

何とかしなければ店がなくなるからです。

ところが今回の店は違います。

150万円まで落ちても何とかなる。

翌月170万円に戻る。

180万円売れれば少し安心する。

年末に200万円売れれば、

「やっぱりウチもちゃんと売れるやん」

と思える。

そしてまた翌年を迎える。

この状態は、経営者にとってそれほど居心地が悪くありません。

店は営業できている。

自分の生活もできている。

お客様も来ている。

常連客もいる。

毎日それなりに忙しい。

だから、

「今すぐ何かを大きく変えなければならない」

という理由がないのです。


問題は「潰れるかどうか」ではない

今回、この店をモデルにした理由はここにあります。

飲食店の経営問題というと、

赤字。

資金繰り。

売上減少。

閉店危機。

こうした話が注目されがちです。

しかし実際には、

潰れないけれど、大きくもならない店

もたくさんあります。

今回の店も、その状態にあります。

月商170万円前後でも営業は続けられる。

だから、この売上自体を「失敗」と考える必要はありません。

問題は、

この状態を5年続けたとき、経営者に何が残るのか。

ということです。

その答えを見るためには、

今月の売上だけを見るのでは足りません。

次章では、この店の12か月の売上を並べて、

「年間で見ると、この店は本当に前へ進んでいるのか」

を考えてみます。

第2章 12か月並べると、この店の本当の姿が見えてくる

前章では、この店は月商150万円まで落ちても、すぐに経営が苦しくなるような店ではないと書きました。

では今度は、売上を1か月ずつではなく、12か月まとめて見てみます。

月商
1月180万円
2月150万円
3月170万円
4月170万円
5月165万円
6月150万円
7月170万円
8月180万円
9月160万円
10月170万円
11月180万円
12月200万円
年間2,045万円
月平均約170万円

