同じパスタ屋なのに、なぜ3社はここまで経営戦略が違うのか。ジョリーパスタ・PISOLA・洋麺屋五右衛門を徹底比較して見えた、本当に売っているもの。

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

同じパスタ屋なのに、なぜ3社はここまで経営戦略が違うのか。ジョリーパスタ・PISOLA・洋麺屋五右衛門を徹底比較して見えた、本当に売っているもの。
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目次 Outline

1.同じパスタ屋なのに、まるで別業態に見える理由

「全部パスタ屋」で終わらせると、本質は見えない。

街を歩けば、パスタ専門店は数多くあります。

ジョリーパスタも、
PISOLA(ピソラ)も、
洋麺屋五右衛門も、

どれも「パスタ屋」です。

多くのお客様は、

「今日はパスタが食べたいから、どこへ行こうかな。」

という感覚で店を選んでいます。

しかし、経営者の視点で見ると、この3社はまったく違う会社です。

同じ「パスタ」という商品を提供しながら、

・誰に売るのか
・どんな時間を提供するのか
・どんな価格で利益を出すのか
・どんな店舗を増やしていくのか

その考え方が驚くほど違います。

つまり、競争しているように見えて、実は競争していないのです。


3社が本当に売っているもの

店舗一見すると本当に売っているもの
ジョリーパスタパスタ家族の日常使い・気軽な外食
PISOLAパスタリゾート空間で過ごす時間
洋麺屋五右衛門パスタ和風スパゲッティという少し特別な体験

ここが非常に重要です。

経営が強い会社ほど、

商品ではなく「利用シーン」を設計しています。


「何を売るか」ではなく、「どんな時間を売るか」

例えば、

ジョリーパスタへ行く人は、

「今日は家族で外食しよう。」

という気持ちです。

PISOLAへ行く人は、

「今日はゆっくり話したい。」

「少し贅沢な時間を過ごしたい。」

という目的があります。

一方で五右衛門は、

「和風パスタを食べたい。」

「チェーン店だけど、少し落ち着いた雰囲気で食事がしたい。」

というニーズを取り込んでいます。

つまり、

お客様が買っているのはパスタではありません。

その店で過ごす時間なのです。


だから、同じパスタでも経営戦略が変わる

もし3社とも、

「美味しいパスタがあります。」

だけで勝負していたら、

価格競争になります。

しかし現実には、

それぞれ違う価値を提供しているため、

お客様は用途によって自然に使い分けています。

例えば、

  • 家族で気軽に行くならジョリーパスタ
  • デートや女子会ならPISOLA
  • 一人で少し落ち着いて食事をするなら五右衛門

というように、

お客様の頭の中で役割が分かれているのです。

だから、この3社は同じパスタ業態でありながら、それぞれ成長を続けることができます。


中小飲食店も学ぶべきなのはここ

ここで多くの中小飲食店は、

「ジョリーパスタのメニューを真似しよう。」

「PISOLAみたいな内装にしよう。」

と考えてしまいます。

しかし、本当に学ぶべきなのはそこではありません。

学ぶべきなのは、

“誰の、どんな時間を設計しているのか”

という視点です。

商品は真似できます。

価格も真似できます。

しかし、

お客様の生活の中で、

「この店はこんな時に行く店」

というポジションは簡単には真似できません。

だから3社は、同じパスタを売りながら、まったく違う経営をしているのです。

2.まず比較してみる

ここでは、まず3社の特徴を感情を入れずに整理してみます。

「パスタ専門店」という共通点はありますが、数字や店舗設計を見るだけでも、それぞれがまったく違う戦略を採っていることが分かります。

3社比較一覧(2026年時点)

項目ジョリーパスタPISOLA洋麺屋五右衛門
客単価約1,300〜1,700円約2,000〜3,000円約1,500〜2,000円
店舗数約330店舗約40店舗約250店舗
主な立地ロードサイド・郊外郊外ロードサイド駅前・商業施設・都市部
メニュー構成パスタ・ピザ・ドリア・デザートパスタ・ピザ・リゾット・食べ放題・カフェ和風スパゲッティ中心・デザート
席数約80〜120席約90〜140席約40〜70席
回転率高い低め中程度
滞在時間約50〜70分約90〜150分約60〜90分
メインターゲットファミリー・普段使いカップル・女子会・家族女性・会社員・買い物客
アプリありなし(公式アプリなし)あり
LINE運用実施店舗あり一部店舗で実施店舗ごとに異なる

※店舗数やサービス内容は時期によって変動する場合があります。


一見すると似ている

この表だけを見ると、

・全てパスタ専門店

・価格帯も大きくは変わらない

・郊外店舗もある

という共通点があります。

しかし、少し視点を変えるだけで、大きな違いが見えてきます。

例えば、

ジョリーパスタは100席近い大型店舗で回転率を重視しています。

一方でPISOLAは、同じような席数でも滞在時間が2時間近くになることも珍しくありません。

五右衛門はさらに席数を絞り、都市部でも出店しやすい店舗設計になっています。

つまり、

「パスタを売る」という共通点はあっても、店の使われ方はまったく違うのです。


この比較だけでも違和感がある

特に注目したいのは、

  • 客単価
  • 席数
  • 回転率
  • 滞在時間

この4つです。

飲食店では、この4項目は互いに強く関係しています。

例えば、滞在時間が長くなれば、同じ席数でも回転率は下がります。

逆に回転率を上げたいなら、長時間滞在するような空間づくりは難しくなります。

つまり、

この数字は偶然ではなく、各社が意図的に設計した経営戦略の結果なのです。

この違いを理解すると、次章からの分析がさらに面白くなります。

「なぜジョリーパスタは回転率を重視するのか。」

「なぜPISOLAは、あえて回転率を下げても滞在時間を長くするのか。」

「なぜ五右衛門は都市部でも成立するのか。」

ここからは、それぞれの会社が本当に売っているものを、一社ずつ掘り下げていきます。

3.ジョリーパスタは何を売っているのか

まず結論から言えば、

ジョリーパスタが売っているのは、「家族の普段使い」です。

そして、その普段使いを実現するために、

来店頻度が自然に増える仕組み

を徹底的に設計しています。

ここが非常に重要です。

「来店頻度を上げること」が目的ではありません。

家族が日常的に利用しやすい店を作った結果、来店頻度が高くなる。

この順番なのです。


ジョリーパスタはゼンショーグループの一員

ジョリーパスタはゼンショーホールディングスのレストラン事業を担うブランドの一つです。

ゼンショーグループには、

  • すき家
  • はま寿司
  • ココス
  • ビッグボーイ
  • ジョリーパスタ
  • オリーブの丘

など、多数の外食ブランドがあります。

2025年度決算では、レストラン事業全体の売上は約1,560億円、営業利益は前年比50%を超える伸びとなり、堅調な成長を続けています。

つまりジョリーパスタは、

単独のパスタチェーンではなく、

巨大な外食グループのノウハウを活用できるブランドでもあります。


ジョリーパスタの店舗設計

まず特徴を整理してみます。

項目内容
運営会社ゼンショーグループ
店舗数約320店舗
主な立地郊外ロードサイド
客層ファミリー・子育て世帯・普段使い
価格帯比較的リーズナブル
滞在時間約1時間前後
回転率高め
店舗規模大型店舗が中心

