なぜ、すかいらーくは資さんうどんを買収したのか。

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

なぜ、すかいらーくは資さんうどんを買収したのか。
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目次 Outline

大手外食企業の戦略から、中小飲食店の未来を考える。

1.ニュースをニュースで終わらせてはいけない

「すかいらーくが資さんうどんを買収。」

このニュースを見て、

「へぇ、そうなんだ。」

で終わる人は多いでしょう。

しかし私は、

そこでは終わりません。

企業は数百億円というお金を、

感覚では使いません。

まして、すかいらーくのような上場企業が240億円規模の投資をする時は、必ずその先の10年、20年を見ています。

つまり、

ニュースの本質は、

「資さんうどんを買った。」

ではありません。

本当に見るべきなのは、

「なぜ今、このブランドだったのか。」

です。


飲食店経営では、

表面だけを見る癖が付くと危険です。

「あの店は立地がいい。」

「あの店は広告費が多い。」

「あの店は資本がある。」

そうやって結果だけを見る人は多い。

しかし、

経営は結果を見るものではありません。

意思決定を見るものです。

なぜその店はその価格なのか。

なぜその営業時間なのか。

なぜその立地なのか。

なぜその商品なのか。

そこまで考えて初めて、

経営が見えてきます。


私は普段から、

繁盛店へ行っても料理だけは見ません。

席の配置。

家族連れの導線。

子ども向けサービス。

駐車場。

メニュー構成。

スタッフ配置。

客層。

滞在時間。

すべてに

「なぜこうしたのか」

という理由を探します。

企業も同じです。

M&Aも同じです。

240億円というお金の裏には、

経営者が見ている未来があります。


だから私は、

ニュースを読む時も、

事実だけでは終わりません。

「何を買ったのか」

ではなく、

「なぜ今、それを買ったのか。」

ここにこそ、

飲食店経営者が学ぶべきヒントがあります。

そして今回の資さんうどんの買収には、

これからの外食産業が向かう方向を示す、

非常に重要なメッセージが隠されていると私は考えています。すかいらーく自身も、M&Aを成長戦略の柱と位置づけるだけでなく、地方ロードサイドの再構築や業態転換、セントラルキッチン・物流網との相乗効果まで見据えていることを公表しています。

2.昔、大手外食が狙っていたのは子どもだった

大手外食企業の戦略を見ていると、

ある共通点に気付きます。

それは、

子どもを徹底的に喜ばせていたことです。


例えば、マクドナルド。

ハッピーセット。

プレイランド。

人気キャラクターとのコラボ。

子どもが「また行きたい」と思う仕掛けを何十年も積み重ねてきました。

ガストも同じです。

キッズメニュー。

ドリンクバー。

ガチャガチャ。

子ども向けクーポン。

家族で長く過ごせる店づくりを続けてきました。

くら寿司もそうです。

ビッくらポン。

新幹線レーン。

人気アニメとのコラボ。

子どもは食事を楽しむだけでなく、

「遊びに行く場所」として記憶します。


一見すると、

どれも子ども向けサービスです。

しかし、

経営の視点で見ると、

本当の目的は違います。

子どもには、

お金を払う力はありません。

店を決める権限もありません。

それでも、

企業は何十年も子どもへ投資を続けてきました。

なぜでしょうか。

答えはシンプルです。

子どもが親を動かすからです。


「今日マックがいい。」

「くら寿司行きたい。」

「ガスト行こう。」

こう言われた経験がある親は多いでしょう。

最終的に財布を開くのは親です。

しかし、

店を選ばせているのは子どもです。

つまり、

大手外食企業は、

親へ直接営業していたのではありません。

子どもを営業マンに育てていたのです。


これは偶然ではありません。

子どもが楽しめば、

家族全員が来店します。

家族で来店すれば、

客単価は上がります。

そして、

子どもは成長しても、

「あの店は楽しかった」

という記憶を持ち続けます。

幼い頃の体験は、

大人になってからも店選びに影響を与えます。

つまり、

大手外食企業は、

今日の売上だけではなく、10年後、20年後の顧客まで育てていたのです。


だから私は、

これらのサービスを見て、

「子ども向け施策だ」とは考えません。

家族という市場を支配するための戦略だった。

そう考えています。

そして、この「子どもを起点に家族全体を取り込む戦略」は長年にわたって大手外食企業の成長を支えてきました。

しかし今、その前提が少しずつ変わり始めています。

少子化が進み、家族の形も変化する中で、大手外食企業は次の成長エンジンを探し始めています。

だからこそ、私は「すかいらーくが、なぜ今、資さんうどんを買収したのか」という問いにつながるのです。

3.しかし、日本は変わった

ここまで読んで、

「だから大手外食は子ども向けサービスを強化したのか。」

と思った方もいるでしょう。

その考え方は正しいです。

しかし、

時代は変わりました。

昔と同じ戦略だけでは、

成長できない時代になったのです。


日本という市場そのものが変わってしまった

外食産業が相手にしているのは、

「日本人」です。

つまり、

日本人の生活が変われば、

飲食店も変わらなければなりません。

実際、日本ではこの30年ほどで、

人口構造が大きく変化しました。

子どもが多い✅子どもが少ない
若い家族が多い✅高齢者が増加
4人家族が多い✅単身・夫婦のみ世帯が増加
専業主婦世帯も多い✅共働き世帯が主流

これは飲食業界だけではなく、

市場そのものが変わったということです。人口減少と高齢化は今後も続き、単身世帯は2040年には全世帯の約4割に達すると見込まれています。


① 少子化

まず一番大きいのが、

少子化です。

昔は、

子ども向けサービスを充実させれば、

その分だけ対象となる家族も多く存在しました。

しかし今は違います。

生まれてくる子どもの数は年々減少し、

出生数は過去最低を更新する状況が続いています。

つまり、

子どもという市場そのものが小さくなっているのです。

もちろん、

子ども向けサービスは今でも重要です。

しかし、

それだけで市場を拡大できる時代ではなくなりました。


② 高齢化

一方で、

増え続けている市場があります。

それが高齢者です。

65歳以上の人口は増え続け、

高齢者がいる世帯は全世帯の約半数を占めています。

つまり、

飲食店に来るお客様の年齢構成も、

昔とはまったく違います。

昔は、

子どもがいる家族を狙えば市場は広がりました。

しかし今は、

高齢者が安心して利用できる店づくりも、

同じくらい重要になっています。


③ 単身世帯の増加

さらに大きな変化があります。

それが、

一人暮らしです。

単身世帯は年々増加し、

将来は全世帯の約4割になると予測されています。

これは飲食店にとって非常に大きな変化です。

家族4人で来店するお客様より、

一人で食事をする人が増えていく。

つまり、

テーブル席中心の発想だけでは、

市場の変化に対応できません。


④ 共働き世帯の増加

そして、

働き方も変わりました。

共働き世帯が増え、

家でゆっくり料理を作る時間は以前より少なくなっています。

だから、

飲食店に求められる価値も変わりました。

昔は、

「休日に家族で外食する店」

だったものが、

今は、

「仕事帰りに一人でも利用できる店」

「短時間で食べられる店」

「テイクアウトやデリバリーも利用できる店」

という需要も大きくなっています。


つまり、大手が見ている市場は変わった

ここまで整理すると、

大手外食企業が直面している現実が見えてきます。

昔の成長市場今の成長市場
子ども✅高齢者
ファミリー✅単身世帯
休日外食✅日常利用
子ども向け体験✅利便性・安心・健康

つまり、

昔のように

「ファミリー市場だけを深掘りすれば成長できる」

という時代ではなくなったのです。


だから私は、

すかいらーくによる資さんうどんの買収を、

単なるブランド買収とは考えていません。

日本という市場が変わったからこそ、大手も次の成長市場へ舵を切り始めた。

そう考えています。

そして次に見るべきなのは、

「その次の成長市場として、なぜ資さんうどんだったのか。」

そこに、大手外食企業の未来戦略が見えてきます。

4.だから大手は「利用シーン」を買い始めた

少子化、高齢化、単身世帯の増加、共働き世帯の拡大。

日本人の暮らし方が変われば、外食企業の成長戦略も変わります。

昔のように、

「子どもを喜ばせて、家族全員を呼び込む」

という戦略だけでは、市場全体を取り切れなくなりました。

そこで大手外食企業が始めたのが、

利用シーンを増やすことです。

新しい料理を一品増やす。

既存ブランドのメニュー数を増やす。

それだけではありません。

朝食を食べる時。

仕事の合間に昼食を取る時。

一人で夕食を済ませる時。

家族で休日を過ごす時。

車で移動している時。

自宅から出たくない時。

大手外食企業は、こうした生活の一場面ごとにブランドやサービスを配置し始めています。

つまり、

商品を増やしているのではありません。

自社が選ばれる生活シーンを増やしているのです。


すかいらーくは、資さんうどんで何を手に入れたのか

すかいらーくグループには、すでにガストがあります。

ガストは、非常に強いブランドです。

家族での食事。

子ども連れの外食。

友人同士の会話。

仕事中の休憩。

ドリンクバーを利用した長時間滞在。

ガストは幅広いお客様を受け入れられる、総合型のファミリーレストランです。

それなら、なぜ資さんうどんが必要だったのでしょうか。

うどんを販売したかったからでしょうか。

私は、それだけではないと考えています。

すかいらーくが手に入れたのは、うどんという商品ではありません。

資さんうどんが地域の中で持っていた、日常的な利用シーンです。

資さんうどんには、うどんだけでなく、丼、カレー、おでん、ぼた餅など、日常の食事として利用しやすい豊富なメニューがあります。すかいらーくも公式に、100種類以上のメニューを持つ北九州のソウルフードとして資さんうどんを紹介しています。