年間売上は2,045万円。

月平均にすると約170万円です。

ここで注目したいのは、売上の高い月でも低い月でもありません。

一年間、ほとんど同じ範囲の中を動いていることです。


悪い月が終われば安心してしまう

2月は150万円。

「今月はちょっと悪かったな」

と思います。

ところが3月には170万円へ戻る。

すると、

「まあ戻ったから大丈夫か」

となります。

8月には180万円。

11月も180万円。

12月には200万円。

200万円まで売れれば、

「うちもやれば200万円くらい売れる」

という感覚になります。

これが単月売上を見る怖さです。

悪い月には危機感を持つ。

売上が戻れば、その危機感が消える。

しかし12か月を一本の線として見れば、違うものが見えてきます。

150万円まで落ちる。

170万円へ戻る。

180万円まで上がる。

また160万円へ落ちる。

そして繁忙月に200万円。

上下はしていても、

売上の水準そのものは大きく変わっていません。


「200万円売れた」と「200万円の店になった」は違う

ここは飲食店の数字を見るうえで、かなり重要です。

12月に200万円売れた。

これは事実です。

しかし、

月商200万円の店になったわけではありません。

翌月も200万円。

その次も200万円。

さらに210万円、220万円へ伸びていく。

そうなって初めて、店の売上水準が一段上がったと言えます。

今回の店は違います。

200万円はあくまで上振れした月。

通常は160〜180万円あたり。

年間平均では約170万円。

つまり、この店の現在地を見るなら、

「最高月商200万円」ではなく「平均月商170万円」

として考えた方が実態に近い。


15坪で平均月商170万円なら、坪月商は約11.4万円

店舗面積からも見てみましょう。

月商170万円 ÷ 15坪。

坪月商は、

約11万4,000円です。

弱い立地で家賃も安い。

その条件を考えれば、この数字でも店は成立します。

だから、

坪月商11万円だからダメだ、

という話ではありません。

重要なのは、

この数字が何年続いているのか。

ということです。

1年目。

平均170万円。

2年目。

平均172万円。

3年目。

平均168万円。

仮にこんな状態なら、

店は3年間営業しています。

しかし売上を生み出す力そのものは、ほとんど変わっていません。


「続いている」と「成長している」を分けて考える

飲食店は、営業年数が長くなるほど常連客も増えていきます。

オペレーションにも慣れます。

地域での認知も少しずつ高まります。

Googleの口コミも増えるでしょう。

SNSのフォロワーも増えるかもしれません。

それなのに、

売上だけは毎年170万円前後。

もしそうなら、

一度考えてみる必要があります。

この店は、本当に成長しているのか。

店が続いていることには価値があります。

しかし、

営業を続けていることと、

事業が成長していることは別です。

今回の店はまさに、

「生き残る力はある。でも、売上のステージが変わっていない店」

です。

そして、こういう店ほど問題に気づきにくい。

なぜなら毎日の営業では、それなりに忙しいからです。

では、月商170万円の店は現場でどのように見えているのか。

次章では、

「なぜ月商170万円でも、経営者は結構やれていると感じるのか」

を、22席という店の大きさから考えてみます。

第3章 なぜ月商170万円でも「結構やれている」と感じるのか

月商170万円。

数字だけを見れば、決して大きな売上ではありません。

しかし15坪・22席程度の店を毎日自分で営業していると、

「そこまで暇な店ではない」

と感じることがあります。

ここには、小さな飲食店特有の「忙しさの見え方」があります。


22席の店は、20人来れば一度ほぼ埋まる

例えばランチ。

12時を過ぎてお客様が入り始める。

2名。

3名。

4名。

さらに数組入れば、22席の店はかなり埋まります。

一時的に満席近くまでいけば、

料理を作る。

提供する。

片付ける。

会計する。

次のお客様を案内する。

オーナーは一気に忙しくなります。

スタッフをピーク時間だけ入れているのも、この時間帯を回すためです。

すると営業が終わったとき、

「今日も忙しかったな」

という感覚が残ります。

ところが、

店が忙しかったことと、その日の売上が十分だったことは同じではありません。


満席になったかではなく、その席が何回使われたか

22席の店が一度満席になった。

これは良いことです。

ただ、それだけでは売上の大きさは分かりません。

例えばランチで22人来店して、客単価1,200円なら、

売上は、

2万6,400円。

店内ではかなり忙しかったはずです。

しかし、その後14時までほとんど来店がなければ、ランチ売上はその程度で終わります。

一方、

22席が一気に満席になることはなくても、

11時台に10人。

12時台に20人。

13時台に10人。

合計40人来れば、

同じ客単価1,200円でも、

4万8,000円。

店の「満席感」だけを見ていると、この違いを見落とします。

重要なのは、

一番忙しかった瞬間ではなく、営業時間全体で何席を何回使えたか。

ということです。


オーナーが忙しい店ほど、錯覚が起きやすい

今回のモデル店舗は基本1オペです。

仕込みをする。

店を開ける。

料理を作る。

接客する。

発注する。

掃除する。

閉店作業をする。

さらに経理やSNSまで自分でやっているかもしれません。

朝から夜まで働けば、当然忙しい。

だから、

自分の忙しさ=店が売れている

という感覚になりやすい。

しかし経営数字から見ると、

オーナーが10時間働いたこと自体は売上ではありません。

重要なのは、

その10時間で店がいくらの売上を生み出したのか。

です。


「常連さんがいる」ことも安心材料になる

小さな店を長く営業していると、顔なじみのお客様も増えてきます。

「いつものお願いします」

と言ってくれるお客様がいる。

毎週来てくれる人もいる。

店主とお客様の距離も近い。

これは小型店の大きな強みです。

同時に、

「ちゃんと支持されている店だから大丈夫」

という安心感にもつながります。

もちろん常連客は大切です。

ただし経営を見るなら、

常連客がいることと、

顧客全体が増えていること

は分けて考える必要があります。

常連客に支えられながら、年間売上は毎年ほぼ同じ。

そういう店もあります。


忙しい。でも売上は170万円

ここで今回の店をもう一度見てみます。

店は22席。

ピークには席が埋まる。

常連客もいる。

オーナーは毎日忙しい。

繁忙月には200万円売れる。

この状態なら、

「この店はこれくらいが限界なんじゃないか」

と思ってしまうのも自然です。

しかし、それを判断するにはまだ早い。

見るべきなのは、

満席になった回数でも、

オーナーの労働時間でも、

常連客の顔の数でもありません。

15坪の店舗から、実際にどれだけの売上と利益を生み出せているのか。

次章では、平均月商170万円のこの店に、実際どれくらいのお金が残っているのかを数字で見ていきます。

第4章 月商170万円。この店はいくら本当に稼いでいるのか

ここまで、この店の売上を見てきました。

年間売上2,045万円。

月平均にすると約170万円。

では、この170万円から実際にどれくらいのお金が残るのでしょうか。

ここからは、この店の損益を簡単に組んでみます。

なお、税金や減価償却、借入返済などは店舗によって大きく異なるため、ここでは日常営業にかかる経費を中心に考えます。


まず原価は約59万5,000円

原価率は35%という設定です。

月商170万円なら、

170万円 × 35% = 59万5,000円。

売上から原価を引くと、

110万5,000円。

ここから店舗を運営するための経費を払っていきます。


ピーク時間だけ使う人件費は18万円

この店は基本的にオーナー1人で営業します。

ただしランチとディナーのピークだけスタッフを入れる。

1日合計6時間。

時給1,200円。

月25日営業なら、

1,200円 × 6時間 × 25日 = 18万円。

原価を引いた110万5,000円から、この18万円を引くと、

92万5,000円。


家賃は10万5,000円

15坪。

坪家賃7,000円。

したがって、

15坪 × 7,000円 = 10万5,000円。

ここまで差し引くと、

82万円。

整理すると、

項目金額
売上170万円
原価(35%)▲59.5万円
ピーク人件費▲18万円
家賃▲10.5万円
残額82万円

ここだけを見ると、

「結構残ってるやん」

と思うかもしれません。

実際、この構造だから月商150〜200万円でも店を続けやすいのです。

ただし、この82万円が利益というわけではありません。


当然、ほかにも経費はかかる

飲食店を営業していれば、原価・人件費・家賃以外にも支払いがあります。

例えば、

  • 水道光熱費
  • クレジットカードなどの決済手数料
  • POS・予約システムなどの利用料
  • 通信費
  • 消耗品
  • ゴミ処理
  • 販促費
  • 修繕費
  • 保険
  • 税理士などの費用
  • その他雑費