約320店舗という規模は、日本でもトップクラスのパスタチェーンです。


商品を売っているようで、実は「飽きさせない仕組み」を売っている

ジョリーパスタへ行くと、

毎回新しいフェアを見かけます。

季節限定パスタ

北海道フェア

うになどの期間限定商品

イタリアフェア

こうした企画が年間を通して繰り返されています。

さらに、

  • 定番メニューが豊富
  • デザートも充実
  • ピザもある
  • ドリンクバーもある

一度来店しても、

「次はこれを食べよう」

と思える状態を維持しています。

つまり、

メニューを増やしているのではありません。

来店理由を増やしているのです。


アプリも来店理由を作る道具

ジョリーパスタは公式アプリを運営し、

  • クーポン
  • フェア情報
  • 新商品情報
  • キャンペーン

などを配信しています。

これも値引きが目的ではありません。

思い出してもらうこと。

つまり、

「今日はジョリーパスタでも行こうか。」

という選択肢を、お客様の頭の中に残し続けることが目的です。


子どもがいるから選ばれる

ジョリーパスタには、

  • キッズメニュー
  • お子様向けサービス
  • ドリンクバー
  • デザート

が充実しています。

つまり、

お父さんやお母さんだけを満足させようとしていません。

家族全員が満足できる設計になっています。

子どもが

「ジョリーパスタ行きたい。」

と言えば、

家族の外食先として自然に選ばれます。


本当に売っているもの

ここまで見ると、

ジョリーパスタが売っているのは、

パスタではありません。

フェアでもありません。

アプリでもありません。

ドリンクバーでもありません。

「今日は外食どうする?」

その問いに対して、

迷わず選べる家族の日常

を売っています。

だから、

フェアがある。

だから、

アプリがある。

だから、

キッズメニューがある。

全部が別々の施策ではありません。

「家族が何度でも利用したくなる日常使いの店」を作るための、一つの設計思想なのです。

これがジョリーパスタの本当の競争力だと、私は考えています。

4.PISOLAは何を売っているのか

PISOLAを初めて見た人は、

「おしゃれなイタリアン」

「リゾート風のパスタ屋」

という印象を持つでしょう。

しかし経営者が見るべきなのは、

料理でも、

内装でもありません。

数字です。

料理は結果です。

利益は設計から生まれます。


まず店舗を見てみる

PISOLAの特徴を整理すると、このようになります。

項目PISOLA
主な立地郊外ロードサイド
店舗規模約100席前後の大型店舗
客単価約2,000〜3,000円
滞在時間約90〜150分
回転率低め
メニュー生パスタ・窯焼きピザ・リゾット・前菜・ドルチェ
ドリンクプレミアムドリンクバー
コース食べ放題・飲み放題あり
主な利用目的デート・女子会・家族の記念日・ママ会

ジョリーパスタとは全く違います。


普通の人は料理を見る

多くのお客様は、

「生パスタがおいしい。」

「ピザがおいしい。」

「店内がおしゃれ。」

という感想を持ちます。

もちろん、それも間違いではありません。

しかし経営者は、

そこでは終わりません。


経営者が見るべき数字

例えば、PISOLAへ行った時、

見るべきなのは、

① 客単価

一人2,500円前後になっていないか。

前菜。

ピザ。

パスタ。

デザート。

ドリンク。

自然と注文が積み上がる構成になっています。


② 滞在時間

PISOLAのお客様は、

食事だけをして帰る人が少ない。

話す。

写真を撮る。

デザートを食べる。

ドリンクを飲む。

つまり、

時間を過ごす店になっています。


③ 注文点数

ここが非常に重要です。

例えばジョリーパスタなら、

一人一品で終わることも多いでしょう。

しかしPISOLAでは、

  • 前菜
  • ピザ
  • パスタ
  • ドリンク
  • デザート

というように、

一卓あたりの注文点数が自然に増えていきます。

つまり、

客単価を値上げで作っているのではありません。

注文数で作っている。

ここが大きな違いです。


リゾート空間は利益を作る装置

多くの人は、

リゾート風の店内を見て、

「おしゃれだから。」

と思います。

しかし経営者は逆です。

店内を見て、

「なぜ、この内装に投資したのか。」

を考えます。

答えは、

長く滞在してもらうためです。

長く滞在すると、

もう一杯ドリンクを頼む。

デザートを追加する。

食べ放題を選ぶ。

写真を撮る。

SNSへ投稿する。

つまり、

空間そのものが売上を生み出しているのです。


食べ放題も利益商品

「食べ放題だから利益が薄い。」

そう考える人は少なくありません。

しかし実際には、

飲食店の利益は、

商品の原価率だけでは決まりません。

例えば、

食べ放題を注文したグループでも、

  • ドリンクバー
  • アルコール
  • デザート
  • サイドメニュー

が追加されれば、

客単価はさらに上がります。

しかも、

食べ放題は

「今日はPISOLAへ行こう。」

という来店理由にもなります。

つまり、

食べ放題は値引きではなく、

集客装置として機能しています。


ジョリーパスタとの決定的な違い

ここでジョリーパスタと比較すると違いがよく分かります。

比較項目ジョリーパスタPISOLA
目的普段の食事特別な時間を過ごす
回転率高い低い
滞在時間短い長い
客単価やや低め高め
注文点数比較的少ない多い
空間価値食事中心空間そのものが商品

同じパスタ屋でも、

経営の設計思想はまるで違います。


PISOLAが本当に売っているもの

PISOLAは、

生パスタを売っている会社ではありません。

ピザを売っている会社でもありません。

リゾート風の内装を売っている会社でもありません。

本当に売っているのは、

「ゆっくり過ごしたくなる時間」です。

その時間を実現するために、

生パスタがあり、

窯焼きピザがあり、

プレミアムドリンクバーがあり、

食べ放題があり、

南国リゾートのような空間があります。

つまり料理は主役ではありません。

「長く過ごしたくなる理由」を構成する部品なのです。

だからPISOLAは、回転率を犠牲にしてでも客単価と注文点数を高め、一卓あたりの売上を最大化するという、ジョリーパスタとはまったく異なる経営戦略を採っているのです。

5.洋麺屋五右衛門は何を売っているのか

ジョリーパスタは、

家族の日常を売っています。

PISOLAは、

リゾートで過ごす時間を売っています。

では、洋麺屋五右衛門は何を売っているのでしょうか。

答えは、

「和の感性で食べる、少し上質なパスタ体験」です。

これは店舗、ブランド設計、出店戦略を見るとよく分かります。


まず店舗を見てみる

五右衛門の特徴を整理すると、このようになります。

項目洋麺屋五右衛門
運営会社日本レストランシステム
店舗数約250店舗
主な立地駅前・商業施設・都市部・一部ロードサイド
客単価約1,500〜2,000円
席数約40〜70席
滞在時間約60〜90分
回転率中程度
主な客層女性・会社員・買い物客・夫婦
ブランドコンセプトお箸で食べるスパゲッティ専門店

日本レストランシステムは、五右衛門だけでなく、星乃珈琲店や卵と私など約40ブランドを展開する多ブランド企業です。ブランドごとに明確な役割を持たせ、食のトレンドや利用シーンに対応する戦略を採っています。