ここで重要なのは、

高級な食事でも、

特別な日の外食でもないことです。

今日は簡単に昼食を済ませたい。

仕事帰りに温かいものを食べたい。

一人で気兼ねなく夕食を取りたい。

年齢を重ねても食べ慣れた和食を選びたい。

家族で来ても、それぞれが好きなものを食べたい。

資さんうどんは、こうした生活の隙間に入り込めるブランドです。

ガストと資さんうどんが押さえる利用シーン

ブランド主に取り込める利用シーン
ガストファミリー、友人同士、子ども連れ、長時間滞在、カフェ利用
資さんうどん一人客、高齢者、昼食、仕事帰り、日常食、地域住民の普段使い

もちろん、実際の客層はきれいに分かれるものではありません。

ガストにも一人客は来ますし、資さんうどんにも家族連れは来ます。

しかし、ブランドが持つ中心的な利用動機は異なります。

ガストだけでは取り切れなかった日常の和食需要を、資さんうどんが補う。

これは単なるブランド追加ではありません。

生活の中で選ばれる理由を追加したということです。

すかいらーくは、資さんうどんの全国展開に、自社の立地開発力、約3,100店舗の事業基盤、サプライチェーン、人材育成、資金力を活用すると説明しています。また、現在はM&Aによる低価格帯のブランドポートフォリオ強化も明確に掲げています。

つまり、すかいらーくは、

「うどん屋を一つ買った」

のではありません。

高齢者、一人客、昼食、地域密着、普段使いという、ガストとは少し違う生活シーンを全国展開できる権利を買った。

私は、そう見ています。


ゼンショーは、牛丼会社ではない

ゼンショーホールディングスという名前を聞くと、

すき家を思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、ゼンショーの展開ブランドを見ると、その姿はまったく違います。

すき家。

はま寿司。

ココス。

なか卯。

ジョリーパスタ。

ビッグボーイ。

オリーブの丘。

焼肉業態。

和食業態。

ハンバーガー業態。

ゼンショーは、すでに牛丼だけの会社ではありません。公式のブランド一覧でも、丼、寿司、ファミリーレストラン、パスタ、ハンバーガー、焼肉、和食など、数多くの異なる業態を展開しています。

なぜ、これほど多くのブランドが必要なのでしょうか。

それは、

牛丼を食べたい時しか選ばれない会社では、顧客の生活全体を取れないからです。

ゼンショーが押さえる生活シーン

ブランド商品カテゴリー主な利用シーン
すき家牛丼・定食短時間、低価格、一人、仕事中、深夜
なか卯丼・うどん一人、軽い食事、和食、昼食
はま寿司回転寿司家族、週末、子ども連れ、複数人
ココスファミリーレストラン家族、友人、会話、デザート、長時間滞在
ジョリーパスタパスタ女性客、夫婦、友人、少し気分を変えたい外食
焼肉業態焼肉家族、グループ、祝い、週末、夕食

牛丼を食べたい日は、すき家。

寿司を食べたい日は、はま寿司。

子どもを連れてゆっくり食べたい日は、ココス。

パスタを食べたい日は、ジョリーパスタ。

少し豪華な夕食にしたい日は、焼肉。

お客様は別の店を選んでいるように見えます。

しかし企業側から見れば、すべてゼンショーグループの中で完結します。

これがブランドポートフォリオの強さです。

お客様の好みが変わっても、利用目的が変わっても、自社グループから離れにくい。

一つの商品を何度も買わせるのではありません。

生活の場面ごとに、別の入口を用意しているのです。


マクドナルドは、一日の時間を取りに来ている

マクドナルドの強さも、

ハンバーガーの商品力だけでは説明できません。

朝は朝マック。

昼はセットメニュー。

午後はコーヒーやスイーツ。

夜は夜マック。

自宅ならデリバリー。

車ならドライブスルー。

スマートフォンから注文し、駐車場で受け取ることもできます。

マクドナルドは公式資料でも、朝マック、夜マック、スナックタイムなど、ランチ以外の時間帯に合わせたメニューを展開し、より幅広い顧客と食事シーンを獲得する方針を明確にしています。

つまり、

マクドナルドはハンバーガーを売っているだけではありません。

一日の中にある食事機会を、細かく分解して取りに来ているのです。

マクドナルドが押さえる一日の時間

朝
↓
朝マック・コーヒー

昼
↓
セットメニュー・短時間の食事

午後
↓
カフェ・スイーツ・休憩

夜
↓
夜マック・夕食・持ち帰り

外出したくない時
↓
デリバリー・モバイルオーダー

車で移動している時
↓
ドライブスルー・パーク&ゴー

これだけ利用シーンを持てば、

お客様がマクドナルドを思い出す回数も増えます。

朝食の候補になる。

昼食の候補になる。

休憩の候補になる。

夕食の候補になる。

移動中の候補になる。

自宅で注文する候補にもなる。

一つの時間帯で一回選ばれるのではありません。

一日のあらゆる時間帯で、何度も候補に入る。

これがマクドナルドの恐ろしさです。

時間帯を支配するというのは、営業時間を長くすることではありません。

それぞれの時間帯に、

その時間に選ばれる理由を用意することです。


スシローは、寿司だけを売っているのではない

スシローについても、

単純に寿司を食べる店として見るだけでは不十分です。

回転寿司には、

注文する楽しさがあります。

商品が届く楽しさがあります。

家族で何を食べるかを選ぶ楽しさがあります。

期間限定商品やコラボ企画を目的に来店する人もいます。

これは、空腹を満たすだけの食事とは少し違います。

家族にとっては、

「今週末、どこへ行くか」

という選択肢の一つになっています。

公園。

ショッピングモール。

映画館。

ゲームセンター。

そして回転寿司。

つまりスシローは、外食費だけでなく、

家族の週末時間をめぐる競争にも参加していると考えられます。

F&LCグループも、DXなどを通じた顧客の体験価値向上を重要課題として掲げています。

ここは、企業が公式に「スシローはレジャー企業である」と表明しているという意味ではありません。

店舗の仕組み、コラボ、期間限定企画、家族利用のされ方を見た上での、私の経営的な解釈です。

しかし、飲食店経営者はこの見方を持つべきです。

お客様が使っているのは、

食費だけではありません。

時間も使っています。

外食に一時間使うということは、

その一時間を他の娯楽には使わなかったということです。

だから、回転寿司の競合は回転寿司だけではありません。

週末の家族時間を奪い合う、あらゆる施設が競合になり得ます。


大手が増やしているのは、商品ではない

ここまでの話を整理すると、

各社の戦略には共通点があります。

企業表面上増やしているもの実際に増やしているもの
すかいらーくうどん・和食ブランド高齢者、一人客、昼食、地域の日常食
ゼンショー牛丼、寿司、パスタ、ファミレスなど用途、価格帯、客層、同行者の違う利用場面
マクドナルド朝・昼・夜の商品、注文方法一日の時間帯と購入経路
スシロー寿司、限定商品、コラボ家族の食事体験、週末の過ごし方

これを見ると、

大手外食企業が何を狙っているのかが分かります。

商品数を増やすことが目的ではありません。

ブランド数を増やすことだけが目的でもありません。

大手が欲しいのは、

お客様の生活の中で、自社が選ばれる場面です。

朝食。

昼食。

仕事帰り。

一人の夕食。

家族との週末。

高齢者の日常食。

子どもとの外出。

車での移動。

自宅での食事。

これら一つひとつが、企業にとっての市場です。


商品ではなく、生活の中の居場所を作る

中小飲食店は、大手の新商品ばかりを見てはいけません。

「新しいうどんが出た。」

「新しいセットが始まった。」

「新しいブランドを買収した。」

そこで終わってしまうと、大手の本当の戦略を見失います。

見るべきなのは、

その商品が、どの生活シーンを取りに行っているのか。

ということです。

大手は、

お客様に一品多く注文してもらうことだけを考えているのではありません。

昨日まで利用されていなかった時間。

昨日まで来店していなかった客層。

昨日まで競合に流れていた食事目的。

そこへ新しい入口を作っています。

つまり、

大手外食企業は、商品を増やしているのではありません。

お客様の生活の中に、自社の居場所を増やしているのです。

すかいらーくによる資さんうどんの買収も、

その視点で見ると意味が変わります。

買ったのは、

うどんのレシピだけではありません。

店舗だけでもありません。

知名度だけでもありません。

地域の人たちが、

「今日は資さんにしよう」

と思う日常。

一人でも入りやすい昼食。

高齢者にもなじみやすい和食。

家族全員が違うものを選べる豊富なメニュー。

そうした、

すでに地域の暮らしの中に定着していた利用シーンを買った。

そこに、この買収の本当の価値があるのだと思います。

5.では、大手は何を徹底しているのか

大手外食企業は、

ただ店を出して、

お客様が来るのを待っているわけではありません。

誰に店を選ばせるのか。

なぜその店を選ぶのか。

他店へ逃げる理由は何か。

次にまた来る理由をどう作るのか。

そこまで細かく設計しています。

つまり、

大手が徹底しているのは、

商品開発だけではありません。

お客様が店を選び、来店し、再び戻ってくるまでの流れそのものです。

私は、大手外食企業の強さを、

次の4つに分けて考えています。


① 誰を決定権者にするか

まず大手が考えるのは、

誰に食べてもらうかではありません。

誰に「この店へ行こう」と言わせるか。

ここです。

外食では、

料理を食べる人。

店を提案する人。

最終的に許可する人。

お金を払う人。

これらが同じとは限りません。

例えば、家族で外食する時。

子どもが、

「マクドナルドに行きたい。」

「くら寿司がいい。」

と言う。

しかし、財布を開くのは親です。

この場合、

代金を払うのは親でも、

店選びを動かしたのは子どもです。

大手は、

この違いを理解しています。

決定権者によって、店の作り方は変わる

決定権者店を選ぶ時に重視すること
子ども楽しさ、おもちゃ、ゲーム、キャラクター、体験
母親・保護者清潔、安全、価格、子ども向け対応、家族全員が食べられるか
会社員速さ、価格、距離、待ち時間、失敗しない安心感
高齢者分かりやすさ、食べ慣れた料理、量、注文のしやすさ、落ち着き