ここでは仮に、これらを合計して月25万円かかるとします。

すると、

82万円 − 25万円。

残りは57万円です。

もちろん実際の金額は店舗によって違います。

水道光熱費が高い業態もあります。

広告をほとんど使わない店もあります。

キャッシュレス比率によって決済手数料も変わります。

ですから57万円という数字そのものが重要なのではありません。

ここで見てほしいのは、

月商170万円でも、低家賃・少人数運営なら一定のお金が残る構造になっている

ということです。


だから、この店の経営者はそれほど困っていない

仮に毎月50万円前後が残っているように見えれば、

オーナーとしては、

「ちゃんと利益出てるやん」

と思うでしょう。

月商180万円なら、もう少し残る。

200万円売れた月なら、

「今月は結構儲かった」

と感じる。

150万円まで落ちれば少し厳しくなる。

それでも翌月170万円へ戻れば安心する。

だから、この店が長く続いていることにも説明がつきます。

家賃が安く、自分で現場に入り、人件費を抑えているからです。

ただ、ここで一つ大きな数字が抜けています。

それが、

オーナー自身の人件費です。

57万円残ったから、

57万円の利益が出た。

本当にそうでしょうか。

毎日店に立っているオーナーの仕事を、誰か別の人に任せたらどうなるでしょう。

当然、その人に給料を払わなければなりません。

つまり現在「利益」に見えている数字の中には、

経営者としての利益と、現場で働いた自分自身の給料が混ざっています。

この二つを分けて考えると、この店の見え方はもう一度変わります。

次章では、

「利益に見えているお金のうち、本当の事業利益はいくらなのか」

を考えてみます。

第5章 利益に見えている数字の中に「自分の給料」が入っている

前章では、月商170万円の店で、

原価、人件費、家賃、その他の経費を差し引くと、

仮に57万円ほど残るというモデルを作りました。

57万円残る。

これだけを見ると、

「十分やっていける」

と感じるかもしれません。

実際、オーナー本人が生活するだけなら成立する可能性はあります。

ただし、この57万円をそのまま「店の利益」と考えると、経営の実態を見誤ります。

なぜなら、

この店で一番長く働いている人の人件費が入っていないからです。


オーナーは「無料の労働力」ではない

今回の店は基本1オペです。

オーナー自身が、

仕込みをする。

営業する。

料理を作る。

接客する。

発注する。

在庫を管理する。

掃除する。

閉店作業をする。

必要であれば、SNSの更新や経理作業もする。

この仕事をオーナーがやっているため、人件費として帳簿上に出てこないだけです。

仮にオーナーが店から抜けて、

同じ仕事を誰かに任せるなら、

当然、人件費が発生します。

だから経営を見るときには、

「自分が働いている時間にもコストがある」

と考えた方が、店の本当の収益力が見えやすくなります。


仮に自分の労働を月35万円と考えてみる

今回は分かりやすく、

オーナー自身の労働対価を月35万円としてみます。

前章で残った金額は57万円。

そこから、

オーナー人件費相当35万円を差し引く。

すると、

57万円 − 35万円 = 22万円。

つまり、

月商170万円を売って、

オーナーが毎日現場に入り、

最後に事業として生み出している利益は、

月22万円程度

という見方ができます。

もちろん、これは今回設定した条件での概算です。

ただ、

「57万円儲かっている店」

と、

「オーナーの労働対価を除けば22万円残る店」

では、

経営者としての見え方はかなり変わるはずです。


22万円は決して悪い数字ではない

ここで、

「たった22万円しか利益がない」

と考える必要もありません。

年間なら、

22万円 × 12か月で、

264万円。

小さな店がオーナーの給料を生み出したうえで、年間264万円を残せるなら、商売として成立しています。

だから今回の店は、

やはり「ダメな店」ではありません。

問題は、

この利益で何ができるのか。

です。

厨房機器が壊れる。

エアコンを交換する。

冷蔵庫を買い替える。

店舗を改装する。

税金を払う。

借入を返済する。

そうした支出が発生すれば、264万円の一部は消えていきます。

毎年すべてを会社に貯められるわけではありません。


自分が休むと利益が減る構造

さらに、この店にはもう一つ特徴があります。

オーナー自身が現場の中心です。

もしオーナーが、

「週にもう1日休みたい」

と思ったらどうでしょう。

代わりに営業してくれる人が必要になります。

長期で休むなら、さらに人が必要です。

つまり、

オーナーの労働時間を減らそうとすると、新しい人件費が発生する。

現在の利益は、

オーナーが現場に入り続けることで作られている部分が大きいのです。

これは、小規模飲食店では珍しいことではありません。

そして1店舗だけを自分で営業し続けるのであれば、この形でも成立します。


「自分の仕事」と「店の利益」を分けてみる

ここで一度、整理してみます。

今回のモデルでは、

オーナー自身の労働対価を、

月35万円。

それを差し引いた事業利益を、

月22万円。

と考えました。

この二つを分けることが重要です。

オーナーが現場で働いて得ているお金と、

店舗という事業そのものが生み出しているお金。

この違いが見えると、

次に考えるべきことも変わります。

もしこの店を、

「自分が働いて生活できる1店舗」

として続けたいのであれば、この形でもいい。

しかし、

2店舗目を出したい。

となった瞬間、話は大きく変わります。

なぜなら、

1店舗目に自分の代わりとなる人を置きながら、

2店舗目を立ち上げなければならないからです。

次章では、

この店がなぜ今の売上のままでは2店舗目へ進みにくいのか。

その理由を考えてみます。

第6章 この店が2店舗目を出せない理由

ここまでの数字を見ると、この店は決して悪い店ではありません。

月平均170万円を売り、

オーナー自身の労働対価を月35万円と考えても、

事業として月22万円程度が残る。

年間なら約264万円です。

1店舗を自分で経営し、生活していく。

それが目的なら、この形でも成立します。

しかし、

「そろそろ2店舗目を出したい」

と考えた瞬間、この店が抱えている問題が見えてきます。


2店舗目には「出店資金」だけあればいいわけではない

新しい店を出すには、お金が必要です。

例えば、

  • 物件取得費
  • 保証金
  • 内装工事
  • 厨房設備
  • 家具・備品
  • 求人費
  • 開業前人件費
  • 販促費
  • 開業後の運転資金