なぜ駅前や商業施設が多いのか

新規出店を見ると、

  • ラゾーナ川崎
  • イオンモール
  • 新宿小田急エース
  • 阪急茨木
  • 新越谷ヴァリエ
  • ミナモア広島

など、駅ビルや商業施設への出店が非常に目立ちます。

これは偶然ではありません。

ジョリーパスタのように、

「今日は家族で車で行こう。」

という店ではなく、

買い物帰り

仕事帰り

映画のあと

駅で待ち合わせ

そんな生活動線の中に入り込むブランドなのです。

つまり、

目的地ではなく、生活導線上で選ばれる店を目指しています。


「お箸」がブランドを作っている

五右衛門最大の特徴は、

お箸で食べるスパゲッティです。

公式サイトでも、

ブランドの第一の特徴として掲げられています。

これは単なる食べ方ではありません。

ブランドそのものです。

パスタなのに、

どこか和食。

洋食なのに、

どこか日本人の食文化。

だから、

明太子

納豆

湯葉

海老とアボカド

醤油ベース

など、

和風スパゲッティが自然に成立します。

つまり、

イタリア料理ではなく、

日本人のためのスパゲッティ

というポジションを確立しているのです。


ハーフ&ハーフが意味するもの

五右衛門には、

人気のハーフ&ハーフメニューがあります。

普通のお客様は、

「二種類食べられてお得。」

と思います。

しかし経営者は違います。

考えるのは、

なぜこの商品を作ったのか。

です。

理由は三つあります。

お客様の価値店舗の価値
選ぶ楽しさが増える注文率が上がる
人気商品を組み合わせられる客単価を維持しやすい
「また次も来たい」が生まれる来店動機になる

つまり、

商品を増やしているのではありません。

選ぶ楽しさを増やしているのです。


和風だから長く売れ続ける

イタリア料理は流行があります。

しかし、

五右衛門は

「和風スパゲッティ」

という独自ジャンルを築いています。

だから価格競争にも巻き込まれにくい。

ブランドも古くならない。

他店との比較もされにくい。

これは非常に強いブランド戦略です。


日本レストランシステムの強み

日本レストランシステムは、

食材調達から加工、物流、店舗設計までをグループ内で一貫して行う体制を整えています。

また、多ブランド展開によって、お客様の利用シーンごとに異なるブランドを配置しています。

つまり、

五右衛門単体で戦っているのではありません。

会社全体として、

「今日は珈琲」

「今日はオムライス」

「今日は和風パスタ」

という複数の選択肢を持っているのです。


五右衛門が本当に売っているもの

五右衛門は、

パスタを売っている会社ではありません。

和風ソースを売っている会社でもありません。

お箸を売っている会社でもありません。

本当に売っているのは、

「日本人が安心して楽しめる、少し特別なパスタブランド」です。

だから、

駅前へ出店する。

商業施設へ入る。

お箸を使う。

和風メニューを増やす。

ハーフ&ハーフで選ぶ楽しさを作る。

すべてが一つの思想につながっています。

「イタリア料理を日本人向けに翻訳し、生活の中で自然に選ばれるブランドを作る。」

これこそが、洋麺屋五右衛門の経営戦略だと考えられます。

6.決算書から3社を比較すると何が見えるのか

ここまで、

ジョリーパスタ

PISOLA

洋麺屋五右衛門

それぞれの商品や店舗を見てきました。

しかし、RBRではここで終わりません。

本当に見るべきなのは決算書です。

なぜなら、

会社は口ではなく、

お金の使い方で本音を語るからです。


売上ではなく、何に投資しているかを見る

飲食店経営者が決算を見る時、

売上だけを見ても意味はありません。

見るべきなのは、

  • 利益率
  • 設備投資
  • 新規出店
  • 改装投資
  • システム投資
  • ブランド投資

です。

つまり、

会社がお金をどこへ使っているか。

そこに経営思想が表れます。


3社を比較すると見えてくるもの

比較項目ジョリーパスタ(ゼンショー)PISOLA五右衛門(日本レストランシステム)
利益の作り方回転率・店舗数客単価・滞在時間ブランド価値
投資対象出店・DX・物流・工場店舗空間・大型店ブランド・立地
店舗戦略多店舗展開厳選出店商業施設中心
強化しているものオペレーション効率一卓売上ブランド力
経営思想日常利用を増やす一回の満足度を高める長く選ばれるブランドを育てる