子どもを決定権者にするなら、

料理のおいしさだけでは足りません。

「また行きたい」と言いたくなる体験が必要です。

保護者を決定権者にするなら、

子どもが喜ぶだけでも足りません。

店が清潔か。

価格が分かりやすいか。

子どもが食べられる料理があるか。

周囲に気を使わず利用できるか。

そうした不安を消す必要があります。

会社員を決定権者にするなら、

一番おいしい店より、

短い昼休みの中で確実に食べ終わる店が選ばれます。

高齢者を決定権者にするなら、

新しさよりも、

自分一人で注文できる安心感が重要になります。

つまり、

大手は「ファミリー」「会社員」「高齢者」といった大きな分類だけでは見ていません。

その集団の中で、

誰が最初に店名を口にするのか。

そこまで見ています。


② その人が選ぶ理由を作る

決定権者を決めたら、

次に必要なのは、

その人が店を選ぶ理由です。

大手外食企業は、

「料理がおいしいから来てください」

だけでは戦いません。

人によって、

選ぶ理由が違うことを知っているからです。

ある人は価格で選ぶ。

ある人は時間で選ぶ。

ある人は安心で選ぶ。

ある人は体験で選ぶ。

ある人は限定商品で選ぶ。

ある人はアプリのクーポンで選ぶ。

お客様が店を選ぶ主な理由

選ぶ理由店側が用意するもの
価格✅セット、低価格商品、クーポン、分かりやすい料金
時間✅提供速度、モバイルオーダー、事前注文、会計の速さ
安心✅ブランド、清潔、いつも同じ品質、口コミ、分かりやすいメニュー
体験✅ゲーム、演出、商品が届く仕掛け、子ども向けサービス
限定✅季節商品、数量限定、地域限定、期間限定
アプリ✅クーポン、予約、注文、ポイント、来店通知

ここで大切なのは、

料理自体が特別でなくても、

選ぶ理由は作れるということです。

例えば、

同じハンバーガーでも、

朝なら朝マック。

夜なら夜マック。

子ども連れならハッピーセット。

自宅ならデリバリー。

車ならドライブスルー。

商品が劇的に変わらなくても、

利用する理由が変われば、

新しい来店が生まれます。

つまり大手は、

一つの商品に一つの価値しか持たせません。

時間。

価格。

体験。

利便性。

限定感。

複数の理由を重ねて、

「今日はここにしよう」

と思わせます。


③ 他店へ逃げる理由を潰す

大手外食企業が恐ろしいのは、

選ばれる理由を作るだけではないことです。

同時に、

選ばれなくなる理由も潰しています。

例えば、

「今日は家で食べたい。」

という人には持ち帰り。

「外へ出たくない。」

という人にはデリバリー。

「朝早く食べたい。」

という人には朝営業。

「夜遅くしか食べられない。」

という人には深夜営業。

「子どもがいるから狭い店は嫌だ。」

という人には広い席。

「車から降りるのが面倒。」

という人にはドライブスルー。

本来なら、

来店しない理由になっていた条件を、

一つずつ消しています。

来店しない理由と、大手の対策

お客様が来店しない理由大手が用意する解決策
店で食べる時間がない✅持ち帰り、モバイルオーダー
外出したくない✅デリバリー
朝に利用できない✅朝営業、朝専用メニュー
帰宅が遅い✅深夜営業、夜専用商品
子ども連れで入りにくい✅広い席、キッズチェア、子ども向けメニュー
車で利用しにくい✅駐車場、ドライブスルー
一人では入りにくい✅カウンター席、短時間利用しやすい設計
注文が面倒✅アプリ、券売機、タッチパネル

ここを、

単なるサービスの追加だと思ってはいけません。

持ち帰りを始めた。

デリバリーを始めた。

朝営業を始めた。

それぞれ別の施策に見えます。

しかし根っこは同じです。

お客様が他店へ行く理由を減らしているのです。

「今日は時間がないからコンビニにしよう。」

「雨だから外食はやめよう。」

「子どもがいるから広い店にしよう。」

「朝早いから別の店にしよう。」

こうした場面で、

自社が候補から外れないようにする。

大手は、

お客様の不便を解決しているだけではありません。

競合へ流れる隙間を埋めているのです。


④ 来店理由を作り続ける

一度選ばれたら終わりではありません。

飲食店は、

一回来てもらうだけでは成り立ちません。

何度も思い出してもらい、

何度も来てもらう必要があります。

そこで大手は、

来店理由を作り続けます。

期間限定商品。

季節メニュー。

アプリクーポン。

ポイント。

子ども向けイベント。

人気アニメとのコラボ。

新商品の発売。

曜日限定キャンペーン。

大手は、

お客様の自然な来店だけを待ちません。

来店理由を作る主な仕掛け

仕掛けお客様の心理
期間限定✅今行かないと終わる
新商品✅一度試してみたい
アプリクーポン✅せっかく安いから使いたい
ポイント✅あと少しで貯まる
イベント✅子どもが行きたがる
コラボ✅好きな作品の商品が欲しい
季節商品✅今の時期に食べたい
通知✅店の存在を思い出す