居抜きを使うのか、どの業態を出すのかによって金額は大きく変わります。

ただ、少なくとも数十万円を貯めれば出店できる、という話ではありません。

仮に今の店から年間264万円の事業利益が生まれていたとしても、そのすべてを出店資金として貯められるわけではありません。

設備修繕もある。

税金もある。

借入返済がある店もある。

予想外の支出も発生する。

そう考えると、

2店舗目を出せるだけの資金が貯まるまでには、それなりの時間がかかります。


もっと大きな問題は「誰が1店舗目をやるのか」

ただ、私は資金以上にこちらの方が重要だと思っています。

2店舗目を出したとき、

今の店は誰が営業するのでしょうか。

現在はオーナー自身が、

仕込みをして、

料理を作って、

接客して、

発注して、

営業を回しています。

ではオーナーが2店舗目の立ち上げに行ったら、

1店舗目は誰がやるのか。

ここで初めて、

「自分の代わりになる人」

が必要になります。


月35万円で自分の代わりを置けるとも限らない

前章では、オーナー自身の労働対価を仮に月35万円と置きました。

しかし実際に人を雇えば、

給与だけを考えればいいわけではありません。

会社負担の社会保険。

交通費。

採用費。

教育コスト。

有給休暇。

場合によっては残業代。

さらに、一人ですべてを任せられなければ追加スタッフも必要になります。

つまり、

オーナーが自分で働く35万円と、他人に店を任せる35万円は同じではありません。

人を使って店舗を回す方が、実際の会社負担は大きくなります。


オーナーが抜けた瞬間、今までの利益が消える可能性がある

ここで現在の利益構造を思い出してください。

オーナー自身の労働対価を除いた事業利益は、

今回のモデルでは月22万円程度でした。

もしオーナーの代わりを置くために、それ以上の追加コストが必要になればどうなるでしょう。

現在の事業利益では吸収できません。

つまりこの店は、

オーナーが現場に立っている間は成立する。

しかし、

オーナーが抜けようとすると利益構造が崩れる可能性がある。

ここが、2店舗目へ進めない大きな理由です。


2店舗目を出すには「1店舗目から抜ける余力」が必要

多店舗展開を考えるなら、

1店舗目で見るべき数字は売上だけではありません。

重要なのは、

オーナーが抜けても利益が残るか。

です。

店長を置く。

社員を育てる。

スタッフに仕事を任せる。

オーナー自身は、

採用。

教育。

商品開発。

販促。

資金管理。

そして次の出店準備へ時間を使う。

こういう状態を作らなければ、2店舗目を出しても、

オーナーが2店舗を走り回るだけ

になってしまいます。

それでは店舗数は増えても、経営者の仕事は減りません。

むしろ負担は大きくなります。


月商170万円は「一人でやるには成立する」が「組織にするには弱い」

今回の店を一言で表すなら、ここだと思います。

月商170万円は、オーナー自身が働く店としては成立する。

しかし、

人を雇う。

任せる。

自分が抜ける。

次の店を作る。

ここまで考えると、現在の利益では余力が足りません。

だから必要なのは、

いきなり2店舗目を探すことではありません。

まず、

今ある15坪の店の収益力を上げること。

そこで次章から、

この店に一つの目標を置いてみます。

月商300万円。

現在の平均月商170万円から考えれば、約1.76倍です。

かなり大きな目標に見えます。

では、

15坪・22席・弱い立地という条件で、本当に月商300万円は現実離れした数字なのでしょうか。

次章では300万円を、

坪月商、日商、そして現在との差額

まで分解してみます。

第7章 15坪の店に月商300万円という目標を置いてみる

ここから、この店に一つの目標を置いてみます。

月商300万円。

現在の平均月商は約170万円です。

そこから130万円アップ。

率にすると約76%増です。

こう聞くと、

「いやいや、さすがに無理やろ」

と思うかもしれません。

しかも条件は変わりません。

15坪。

約22席。

立地も弱い。

移転もしない。

増床もしない。

この条件のまま300万円を目指します。

では本当に、現実離れした目標なのでしょうか。

ここからは300万円という数字を分解してみます。


15坪で300万円なら、坪月商20万円

まず店舗面積から見てみます。

月商300万円 ÷ 15坪。

坪月商20万円です。

現在は、

170万円 ÷ 15坪。

坪月商約11万3,000円。

つまり今回やろうとしていることは、

15坪の店舗から生み出す売上を、

坪約11万円から20万円へ引き上げることです。

もちろん簡単ではありません。

しかし、

「15坪しかないから300万円売れない」

という話とは少し違って見えてきます。

15坪で300万円ということは、坪月商20万円。

まず、この数字を目標として置きます。


月商300万円を日商に直す

次に、月商を1日の売上まで落とします。

営業日数は月25日。

300万円 ÷ 25日。

日商12万円。

一方、現在の平均月商170万円なら、

170万円 ÷ 25日。

日商6万8,000円。

比較すると、

現在目標
月商170万円300万円
坪月商約11.3万円20万円
日商6.8万円12万円

こうすると、300万円という数字が少し具体的になります。

この店が目指すのは、

毎日の売上を6万8,000円から12万円へ引き上げること。

その差は、

5万2,000円です。


問題は「130万円」ではなく「1日5万2,000円」

月商170万円から300万円。

差額130万円。

130万円という数字だけを見ると、かなり大きい。

しかし店舗改善を考えるとき、

「どうやって130万円増やそう」

と考えても、具体的な施策にはなかなか落ちません。

だから、

1日5万2,000円をどこで作るのか。

まで分解します。

例えば、

ランチで1万円。

ディナーで2万円。

客単価改善で1万円。

それ以外の売上で1万2,000円。

これはまだ仮の数字です。

ここで言いたいのは、

130万円を一つの巨大な売上として考える必要はない

ということです。


22席という数字も分解して考える

この店には約22席あります。

日商12万円を22席で割ると、

1席あたり、

約5,455円/日。

もちろん、一人のお客様から5,455円いただくという意味ではありません。

ランチとディナーで同じ席を複数回使えばいい。

例えば1日2回転なら44人。

平均客単価は、

12万円 ÷ 44人。

約2,727円。

1日2.5回転なら55人。

必要な平均客単価は、

約2,182円。

1日3回転なら66人。

必要な平均客単価は、

約1,818円。

こうして見ると、

月商300万円を決めているのは「22席」という数字だけではありません。

何人来てもらうのか。

何回席を使うのか。

一人いくら使ってもらうのか。

この組み合わせで売上は変わります。


ここで初めて「何を変えるか」を考えられる

現在の日商は6万8,000円。

目標は12万円。

差額5万2,000円。

ここまで分解すると、ようやく経営改善の入口に立てます。

客数を増やすのか。

客単価を上げるのか。

ランチを伸ばすのか。

ディナーを伸ばすのか。

空いている時間帯を使うのか。

再来店を増やすのか。

店外売上を作るのか。

選択肢はいくつもあります。

ただし、一つだけ避けたい考え方があります。

それが、

「5万2,000円足りないなら、その分だけお客様を増やせばいい」

という発想です。

弱い立地にある小型店で、それをやろうとすると一気に難易度が上がります。

次章では、

あと5万2,000円をすべて客数増加で作ろうとすると、何人のお客様が必要になるのか。

そこから、この店が取るべき売上改善の方向を考えてみます。

第8章 あと5万2,000円を「客数だけ」で作ろうとすると苦しくなる

前章では、月商300万円という目標を、

日商12万円

まで分解しました。

現在の日商は約6万8,000円。

つまり必要なのは、

1日あと5万2,000円。

では、この5万2,000円をすべて「お客様を増やすこと」で作ろうとすると、何人必要になるのでしょうか。


客単価1,500円なら、あと35人必要になる

例えば現在の平均客単価が1,500円だったとします。

5万2,000円 ÷ 1,500円。

必要なのは、

約35人。

現在の売上6万8,000円も同じ客単価1,500円だとすれば、

現在の客数は約45人です。

つまり、

45人 → 80人。

毎日あと35人増やさなければなりません。

月25日営業なら、

月875人の追加集客です。

弱い立地にある22席の店で、これはかなり大きな数字です。


客単価2,000円でも、あと26人

では客単価2,000円ならどうでしょう。

5万2,000円 ÷ 2,000円。

26人。

現在の日商6万8,000円なら約34人ですから、

34人 → 60人。

これでも毎日26人増やす必要があります。

月間では、

650人の追加集客。

客単価が上がれば必要客数は減ります。

それでも、

「あと26人くらい呼べばいい」

と簡単に言える数字ではありません。


弱い立地では「母数」を簡単には増やせない

ここで、今回の店の条件を思い出してください。

駅前一等地ではありません。

駅ナカでもありません。