これだけでも、

3社が全く違う会社であることが分かります。


ゼンショーは「仕組み」に投資する会社

ゼンショーグループの有価証券報告書を見ると、

毎年多額の設備投資を行っています。

工場。

物流。

DX。

店舗改装。

新規出店。

2025年3月期にはグループ全体で約914億円の設備投資を実施しており、そのうちレストラン事業にも約98億円が投じられています。

つまり、

ジョリーパスタ単体ではなく、

グループ全体の効率を高めるための投資が中心です。

効率化。

標準化。

大量出店。

これがゼンショーの思想です。


PISOLAは「一店舗」に投資する会社

一方でPISOLAを見ると、

店舗数は決して多くありません。

しかし、

一店舗あたりの投資は非常に大きい。

広い店。

リゾート空間。

大型駐車場。

水景。

照明。

ソファ席。

普通の飲食店なら削る部分へ、

あえて投資しています。

つまり、

店舗数ではなく、

一店舗の価値を高めることに資本を使っているのです。


五右衛門は「ブランド」に投資する会社

日本レストランシステムを見ると、

特徴はブランド数の多さです。

星乃珈琲店

卵と私

五右衛門

OSLO COFFEE

CHELSEA CAFE

など、

利用シーンごとにブランドを持っています。

つまり、

一つの業態を全国へ広げるのではなく、

ブランド資産を積み重ねる会社なのです。

駅前。

商業施設。

百貨店。

ブランド価値が高い立地へ出店し続けるのも、

この考え方と一致しています。


決算書は会社の思想そのもの

普通の人は、

決算を見る時、

売上だけを見ます。

「売上が増えた。」

「利益が増えた。」

それだけです。

しかし、

経営者は違います。

例えば、

利益が出ているのに、

設備投資を増やしている会社。

なぜでしょう。

もっと強くなるためです。

逆に、

利益をほとんど配当に回す会社もあります。

つまり、

会社によって

利益の使い道が違う。

そして、

利益の使い道こそが、

経営思想なのです。


RBRは決算書をこう読む

私は決算書を見る時、

まず売上を見ません。

利益率も最後です。

最初に見るのは、

「今年、この会社は何にお金を使ったのか。」

です。

新店舗か。

改装か。

物流か。

工場か。

ブランドか。

システムか。

そこを見ると、

会社が5年後、

10年後に何を目指しているのかが見えてきます。


会社は、お金の使い方で未来を語る

ジョリーパスタも、

PISOLAも、

五右衛門も、

パスタを売っています。

しかし、

決算書を見ると、

本当に投資しているものは全く違います。

ジョリーパスタは、

仕組みへ投資する会社。

PISOLAは、

空間へ投資する会社。

五右衛門は、

ブランドへ投資する会社。

だから私は、

決算書を読む時、

売上よりも先に、

「どこへお金を使っているか。」

を見るようにしています。

そこには、商品では見えない会社の思想が、はっきりと現れているからです。

7.本当に売っているものはパスタではない

ここまで3社を比較してきました。

ジョリーパスタ。

PISOLA。

洋麺屋五右衛門。

どの店も、主力商品はパスタです。

しかし、店舗の作り方も、

出店する場所も、

お客様の滞在時間も、

メニューの構成も、

お金の使い方も、

まるで違います。

なぜ、同じパスタを売っているのに、ここまで違うのでしょうか。

答えは単純です。

3社は、同じ商品を扱っていても、同じ価値を売っているわけではないからです。

ただし、ここで安易に、

ジョリーパスタは家族を売っている。

PISOLAは空間を売っている。

五右衛門はブランドを売っている。

と結論づけてしまうと、少し浅い。

もう一段深く考える必要があります。

パスタは「商品」であって、「来店理由」のすべてではない

お客様が飲食店を選ぶ時、料理だけを見ているわけではありません。

今日は誰と行くのか。

何時に行くのか。

どれくらい予算を使えるのか。

早く食べたいのか。

ゆっくり話したいのか。

買い物の途中なのか。

子どもを連れているのか。

少し気分を変えたいのか。

こうした条件を無意識に重ねながら、店を選んでいます。

つまり、お客様が買っているのは料理だけではありません。

料理を含めた、

その場面に最も合う選択肢

を買っています。

パスタは、その選択肢を成立させる中心商品です。

しかし、3社が本当に設計しているのは、パスタそのものではありません。

パスタを使って、

「どんな日に選ばれる店になるか」

を設計しているのです。

ジョリーパスタは、何を売っているのか

ジョリーパスタには、

豊富なパスタ。

ピザ。

ドリア。

デザート。

ドリンクバー。

キッズメニュー。

季節ごとのフェア。

公式アプリ。

クーポン。

さまざまな商品と販促があります。

一つひとつを見ると、施策が多い会社に見えます。

しかし、これらはバラバラに存在しているわけではありません。

すべてが、

「家族で何度も使える店」

という方向へつながっています。

例えば、家族4人で来店した時、

全員が同じものを食べたいとは限りません。

子どもはミートソース。

母親は季節限定パスタ。

父親は大盛り。

食後にはドリンクバー。

子どもにはデザート。

こうして、家族の中で異なる希望があっても、一つの店の中で処理できます。

さらに、フェアが定期的に変われば、

「前回とは違うものを食べられる」

という理由も生まれます。

アプリから新商品やクーポンが届けば、忘れられにくくなります。

つまり、ジョリーパスタが作っているのは、単なる低価格でも、単なる豊富なメニューでもありません。

家族の誰かが反対しにくい店

です。

ここは非常に重要です。

家族外食では、一人が強く行きたい店よりも、全員が嫌ではない店の方が選ばれることがあります。

子どもが食べられる。

大人も選べる。

価格も極端に高くない。

車でも行きやすい。

長く待ちすぎない。

特別な準備もいらない。

ジョリーパスタは、この「選びやすさ」を積み上げています。

だから、ジョリーパスタが本当に売っているものを一言で表すなら、

単なる家族の普段使いではありません。

家族の外食を簡単に決められる安心

に近いのではないでしょうか。

ジョリーパスタ

家族の普段使い

家族全員の希望をまとめられる

外食先を迷わず決められる安心

この安心があるから、来店頻度が生まれます。

来店頻度を直接売っているのではありません。

何度でも選びやすい店を作った結果として、来店頻度が高くなるのです。

PISOLAは、何を売っているのか

PISOLAには、

リゾートを思わせる内装。

大型店舗。

ソファ席。

生パスタ。

窯焼きピザ。

リゾット。

プレミアムドリンクバー。

食べ放題。

飲み放題。

こうした特徴があります。

普通のお客様から見れば、

「おしゃれな店」

「ゆっくりできる店」

「料理の種類が多い店」

でしょう。

しかし、経営者が見ると、別の姿が見えてきます。

PISOLAは、席の回転を最優先にした店ではありません。

お客様に長く滞在してもらい、

複数の商品を注文してもらい、

一卓あたりの売上を高める設計です。

ただし、これも単に客単価を上げたいから、というだけではありません。

客単価を上げるためだけなら、料理の価格を高くする方法もあります。

しかしPISOLAは、

前菜を頼む。

ピザを分ける。

パスタを選ぶ。

ドリンクを飲む。

デザートを追加する。

会話を続ける。

という時間の流れを作っています。

つまり、お客様は一品の料理を買っているのではありません。

食事を中心にした長い時間

を買っています。

ここで大切なのは、PISOLAが必ずしも高級店ではないことです。

本格的なリゾートホテルでもありません。

しかし、日常の中で少しだけ非日常を感じられる。

高級店ほど緊張しない。

ファミリーレストランよりは特別感がある。

この中間地点にPISOLAはいます。

だから、PISOLAが本当に売っているものは、

単なるリゾート空間でもありません。

日常から少し離れて、誰かとゆっくり過ごせる理由

ではないでしょうか。

PISOLA

リゾート空間

長く滞在できる

料理と会話を重ねられる

日常から少し離れられる時間

PISOLAにとって、生パスタやピザは重要です。

しかし、それだけでは成立しません。

料理。

空間。

席。

照明。

ドリンクバー。

食べ放題。

すべてが合わさることで、

「今日はここでゆっくりしよう」

という利用目的が完成します。

PISOLAは、料理の価格だけで客単価を上げるのではありません。

過ごす時間を長くし、その時間の中に注文機会を増やしています。

つまり、売上は料理から生まれますが、

料理を注文させているのは空間と時間なのです。

五右衛門は、何を売っているのか

洋麺屋五右衛門は、ジョリーパスタやPISOLAとは少し違います。

駅前。

駅ビル。

ショッピングセンター。

商業施設。

人がすでに集まっている場所に入り込みます。

店内ではスパゲッティを箸で食べます。

メニューには和風の要素が多く、

ハーフ&ハーフという選び方もあります。

ここだけを見ると、

「和風パスタの専門店」

という説明で終わってしまいます。

しかし、それだけでは、長年にわたってブランドが続いてきた理由を説明できません。

五右衛門の強さは、

パスタを日本人向けにアレンジしたことだけではありません。

「五右衛門に行けば、こういう食事ができる」

という認識が、すでにお客様の中にできていることです。

箸で食べる。

和風のメニューがある。

セットがある。

ハーフ&ハーフがある。

一人でも入りやすい。

買い物や仕事の途中にも使いやすい。

これらが積み重なり、店を見た瞬間に利用方法が分かります。

つまり五右衛門は、お客様に毎回説明しなくてもよいブランドになっています。

これは、飲食店にとって非常に大きな強みです。

初めて見る個人店では、

価格は高くないか。

量は少なくないか。

一人で入ってよいか。

注文方法は難しくないか。

自分の口に合うか。

さまざまな不安が生まれます。

しかし、五右衛門には、

「五右衛門なら、あの感じだろう」

という予測があります。

その予測が、入店のハードルを下げます。

では、五右衛門が売っているのは安心なのでしょうか。

確かに安心はあります。

しかしジョリーパスタの安心とは違います。

ジョリーパスタは、家族全員をまとめる安心です。

五右衛門は、

少し気分を変えたい時にも、失敗しにくい安心

です。

洋食ではある。

しかし、箸で食べられる。

パスタではある。

しかし、和風の味が多い。

チェーン店ではある。

しかし、どこか専門店らしい。

日常的ではある。

しかし、少しだけ特別感がある。

この絶妙な中間が、五右衛門のポジションです。

五右衛門

和風スパゲッティ

日本人に分かりやすい食べ方

専門店らしさと安心感が両立する

少し気分を変えたい日に選べるブランド

五右衛門が売っているのは、単なる和風ではありません。

日常の動線上で選べる、失敗しにくい小さな特別感

に近いのではないでしょうか。

3社は、同じ需要を奪い合っているわけではない

ここまで整理すると、3社の違いはより明確になります。

ブランド表面上の商品提供している利用価値お客様が買っているもの
ジョリーパスタパスタ、ピザ、ドリア、キッズメニュー家族全員が使いやすい店外食先を簡単に決められる安心
PISOLA生パスタ、ピザ、食べ放題、ドリンクバー長く滞在し、会話と料理を楽しめる店日常から少し離れて過ごす時間
洋麺屋五右衛門和風スパゲッティ、ハーフ&ハーフ日常動線の中で専門店気分を味わえる店失敗しにくい小さな特別感