ここで重要なのは、

お客様は毎日、

店のことを考えているわけではないということです。

飲食店側は、

「前回来てくれたから、また来てくれるだろう」

と思いがちです。

しかし、お客様の頭の中には、

他の飲食店。

コンビニ。

スーパー。

自炊。

デリバリー。

たくさんの選択肢があります。

何もしなければ、

店の存在は少しずつ忘れられます。

だから大手は、

アプリで通知する。

新商品を発売する。

期間限定を作る。

コラボを始める。

ポイントを付ける。

そうやって、

お客様の頭の中に再び入ります。

つまり、

新商品を売ることだけが目的ではありません。

店を思い出させること自体が目的なのです。


大手は、来店を待たない

ここまでを整理すると、

大手外食企業が何を徹底しているのかが見えてきます。

誰に店を決めさせるか
    ↓
その人が選ぶ理由を作る
    ↓
他店へ逃げる理由を潰す
    ↓
次に来る理由を作り続ける

この流れが、

大手の強さです。

料理を作る。

店を開ける。

広告を出す。

そして来店を待つ。

それだけではありません。

誰を動かすか。

何を理由に選ばせるか。

どんな不便で離脱するか。

どうすれば再び思い出してもらえるか。

そこまで設計しています。

大手外食企業は、

来店を偶然に任せません。

企業側から、来店する理由を作ります。

子どもが行きたいと言う理由を作る。

保護者が安心して許可できる理由を作る。

会社員が時間内に使える理由を作る。

高齢者が一人でも利用できる理由を作る。

そして、

一度来たお客様に、

もう一度来る理由を渡す。

だから大手は強いのです。

大手の本当の強さは、

資本力だけではありません。

店舗数だけでもありません。

お客様が来るのを待たず、来店理由そのものを企業側で作り続けていることです。

6.中小飲食店は、同じ戦いをしてはいけない

ここまで、大手外食企業の戦略を見てきました。

誰を決定権者にするのか。

その人が選ぶ理由をどう作るのか。

他店へ逃げる理由をどう潰すのか。

次の来店理由をどう生み出すのか。

大手外食企業は、

お客様の生活を細かく分解し、

その一つひとつにブランド、商品、サービスを配置しています。

では、中小飲食店も同じことをすればよいのでしょうか。

答えは、

違います。

大手の戦略から学ぶことは必要です。

しかし、

大手と同じ方法で戦ってはいけません。

なぜなら、

最初から持っている武器が違うからです。


資本では勝てない

大手外食企業には、

大きな資本があります。

新しいブランドを買収する。

新業態を開発する。

全国へ店舗を出す。

大型のセントラルキッチンを作る。

アプリを開発する。

テレビCMを流す。

失敗した店舗を改装する。

赤字の期間にも耐える。

中小飲食店が同じことをしようとしても、

資金力の差は簡単には埋まりません。

例えば、大手は一つの施策が失敗しても、

他の店舗やブランドの利益で補えることがあります。

しかし、一店舗しかない中小飲食店では、

一度の大きな失敗が、

そのまま資金繰りの悪化につながります。

大手にとっての実験が、

中小にとっては経営危機になることもあります。

だから、

大手が新しい設備を入れたから、

自店も同じ設備を導入する。

大手がデリバリーを始めたから、

利益計算をせずに自店も始める。

大手が値下げしたから、

自店も価格を下げる。

こうした追随は危険です。

同じ施策でも、

大手と中小では耐えられる失敗の回数が違います。


店舗数では勝てない

大手の強みは、

一店舗の売上だけではありません。

店舗網そのものが強みです。

駅前にある。

郊外にもある。

高速道路の近くにもある。

住宅地にもある。

旅行先にもある。

お客様は、

店を探しているというより、

目の前にある知っている店を選ぶことがあります。

どこに行っても看板が見える。

どこでも同じ商品が食べられる。

どこでも同じ注文方法が使える。

この安心感は、

店舗数が多いから作れるものです。

一店舗の中小飲食店が、

全国規模の店舗網と戦うことはできません。

仮に料理がおいしくても、

お客様の移動先に店がなければ利用されません。

大手は店舗数によって、

お客様の生活圏を広く押さえることができます。

中小飲食店がその真似をして、

準備不足のまま二店舗目、三店舗目を出しても、

店舗数の勝負では追いつけません。

むしろ、

経営者の目が届かなくなり、

一店舗ごとの品質が落ちる危険があります。


広告でも勝てない

広告費も同じです。

大手は、

テレビ。

YouTube。

SNS。

アプリ。

交通広告。

店頭ポスター。

キャラクターコラボ。

さまざまな場所で繰り返し接触を作ります。

お客様は何度も広告を見ることで、

ブランドを覚えます。

そして、食事の時間になると、

見慣れた店を思い出します。

中小飲食店が、

大手と同じ広さへ広告を出そうとしても、

予算が持ちません。

一度広告を出すことはできても、

何度も繰り返し見せることが難しい。

大手は認知を面で取ります。

中小は同じ面積を取りに行けば、

広告費だけが先に尽きます。

だから、

広告量で勝とうとしてはいけません。

安売りで目立とうとしてもいけません。

大量のクーポンで来店を作り続けても、

値引きが終わればお客様も離れてしまいます。

大手より安くする。

大手より広告を出す。

大手より多くの店舗を作る。

この勝負は、

中小飲食店が選ぶべき戦場ではありません。


大手と中小では、持っている武器が違う

大手にできて、

中小には難しいことがあります。

反対に、

中小だからこそできることもあります。

大手外食企業の強み中小飲食店の強み
資本力✅意思決定の速さ
店舗数✅地域への深い理解
広告量✅お客様との距離の近さ
仕入れ規模✅小回りの利く商品改善
マニュアル✅個別対応
ブランド認知✅経営者やスタッフの顔
均一なサービス✅人による温かさ
大量の顧客データ✅一人ひとりの記憶
全国での再現性その地域だけの独自性

ここを間違えてはいけません。

中小飲食店は、

大手の劣化版ではありません。

店舗数が少ない大手でもありません。

広告費が少ないチェーン店でもありません。

構造そのものが違う経営です。

だから、

戦い方も変えなければなりません。


大手の戦略は、真似するためではなく、構造を見るために学ぶ

では、大手外食企業を研究する意味はないのでしょうか。

そんなことはありません。

大手から学ぶべきことは、

設備でも、

広告の規模でも、

店舗数でもありません。

考え方です。

なぜこの商品を出したのか。

誰に選ばせようとしているのか。

どの時間帯を取りに行っているのか。

どんな理由で他店へ流れるのを防いでいるのか。

どうやって次の来店理由を作っているのか。

この構造は、中小飲食店にも使えます。

ただし、

実行方法は変えなければなりません。

例えば、大手は全国向けのアプリを作ります。

中小はLINEで一人ひとりへ情報を届ければいい。

大手はテレビCMで認知を取ります。

中小はGoogleマップやInstagramで、

地域の人に店内の空気を伝えればいい。

大手は巨大な商品開発部門を持ちます。

中小は目の前のお客様の声を聞き、

翌週には商品を変えられます。

大手は数百万人のデータを分析します。

中小は常連のお客様の顔と会話を覚えられます。

同じことをする必要はありません。

同じ問いを持ち、

自分たちに合った方法で答えを作ればよいのです。


では、中小飲食店は何を見るべきか

中小飲食店が見るべきなのは、

全国市場ではありません。

まず、

自店の周囲で暮らしている人たちです。

誰が住んでいるのか。

どんな働き方をしているのか。

どの時間帯に移動しているのか。

家族構成はどうなっているのか。

近隣にはどんな会社があるのか。

高齢者は多いのか。

子どもは多いのか。

休日に家族はどこへ出かけるのか。

近隣の人は、何に困っているのか。

大手は日本全体をデータで見ます。

中小は、

自店から数キロの生活を詳しく見ればいいのです。

中小飲食店が見るべき範囲

日本全国を見る
   ×
自店の商圏を見る
   ○

市場全体を取る
   ×
地域の一場面を深く取る
   ○

すべての人に対応する
   ×
特定の人に強く必要とされる
   ○

中小飲食店に必要なのは、

市場を広く取ることではありません。

狭い市場を、深く理解することです。


お客様を「客層」で終わらせない

「うちのターゲットはファミリーです。」

「会社員が中心です。」

「高齢者を狙っています。」

これだけでは足りません。

ファミリーといっても、

小さな子どもがいる家族と、

高校生の子どもがいる家族では、

店を選ぶ理由が違います。

会社員といっても、

昼休みが45分の人と、

車で外回りをする人と、

仕事帰りに一人で夕食を取る人では、

必要な店が違います。

高齢者といっても、

一人で車を運転する人と、

徒歩で来る人と、

家族に連れてきてもらう人では、

利用条件が違います。

だから中小飲食店は、

年齢や性別だけを見るのではなく、

その人の生活を見る必要があります。

何時にお腹が空くのか。

誰と食事をするのか。

どれくらい時間があるのか。

どれくらいお金を使えるのか。

何を不安に感じるのか。

何があれば、また来たいと思うのか。

ここまで見て、

初めて戦略になります。


大手が拾えない小さな不満を見る

大手外食企業は、

多くのお客様に対応しなければなりません。

そのため、

一部のお客様だけに合わせた細かな変更は難しくなります。

全国の店舗で再現できること。

マニュアル化できること。

大量に仕入れられること。

誰が調理しても同じ品質になること。

こうした条件が必要です。

ここに、

中小飲食店の入り口があります。

大手では対応しにくい、

地域の小さな不満を拾うのです。

例えば、

近所に夜でも定食を食べられる店がない。

子ども連れで落ち着ける店が少ない。

高齢の親と一緒に行ける店がない。

一人でも入りやすく、

野菜をしっかり食べられる店がない。

仕事帰りに、

温かい料理を持ち帰れる店がない。

常連になっても、

誰にも覚えてもらえない。

こうした不満は、

全国ニュースにはなりません。

巨大な市場調査にも表れにくい。

しかし、その地域には確実に存在します。

中小飲食店は、

その小さな不満を見つけ、

深く解決することができます。


大手は「平均」を取り、中小は「一人」を見る

大手外食企業は、

何百万人ものお客様を相手にします。

だから、

平均的なお客様を想定して仕組みを作ります。

平均的な価格。

平均的な味。

平均的な提供時間。

平均的な接客。

それは、大規模展開するために必要なことです。

一方で中小飲食店は、

目の前の一人を見ることができます。

いつも窓側に座るお客様。

ご飯を少なめにするお客様。

辛いものが苦手なお客様。

子どもがいつも同じ料理を頼む家族。

仕事帰りに一人で来る会社員。

月に一度、夫婦で来店する高齢者。

そうした一人ひとりの情報は、

大手のデータベースには記録できても、

人間関係としては残りにくいものです。

中小飲食店は、

名前を覚えられます。

好みを覚えられます。

前回の会話を覚えられます。

体調や家族の変化に気付けます。

これは、

資本では簡単に買えない力です。

大手と中小の見方の違い

大手中小
顧客数を見る顧客の顔を見る
平均単価を見るなぜ注文したかを見る
来店頻度を見る前回の会話を覚える
市場規模を見る地域の小さな不満を見る
再現性を作る関係性を育てる
誰でも対応できる仕組みあなたに会いたい理由

中小が取るべきなのは、生活シーンの「深さ」である

大手は、

朝、昼、夜、デリバリー、ドライブスルーなど、

多くの利用シーンを横に広げていきます。

中小飲食店が同じように、

すべての時間帯、

すべての客層、

すべての商品へ手を広げると、

店の特徴が薄くなります。

人も足りなくなります。

仕込みも増えます。

在庫も増えます。

オペレーションも複雑になります。

中小が狙うべきなのは、

利用シーンの数ではありません。

一つの利用シーンの深さです。

例えば、

仕事帰りに一人で温かい定食を食べたい人。

小さな子どもを連れて、

周囲を気にせず食事したい家族。

休日に三世代で外食したい人。

昼休みに30分で、

満足できる昼食を取りたい会社員。

こうした特定の場面に対して、

「この地域なら、あの店しかない」

と思われるところまで深く作るのです。

大手
多くの生活シーンを広く取る

中小
一つの生活シーンを深く取る

広さでは勝てません。

しかし、

深さなら勝てます。


中小飲食店は、人間を消してはいけない

大手は、

店舗数を増やすために、

人による差を少なくしていきます。

誰が働いても、

同じ料理。

同じ接客。

同じ時間。

同じ品質。

これが大手の強さです。

しかし、中小飲食店まで、

人間を消してはいけません。

店長が誰か分からない。

スタッフの顔も見えない。

会話もない。

マニュアル通りの案内だけ。

商品も大手と似ている。

価格も特別安くない。

それでは、

お客様が中小飲食店を選ぶ理由がなくなります。

中小に必要なのは、

大手のように見せることではありません。

その店にしかいない人を、価値に変えることです。

いつも声をかけてくれる。

子どもの名前を覚えている。

前回食べた料理を覚えている。

おすすめを本音で教えてくれる。

少し元気がないことに気付いてくれる。

こうしたことは、

効率だけを考えれば無駄に見えるかもしれません。

しかし、

その無駄に見える時間が、

お客様にとっての来店理由になります。


中小飲食店が見るべきもの

中小飲食店が見るべきなのは、

大手の広告費ではありません。

新商品の数でもありません。

店舗数でもありません。

見るべきなのは、

次の5つです。

見るもの考えること
地域近隣の人は、どんな生活をしているか
時間どの時間帯に、どんな不便があるか
誰が店を決め、誰と来るのか
不満大手や既存店が解決できていないことは何か
関係一度来た人と、どうつながり続けるか