店の前を大量の人が通るわけでもありません。

こういう店では、

店頭看板を改善する。

外観を分かりやすくする。

入店率を高める。

もちろん、こうした改善は必要です。

しかし、そもそも店の前を通る人が少なければ、

通行量そのものには限界があります。

1日1,000人が前を通る店と、

100人しか通らない店では、

同じ入店率でも来店客数はまったく違います。

だから弱い立地の店が、

好立地の店と同じように「客数と回転数だけ」で売上を伸ばそうとすると、苦しくなります。


集客だけに頼ると、販促費も膨らみやすい

では広告を出して35人増やせばいい。

SNSで集客すればいい。

Googleから呼べばいい。

そう考えることもできます。

もちろん、それらも必要です。

ただ、

毎日35人の追加客を新規集客だけで作り続ける

となれば話は変わります。

新しいお客様を呼び続けるには、広告費も販促費も必要になります。

仮に売上が増えても、そのための集客コストが大きくなれば、利益は思ったほど増えません。

今回の目的は、

月商300万円という数字を作ることだけではありません。

会社に利益を残せる店にすること。

だから、売上の増やし方そのものも考える必要があります。


5万2,000円を全部同じ方法で作る必要はない

ここで考え方を変えます。

あと5万2,000円必要だから、

5万2,000円分のお客様を新しく集める。

そう考えると難しい。

しかし売上には、いくつもの作り方があります。

例えば、

今来ているお客様の客単価が少し上がる。

ランチの弱い曜日が改善する。

ディナーの空いている時間にお客様が入る。

一度来たお客様がもう一度来る。

追加注文が増える。

今まで売れていなかった商品が売れる。

こうした改善も、すべて売上になります。

つまり、

5万2,000円を一つの方法で作る必要はありません。


「集客の問題」と決めつける前に、今の170万円を見る

ここで、すぐに施策を考えるのもまだ早い。

ランチを強化しよう。

夜を伸ばそう。

客単価を上げよう。

SNS広告を出そう。

これでは順番が逆です。

まず見るべきなのは、

現在の170万円が、どのように作られているのか。

ランチはいくら売れているのか。

夜はいくらなのか。

平日と土日ではどう違うのか。

客単価はいくらなのか。

何人来ているのか。

新規客とリピーターはどうなっているのか。

どの商品が売れているのか。

どの時間帯が空いているのか。

同じ月商170万円でも、中身によって打つべき施策はまったく変わります。

次章では、

月商170万円という一つの数字をさらに分解して、この店の「伸ばせる場所」をどう探すのか。

そこを考えていきます。

第9章 まず現在の170万円を分解する

月商170万円。

この数字だけを見ていても、改善策は出てきません。

なぜなら、同じ170万円でも、

売上の中身によって店の問題はまったく違うからです。

例えば、

ランチは毎日満席なのに夜がほとんど入っていない店。

昼も夜も客数はあるけれど客単価が低い店。

土日は売れているのに平日が弱い店。

新規客は来ているのに再来店につながっていない店。

全部、月商170万円だったとしても、改善方法は違います。

だから最初にやることは、

170万円という一つの数字をバラバラにすることです。


まず「ランチ」と「ディナー」に分ける

例えば月商170万円の内訳が、

ランチ110万円。

ディナー60万円。

だったとします。

これだけでも、一つ見えてきます。

この店は、

ランチ中心で売上を作っている店

です。

ここで「もっとランチ客を増やそう」と考える前に、さらに中身を見ます。

ランチがすでにピーク時には満席になっているなら、22席という物理的な制約があります。

一方で夜は席が空いている。

それなら、同じ1万円を伸ばすとしても、

ランチよりディナーの方が伸ばしやすい可能性があります。

逆に夜は十分売れていて、ランチが弱い店なら話は反対です。

まず、

どの営業時間に売上を作る余地が残っているのか。

ここを確認します。


次に「客数」と「客単価」に分ける

売上の基本は、

客数 × 客単価

です。

例えばランチ110万円でも、

客数が多くて客単価が低いのか。

客数は少ないけれど客単価が高いのか。

これによって対策は変わります。

客数が十分あるなら、

セット商品や追加注文、上位商品の設計によって客単価を改善できるかもしれません。

客単価は十分なのに客数が少ないなら、

商品ではなく認知や来店動機に問題がある可能性があります。

「ランチ売上が弱い」だけでは、まだ分析として粗いのです。


「平日」と「土日」でも分ける

次に曜日です。

例えば土日は22席がしっかり動いている。

でも月曜日から木曜日はガラガラ。

この店に、

「もっと集客しましょう」

と言っても意味がありません。

土日にさらに広告を出しても、席数には限界があります。

必要なのは、

平日に来店する理由を作ること

かもしれません。

反対に平日は近隣の会社員で安定しているのに、土日が弱いなら、

ファミリーや目的来店客に選ばれる商品・見せ方を考える必要があります。

月商だけでは見えない問題が、曜日まで分けると見えてきます。


「新規客」と「リピーター」も分ける

毎月たくさん新規客が来ている。

でも翌月にはほとんど戻ってこない。

この場合、新規集客をさらに増やしても効率が悪い。

一方、

常連客はしっかり来ている。

でも新しいお客様がほとんど入っていない。

この場合は、新規客を増やさなければ顧客基盤が広がりません。

つまり、

新規集客の問題なのか、再来店の問題なのか。

ここも分ける必要があります。

同じ170万円でも、

新規客中心の170万円と、

既存客中心の170万円では、

次に打つ施策が違います。


商品別に見ると、客単価を上げる場所が見える

さらに商品別売上も見ます。

何が一番売れているのか。

何が利益を作っているのか。

注文率の高い商品は何か。

ほとんど注文されていない商品は何か。

例えば主力商品の注文は多いのに、

ドリンク注文率が低い。

追加料理がほとんど出ていない。

上位商品が選ばれていない。

こういう店なら、

新規客を増やさなくても、商品構成を変えることで売上を伸ばせる可能性があります。

反対に客単価は十分高いのに来店数が少ないなら、商品の追加より集客を優先した方がいいでしょう。


時間帯別売上を見ると「使われていない店」が見える

営業時間が11時から22時だったとします。

しかし実際に売上が集中しているのは、

12時から13時。

18時30分から20時。

それ以外の時間はほとんど売れていない。

この場合、

店は11時間営業していても、

売上を作っている時間は数時間しかない

ことになります。

ここにも伸びしろがあります。

早い時間の需要を作る。

遅い時間の商品を変える。

アイドルタイムの使い方を考える。

あるいは、売上が作れない時間なら営業時間そのものを見直す。

時間帯別に見ることで、

売上を増やす場所だけではなく、無駄なコストを減らす場所

も見えてきます。


「170万円しか売れていない」では何も分からない

ここまで分解すると、

月商170万円という数字の見え方が変わります。

例えば、

  • ランチは強い
  • ディナーが弱い
  • 土日は売れている
  • 平日夜が弱い
  • 新規客は来ている
  • 再来店が少ない
  • 客数はある
  • 追加注文が少ない
  • 19時台は入る
  • 21時以降はほとんど売れない

ここまで分かれば、

ようやく経営改善ができます。

逆に、

「売上170万円だから、あと130万円増やそう」

だけでは何も決まりません。

売上改善とは、

足りない130万円を眺めることではなく、

現在の170万円の中から、伸ばせる場所を見つけることです。

そして伸ばせる場所が一つだけとは限りません。

むしろ今回のように130万円という大きな差を埋めるなら、一つの施策に頼らない方が現実的です。

次章では、

月商170万円から300万円までの130万円を、複数の改善に分解して設計する方法

を考えてみます。

第10章 130万円を一つの施策で作ろうとしない

現在の平均月商は170万円。

目標は300万円。

差額は、

130万円です。

ここまで数字を見てくると、

「結局、130万円も増やさないといけないのか」

と感じるかもしれません。

確かに130万円は小さな数字ではありません。

だからこそ、

一つの施策で130万円を作ろうとしないことです。


「夜を強化して130万円」は現実的ではない

例えば、

「夜が弱いからディナーを強化しよう」

と考えたとします。

現在60万円のディナー売上を、

一気に190万円まで持っていく。

数字上はこれで月商300万円です。

しかし、これは改善というより、

ほぼ別の店を作るような変化

になります。

SNS広告だけで130万円増やす。

新メニューだけで130万円増やす。

値上げだけで130万円増やす。

新規客だけで130万円増やす。

どれも、一つの施策にかかる負担が大きすぎます。


130万円を小さな売上に分ける

そこで、130万円を複数の改善に分けます。

例えば一つの仮説として、

改善項目月間売上増
ランチ改善+20万円
ディナー改善+35万円
客単価改善+20万円
新規集客+20万円
再来店改善+20万円
店外売上+15万円
合計+130万円