この3社は、すべてパスタ業態に見えます。

しかし、お客様が利用する場面は違います。

家族で夕食を決める場面。

友人と長く話したい場面。

買い物中に少し落ち着いて食べたい場面。

同じお客様でも、日によって選ぶ店は変わります。

つまり、3社は人を奪い合っているというより、

同じ人の中にある、異なる利用場面を取り合っている

のです。

ここを理解すると、飲食店の競争の見方が変わります。

競合とは、同じ料理を売る店ではありません。

同じ日に、

同じ人から、

同じ利用目的で選ばれる店です。

例えば、PISOLAの競合は、必ずしもパスタ専門店だけではありません。

長く話せるカフェ。

少しおしゃれなファミリーレストラン。

食べ放題レストラン。

カジュアルなイタリアン。

こうした店も競合になります。

五右衛門の競合も、パスタ店だけではありません。

駅ビルの定食屋。

オムライス専門店。

カフェレストラン。

一人で入りやすい和食店。

買い物途中に選ばれるすべての店が競合になり得ます。

ジョリーパスタも同じです。

競合はパスタ店ではなく、

家族で入りやすい回転寿司。

ファミリーレストラン。

うどん店。

焼肉店。

その日の家族会議に上がる店すべてです。

だから、業態だけを見て競合を決めると、本当の競争を見失います。

商品が同じでも、経営はまったく違う

ジョリーパスタは、

選びやすさを積み上げています。

PISOLAは、

滞在価値を積み上げています。

五右衛門は、

ブランドの分かりやすさを積み上げています。

どれも、パスタをおいしくするだけでは作れません。

店舗立地。

席数。

内装。

メニュー数。

価格。

セット商品。

販促。

アプリ。

出店方法。

設備投資。

これらを一つの方向に揃えることで、初めて「本当に売っているもの」が完成します。

料理がおいしくても、店舗設計が合っていなければ価値は伝わりません。

PISOLAのような内装で、30分で退店してほしいオペレーションを組めば矛盾します。

ジョリーパスタのような普段使いを狙いながら、家族4人で気軽に払えない価格になれば、利用頻度は下がります。

五右衛門がブランドの統一感を失えば、「五右衛門ならこういう店」という安心も薄れます。

つまり、強い業態とは、

良い商品を持っている店ではありません。

商品、空間、価格、立地、接客、販促が、一つの利用目的に向かって揃っている店

なのです。

ここまで考えると、3社が売っているものは、次のように整理できます。

ジョリーパスタ

家族の外食を簡単に成立させる安心

PISOLA

日常から少し離れ、誰かと長く過ごせる時間

洋麺屋五右衛門

生活動線の中で味わえる、失敗しにくい小さな特別感

ただし、これもまだ最終結論ではありません。

本当に重要なのは、

なぜ3社が、こうした価値を選んだのか。

そして、

その価値を実現するために、どの数字を伸ばし、どの数字を捨てているのか。

という点です。

ジョリーパスタは、何を増やすためにフェアとアプリを使うのか。

PISOLAは、なぜ回転率が下がる大型空間へ投資するのか。

五右衛門は、なぜ郊外の大型店ではなく、駅や商業施設へ入り続けるのか。

その答えを数字と店舗設計から読み解くことで、3社の経営戦略はさらに鮮明になります。

8.だから中小飲食店は何を学ぶべきなのか

ジョリーパスタ。

PISOLA。

洋麺屋五右衛門。

3社を比較して分かるのは、人気のパスタや価格設定ではありません。

本当に学ぶべきなのは、

誰の、どんな食事シーンを取りに行くのかを先に決めていること

です。

多くの中小飲食店は、新しい店を見ると、すぐに商品へ目を向けます。

「あのパスタがおいしそうだ。」

「あの食べ放題は集客できそうだ。」

「あの内装なら若い女性が来そうだ。」

「あのセット価格なら注文されそうだ。」

しかし、料理だけを真似しても、その会社と同じ結果にはなりません。

なぜなら、強い飲食店の商品は、経営戦略から切り離された単品ではないからです。

立地。

店舗面積。

席数。

客単価。

滞在時間。

回転率。

メニュー数。

注文方法。

販促。

設備投資。

人員配置。

これらが、すべて一つの利用シーンに向かって設計されています。

真似するべきものを間違えてはいけない

中小飲食店が大手を研究すること自体は、非常に重要です。

問題は、何を真似するかです。

料理を真似する

PISOLAの生パスタが人気だから、自店でも生パスタを始める。

しかし、厨房設備も違えば、客層も違います。

お客様が短時間で定食を食べる店に生パスタを導入しても、その商品の価値を伝える時間がありません。

価格を真似する

ジョリーパスタがこの価格で売っているから、自店も同じ価格にする。

しかし、仕入れ量も物流も製造体制も違います。

同じ価格にすれば、利益だけがなくなる可能性があります。

内装を真似する

PISOLAのようなリゾート風の内装にすれば、客単価が上がると考える。

しかし、内装だけを変えても、

メニューが一品完結型。

ドリンクの追加がない。

デザートが弱い。

スタッフが早い退店を促す。

この状態なら、滞在時間も注文点数も増えません。

メニューを真似する

五右衛門のハーフ&ハーフが人気だから、自店でも二種類を組み合わせる。

しかし、五右衛門には、長年積み上げたブランドと豊富な選択肢があります。

単に皿を二つに分けるだけでは、同じ価値にはなりません。

表面だけを真似すると、商品数と作業だけが増えます。

強い会社が真似されにくいのは、料理が特殊だからではありません。

商品から立地まで、すべてが一つの目的につながっているからです。

最初に決めるべきなのは「何を売るか」ではない

中小飲食店が最初に考えるべき問いは、

「何を売るか」

ではありません。

考えるべきなのは、

誰の、どんな食事シーンを取りに行くのか

です。

例えば、同じ地域の飲食店でも、狙える場面は数多くあります。

仕事中の一人ランチ。

家族の休日外食。

共働き家庭の夕食。

料理をしたくない日の持ち帰り。

子どもと一緒に気兼ねなく過ごす食事。

友人と長く話したい夜。

高齢者の普段の昼食。

夫婦で少しだけゆっくりしたい日。

飲んだ後の食事。

誕生日や記念日。

地域の集まり。

お客様は毎日、同じ理由で飲食店へ行くわけではありません。

同じ人でも、

月曜日は一人で早く食べたい。

金曜日は仲間と飲みたい。

日曜日は家族で食事をしたい。

疲れた日は自宅へ届けてほしい。

場面によって、求める店は変わります。

だから中小飲食店の競争相手は、同じ料理を売る店とは限りません。

自店が取りに行く食事シーンで、同じ選択肢に入る店が競合です。

3社から学べる営業戦略は違う

3社の経営戦略を、中小飲食店が応用する視点で整理すると、次のようになります。

会社取りに行く食事シーン営業戦略の中心中小飲食店が学べることそのまま真似しにくい部分
ジョリーパスタ家族の普段の外食来店頻度と選びやすさフェア、アプリ、キッズ対応、幅広い選択肢大量仕入れ、物流、多店舗運営、低価格
PISOLA誰かと長く過ごす食事滞在時間と一卓売上空間、注文点数、コース、ドリンク、利用目的の設計大型物件、高額な内装投資、大きな駐車場
洋麺屋五右衛門生活動線上の少し特別な食事ブランドと立地の一致専門性、分かりやすさ、一人利用、商品名、独自の食べ方駅・SCへの全国出店、多ブランド運営、企業信用

どの会社も参考になります。

ただし、中小飲食店が参考にしやすい部分と、しにくい部分があります。

ジョリーパスタから学ぶべきこと

ジョリーパスタから学ぶべきなのは、低価格ではありません。

何度も来店できる理由を作る営業戦略です。

季節フェアを行う。

新商品を定期的に投入する。

アプリで来店を促す。

子どもが選べる商品を用意する。

家族全員が食べられる選択肢を持つ。

食後のドリンクやデザートを用意する。

これらはすべて、

「一度来てもらう」

ではなく、

「次に来る理由を作る」

ための設計です。

中小飲食店でも、この発想は使えます。

毎月メニューを大量に変える必要はありません。

季節ごとに一品だけ変える。

常連限定の商品を作る。

家族の中で注文できない人がいないか確認する。

LINEで次回来店の理由を届ける。

子どもが店を選びたくなる仕掛けを作る。

ジョリーパスタから学ぶべきなのは、規模ではなく、

来店頻度を偶然に任せないことです。

ただし、ジョリーパスタの戦略をそのまま再現するには、商品数、価格、オペレーション、仕入れ、広告のすべてに規模が必要です。

そのため、中小飲食店は全体を真似るのではなく、

「次に来る理由を作る」

という構造だけを抜き出すべきです。

PISOLAから学ぶべきこと

PISOLAから学ぶべきなのは、南国風の内装ではありません。

客単価を価格だけで作らない営業戦略です。

普通の飲食店は、客単価を上げようとすると値上げを考えます。

しかし、客単価は価格だけで決まりません。

客単価は、

注文点数

商品構成

滞在時間

利用人数

利用目的

によっても変わります。

PISOLAでは、一人一品を食べて終わるのではなく、

前菜を分ける。

ピザを分ける。

パスタを選ぶ。

ドリンクを飲む。

デザートを追加する。

食べ放題や飲み放題を利用する。

一回の来店の中に、複数の注文機会があります。

だから、単品価格を極端に上げなくても、一卓の売上を作れます。

これは中小飲食店にとって非常に重要です。

例えば、

定食を売って終わるのか。

食後のコーヒーまで売るのか。

単品料理を一人一皿で売るのか。

卓上で共有できる商品を作るのか。

ただ酒を置くのか。

飲みたくなる時間と仕組みを作るのか。

同じ客数でも、店内の設計によって売上は変わります。

PISOLAから学ぶべきなのは、

一人のお客様を高くすることではなく、一回の利用を豊かにすることで売上を積み上げること

です。

ただし、PISOLAの大型店舗や空間投資をそのまま真似るのは危険です。

滞在時間が長くなれば、回転率は下がります。

席数が少ない店で長時間滞在だけを促せば、売上が落ちる可能性があります。

PISOLAの戦略は、

十分な席数。

高い注文点数。

ドリンク。

コース。

駐車場。

大型商圏。

これらが組み合わさって成立しています。

空間だけを切り取ってはいけません。

五右衛門から学ぶべきこと

五右衛門から学ぶべきなのは、箸でパスタを食べることではありません。

一言で説明できるブランドを作る営業戦略です。

「お箸で食べるスパゲッティ専門店」

これだけで、五右衛門の特徴はかなり伝わります。

イタリア料理店でもない。

普通のファミリーレストランでもない。

和食店でもない。

しかし、お客様は何を食べられる店なのかを理解できます。

この分かりやすさは、中小飲食店にとって非常に参考になります。

中小飲食店は、大手のような広告費を使えません。

だから、説明を重ねなければ魅力が伝わらない店は不利です。

店名を見ても分からない。

看板を見ても分からない。

Instagramを何枚も見ないと分からない。

入店してメニューを開くまで価値が分からない。

これでは、比較される段階で負けてしまいます。

中小飲食店ほど、

「この店は、こんな時に使う店」

と一言で分かる必要があります。

例えば、

家族全員が違うものを食べられる定食屋。

仕事帰りに一人でも飲める食堂。

子どもと一緒に夕食を任せられる店。

大阪のうまいものを一度に楽しめる店。

料理をしたくない日のための地域食堂。

こうした言葉が、商品、写真、看板、接客、メニューにまで通っていれば、ブランドになります。

五右衛門から学ぶべきなのは、

奇抜な商品ではなく、誰にでも理解できる独自性です。

では、どの会社の営業戦略が最も高度に参考になるのか

3社の中で、中小飲食店が最も高度に参考にできるのは、どの会社でしょうか。

これは、単純に一社へ決めることはできません。

目的によって違います。

中小飲食店の課題最も参考になる会社理由
再来店が少ないジョリーパスタフェア、アプリ、家族対応で次回来店の理由を作っている
客単価が低いPISOLA滞在時間と注文点数から一卓売上を設計している
店の特徴が伝わらない五右衛門商品、食べ方、店名、立地が一つのブランドに統一されている
家族客を増やしたいジョリーパスタ家族内の異なる需要を一店舗で処理している
目的来店を増やしたいPISOLA食事だけでなく、長く過ごす目的を作っている
通行客や比較客に選ばれたい五右衛門瞬間的に理解できる専門性と安心を持っている