大手と同じものを見る必要はありません。

大手が見落とすものを見ればいい。

大手が拾えない声を拾えばいい。

大手が均一化のために削った部分へ、

人間を戻せばいい。


大手に勝とうとするのではなく、選ばれる理由を変える

中小飲食店は、

大手より安くする必要はありません。

大手より便利になる必要もありません。

大手より多くの商品を用意する必要もありません。

すべての面で上回ろうとすれば、

必ず疲弊します。

必要なのは、

大手とは違う理由で選ばれることです。

大手は、

どこでも同じ安心を売ります。

中小は、

ここにしかない関係を売る。

大手は、

失敗しない食事を売ります。

中小は、

記憶に残る時間を売る。

大手は、

大量のお客様へ同じ価値を届けます。

中小は、

目の前のお客様に合わせて価値を変える。

この違いを理解しなければなりません。


中小が見るべきなのは、大手の背中ではない

大手外食企業の動きは、

確かに学ぶ価値があります。

しかし、

後ろを追いかけるために見るのではありません。

大手がどこへ向かっているのか。

その結果、何を捨てていくのか。

どんなお客様が取り残されるのか。

どんな不満が地域に残るのか。

そこを見るために、大手を観察するのです。

大手が効率化すれば、

人との会話が減るかもしれない。

大手が機械化すれば、

注文に困る人が出るかもしれない。

大手が標準化すれば、

地域の細かな好みには対応できなくなるかもしれない。

大手が全国へ広がるほど、

その土地にしかない個性は薄くなるかもしれない。

その隙間こそ、

中小飲食店が入る場所です。


中小飲食店は、

資本では勝てません。

店舗数でも勝てません。

広告量でも勝てません。

だからといって、

未来がないわけではありません。

見る場所を変えればいいのです。

市場全体ではなく、地域を見る。

客数ではなく、一人を見る。

平均ではなく、不満を見る。

商品ではなく、生活を見る。

売上だけではなく、関係を見る。

大手が広く取るなら、

中小は深く取る。

大手が仕組みで囲うなら、

中小は人間関係でつながる。

それが、

中小飲食店の戦い方です。

7.中小が見るべきなのは「生活シーン」

中小飲食店が戦略を考える時、

よく使われる言葉があります。

「ファミリーを狙います。」

「会社員を狙います。」

「女性客を増やします。」

「高齢者に来てもらいます。」

もちろん、

客層を考えることは大切です。

しかし、

これだけでは戦略として弱い。

なぜなら、

「ファミリー」という人が存在するわけではないからです。

同じ家族でも、

利用する場面によって、

求める店はまったく変わります。

今日は子どもの誕生日。

平日の仕事帰り。

休日の昼食。

給料日前の夕食。

今日は料理をしたくない日。

祖父母も含めた三世代での食事。

家族全員が違う料理を食べたい日。

同じ家族でも、

その日の状況によって店を選ぶ理由は変わります。

だから中小飲食店が見るべきなのは、

「どんな人に来てほしいか」だけではありません。

その人が、どんな時に店を必要とするのか。

私は、ここを見るべきだと考えています。


「ファミリーを狙う」では、店を作れない

例えば、

「ファミリー向けの店を作る」

と決めたとします。

しかし、これだけでは、

具体的な店づくりには落とし込めません。

何歳の子どもがいる家族なのか。

昼に来るのか、夜に来るのか。

普段使いなのか、記念日なのか。

短時間で食べたいのか、ゆっくり過ごしたいのか。

価格を重視するのか、体験を重視するのか。

料理を取り分けるのか、一人ずつ違うものを頼むのか。

ここが違えば、

必要な商品も席も接客も変わります。

同じ「ファミリー」でも必要な店は違う

生活シーン家族が求めるもの
平日の夕食速さ、手頃な価格、家事負担の軽減
子どもの誕生日特別感、写真、デザート、スタッフの反応
休日の昼食駐車場、待ち時間、子ども対応、メニューの幅
三世代での食事座りやすさ、和食、量の調整、落ち着き
家族全員の好みが違う日商品数、定食・麺・丼・デザートの選択肢
親が疲れている日注文の簡単さ、提供速度、片付け不要

同じ家族であっても、

「今日、なぜ外食するのか」

によって選ぶ店は変わります。

つまり、

ファミリーという客層を狙うだけでは、

お客様の現実の行動までは見えていません。

見るべきなのは、

家族そのものではなく、

家族が外食を必要とする瞬間です。


お客様は属性で店を選んでいるのではない

お客様は、

自分が30代だから店を選ぶわけではありません。

会社員だから店を選ぶわけでもありません。

その時の状況を解決するために店を選びます。

時間がない。

疲れている。

一人で食べたい。

家族を喜ばせたい。

料理をしたくない。

温かいものが食べたい。

少し飲んで帰りたい。

子どもにせがまれた。

今日だけは特別にしたい。

つまり、

店選びの起点になるのは、

年齢や性別よりも、

その瞬間の事情です。

属性と生活シーンの違い

属性で見る生活シーンで見る
30代女性仕事と育児で夕食を作る余裕がない
会社員昼休みが残り30分しかない
高齢者一人で温かい夕食を食べたい
ファミリー子どもの誕生日を祝いたい
若い男性飲んだ後にご飯ものを食べたい
一人暮らし自炊せず野菜も食べたい