もちろん、この配分がすべての店に当てはまるわけではありません。

前章で現在の170万円を分析した結果、

ランチに伸びしろがなければ、ランチ+20万円は外します。

デリバリーに向かない業態なら、店外売上を別の施策に置き換えます。

重要なのは金額そのものではありません。

「130万円」という一つの問題を、複数の小さな問題に変えること。

です。


+20万円なら、見える景色が変わる

例えばランチで月20万円増やしたい。

25日営業なら、

1日8,000円です。

客単価1,500円なら、

1日約5〜6人。

「ランチ売上を20万円増やす」と聞くと大きく感じますが、

「1日5人増やす」と考えれば、検討できる施策が見えてきます。

一方、すでにランチが満席なら、

5人増やす方法ではなく、

現在来ているお客様の客単価を上げる方が合理的かもしれません。

ここでも、

数字を小さくしてから施策を決める

ことが重要です。


ディナー+35万円も1日なら1万4,000円

ディナー売上を月35万円増やす。

これも大きく感じます。

しかし25日営業なら、

1日1万4,000円。

夜の客単価が3,500円なら、

1日4人。

2人組なら2組です。

「ディナーを35万円伸ばす」

では漠然としています。

でも、

「夜にあと2組来てもらう」

まで落とすと、考える内容が変わります。

何時の2組なのか。

誰に来てもらうのか。

何を目的に来てもらうのか。

予約なのか。

当日客なのか。

ここまで具体化できます。


客単価+20万円は、新規客ゼロでも作れる

例えば月間1,000人のお客様が来ている店なら、

平均客単価を200円上げれば、

+20万円。

新しいお客様を一人も増やさなくても作れます。

もちろん、単純に全商品を200円値上げするという話ではありません。

追加注文。

セット。

ドリンク。

小鉢。

上位商品。

トッピング。

注文の組み合わせによって、平均客単価を変えることもできます。

つまり、

売上を増やす方法は、客数を増やすことだけではありません。


新規客と再来店も別々に考える

新規客を増やすことと、

一度来たお客様にもう一度来てもらうことも、別の施策です。

新規客には、

Google。

SNS。

口コミ。

看板商品。

広告。

店頭。

こうした入口があります。

一方、再来店には、

料理。

接客。

価格に対する満足。

次回来店の理由。

顧客との接点。

こうした別の要素があります。

だから、

「集客」という一言でまとめない。

新規客を増やす施策と、

再来店を増やす施策を分けて設計します。


全部が予定通り伸びる必要もない

実際の経営では、

ランチ+20万円を狙ったけれど+10万円だった。

その代わり、

ディナーが+45万円伸びた。

客単価は+15万円だった。

再来店が予想以上に伸びた。

こういうことは普通にあります。

最初に作った数字は、

未来を正確に当てるためのものではありません。

どこを改善すれば300万円へ近づくのかを考えるための設計図です。

実績を見ながら、毎月修正していけばいい。


月商300万円が「施策の集合体」に変わる

ここまで来ると、

月商300万円という数字の見え方が変わります。

170万円から、いきなり300万円へジャンプするわけではありません。

ランチで少し増える。

夜で少し増える。

客単価が上がる。

新規客が増える。

再来店が増える。

別の売上も加わる。

それらが積み上がった結果、

300万円になる。

これが売上改善の基本的な考え方です。

ただし今回の店には、もう一つ大きな制約があります。

立地が弱い。

店の前を通る人そのものを、経営努力で大きく増やすことはできません。

では、弱い立地にある店が客数を増やすにはどうするのか。

次章では、

「通りすがりの客を待つ店」から「わざわざ来てもらう店」へ変える方法

を考えていきます。

第11章 弱い立地なら「客数を増やす方法」そのものを変える

今回のモデル店舗には、変えにくい条件があります。

立地です。

駅前一等地ではない。

大きな商業施設の中でもない。

店の前を大量の人が歩いているわけでもない。

だから月商300万円を目指すとしても、

「もっと店頭から入ってもらおう」

だけでは限界があります。

必要なのは、

店の前を通っていない人にも、来店候補になってもらうことです。


好立地店と弱立地店では、集客の出発点が違う

例えば駅ナカの店なら、

毎日大量の人が店の前を通ります。

その中から、

店を見る。

メニューを見る。

価格を見る。

そして一部の人が入店する。

この場合、通行量そのものが大きな集客資産です。

だから、

看板を変える。

メニューを見やすくする。

入口を入りやすくする。

入店率を少し改善するだけでも、大きな客数増加につながる可能性があります。

一方、今回の店は違います。

そもそも通行量が少ない。

店頭での入店率を改善することは必要ですが、

少ない母数だけを相手にしていては、客数を大きく伸ばしにくい。

ここに弱立地店の難しさがあります。


商圏を「店の前」だけで考えない

例えば店から車で10分の場所に住んでいる人。

この人は毎日店の前を通るわけではありません。

だから従来の店頭集客だけなら、店の存在すら知らないかもしれない。

しかし、

Googleマップで、

「近くのハンバーグ」

「○○市 居酒屋」

「○○ ランチ」

と検索して店を見つける可能性はあります。

Instagramで料理の写真を見るかもしれません。

知人から、

「あの店よかったで」

と聞くかもしれません。

こうなれば、

店の前を通ったことがない人でも来店候補になります。

つまり、

立地は変えられなくても、店を知ってもらえる範囲は広げられる。

ここを使います。


必要なのは「わざわざ行く理由」

ただし、店を知ってもらうだけでは足りません。

弱い立地の店には、

駅前の店より一つ高いハードルがあります。

そこまで行く理由が必要です。

「普通に美味しい」

「メニューがいろいろある」

「価格も普通」

これだけなら、お客様はもっと近い店を選べます。

だから、

「あれを食べたい」

「あの店に行ってみたい」

「家族を連れて行きたい」

「友達に教えたい」

と思える理由を作る。

それが看板商品かもしれません。

圧倒的なボリュームかもしれません。

珍しい料理かもしれません。

価格以上の体験かもしれません。

接客かもしれません。

店の世界観かもしれません。

弱い立地では、

商品や体験そのものが集客装置になる必要があります。


Google・SNS・口コミは役割が違う

目的来店を作るとき、

GoogleもSNSも口コミも使います。

ただし、全部を同じ「宣伝」と考えない方がいい。

Googleは、

すでに店を探している人

との接点になりやすい。

SNSは、

まだ店を探していなかった人に、

「こんな店があるんや」

と知ってもらうきっかけを作れます。

口コミは、

「本当に行って大丈夫なのか」

という来店前の不安を減らします。

それぞれ役割が違います。

だから、

SNSだけ頑張る。

Googleだけ頑張る。

というより、

認知→興味→比較→来店

までの導線として考えます。


一度来てもらったお客様は、もう「立地だけ」の客ではない

そして弱立地店にとって非常に重要なのが、

再来店です。

最初の来店では、

場所を調べてもらう。

車を走らせてもらう。

駐車場を探してもらう。

駅から歩いてもらう。

お客様に少し手間をかけてもらうかもしれません。

しかし一度来店すれば、

店の場所を知っています。

料理も知っています。

価格も知っています。

店内の雰囲気も知っています。

その人が、

「また来たい」

と思ってくれれば、2回目の来店ハードルは下がります。

だから弱い立地ほど、

新規集客と再来店をセットで考えることが重要です。

毎月すべてのお客様を新しく集め続ける必要はありません。

新しいお客様を増やしながら、

利用してくれる顧客の総数を積み上げていく。

その結果、立地への依存度を少しずつ下げていきます。


弱い立地を変えるのではなく、立地への依存度を下げる

今回の店を駅前に移転すれば、条件は変わります。

でも家賃も変わります。

初期投資も必要です。

今の店を捨てることにもなります。

それを考える前に、

現在の15坪・家賃10万5,000円という低固定費を活かしながら、

立地への依存度を下げられないか。

を考える。

店頭だけに依存しない。

検索から来てもらう。

SNSから知ってもらう。

口コミで選んでもらう。

商品を目当てに来てもらう。

そして再来店してもらう。

ここまでできれば、

弱い立地でも客数を増やせる可能性は広がります。

ただし、22席しかない店では、

客数を増やすだけでは、いずれ席数の上限にぶつかります。

そこで次に重要になるのが、

一人のお客様から生まれる売上です。

次章では、小型店にとって重要な、

客単価の設計

を考えていきます。

第12章 22席の小さな店ほど、客単価を設計する

前章では、弱い立地でも目的来店を増やすことで、店頭の通行量への依存度を下げられると書きました。

ただ、今回の店にはもう一つ変えにくい条件があります。

22席しかないことです。

お客様を呼べるようになっても、座れる席には限界があります。

だから小型店では、

客数と同時に、1人のお客様からいくら売上を作れるか

を考える必要があります。


客単価が500円違えば、必要客数は大きく変わる

目標の日商は12万円でした。

では、客単価によって必要客数がどう変わるか見てみましょう。

平均客単価日商12万円に必要な客数22席での回転数
1,500円80人約3.6回転
2,000円60人約2.7回転
2,500円48人約2.2回転
3,000円40人約1.8回転