しかし、経営戦略の深さという点で見ると、中小飲食店にとって最も考える材料が多いのは、PISOLAです。

なぜなら、PISOLAは大手の大量出店や物流だけで勝っているのではなく、

一店舗の中で、客単価、注文点数、滞在時間、空間価値を組み立てているからです。

ジョリーパスタの強さには、ゼンショーグループの規模が大きく関係します。

仕入れ。

商品開発。

物流。

アプリ。

広告。

店舗網。

これらは中小飲食店が簡単に再現できません。

五右衛門の強さにも、長年のブランド蓄積と商業施設への出店能力があります。

ブランド力。

企業信用。

物件獲得力。

多店舗運営。

これも、すぐに真似できるものではありません。

一方、PISOLAが作っている、

滞在時間を売上へ変える。

一卓あたりの注文点数を増やす。

空間とメニューを連動させる。

食べ放題を来店目的にする。

ドリンクを利益商品にする。

という考え方は、規模を小さくしても応用できます。

ただし、最も高度に参考になることと、最も真似しやすいことは違います。

PISOLAの戦略は、参考になるからこそ危険でもあります。

空間投資。

大型物件。

長時間滞在。

豊富なメニュー。

食べ放題。

これらは、設計を間違えれば固定費と人件費だけが増えます。

だからPISOLAを学ぶ時は、内装ではなく、

なぜ、その空間で注文点数が増えるのか

を見なければなりません。

実際には、3社を組み合わせる

中小飲食店が目指すべきなのは、3社のどれかになることではありません。

自店に必要な部分を組み合わせることです。

ジョリーパスタからは、

次回来店の理由を作る仕組み

を学ぶ。

PISOLAからは、

一回の来店価値と一卓売上を高める設計

を学ぶ。

五右衛門からは、

一言で伝わる専門性とブランド

を学ぶ。

この三つを自店の規模へ落とし込むと、非常に強い店になります。

例えば、

「大阪のうまいもんを、家族全員が自由に楽しめる地域食堂」

という店を作るとします。

五右衛門のように、一言で特徴が伝わる。

ジョリーパスタのように、家族全員が違う料理を選べる。

PISOLAのように、料理だけでなく、飲み物や追加注文まで楽しめる。

さらに、

季節商品で再来店理由を作る。

子どもが選びたくなるサービスを入れる。

一人客でも使える定食を用意する。

夜は飲み放題や共有料理で一卓売上を高める。

デリバリーで料理をしたくない日の需要を取る。

こうして、他社の料理ではなく、

営業戦略の構造

を自店へ移植します。

中小飲食店は「全部のお客様」を狙ってはいけない

多くの中小飲食店は、

家族にも来てほしい。

一人客にも来てほしい。

若者にも来てほしい。

高齢者にも来てほしい。

ランチも売りたい。

夜も売りたい。

宴会も取りたい。

デリバリーも伸ばしたい。

と考えます。

気持ちは分かります。

売上が欲しいからです。

しかし、誰でも来られる店と、誰かに選ばれる店は違います。

すべてのお客様を拒否する必要はありません。

ただし、

最初に誰の、どんな場面を最も強く取るか

は決めなければなりません。

例えば、

「家族が全員違う料理を食べたい日の夕食」

を取りに行くなら、

メニュー数。

子ども対応。

席。

価格。

提供時間。

駐車場。

ドリンク。

すべてを家族利用に合わせる必要があります。

「仕事帰りに一人で少し飲みたい夜」

を取りに行くなら、

カウンター。

一人前商品。

注文のしやすさ。

滞在時間。

接客距離。

価格。

すべてが変わります。

「友人と2時間話したい昼」

を取りに行くなら、

ドリンク。

デザート。

座席。

音量。

追加注文。

予約。

ここを整えなければなりません。

食事シーンが決まれば、必要な商品が決まります。

必要な席が決まります。

必要な価格が決まります。

必要な人員が決まります。

つまり、メニューから経営を作るのではありません。

取りたい食事シーンから、経営全体を逆算するのです。

RBRが大手外食企業を見る理由

大手を見て、

「資本力があるからできる。」

「店舗数が多いから強い。」

で終わらせるのは簡単です。

確かに、大手には中小にはない資本があります。

しかし、資本があるから戦略が生まれるのではありません。

どの場面を取るのかを決めているから、資本の使い道が決まるのです。

ジョリーパスタは、家族の日常利用を取る。

だから、メニューを広げる。

フェアを続ける。

アプリを使う。

キッズを強化する。

PISOLAは、長く過ごす食事を取る。

だから、大型店舗へ投資する。

ソファ席を作る。

ドリンクバーを充実させる。

食べ放題を用意する。

五右衛門は、生活動線上の専門店需要を取る。

だから、駅や商業施設へ出店する。

箸という独自性を守る。

和風スパゲッティを磨く。

ブランドの統一感を崩さない。

すべての施策には、理由があります。

RBRが大手外食企業から学ぶのは、料理の作り方ではありません。

店を見る視点です。

この店は、誰のどんな場面を取ろうとしているのか。

そのために、何へお金を使っているのか。

何を増やし、何を捨てているのか。

どの数字を最優先しているのか。

ここまで見ると、飲食店は料理の集合体ではなく、経営者の意思によって設計された仕組みに見えてきます。

中小飲食店が最初に書くべき一文

新しい商品を作る前に、

価格を変える前に、

内装を変える前に、

広告を出す前に、

まず次の一文を書いてみるべきです。

私たちの店は、誰が、どんな日に、誰と、何のために使う店なのか。

この一文に答えられなければ、商品を増やしても経営は強くなりません。

逆に、この一文が明確なら、

必要な料理。

必要な価格。

必要な席。

必要な接客。

必要な広告。

必要な設備。

そのすべてが見えてきます。

中小飲食店が大手から学ぶべきなのは、料理でも、価格でも、内装でもありません。

お客様の生活の中に、明確な利用シーンを作ること。

そして、その利用シーンを実現するために、商品、店舗、接客、販促、数字を一つの方向へ揃えることです。

強い店とは、何でもできる店ではありません。

「こんな時には、この店」と思い出される店です。

9.3社は誰と戦っているのか

ジョリーパスタ。

PISOLA。

洋麺屋五右衛門。

3社ともパスタを主力商品とする飲食店です。

飲食業界の分類だけを見れば、3社は同じ市場にいるように見えます。

しかし、本当にそうでしょうか。

ジョリーパスタへ行こうとしている家族は、洋麺屋五右衛門と比較しているのでしょうか。

PISOLAで友人と2時間過ごそうとしている人は、ジョリーパスタと迷っているのでしょうか。

買い物途中に五右衛門へ入る人は、本当にパスタ専門店だけを比較しているのでしょうか。

ここを考えると、3社は同じパスタ市場で正面から戦っているのではなく、

それぞれ違う食事シーンの中で、まったく別の業態と競争している

ことが見えてきます。

競合は「同じ料理を売る店」ではない

飲食店経営では、競合を料理の種類で決めてしまいがちです。

ラーメン店の競合はラーメン店。

焼肉店の競合は焼肉店。

パスタ店の競合はパスタ店。

確かに、商品検索では比較されることがあります。

しかし、お客様は毎回、

「今日はどのパスタ店へ行こうか」

と考えているわけではありません。

実際には、

「今日は家族でどこへ行こうか」

「友人とゆっくり話せる店はどこか」

「買い物の途中で何を食べようか」

「一人でも入りやすい店はどこか」

という順番で考えています。

料理の種類は、その後に来ることもあります。

つまり、本当の競合とは、

同じお客様が、同じ場面で、同じ目的を満たすために比較する店

です。

この定義に変えると、3社の競合は大きく変わります。

ジョリーパスタは誰と戦っているのか

ジョリーパスタの主な利用場面を考えてみます。

休日の家族外食。

平日の夕食。

子どもを連れた食事。

買い物帰りの食事。

特別な記念日ではなく、普段の外食。

この時、家族は何を比較するでしょうか。

候補に入るのは、必ずしもパスタ専門店ではありません。

ガスト。

サイゼリヤ。

ココス。

びっくりドンキー。

回転寿司。

うどん店。

ファミリー向け焼肉店。

場合によっては、フードコートも入ります。

なぜなら、家族が解決したいのは、

「パスタを食べること」

ではないからです。

家族全員が食べられる。

子どもを連れて入りやすい。

価格が予測できる。

駐車場がある。

料理の選択肢が多い。

長く待ちすぎない。

この条件を満たす店を探しています。

つまり、ジョリーパスタが戦っているのは、パスタ市場ではありません。

家族の普段使い外食市場です。

ジョリーパスタの本当の競合

表面的な競合実際に比較される可能性が高い店
他のパスタ専門店ファミリーレストラン
イタリアンチェーン回転寿司
洋食店ハンバーグ店
うどん・そば店
焼肉チェーン
フードコート