左側だけでは、

具体的な来店理由が見えません。

右側まで見ることで、

初めて店側が何を用意すべきか分かります。


① 子どもの誕生日

「ファミリー向けです」

という店は多くあります。

しかし、

「子どもの誕生日に使いたい店」

まで作り込んでいる中小飲食店は、

それほど多くありません。

子どもの誕生日に求められるのは、

料理のおいしさだけではありません。

予約しやすい。

家族が座れる席がある。

子どもの好きな料理がある。

デザートがある。

写真を撮りたくなる。

スタッフが一言声をかけてくれる。

家族が少し特別な時間を過ごせる。

こうしたものが重なって、

その店を選ぶ理由になります。

ここで重要なのは、

大掛かりな誕生日演出をすることではありません。

誕生日と分かった時に、

スタッフが名前を呼ぶ。

小さなメッセージを添える。

家族写真を撮る。

子どもへ一言声をかける。

中小飲食店なら、

大手より柔軟に対応できます。

そして家族の記憶には、

料理名よりも、

「お店の人が祝ってくれた」

という体験が残ることがあります。

この瞬間を取れれば、

単なる食事ではなく、

家族の記念日に店が入り込みます。


② 仕事帰り

仕事帰りのお客様は、

休日の外食客とは違います。

疲れている。

考えたくない。

早く座りたい。

温かいものを食べたい。

少し飲みたい。

自宅で片付けをしたくない。

店側が見るべきなのは、

「会社員」という属性ではありません。

仕事を終えた直後の人間の状態です。

この生活シーンを狙うなら、

派手なメニューよりも、

入店しやすさが重要かもしれません。

一人でも座れる。

定食がある。

注文が分かりやすい。

提供が早い。

食事だけでも利用できる。

少し飲むこともできる。

長居を強制されない。

毎日でも払える価格である。

仕事帰りの店として選ばれるには、

「ご褒美の外食」ではなく、

一日の終わりを整える場所になる必要があります。


③ 一人晩ご飯

一人客を狙うというと、

カウンター席を作ればよいと考えがちです。

しかし、

一人で座れることと、

一人で居心地よく食事できることは違います。

一人でテーブル席を使っても、

気まずくない。

店員から必要以上に干渉されない。

しかし、放置された感じもしない。

定食がある。

少量の商品も選べる。

注文方法が分かりやすい。

スマートフォンを見ながらでも過ごせる。

急いで食べてもいい。

ゆっくり食べてもいい。

一人晩ご飯で選ばれる店には、

こうした安心があります。

一人客が欲しいのは、

一人用の席だけではありません。

一人でいることを説明しなくてよい空気です。

これは設備だけでは作れません。

スタッフの案内。

席への通し方。

声のかけ方。

周囲の雰囲気。

これらを含めて設計する必要があります。


④ 今日は料理をしたくない日

これは、

中小飲食店がもっと見るべき生活シーンです。

外食は、

いつも積極的な欲求から生まれるわけではありません。

「おいしいものを食べに行きたい」

だけではないのです。

疲れた。

買い物へ行きたくない。

献立を考えたくない。

料理を作りたくない。

洗い物をしたくない。

家族それぞれの希望を調整したくない。

こうした日があります。

この時に求められる店は、

特別なレストランではありません。

家族全員が食べられる。

価格が高すぎない。

すぐに利用できる。

持ち帰りもできる。

料理の種類がある。

子どもにも大人にも対応できる。

つまり、

家庭内の面倒を引き受けてくれる店です。

「今日は料理をしたくない日」を取れる店は、

一度きりの記念日ではなく、

日常の中で何度も利用される可能性があります。

中小飲食店にとって、

非常に価値の大きい生活シーンです。


⑤ 飲んだ後

飲んだ後のお客様には、

通常の夕食とは違う欲求があります。

温かい汁物が欲しい。

炭水化物が欲しい。

濃い味が食べたい。

少量だけ食べたい。

もう少しだけ話したい。

帰宅前に落ち着きたい。

この場面では、

豪華なコース料理は必要ありません。

うどん。

蕎麦。

丼。

お茶漬け。

ラーメン。

小さな定食。

温かい味噌汁。

こうした商品が強くなります。

しかし、商品を置くだけでは足りません。

遅い時間でも入りやすい。

食事だけの利用を歓迎している。

一品だけでも注文しやすい。

酔ったお客様への対応が乱暴ではない。

短時間で提供できる。

こうした条件まで整って、

「飲んだ後の店」になります。

ここでも、

狙うのは「夜の客」ではありません。

飲み会が終わった直後の状態です。


⑥ 家族全員が違うものを食べたい日

家族での店選びが難しい理由の一つは、

全員の希望が一致しないことです。

父親は肉を食べたい。

母親は野菜が欲しい。

子どもはハンバーグがいい。

祖父母はうどんや和食がいい。

この時、

一つの商品に特化した店は、

誰かの希望を諦めさせなければなりません。

一方で、

定食。

丼。

麺。

肉料理。

魚料理。

子ども向け商品。

デザート。

こうした選択肢がそろっていれば、

全員が完全に妥協せずに済みます。

ここで売っているのは、

メニュー数ではありません。

家族内の意見調整を簡単にする価値です。

「何を食べるか決まらないから、あの店に行こう。」

この状態を作れれば、

その店は家族にとって便利な逃げ場所になります。

資さんうどんやファミリーレストランのメニューが幅広いのも、

単に商品を増やしているのではなく、

複数人の希望を一店舗で処理する役割があるからです。


一つの生活シーンを支配するとは何か

「生活シーンを支配する」

というと、

大げさに聞こえるかもしれません。

しかし、

全国を支配する必要はありません。

自店の商圏の中で、

ある場面になった時に、

最初に店名を思い出してもらえばよいのです。

子どもの誕生日なら、あの店。

仕事帰りの定食なら、あの店。

一人で晩ご飯なら、あの店。

料理をしたくない日は、あの店。

飲んだ後なら、あの店。

家族の意見がまとまらない日は、あの店。

これが、

中小飲食店にとっての生活シーンの支配です。

生活シーンを支配する流れ

特定の状況が起きる
   ↓
お客様が店を探す
   ↓
最初に自店を思い出す
   ↓
他店と細かく比較せず来店する
   ↓
同じ状況が起きた時に再び利用する

重要なのは、

一回だけ選ばれることではありません。

同じ状況が起きるたびに、

繰り返し思い出されることです。


生活シーンから逆算すると、店づくりが具体的になる

生活シーンを決めれば、

何を改善すべきかが見えてきます。

生活シーン別の設計例

取りたい生活シーン必要な商品必要な環境必要な発信
子どもの誕生日デザート、子ども料理家族席、写真対応誕生日利用の事例
仕事帰り定食、酒、短時間商品一人席、速い提供夜も定食があること
一人晩ご飯一人前定食、少量商品気兼ねしない席一人利用歓迎
料理したくない日幅広い料理、持ち帰り注文の簡単さ家族全員が選べること
飲んだ後麺、丼、汁物遅い時間の入りやすさ食事だけでも歓迎
家族の好みが違う日複数カテゴリー大人数席、選択肢メニューの幅

ここまで落とし込めば、

「ファミリーを狙う」という曖昧な話ではなくなります。

どの商品を増やすのか。

どの席を使いやすくするのか。

何をGoogleマップやInstagramで伝えるのか。

スタッフにどんな対応を教えるのか。

すべてがつながります。


商品ではなく、状況に名前を付ける

中小飲食店は、

商品名ばかり発信しがちです。

新しいハンバーグ。

新しい丼。

新しいデザート。

もちろん、それも必要です。

しかし、お客様は商品だけで店を思い出しているわけではありません。

自分の状況に合うかどうかで判断します。

だから発信も、

商品中心から生活シーン中心へ変えるべきです。

「新しい定食が始まりました」

だけではなく、

「仕事帰りでも、夜に定食が食べられます。」

「今日は料理をしたくない。そんな日に家族全員が好きなものを選べます。」

「一人でも気を使わず、温かい晩ご飯が食べられます。」

「子どもの誕生日を、家族でゆっくり過ごせます。」

こう書くことで、

商品が生活と結びつきます。

お客様は、

メニュー表ではなく、

自分の今日を見つけます。


中小は、一つずつ深く取ればいい

大手外食企業は、

朝食。

昼食。

夕食。

デリバリー。

ドライブスルー。

家族利用。

一人利用。

さまざまな生活シーンを広く押さえます。

中小飲食店が、

最初からすべてを取ろうとしてはいけません。

朝も強くする。

昼も強くする。

夜も強くする。

宴会も取る。

一人客も取る。

家族も取る。

高齢者も取る。

デリバリーも取る。

これを一度に行えば、

店の人員も商品も発信も散らかります。

まずは一つでいい。

自店の地域で、

最も困っている生活シーンを見つける。

そして、

そこに対して徹底的に強くなる。

その場面で必要な商品を作る。

利用しやすい席を作る。

スタッフの対応を整える。

GoogleマップやSNSで伝える。

実際に利用した人の声を積み上げる。

そうやって、

「この時は、この店」

という記憶を作ります。

一つを取れたら、

次の生活シーンへ広げればいい。

一つの生活シーンを決める
    ↓
必要な商品と環境を作る
    ↓
その場面に合わせて発信する
    ↓
利用実績と口コミを積み上げる
    ↓
地域で最初に思い出される
    ↓
次の生活シーンへ広げる

中小飲食店は、

市場全体を取る必要はありません。

地域の生活を、

一場面ずつ取ればいいのです。


「何を食べたい人」ではなく、「どんな日に困る人」を見る

飲食店は、

「何を食べたい人を集めるか」

で考えがちです。

ハンバーグを食べたい人。

焼肉を食べたい人。

うどんを食べたい人。

しかし、それだけでは価格や商品力の比較になりやすい。

中小が見るべきなのは、

「どんな日に困る人か」です。

仕事で疲れた日。

家族の意見がまとまらない日。

一人で温かいものを食べたい日。

子どもを喜ばせたい日。

料理も片付けもしたくない日。

飲んだ後に少し食べたい日。

こうした困り事に対して、

店が答えを持つ。

それができれば、

お客様は単に商品を買うのではありません。

生活を少し楽にするために、その店を使うようになります。


「ファミリーを狙います。」

それでは弱い。

「この地域で、子どもの誕生日に最初に思い出される店になる。」

「仕事帰りに、一人で温かい定食を食べたい人を取る。」

「今日は料理をしたくない家族の受け皿になる。」

そこまで具体的になって、

初めて戦略になります。

中小飲食店が見るべきなのは、

客層ではありません。

商品でもありません。

お客様の生活の中で、店が必要とされる瞬間です。

その瞬間を一つずつ深く取り、

「あの時は、あの店」

という記憶を地域の中に増やしていく。

それが、

私の考える中小飲食店の生活シーン戦略です。

8.だから私は、店ではなく「選ばれる理由」を設計する

飲食店経営では、

新しい商品を作ることが、

店づくりだと思われがちです。

新しいハンバーグ。

新しい定食。

新しい飲み放題。

新しいデリバリーメニュー。

もちろん、商品は大切です。

しかし私は、

商品を増やすこと自体を目的にはしていません。

私が考えているのは、

その商品やサービスによって、どんな日に店を選んでもらえるのか。

ということです。

昼も夜も定食を出す。

家族全員が違う料理を選べるようにする。

ご飯や味噌汁をおかわり自由にする。

セルフ飲み放題を作る。

デリバリーに対応する。

これらは一見すると、

個別の商品やサービスに見えます。

しかし、私の中ではすべてつながっています。

どれも、

お客様の生活の中に、新しい来店理由を作るための設計です。


店を作るのではなく、使われる場面を作る

飲食店経営者は、

自分の店を主語にして考えがちです。

何を売るか。

どんなメニューを作るか。

どんな内装にするか。

何席にするか。

何時まで営業するか。

しかし、お客様は、

店の都合で生活しているわけではありません。

お客様には、

仕事があります。

家事があります。

子育てがあります。

その日の疲れがあります。

家族それぞれの好みがあります。

財布の事情があります。

店を選ぶ時、

お客様が考えているのは、

「この店の経営者は、どんなコンセプトを作ったのか」

ではありません。

「今の自分たちに、この店は使えるか」

です。

だから私は、

店側からではなく、

生活側から考えます。

店側の発想
何を売りたいか
   ↓

生活側の発想
どんな日に必要とされたいか
   ↓

その場面に必要な
商品・価格・席・接客・サービスを設計する

先に商品を決めるのではありません。

先に、

取りたい生活シーンを決める。

その場面から逆算して、

必要な商品を作ります。


昼も夜も定食を提供する理由

一般的な飲食店では、

昼と夜で店の役割が大きく変わることがあります。

昼は定食。

夜は居酒屋。

昼は一人でも入りやすい。

しかし夜になると、

お酒を飲まない人や、

一人で食事だけをしたい人は入りにくくなる。

この切り替えによって、

夜の生活シーンを取りこぼしてしまいます。

仕事帰りに、

一人で温かい晩ご飯を食べたい人。

自宅へ帰ってから料理をしたくない人。

お酒を飲まず、

普通に食事をしたい人。

家族で夜に定食を食べたい人。

こうした需要は確実にあります。

だからガブ飲み食堂では、

昼だけでなく、

夜も定食を利用できるようにしています。

夜の定食は、

単なるメニュー継続ではありません。

「夜でも、食事だけで使える店」という選ばれる理由です。

夜の定食が取る生活シーン

お客様の状況求めているもの
仕事帰りの一人客温かい食事、短時間、入りやすさ
料理したくない家族家事負担の軽減、全員分の食事
お酒を飲まない人居酒屋ではない夜の食事場所
遅い昼食・早い夕食時間に縛られない食事
高齢者や夫婦食べ慣れた料理、落ち着いた利用