同じ日商12万円でも、

客単価1,500円なら80人。

3,000円なら40人。

必要客数は半分です。

弱い立地で毎日80人を集めるのと、40人で売上を作るのでは、集客の難易度がまったく違います。

小さな店ほど、客単価が経営に与える影響は大きくなります。


ただ値段を上げればいいわけではない

ここで、

「じゃあ客単価3,000円に値上げすればいい」

と考えると危険です。

今まで1,500円で提供していたものを、内容を変えずに3,000円にしても、お客様が納得してくれるとは限りません。

価格には、

その金額を払う理由

が必要です。

だから客単価を上げるときに考えたいのは、

値札だけではありません。

お客様が選べる商品と価値を増やすことです。


1,500円の商品だけを売る店から変える

例えば現在、

メイン商品1,500円。

ほとんどのお客様がそれだけを注文して帰る。

この店なら、客単価もほぼ1,500円です。

そこで、

メイン商品を食べた人が、

「これも欲しい」

と思える商品を作る。

例えば、

小鉢300円。

ドリンク400円。

デザート500円。

少し豪華な上位セット2,200円。

アルコールを楽しめる商品。

複数人で追加できる一品料理。

選択肢があれば、

1,500円で帰るお客様もいれば、

1,800円使うお客様もいる。

2,200円使う人もいる。

3,000円以上使う人も出てくる。

その結果として、

平均客単価が上がっていく。

これが商品構成による客単価設計です。


全員の客単価を上げる必要はない

ここも大切です。

例えば月間1,000人来店している店で、

客単価を200円上げたい。

だからといって、

1,000人全員から200円ずつ多くいただく必要はありません。

300人が500円の商品を追加すれば、

15万円。

100人が500円高い上位商品を選べば、

5万円。

合わせて、

20万円の売上アップです。

平均すれば、

1人あたり200円。

客単価という数字は平均です。

だから、

すべてのお客様の使う金額を同じように上げる必要はありません。

ここを理解すると、客単価改善の選択肢はかなり広がります。


昼と夜で同じ客単価を目指す必要もない

今回の店が日商12万円を目指すとしても、

ランチとディナーで同じ売り方をする必要はありません。

例えばランチは、

短時間で食事をしたい。

仕事の途中で利用したい。

家族で昼食を取りたい。

こうした需要があります。

一方、ディナーなら、

お酒を飲む。

複数の商品を注文する。

友人や家族とゆっくり過ごす。

コースを利用する。

ランチとは利用目的が変わります。

だから、

ランチ客単価1,500円。

ディナー客単価3,000円。

こういう設計でもいい。

重要なのは、

一日平均の客単価だけを無理に上げるのではなく、それぞれの利用動機に合った商品を用意することです。


22席なら「安くたくさん売る」以外の選択肢を持つ

席数が多く、通行量も多い店なら、

低価格の商品を大量に売るモデルも成立します。

しかし今回の店は、

22席。

弱い立地。

この条件で大量集客だけに頼ると、難易度が上がります。

だから、

客数を増やす。

再来店を増やす。

そして客単価も改善する。

複数の方法を組み合わせる。

22席という限られた席を、どれだけ売上を生み出せる席にできるか。

ここが小型店の経営では重要になります。

そして客単価を上げることには、もう一つ大きな意味があります。

同じ家賃10万5,000円の店舗でも、

月商170万円の店と、

月商300万円の店では、

固定費の重さがまったく変わるからです。

次章では、

月商170万円から300万円になったとき、この店の利益構造がどう変わるのか。

実際に数字を並べて比較してみます。

第13章 月商300万円になったとき、この店の利益構造はどう変わるのか

ここまで、

客数。

客単価。

目的来店。

再来店。

商品構成。

さまざまな方向から、月商300万円へ近づく方法を考えてきました。

では、本当に300万円まで売れたら、この店の経営はどう変わるのでしょうか。

ここで一度、

月商170万円の現在と、月商300万円になった場合

を比較してみます。


売上が増えても、すべてが利益になるわけではない

最初に確認しておきたいのは、

170万円から300万円になったからといって、

増えた130万円がそのまま利益になるわけではないということです。

売上が増えれば、

原材料も必要です。

忙しくなれば、人員も増やす必要があります。

キャッシュレス決済が増えれば、決済手数料も増えます。

消耗品など、売上に連動して増える経費もあります。

だから見るべきなのは、

売上が130万円増えた結果、利益がいくら増えるのか。

です。


まず原価35%で比較する

現在の月商170万円。

原価率35%なら、

原価は59万5,000円。

月商300万円なら、

105万円。

当然、45万5,000円増えます。

しかし売上は130万円増えています。

原価を差し引いた粗利益で見ると、

170万円のときは、

110万5,000円。

300万円なら、

195万円。

粗利益は、

84万5,000円増えます。

ここから、その他の経費がどれだけ増えるかを考えます。


家賃10万5,000円は変わらない

今回のモデル店舗で大きいのがここです。

月商170万円でも、

家賃は10万5,000円。

300万円になっても、

家賃は10万5,000円です。

売上170万円のとき、

家賃比率は約6.2%。

300万円なら、

3.5%。

同じ物件なのに、売上が増えることで家賃の負担感は大きく下がります。

これが、

今ある店の売上を伸ばす強さ

です。

新しい物件を借りる必要もない。

新たな保証金もいらない。

新しい厨房を一式そろえる必要もない。

今持っている15坪を、もっと働かせることができます。


ただし人件費18万円のままでは考えない

一方、人件費は同じとは考えない方がいいでしょう。

月商170万円の店と300万円の店では、仕事量が違います。

客数が増える。

注文数が増える。

仕込みが増える。

洗い物も増える。

だから、

月商300万円になっても1オペ中心で無理やり回す

という設計にはしません。

それでは売上が増えても、オーナーがさらに疲弊するだけです。

例えば今回は、

ピークスタッフの18万円に加えて、

月15万円分の追加人件費

を使うと仮定してみます。

人件費は合計33万円。

この15万円は単なるコスト増ではありません。

オーナーの負担を減らす。

サービスを安定させる。

人を育てる。

そして将来的に店を任せられる体制を作る。

そのための人件費です。


その他経費も増える前提で考える

170万円のモデルでは、

水道光熱費、決済手数料、通信費、消耗品、販促費などをまとめて月25万円と仮定しました。

300万円になれば、これも多少増えるでしょう。

そこで仮に、

月35万円

としてみます。

すると300万円モデルは、

項目月商300万円
売上300万円
原価35%▲105万円
人件費▲33万円
家賃▲10.5万円
その他経費▲35万円
残額116.5万円

ここでもまだ、

オーナー自身の労働対価は入れていません。


オーナー人件費相当35万円を引いてみる

前章までと同じように、

オーナー自身の労働対価を月35万円と考えます。

116万5,000円 − 35万円。

すると、

81万5,000円。

今回の仮定では、

月商170万円のときの事業利益は約22万円でした。

300万円なら、

約81万5,000円。

比較すると、

月商170万円月商300万円
売上170万円300万円
原価59.5万円105万円
人件費18万円33万円
家賃10.5万円10.5万円
その他経費25万円35万円
オーナー労働対価35万円35万円
事業利益22万円81.5万円