ジョリーパスタが勝つためには、パスタのおいしさだけでは足りません。

家族の中に一人でも、

「食べたいものがない」

「子どもを連れて行きにくい」

「価格が高い」

と感じる人がいれば、別の店へ流れます。

だからジョリーパスタには、

パスタ以外の商品。

キッズメニュー。

ドリンクバー。

デザート。

季節フェア。

アプリクーポン。

幅広い価格帯。

といった機能が必要になります。

ジョリーパスタは、他のパスタ店より本格的であることだけを競っているのではありません。

家族会議で否決されないこと

を競っているのです。

これは非常に大きな違いです。

PISOLAは誰と戦っているのか

PISOLAは、さらに競争市場が違います。

お客様がPISOLAを選ぶ日は、

単にパスタを食べたい日とは限りません。

友人とゆっくり話したい。

恋人と食事をしたい。

家族で少し特別な時間を過ごしたい。

ママ友と長く滞在したい。

誕生日を祝いたい。

食べ放題を楽しみたい。

こうした目的を持って来店します。

この場面で比較されるのは、ジョリーパスタだけではありません。

カフェ。

ホテルのランチ。

カジュアルイタリアン。

食べ放題レストラン。

少し上質なファミリーレストラン。

個室のある居酒屋。

郊外のベーカリーレストラン。

ショッピングモール内のレストラン。

こうした業態も競合になります。

PISOLAへ行くお客様が買っているのは、

一皿の生パスタだけではありません。

席。

空間。

会話できる時間。

飲み物。

複数の料理を分ける楽しさ。

日常から少し離れた感覚。

それらをまとめて買っています。

つまりPISOLAが戦っているのは、

郊外の滞在型レジャー外食市場

です。

PISOLAの本当の競合

表面的な競合実際に比較される可能性が高い店
パスタ専門店長居できるカフェ
イタリアン食べ放題レストラン
ピザ専門店ベーカリーレストラン
ホテルランチ
個室・半個室の飲食店
少し上質なファミリーレストラン

ここで重要なのは、PISOLAが料理の種類だけで競争していないことです。

仮に、他店のパスタの方がおいしかったとしても、

席が狭い。

話しにくい。

ドリンクの選択肢が少ない。

長時間滞在しにくい。

複数人で料理を分けにくい。

この状態なら、PISOLAの代わりにはなりません。

PISOLAの競争力は、

「最もおいしいパスタ店になること」

だけではありません。

誰かと長く過ごす日の目的地になること

です。

だから、料理だけを比較してPISOLAを分析すると、本質を見失います。

五右衛門は誰と戦っているのか

五右衛門の競争市場は、さらに独特です。

五右衛門は駅前、駅ビル、ショッピングセンター、商業施設など、人がすでに集まっている場所へ出店しています。

お客様は必ずしも、

「今日は五右衛門へ行くために、この商業施設へ来た」

とは限りません。

買い物の途中。

仕事帰り。

映画の前後。

乗り換えの途中。

待ち合わせ。

施設内で食事場所を探している時。

その場で複数の店と比較されます。

この時、比較対象になるのは、同じパスタ店だけではありません。

オムライス専門店。

定食屋。

とんかつ店。

和食店。

カフェレストラン。

韓国料理。

中華料理。

フードコート。

駅ビルの中にある、同じ価格帯のほぼすべての飲食店です。

五右衛門が戦っているのは、

駅・商業施設内の選択市場

です。

五右衛門の本当の競合

表面的な競合実際に比較される可能性が高い店
パスタ専門店オムライス専門店
イタリアン和定食店
洋食店とんかつ店
カフェレストラン
商業施設内の中華・韓国料理
フードコート

この市場では、お客様に長時間考えてもらえません。

店頭を見た瞬間に、

何の店か。

いくらくらいか。

一人で入れるか。

自分が食べられるものがあるか。

少し特別感があるか。

これらが伝わる必要があります。

そこで効いてくるのが、

「お箸で食べるスパゲッティ専門店」

という分かりやすさです。

和風メニュー。

ハーフ&ハーフ。

専門店らしい商品写真。

統一されたブランド。

これらが、お客様の判断時間を短くします。

五右衛門が競っているのは、単純なパスタの品質だけではありません。

商業施設の中で、短時間で選ばれる力

です。

3社は、競争している市場そのものが違う

ここまで整理すると、3社の本当の競争市場は次のようになります。

ブランド表面的な市場実際に競争している市場比較される店
ジョリーパスタパスタ専門店市場家族の普段使い外食市場ファミレス、回転寿司、うどん、焼肉
PISOLAイタリアン・パスタ市場郊外の滞在型レジャー外食市場カフェ、食べ放題、ホテルランチ、個室店
洋麺屋五右衛門和風パスタ市場駅・商業施設内の選択市場定食、オムライス、とんかつ、カフェ

