売れているのに、儲からない店は多い。繁盛店の口座にお金が残らない本当の理由

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

売れているのに、儲からない店は多い。繁盛店の口座にお金が残らない本当の理由
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目次 Outline

売れているのに儲からない11のメカニズム

1.売上が増えるほど、変動費も増える

「今月は売上が200万円も増えた。」

そう聞くと、多くの人は会社のお金も200万円近く増えたように感じます。

しかし、実際の飲食店経営はそれほど単純ではありません。

売上が増えると、その売上を作るために必要な費用も同時に増えるからです。

このように、売上や客数に応じて増減する費用を、経営では変動費と呼びます。

代表的なものは、食材原価です。

料理が一品売れるたびに、肉、魚、野菜、米、調味料などが消費されます。

売上が増えれば、それだけ多くの食材を仕入れなければなりません。

しかし、売上に連動して増える費用は、食材だけではありません。

スタッフの勤務時間。

決済手数料。

テイクアウトやデリバリーの容器。

割り箸やおしぼりなどの消耗品。

ガス、水道、電気。

集客に使った広告費。

デリバリープラットフォームへ支払う手数料。

売上が増えれば、これらの費用も少しずつ、あるいは大きく増えていきます。

月商300万円から500万円へ増えた場合

例えば、月商300万円だった店が、月商500万円まで成長したとします。

売上は200万円増えました。

ところが、この200万円がそのまま利益として残るわけではありません。

仮に、追加された200万円の売上に対して、次の費用が発生したとします。

項目増加額売上増加額に対する割合
食材原価70万円35%
人件費60万円30%
決済・販売手数料20万円10%
消耗品・水道光熱費10万円5%
販促費・広告費10万円5%
増加した費用の合計170万円85%
残る金額30万円15%

売上は200万円増えています。

しかし、費用も170万円増えているため、残るのは30万円です。

つまり、200万円の追加売上を作るために、170万円を使っていることになります。

ここで注意しなければならないのは、この30万円も、まだ最終的な手残りではないということです。

ここからさらに、

  • 家賃
  • 通信費
  • システム利用料
  • 保険料
  • 税理士報酬
  • 修繕費
  • 借入金の返済
  • 税金
  • 設備更新のための積立

などを支払う必要があります。

そのため、売上が200万円増えても、実際に口座へ残るお金は、ほとんど増えていないことさえあります。

売上には「作るための費用」がある

飲食店では、売上だけが単独で増えることはありません。

売上の後ろには、必ずその売上を作るための費用がついてきます。

お客様が増える
↓
料理の注文が増える
↓
食材の使用量が増える
↓
仕込みが増える
↓
スタッフの勤務時間が増える
↓
水道光熱費や消耗品も増える
↓
売上は増えたが、支出も増える

この構造を理解せず、売上だけを追い続けると、店はどんどん忙しくなります。

スタッフは走り回る。

厨房には注文が並ぶ。

仕入れ金額は大きくなる。

レジの売上数字も伸びていく。

それなのに、月末になると口座にお金が残っていない。

すると経営者は、こう思います。

「これだけ売ったのに、なぜお金がないのだろう。」

しかし、お金が消えたわけではありません。

売上を作る過程で、食材費、人件費、手数料、広告費などに姿を変えて、店の外へ出ていっただけです。

原価率35%は、売上の35%が最初から残らないということ

例えば、原価率35%の店では、100万円を売り上げるために、単純計算で35万円の食材が必要です。

売上原価率食材原価原価を引いた残額
100万円35%35万円65万円
300万円35%105万円195万円
500万円35%175万円325万円
700万円35%245万円455万円