「夜も定食を販売しています」

だけでは、商品説明です。

「仕事帰りに、一人でも温かい晩ご飯を食べられます」

まで伝えて、

初めて生活シーンと結びつきます。


家族全員が違う料理を選べる理由

家族で外食する時、

全員が同じものを食べたいとは限りません。

子どもはハンバーグ。

父親は肉料理。

母親は軽めの定食。

祖父母は麺や和食。

一人は丼。

別の一人はお酒と一品料理。

この希望を一つの専門店で満たすのは難しいことがあります。

誰かが我慢する。

別の店を探す。

結局、家族の意見がまとまりやすい大手チェーンへ流れる。

中小飲食店がファミリー市場を取りたいなら、

「子ども連れ歓迎」という看板だけでは足りません。

家族全員の希望を、

一つの店の中で処理できる必要があります。

ガブ飲み食堂で、

ハンバーグ、肉料理、定食、丼、麺、一品料理など、

異なるカテゴリーを用意しているのも、

単にメニュー数を増やしたいからではありません。

家族全員が違うものを食べたい日を取るためです。

商品ではなく、家族内の問題を解決する

父親は肉料理が食べたい

母親は定食がいい

子どもはハンバーグがいい

祖父母は麺や和食がいい
    ↓
一店舗で全員が選べる
    ↓
店選びの話し合いが終わる
    ↓
「あそこなら全員が食べられる」

この時、お客様が買っているのは、

メニューの多さだけではありません。

家族の意見をまとめる手間がなくなる便利さです。

つまり、

料理の種類が多いことそのものではなく、

家族全員が妥協せずに済むことが価値になります。


おかわり自由は、量のサービスではない

ご飯や味噌汁のおかわり自由も、

単にたくさん食べてもらうためのサービスではありません。

もちろん、

よく食べるお客様にとっては、

量への満足につながります。

しかし、それだけではありません。

定食を頼んだ後に、

「これで足りるだろうか」

と心配しなくていい。

子どもがもう少しご飯を食べたくなっても対応できる。

食欲の違う家族が、

同じ店を利用できる。

追加料金を気にせず、

自分に合った量へ調整できる。

おかわり自由が解決しているのは、

空腹だけではありません。

食べる量に対する不安です。

おかわり自由が作る選ばれる理由

表面上のサービス実際に解決していること
ご飯のおかわり食べ足りない不安
味噌汁のおかわり温かいものをもう少し欲しい需要
自分で量を調整家族や個人の食欲差
追加料金なし会計への不安
昼夜利用可能利用時間によるサービス差

飲食店側は、

「無料で追加できるサービス」

と見ます。

しかし、お客様側から見れば、

いくら食べるかを自分で決められる安心です。

これは、

たくさん食べる男性だけを狙った施策ではありません。

食欲の違う家族。

成長期の子ども。

少量から様子を見たい高齢者。

その日の体調によって量を変えたい人。

幅広い生活シーンに対応します。


セルフ飲み放題は、安売りではない

セルフ飲み放題も、

単に酒を安く提供するための仕組みではありません。

飲み放題という言葉だけを見ると、

価格訴求に見えます。

しかし、私が見ているのは、

お客様がどう過ごしたいかです。

自分のペースで飲みたい。

店員を何度も呼びたくない。

次の注文を待ちたくない。

友人や家族との会話を止めたくない。

好きな濃さや組み合わせで楽しみたい。

こうした生活シーンがあります。

セルフ方式にすることで、

お客様は飲むタイミングを自分で決められます。

スタッフを呼ぶ必要もありません。

店側にとっては、

注文を受け、

飲み物を作り、

運ぶ作業を減らせます。

つまり、

お客様の自由と、

店の効率を両立できます。

セルフ飲み放題の本当の価値

店側から見えるものお客様が感じる価値
飲み放題商品料金を気にせず楽しめる
セルフ方式店員を呼ばなくてよい
注文回数の削減会話を中断しなくてよい
自分で注ぐ自分のペースで楽しめる
時間制利用条件が分かりやすい

ここでも、

売っているのは酒だけではありません。

気を使わず、自分たちのペースで過ごせる時間です。

中小飲食店は、

大手のような高性能アプリや巨大な設備を持たなくても、

仕組みの工夫によって新しい利用シーンを作れます。


デリバリーは、店外に別の入口を作ること

デリバリーも、

店内売上の補助としてだけ考えると、

本質を見誤ります。

デリバリーを利用するお客様は、

必ずしも店へ行きたくないわけではありません。

雨が降っている。

子どもから目を離せない。

仕事が終わらない。

体調が悪い。

家族が自宅に集まっている。

外出する準備が面倒。

今日は完全に家で過ごしたい。

こうした理由があります。

これまでなら、

来店できない日は売上がゼロでした。

しかしデリバリーがあれば、

店へ来られない日でも、

料理を届けることができます。

つまり、

デリバリーは販売方法の追加ではありません。

「店へ行けない日」という生活シーンを取る仕組みです。

店内とデリバリーでは、取っている場面が違う

店内利用デリバリー利用
外出できる外出しにくい
店で過ごしたい自宅で過ごしたい
接客や空間も利用する移動しない利便性を利用する
出来たてを食べる家まで届くことを優先する
店の営業時間に合わせる自宅で受け取りたい

同じ料理を販売していても、

解決している問題は違います。

店内は、

外食する時間を作ります。

デリバリーは、

外出せずに食事を済ませる時間を作ります。

この二つの入口を持つことで、

店が利用される場面は広がります。


すべては「店を便利に見せる施策」ではない

昼も夜も定食。

幅広い料理。

おかわり自由。

セルフ飲み放題。

デリバリー。

これらを並べると、

何でもある店に見えるかもしれません。

しかし、

何でも置けば強い店になるわけではありません。

商品を増やしすぎれば、

仕込みが増えます。

在庫が増えます。

廃棄が増えます。

教育が難しくなります。

提供速度も落ちます。

だから、

本来はむやみに広げるべきではありません。

重要なのは、

それぞれの施策に、

どの生活シーンを取る役割があるのかが明確であることです。

ガブ飲み食堂の施策と生活シーン

施策取ろうとしている生活シーン
昼も夜も定食仕事帰り、一人晩ご飯、夜の家族食
幅広い料理家族全員の希望が違う日、三世代利用
おかわり自由食べる量が違う家族、満腹への安心
セルフ飲み放題自分たちのペースで気軽に飲みたい時
デリバリー外出できない日、家で食事を済ませたい日