もちろん、これは実在する店の損益計算ではありません。

300万円になれば実際には社員を入れるかもしれない。

販促費がもっと必要かもしれない。

原価率も変わるかもしれない。

税金、借入返済、減価償却なども店舗によって違います。

だから、

81万5,000円という数字そのものを目標にする話ではありません。

重要なのは構造です。


売上は約1.76倍でも、利益は同じ比率では増えない

170万円から300万円。

売上は約1.76倍です。

しかし家賃は変わらない。

通信費など、売上と同じ割合では増えない経費もあります。

だから、

既存店舗の売上を伸ばすと、増えた粗利益の一部が利益として残りやすくなる。

ここに、15坪の店を170万円で止めず、300万円まで伸ばす意味があります。

しかも今回のモデルでは、

人件費を15万円増やしています。

つまり、

売上を伸ばしながら、

人にもお金を使える余力を作る

という設計です。


年間で見ると差はさらに大きくなる

月22万円の事業利益なら、

年間264万円。

月81万5,000円なら、

単純計算で年間978万円。

差は、

年間714万円。

もちろん実際には税金や設備投資、賞与、修繕などがあります。

それでも、

年間200万円台の利益を生む店と、

それ以上の利益を狙える店では、

会社が取れる選択肢が大きく変わります。

ここでようやく、

月商300万円を目指す本当の意味が見えてきます。

300万円という売上を達成して、

「繁盛店になった」

と喜ぶためではありません。

会社にお金を残し、人に投資し、次の一手を打てる状態を作るためです。

次章では、

この利益を何に使うのか。

そして、

月商300万円の先に何を作るのか。

今回の記事で最も重要なところを考えていきます。

第14章 月商300万円の本当の目的は「次へ進める店」にすること

前章では、月商170万円と300万円の利益構造を比較しました。

今回の仮定では、

月商170万円の事業利益は約22万円。

月商300万円なら約81万5,000円。

もちろん実際の利益は店によって変わります。

それでも一つ言えるのは、

売上が増えることで、経営者が使える選択肢も増える

ということです。

今回、月商300万円を目標にした理由はここにあります。


利益が増えると「守るためのお金」を持てる

飲食店を続けていると、必ず予定外の支出が発生します。

冷蔵庫が壊れる。

製氷機が止まる。

エアコンを交換する。

厨房機器を修理する。

店舗設備が古くなる。

売上の弱い月もあります。

こうしたとき、会社にお金がなければ、そのたびに資金繰りに追われます。

利益を残せるようになると、

何かあったときに店を守るためのお金

を持てるようになります。

まず、これが一つ目の変化です。


次に「人」にお金を使えるようになる

小型店が次のステージへ進むとき、避けて通れないのが人です。

現在の店は、

オーナー自身が現場に立つことで成立しています。

しかし、それではオーナーの時間には限界があります。

だから、

スタッフを増やす。

任せる仕事を増やす。

社員を採用する。

店長候補を育てる。

教育に時間を使う。

こうしたことが必要になります。

ただ、人を育てるにはお金がかかります。

売上が低い状態で人件費だけを増やせば、利益はなくなります。

だから先に、

人を使えるだけの店舗収益力を作る。

月商300万円を目指す理由の一つは、その余力を作るためです。


オーナーが現場から抜ける時間を買う

人に投資することで、もう一つ大きなものを手に入れられます。

オーナーの時間です。

例えば今まで、

毎日10時間、11時間と現場に入っていた。

そこから、

週に半日。

1日。

2日。

少しずつ現場から離れる時間を作る。

その時間を何に使うのか。

新商品の開発。

数字の分析。

販促。

採用。

教育。

取引先との交渉。

次の物件探し。

資金調達。

こうした、

経営者にしかできない仕事

へ時間を使えるようになります。

1店舗目の営業だけで一週間が終わっている状態では、2店舗目の準備はなかなか進みません。


出店資金も貯められるようになる

当然、利益が増えれば資金も蓄積できます。

2店舗目を出すには、

物件取得。

内装。

厨房。

備品。

採用。

販促。

運転資金。

さまざまなお金が必要です。

融資を利用するとしても、すべてを借入だけで賄うとは限りません。

自己資金も必要になります。

そして何より、

1店舗目が安定して利益を生んでいる

という事実そのものが、次の出店を考えるうえで重要です。

1店舗目の資金繰りに追われながら2店舗目を出すのと、

1店舗目が利益を生みながら2店舗目へ投資するのでは、経営の安定性がまったく違います。


300万円はゴールではなく「余力を作る数字」

だから私は、

月商300万円そのものに大きな意味があるとは考えていません。

店によっては250万円で十分かもしれません。

家賃や人件費が高ければ、350万円、400万円必要な店もあるでしょう。

重要なのは、

その店が次の行動を取れるだけの利益を生み出しているか。

今回のモデルでは、

15坪。

家賃10万5,000円。

22席。

低い固定費を持っています。

この条件を活かしながら売上を伸ばせれば、

会社に利益を残せる可能性は大きくなります。

だから今回、300万円という目標を置きました。


1店舗目を「完成」させてから次へ進む

2店舗目を出したい。

そう思ったとき、

物件情報を見る。

不動産会社へ行く。

新しい業態を考える。

その前に、一度確認してほしいことがあります。

今の店は、自分が抜けても成立する状態になっているか。

利益がある。

人がいる。

任せられる。

資金がある。

そしてオーナーが次の仕事に使える時間がある。

ここまで作れていれば、

1店舗目は単なる「自分の仕事場」ではなく、

次の事業を生み出す土台

になります。

月商300万円を目指す本当の目的は、

売上表に大きな数字を書くことではありません。

今の店から、次の選択肢を作ることです。

では最後に、

今回の15坪・22席・弱立地という店をもう一度最初から振り返りながら、

「潰れない店」と「次へ進める店」の違い

をまとめます。

最終章 「潰れない店」で満足するのか、「次へ進める店」を作るのか

今回モデルにしたのは、

15坪。

約22席。

坪家賃7,000円。

家賃10万5,000円。

立地にもそれほど恵まれていない、小さな飲食店でした。

年間売上は2,045万円。

平均月商は約170万円。

悪い月でも150万円。

良い月なら180万円。

繁忙月には200万円まで売れる。

そして低家賃で、基本的にはオーナー1人で営業する。

この条件なら、

店は十分に生き残ることができます。

だからこそ、この店の問題は見えにくいのです。


150万円になれば少し焦る。180万円に戻れば安心する

この店の一年をもう一度見てみます。

150万円の月には、

「今月ちょっと悪かったな」

と思う。

翌月170万円に戻れば、

「まあ大丈夫か」

となる。

180万円売れれば、

「今月は良かった」

と思う。

12月に200万円売れれば、

「うちもちゃんと売れている」

と感じる。

そして翌年もまた、

150万円。

170万円。

180万円。

200万円。

この範囲を行ったり来たりする。

店は潰れません。

オーナーの生活もできます。

だから、この状態を何年も続けることができてしまいます。


ここで一度だけ考えてほしい

もし、

1店舗を自分で営業して、

自分と家族が生活できればいい。

それが自分のやりたい飲食店経営だ。

そう考えているのであれば、

私は無理に月商300万円を目指す必要はないと思います。

経営の目的は人によって違います。

小さな店を自分で切り盛りしながら、お客様と付き合っていく。

それも立派な飲食店経営です。

ただ、

2店舗目を出したい。

会社を大きくしたい。

人を雇いたい。

自分が現場にいなくても営業できる店を作りたい。

そう考えているのであれば、

「生活できているから大丈夫」という基準だけでは足りません。


15坪だから300万円は無理なのか

今回の記事で一番考えてほしかったのは、ここです。

15坪しかない。

22席しかない。

立地も弱い。

だから300万円は無理。

本当にそうでしょうか。

15坪で月商300万円なら、

坪月商20万円。

月25日営業なら、

日商12万円。

現在の平均日商は、

約6万8,000円。

差額は、

1日5万2,000円です。

もちろん、簡単ではありません。

しかし、この5万2,000円を、

すべて新規客だけで作る必要もありません。

ランチ。

ディナー。

客数。

客単価。

新規客。

再来店。

商品構成。

目的来店。

それぞれを改善して積み上げる。

そう考えれば、

「300万円」という一つの巨大な数字とは、見え方が変わってきます。


変えられない条件と、変えられる数字を分ける

立地は簡単には変えられません。

店舗面積も変えられません。

22席を突然50席にすることもできません。

でも、

商品は変えられる。

価格は見直せる。

客単価は設計できる。

新規客への入口は増やせる。

再来店の仕組みは改善できる。

ランチとディナーの売上構成も変えられる。

GoogleやSNSを使って、店の前を通らない人にも知ってもらうことができる。

つまり、

変えられない条件の中にも、経営者が動かせる数字はたくさんあります。


月商300万円の先にあるもの

そして今回、300万円を目標にした理由は、

「繁盛店に見えるから」ではありません。

売上が増え、

利益が増える。

会社にお金が残る。

設備投資ができる。

人を雇える。

人を育てられる。

オーナーが現場から抜ける時間を作れる。

そして、

次の店を考えられる。

つまり月商300万円は、

次の選択肢を持つための数字です。


今の売上は、本当にこの店の限界なのか

月商170万円で何年も営業していると、

いつの間にか、

「うちの店はこれくらい」

という感覚ができてきます。

でも、その170万円は、

本当に15坪という大きさの限界でしょうか。

本当に22席という席数の限界でしょうか。

本当に立地の限界でしょうか。

それとも、

今まで作ってきた商品、価格、集客、再来店、営業時間の組み合わせによって生まれている170万円

なのでしょうか。

ここは一度、数字で確認してみる価値があります。

月商300万円を目指す必要がある店もあれば、ない店もあります。

大切なのは、

自分がどんな店を作りたいのか。

そして、

その未来に必要な売上と利益はいくらなのか。

そこから逆算することです。

今の店で生活できている。

その先へ進みたいのであれば、

次に考える数字があります。

今ある15坪から、あといくらの価値を生み出せるのか。

小さな飲食店が次のステージへ進む経営は、そこから始まります。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。