同じパスタを売っていても、

比較される相手が違います。

選ばれる理由も違います。

必要な立地も違います。

必要な店舗面積も違います。

見るべき数字も違います。

ジョリーパスタは、

来店頻度。

家族人数。

商品選択率。

再来店。

フェア反応。

こうした数字が重要になります。

PISOLAは、

一卓売上。

注文点数。

滞在時間。

グループ人数。

ドリンク注文率。

コース利用率。

こうした数字が重要です。

五右衛門は、

施設通行量。

入店率。

ランチとディナーの回転。

一人客比率。

セット注文率。

店舗面積あたりの売上。

こうした数字が重要になります。

すべてパスタ屋だからといって、同じKPIで比較することはできません。

ジョリーパスタと五右衛門は、本当に競合なのか

もちろん、両店が近い場所にあれば、一部のお客様は比較するでしょう。

しかし、重なるのは市場の一部分です。

例えば、家族4人が車で夕食へ行く場合、ジョリーパスタは候補になりやすい。

一方、仕事帰りに駅ビルで一人で食事をする場合、五右衛門が候補になりやすい。

同じ人でも、場面によって選択肢が変わります。

つまり、

ジョリーパスタの顧客と五右衛門の顧客が別人なのではありません。

同じ人の中にある、異なる需要を取っている

のです。

昼は五右衛門。

休日の夜はジョリーパスタ。

友人との食事はPISOLA。

こうした使い分けは自然に起こります。

だから飲食店の競争を考える時、

「どの客層を取るか」

だけでは不十分です。

同じ30代女性でも、

一人で買い物中なのか。

子どもと一緒なのか。

友人と会っているのか。

夫婦で外食しているのか。

利用場面によって選ぶ店は変わります。

見るべきなのは属性だけではなく、

その瞬間にお客様が置かれている状況です。

PISOLAの競合は、ジョリーパスタよりカフェかもしれない

PISOLAとジョリーパスタは、どちらも郊外にあり、パスタを提供しています。

そのため、一見すると強い競合関係に見えます。

しかし、利用目的を考えると違いがあります。

ジョリーパスタは、

家族で食事を済ませる。

全員が食べたいものを選ぶ。

手頃な価格で利用する。

という役割が強い。

PISOLAは、

長く話す。

料理を分ける。

空間を楽しむ。

飲み物やデザートまで利用する。

という役割が強い。

そのためPISOLAは、ジョリーパスタよりも、

長く滞在できるカフェ。

食べ放題店。

ホテルランチ。

ベーカリーレストラン。

こうした店と強く競合している可能性があります。

お客様の予算を奪い合っているだけではありません。

お客様の時間を奪い合っているのです。

ここがPISOLAの戦略を理解するうえで重要です。

飲食店は、胃袋だけを取り合っているわけではありません。

休日の2時間。

友人と会話する場所。

家族で過ごす時間。

その時間をどこに預けてもらうかを競っています。

五右衛門は「何を食べるか決まっていない人」と戦っている

五右衛門が商業施設で向き合うお客様は、最初からパスタを食べると決めているとは限りません。

館内を歩きながら、

和食にするか。

洋食にするか。

軽く食べるか。

しっかり食べるか。

一人で入りやすいか。

価格は高すぎないか。

この場で決めています。

つまり五右衛門は、他のパスタ店と戦うだけでなく、

まだ食べるものを決めていない人の選択肢に入る戦い

をしています。

この競争では、専門性と安心感の両方が必要です。

専門性だけが強すぎれば、好みが分かれます。

安心感だけでは、他店との差がなくなります。

五右衛門は、

箸。

和風。

スパゲッティ専門店。

ハーフ&ハーフ。

という独自性を持ちながら、奇抜すぎない。

だから商業施設の中で、

「少し気分を変えたい。でも失敗したくない」

という需要を取れます。

五右衛門が比較されているのは、料理ジャンルではありません。

今日の食事として、ちょうどよいかどうか

です。

中小飲食店も競合を間違えている

この考え方は、中小飲食店にも当てはまります。

例えば、地域の定食屋が、自店の競合を近隣の定食屋だけだと考えていたとします。

しかし、お客様が求めているのが、

「仕事帰りに料理をせず夕食を済ませたい」

という場面なら、競合はもっと広がります。

コンビニ弁当。

スーパーの総菜。

牛丼店。

ファミリーレストラン。

デリバリー。

冷凍食品。

場合によっては、自宅で簡単に作る麺料理まで競合です。

また、

「家族全員が違う料理を食べたい日の夕食」

を取りに行くなら、

定食屋だけではありません。

回転寿司。

フードコート。

ファミリーレストラン。

焼肉店。

デリバリーの複数注文。

こうした選択肢と競っています。

競合を料理で決めると、見える範囲が狭くなります。

競合は、

お客様が自店を選ばなかった時、その代わりに何を選んだのか

で考えるべきです。

RBRが考える競合分析

競合店を調べる時、多くの経営者は、

価格。

商品数。

口コミ。

席数。

営業時間。

こうした情報を比較します。

もちろん、それも必要です。

しかし、その前に考えるべきことがあります。

その店は、

誰の、

どんな日に、

どんな問題を解決しているのか。

お客様は、その店を選ばなかった時、どこへ行くのか。

その店は、お客様の何を奪い合っているのか。

胃袋なのか。

予算なのか。

時間なのか。

会話する場所なのか。

家族の意思決定なのか。

日常の安心なのか。

少し特別な気分なのか。

ここまで見なければ、本当の競争市場は分かりません。

競合店を見るのではなく、競争の場面を見る

ジョリーパスタ。

PISOLA。

洋麺屋五右衛門。

同じパスタ屋に見えます。

しかし、実際には違う市場で戦っています。

ジョリーパスタは、

家族の外食先を決める場面

で戦っています。

PISOLAは、

誰かと長く過ごす場所を決める場面

で戦っています。

洋麺屋五右衛門は、

駅や商業施設で、今日何を食べるか決める場面

で戦っています。

だから、3社を単純に店舗数、価格、パスタの種類だけで比較しても、本当の戦略は見えません。

見るべきなのは、

どの店と似ているかではありません。

どの瞬間に、どの選択肢と比較されているかです。

飲食店の競争は、料理同士の戦いではありません。

お客様の生活の中にある、

一つひとつの食事シーンを取る戦いです。

強い店は、すべてのお客様を取りに行きません。

すべての食事需要も取りに行きません。

その代わり、

「この場面なら、この店」

という一場面を強く取りに行きます。

だから中小飲食店も、

近くの同業店だけを見てはいけません。

自店のお客様が、

来店しなかった日に何を選んでいるのか。

どこで食べているのか。

あるいは、外食そのものをやめているのか。

そこまで見た時、初めて本当の競合が見えてきます。

競合とは、同じ料理を売る店ではありません。

お客様の同じ時間、同じ予算、同じ利用目的を取りに来るすべての選択肢なのです。

10.まとめ

ジョリーパスタ。

PISOLA。

洋麺屋五右衛門。

同じパスタを売る店です。

同じイタリアン業態に見えます。

しかし、ここまで比較すると、経営者が見ているものはまったく違いました。

ジョリーパスタは、

家族が普段使いしやすい店を作り、

何度でも選ばれる理由を積み上げています。

PISOLAは、

料理だけでなく空間と時間を設計し、

一回の来店価値と一卓売上を高めています。

洋麺屋五右衛門は、

駅や商業施設の生活動線に入り込み、

短時間で理解され、安心して選ばれるブランドを築いています。

3社ともパスタを売っています。

しかし、本当に作っているものはパスタではありません。

ブランド本当に設計しているもの
ジョリーパスタ家族の外食を簡単に成立させる理由
PISOLA誰かと長く過ごしたくなる時間
洋麺屋五右衛門日常の中で選べる、失敗しにくい小さな特別感

さらに、3社は同じ市場で戦っているわけでもありません。

ジョリーパスタは、

家族の外食先を決める場面で戦っています。

PISOLAは、

誰かと長く過ごす場所を決める場面で戦っています。

洋麺屋五右衛門は、

駅や商業施設の中で、今日何を食べるかを決める場面で戦っています。

つまり、飲食店の競争は、

同じ料理を売る店同士の勝負ではありません。

同じお客様の、

同じ時間。

同じ予算。

同じ利用目的。

その一場面を、どの店が任せてもらうかという競争です。

強い会社は、料理を作っているのではない

もちろん、料理は大切です。

料理がおいしくなければ、再来店は生まれません。

しかし、料理がおいしいだけでは、選ばれる店にはなれません。

強い会社は、

商品。

価格。

立地。

席数。

内装。

メニュー。

接客。

販促。

設備投資。

そのすべてを、一つの利用シーンに向かって揃えています。

ジョリーパスタがフェアを続けるのは、商品を増やしたいからではありません。

次回来店の理由を作るためです。

PISOLAが大型店舗とリゾート空間へ投資するのは、見た目を豪華にしたいからではありません。

長く滞在し、料理と会話を重ねられる時間を作るためです。

五右衛門が箸、和風、ハーフ&ハーフ、駅や商業施設への出店を守るのは、単に個性を出したいからではありません。

店を見た瞬間に、

「ここなら今日の食事を任せられる」

と理解してもらうためです。

強い会社は、料理を並べているのではありません。

選ばれる理由を設計しています。

中小飲食店も「料理」から考えてはいけない

中小飲食店は、大手より資金がありません。

使える人員も限られています。

広告費も、店舗数も、物件を選ぶ力も違います。

だからこそ、

何でもやることはできません。

家族客も取りたい。

一人客も取りたい。

宴会も取りたい。

カフェ利用も取りたい。

デリバリーも伸ばしたい。

昼も夜も売りたい。

すべてを追いかければ、店の特徴は薄くなります。

商品数だけが増える。

仕込みが増える。

在庫が増える。

教育が難しくなる。

そして、お客様から見た時に、

「結局、何のために行く店なのか」

が分からなくなります。

だから私は、

「何を売るか」より先に、

「どんな日に思い出される店になるのか」

を考えます。

家族全員が違うものを食べたい日なのか。

仕事帰りに一人で夕食を済ませたい日なのか。

友人と長く話したい日なのか。

料理をしたくない日なのか。

子どもと気兼ねなく外食したい日なのか。

夫婦で少しだけゆっくりしたい日なのか。

誕生日を祝いたい日なのか。

その日が決まれば、必要な料理が決まります。

必要な価格が決まります。

必要な席が決まります。

必要な営業時間が決まります。

必要な接客が決まります。

必要な販促が決まります。

経営は、メニューから作るものではありません。

お客様の生活の中で取りたい一場面から逆算して作るものです。

同じ商品でも、経営戦略は変わる

今回の3社比較で最も大切なのは、

どの会社が一番優れているかではありません。

どの会社のパスタがおいしいかでもありません。

同じ商品を扱っていても、

誰に、

どんな場面で、

どんな理由で選ばれたいのかによって、

経営戦略はまったく変わるということです。

ジョリーパスタの戦略をそのままPISOLAへ持ち込めば、PISOLAらしさは消えます。

PISOLAの長時間滞在を、席数の少ない五右衛門型の店舗で真似すれば、回転率が落ちます。

五右衛門の駅・商業施設型を、そのまま大型ロードサイド店へ持ち込んでも、同じ強さは生まれません。

戦略は、施策の寄せ集めではありません。

誰のどんな食事シーンを取るかという一つの意思に、すべてを揃えることです。

RBRが飲食店を見る時

RBRでは、店を見て、

料理がおいしそう。

内装がおしゃれ。

価格が安い。

店舗数が多い。

それだけでは終わりません。

なぜ、この立地なのか。

なぜ、この席数なのか。

なぜ、このメニュー数なのか。

なぜ、この価格なのか。

なぜ、この滞在時間なのか。

なぜ、ここへ設備投資しているのか。

なぜ、あえて回転率を捨てているのか。

なぜ、アプリを使うのか。

なぜ、駅や商業施設へ出店するのか。

一つひとつの施策の奥にある、

「どの場面を取りたいのか」

を見ます。

飲食店を見るということは、料理を見ることではありません。

経営者が描いた、

お客様の行動設計を見ることです。

飲食店の競争は、料理同士の勝負ではない

お客様は、料理だけを食べに来ているのではありません。

家族との時間。

友人との会話。

仕事の合間の休息。

買い物途中の食事。

疲れた日の安心。

少しだけ気分を変えたい時間。

その日の生活に必要な何かを求めて、店を選んでいます。

だから飲食店の競争は、

料理同士の勝負ではありません。

お客様の生活の、

どの一場面を任せてもらうか。

その一場面で、

どれだけ強く思い出してもらえるか。

どれだけ安心して選んでもらえるか。

私は、それがこれからの飲食店経営だと考えています。

強い店とは、

何でもある店ではありません。

一番安い店でもありません。

一番豪華な店でもありません。

「こんな日には、この店」

と、お客様の生活の中に居場所を持つ店です。

ジョリーパスタも、

PISOLAも、

洋麺屋五右衛門も、

パスタを売っているように見えて、

本当に作っていたのは、

お客様から選ばれる一場面でした。

そして、それこそが、

商品だけでは見えない、

3社の経営戦略の違いなのです。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。