このように整理すると、

商品やサービスがバラバラに存在しているのではないことが分かります。

すべて、

お客様の生活の中にある別々の不便を解決しています。


商品は、選ばれる理由を形にしたもの

ここで誤解してはいけないのは、

商品が重要ではないという話ではありません。

料理がおいしくなければ、

二度目の来店にはつながりません。

安全でなければ、

店として成立しません。

提供が遅すぎれば、

生活シーンに合いません。

商品は重要です。

しかし、

商品は最終目的ではありません。

商品とは、

選ばれる理由を、お客様に伝わる形にしたものです。

仕事帰りに温かい食事がしたい。

だから夜も定食を出す。

家族の好みがまとまらない。

だから複数の料理カテゴリーを用意する。

量が足りるか不安。

だからおかわり自由にする。

自分のペースで飲みたい。

だからセルフ飲み放題を作る。

外出したくない。

だからデリバリーで届ける。

お客様の生活上の不便
    ↓
店が取る生活シーン
    ↓
選ばれる理由
    ↓
商品・サービスとして形にする

この順番が大切です。

先に商品を作り、

後から売り方を考えるのではありません。

先に生活を見る。

その生活の中で困っている場面を見つける。

その解決策として商品を作る。

これが、

私の考える店づくりです。


「何でもある店」と「使う理由が多い店」は違う

商品数が多い店は、

必ずしも強い店ではありません。

何を目的に置いているのかが分からなければ、

ただメニューが多いだけです。

一方で、

お客様の生活シーンから逆算されていれば、

商品同士に意味が生まれます。

夜の定食がある。

だから仕事帰りに使える。

子どもから高齢者まで選べる。

だから三世代で使える。

おかわりができる。

だから食欲の違う家族でも使える。

飲み放題がある。

だから食事だけでなく、気軽な集まりにも使える。

デリバリーがある。

だから外出できない日にも使える。

これは、

何でもあるのではありません。

使う理由が多いのです。

この違いは大きい。

「商品が多い店」は、

店側の都合で品数を増やした店です。

「使う理由が多い店」は、

お客様の生活に合わせて入口を増やした店です。


私が設計しているのは、店ではなく選択肢である

私は、

ガブ飲み食堂を特別な日にだけ利用する店にはしたくありません。

もちろん、

誕生日や家族の集まりにも使ってほしい。

しかし、それだけではありません。

仕事帰り。

一人の晩ご飯。

家族で料理を作りたくない日。

子どもがハンバーグを食べたい日。

大人が肉料理を食べたい日。

少しだけ飲みたい日。

しっかり飲みたい日。

外へ出たくない日。

お客様の生活には、

いろいろな日があります。

その日ごとに、

ガブ飲み食堂を選べる理由を用意する。

それが、

私が行っている設計です。

店を一つ作ったら終わりではありません。

地域の暮らしを見ながら、

まだ取れていない生活シーンを見つける。

その場面に必要な商品を作る。

サービスを作る。

発信を変える。

スタッフの対応を変える。

そして、

「あの日も使える店」にしていく。


飲食店は、

料理を並べる場所ではありません。

お客様の生活の中に、

食事の選択肢を作る場所です。

だから私は、

新しい商品を考える時も、

「これは売れるだろうか」

だけでは考えません。

「これは、どんな日に選ばれる理由になるのか。」

そこから考えます。

昼も夜も定食。

家族全員が違う料理を選べるメニュー。

おかわり自由。

セルフ飲み放題。

デリバリー。

これらは、

それぞれ独立した商品ではありません。

地域の生活シーンを、一つずつ取るための設計です。

私は店を作っているのではありません。

お客様が、その日の状況に合わせてガブ飲み食堂を選べる理由を作っています。

9.まとめ――なぜ、すかいらーくは資さんうどんを買収したのか

なぜ、すかいらーくは資さんうどんを買収したのでしょうか。

うどん市場が伸びると考えたから。

全国展開できる強い地方ブランドだったから。

既存の店舗網、物流、商品開発、人材育成と相乗効果を生み出せるから。

もちろん、そうした理由もあるでしょう。

しかし、この記事を通して私が見てきたのは、

もう少し大きな変化です。

すかいらーくが手に入れたのは、

うどんという商品だけではありません。

店舗だけでもありません。

北九州で積み上げてきた知名度だけでもありません。

資さんうどんが地域の暮らしの中で持っていた、

選ばれる瞬間です。


大手は、店舗を増やしているように見える

大手外食企業の動きを表面だけ見ると、

店舗を増やしているように見えます。

新しいブランドを買収する。

新業態を開発する。

出店地域を広げる。

営業時間を延ばす。

持ち帰りやデリバリーを始める。

アプリを作る。

期間限定商品を発売する。

しかし、

本当に増やしているのは、

店舗数だけではありません。

人の生活の中で、自社が選ばれる瞬間を増やしているのです。

朝食なら、この店。

会社員の昼食なら、この店。

子どもとの週末なら、この店。

仕事帰りの夕食なら、この店。

一人で温かいものを食べたい時なら、この店。

家から出たくない日なら、この店。

大手は商品を増やしているのではありません。

生活の中にある、

「今日はここにしよう」

という判断を増やしています。


資さんうどんが持っていたもの

資さんうどんには、

うどんがあります。

丼があります。

おでんがあります。

ぼた餅があります。

さまざまな世代が選びやすい、幅広い商品があります。

しかし、価値は商品数だけではありません。

一人でも入りやすい。

家族でも使いやすい。

昼食にも夕食にも使える。

食事だけでも利用しやすい。

若い人にも高齢者にも、料理の内容が分かりやすい。

地域の人にとって、

特別な日にしか行かない店ではなく、

暮らしの中で何度も使える店になっている。

この日常性が大きいのです。

すかいらーくが手に入れたと考えられるもの

表面上、買収したものその奥にある価値
うどんブランド日常の和食需要
店舗網地域住民との接点
豊富なメニュー複数世代・複数目的への対応力
地方での知名度地域からの安心と信頼
店舗運営の仕組み普段使いされる生活導線
資さんうどんという名前「今日は資さん」という想起

すかいらーくには、すでにガストがあります。

バーミヤンもあります。

しゃぶ葉もあります。

ジョナサンもあります。

それでも資さんうどんを加えた。

そこから見えるのは、

既存ブランドだけでは取り切れない生活シーンがあったということです。

和食を日常的に食べたい人。

一人で手早く食事をしたい人。

高齢になっても利用しやすい店を求める人。

家族全員が違う料理を選びたい日。

地域で食べ慣れた店を使いたい人。

そうした場面へ、

すかいらーくは新しい入口を作ろうとしている。

私は、この買収をそのように見ています。


飲食店の競争は、料理同士の勝負ではない

飲食店経営者は、

競合店を見る時に料理を比べます。

あの店よりおいしいか。

あの店より量が多いか。

あの店より安いか。

あの店よりメニュー数が多いか。

もちろん、

料理は飲食店の中心です。

料理が悪くてもよいという話ではありません。

しかし、お客様が店を決める時、

料理だけを比べているわけではありません。

時間があるか。

一人なのか。

家族と一緒なのか。

子どもがいるのか。

車なのか。

今日は料理をしたくないのか。

しっかり食べたいのか。

軽く済ませたいのか。

お酒を飲みたいのか。

自宅から出たくないのか。

その日の事情によって、

選ばれる店は変わります。

つまり、

飲食店の競争は、

ハンバーグとハンバーグの勝負ではありません。

うどんとうどんの勝負でもありません。

お客様の今の状況に、どちらの店がより合っているかという勝負です。

おいしくても、

今の生活シーンに合わなければ選ばれません。

反対に、

特別な料理でなくても、

その時の困り事を深く解決できれば選ばれます。


大手と中小では、取るべき範囲が違う

大手外食企業は、

多くの生活シーンを広く取ります。

朝。

昼。

夜。

一人。

家族。

店内。

持ち帰り。

デリバリー。

車での利用。

週末のレジャー。

それぞれにブランドやサービスを置きます。

中小飲食店が、

その広さをそのまま真似してはいけません。

資本が違います。

人員が違います。

店舗数が違います。

広告量も違います。

中小があらゆる場面を一度に取ろうとすれば、

商品が増えすぎます。

仕込みが増えます。

在庫が増えます。

スタッフ教育が難しくなります。

店の特徴も見えにくくなります。

だから中小飲食店は、

生活シーンを広く取るのではなく、

一つずつ深く取ればいい。

大手と中小の生活シーン戦略

大手外食企業中小飲食店
多くの場面を広く取る特定の場面を深く取る
ブランドを使い分ける一店舗の個性を磨く
広告で思い出させる地域との接点で思い出させる
仕組みで安心を作る人と関係で安心を作る
全国で再現する地域へ細かく適応する
大量のデータを見る目の前のお客様を見る

子どもの誕生日なら、あの店。

仕事帰りの一人晩ご飯なら、あの店。

今日は料理したくないという日なら、あの店。

家族全員の食べたいものが違うなら、あの店。

飲んだ後に温かいものを食べたいなら、あの店。

このように、

地域の一場面で最初に思い出されることが、

中小飲食店の強さになります。


「何を売るか」から考えない

多くの飲食店は、

商品から考えます。

新しい料理を作る。

価格を決める。

写真を撮る。

SNSで告知する。

そして、売れるのを待つ。

しかし私は、

この順番を逆に考えます。

地域の人は、どんな日に困っているのか
    ↓
その時、どんな店が必要なのか
    ↓
自店はどんな理由で選ばれるのか
    ↓
必要な商品・サービス・接客を作る
    ↓
その生活シーンに合わせて発信する

まず見るべきなのは、

売りたい商品ではありません。

お客様の生活です。

仕事。

子育て。

家事。

家族構成。

移動手段。

食事に使える時間。

その日の疲れ。

誰と食べるのか。

そこにある不便を見つけます。

そして、

その不便を解決するために商品を作ります。

昼も夜も定食を出す。

家族全員が違う料理を選べるようにする。

ご飯や味噌汁をおかわり自由にする。

セルフ飲み放題を作る。

デリバリーで自宅まで届ける。

これらは、

商品を増やすための施策ではありません。

別々の生活シーンで、

店を選ぶ理由を作るための設計です。


選ばれる理由は、一度作って終わりではない

地域の生活も変わります。

子どもが成長する。

高齢者が増える。

共働き世帯が増える。

物価が上がる。

人の働く時間が変わる。

デリバリーが普及する。

新しい住宅ができる。

近隣の会社が移転する。

競合店が閉店する。

新しい商業施設ができる。

その変化によって、

店が必要とされる場面も変わります。

だから、

一度コンセプトを決めたら終わりではありません。

地域を見続ける。

お客様の会話を聞く。

注文の変化を見る。

曜日や時間帯の違いを見る。

口コミを見る。

デリバリーで何が選ばれているかを見る。

そして、

新しい生活シーンを見つける。

飲食店経営とは、

完成した店を守り続けることではありません。

地域の暮らしの変化に合わせて、選ばれる理由を作り直し続けることです。


ニュースの裏には、未来への判断がある

すかいらーくによる資さんうどんの買収を、

「大手が人気のうどん屋を買った」

というニュースで終わらせることもできます。

しかし、それでは、

中小飲食店の経営には何も残りません。

見るべきなのは、

なぜ今だったのか。

なぜ資さんうどんだったのか。

どんな客層を取りたかったのか。

どんな生活シーンを補いたかったのか。

すかいらーくの既存ブランドだけでは、

どんな場面を取り切れていなかったのか。

そこまで考えることで、

ニュースが経営の教材になります。

大手の動きをそのまま真似する必要はありません。

大手が見ている未来を読み、

自分の地域に置き換えればいいのです。


お客様の人生の、どの一場面を任せてもらえるか

大手は店舗を増やしているように見えます。

しかし、

本当に増やしているのは店舗ではありません。

人の生活の中で、選ばれる瞬間です。

だから私は、

「何を売るか」より、

「どんな生活シーンで思い出される店になるか」

を考えます。

子どもの誕生日。

家族との休日。

仕事帰りの一人晩ご飯。

今日は料理をしたくない日。

少しだけ飲みたい夜。

飲んだ後に温かいものが欲しい時。

家族全員が違う料理を食べたい日。

店は、

こうした一場面を任せてもらうためにあります。

飲食店の競争は、

料理同士の勝負だけではありません。

価格同士の勝負だけでもありません。

店舗数や広告量だけの勝負でもありません。

お客様の人生の、どの一場面を任せてもらえるか。

疲れた日の夕食を任せてもらう。

子どもの誕生日を任せてもらう。

家族の団らんを任せてもらう。

一人で過ごす夜を任せてもらう。

家から出られない日の食事を任せてもらう。

その場面を丁寧に引き受け、

期待を裏切らず、

同じ状況が訪れた時に、

もう一度思い出してもらう。

私は、

それがこれからの中小飲食店経営だと考えています。

すかいらーくが資さんうどんを買収した理由を考えることは、

大企業のM&Aを分析することだけではありません。

自分の店が、

地域の暮らしの中で、

どんな役割を持つべきなのかを考えることです。

何を売る店なのか。

それだけでは弱い。

どんな時に必要とされる店なのか。

そこまで言葉にできた時、

店は初めて、

お客様の生活の中に居場所を持ちます。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。