月商300万円から500万円になれば、食材原価は105万円から175万円へ増えます。

売上が200万円増えた一方で、食材費だけでも70万円増える計算です。

そして、残った130万円から人件費や手数料、光熱費などを支払います。

つまり、経営者が見るべきなのは、

「売上がいくら増えたか」

だけではありません。

その売上を作るために、追加でいくら使ったのか。

ここまで見なければ、本当に店が強くなったのかは分かりません。

人件費は完全な変動費ではない

食材原価は、比較的売上に連動しやすい費用です。

一方、人件費は少し複雑です。

売上が上がった瞬間だけスタッフを呼び、暇になった瞬間に帰ってもらうことはできません。

営業前には仕込みが必要です。

営業後には片付けや清掃があります。

忙しくなることを予測して、ピークより前からスタッフを配置する必要もあります。

そのため、人件費は売上と完全には連動しません。

売上が予想より少なくても、組んだシフトの人件費は発生します。

反対に、予想以上に売れれば、残業や追加出勤が必要になります。

つまり人件費は、

売れても増え、売れなくても一定額がかかる費用

なのです。

この性質が、飲食店経営を難しくします。

売上200万円の増加を見込んでスタッフを増やしたものの、実際には100万円しか増えなければ、人件費率は一気に悪化します。

売上を増やすための準備が、売上より先に費用として発生するからです。

売上の増加率と、利益の増加率は違う

例えば、月商300万円の店が500万円になれば、売上は約67%増えています。

しかし、利益も67%増えるとは限りません。

売上の増加に伴って、

  • 原価率が上がった
  • 残業が増えた
  • 求人広告を出した
  • デリバリー広告を強めた
  • キャッシュレス決済が増えた
  • 容器や備品の使用量が増えた
  • オペレーションが乱れて廃棄が増えた

ということが起これば、利益の伸びは売上の伸びを大きく下回ります。

場合によっては、売上が増えたのに、利益は以前より減っていることさえあります。

状態月商300万円時月商500万円時
売上300万円500万円
営業利益30万円20万円
営業利益率10%4%

この場合、売上は200万円増えています。

しかし、利益は30万円から20万円へ減っています。

店は以前より忙しくなっているのに、以前より儲からなくなっています。

これが、売れているのに儲からない店で起きていることです。

大切なのは「追加売上の限界利益」

新しく増えた売上から、その売上を作るために増えた費用を引いて、いくら残ったのか。

この考え方が重要です。

追加売上
-追加原価
-追加人件費
-追加手数料
-追加消耗品費
-追加販促費
=追加売上から残った利益

先ほどの例なら、

追加売上    200万円
食材原価    -70万円
人件費     -60万円
手数料     -20万円
消耗品・光熱費 -10万円
販促費     -10万円
────────────────
残る金額     30万円

200万円を追加で売るために、経営者やスタッフの負担が大幅に増えているのであれば、残った30万円がその負担に見合うのかも考えなければいけません。

営業時間を延ばした。

休日を減らした。

店長が毎日残業した。

経営者が現場へ戻った。

スタッフが疲弊した。

接客や清掃の質が落ちた。

そこまでして作った30万円なら、本当に良い売上だったのでしょうか。

売上は増えればよいのではありません。

利益を残しながら増える売上でなければ、店を強くすることはできません。

変動費率が高い店は、売上が増えても残りにくい

売上に対して、変動費が何%かかっているのかも重要です。

例えば、売上100円を作るたびに85円の変動費が発生する店では、残るのは15円です。

一方で、変動費が65円なら、35円残ります。

追加売上変動費率変動費残る金額
200万円65%130万円70万円
200万円75%150万円50万円
200万円85%170万円30万円
200万円95%190万円10万円

同じ200万円の追加売上でも、費用構造によって残る金額は大きく変わります。

だから、月商500万円という数字だけを見ても、その店が儲かっているかどうかは判断できません。

月商500万円で50万円残る店もあれば、10万円しか残らない店もあります。

借入返済や税金まで含めれば、現金が減っている店さえあります。

経営者が見るべき数字

売上が増えたとき、経営者は次の数字を確認する必要があります。

  • 売上はいくら増えたのか
  • 食材原価はいくら増えたのか
  • 総労働時間はいくら増えたのか
  • 人件費はいくら増えたのか
  • 販売手数料はいくら増えたのか
  • 広告費はいくら増えたのか
  • 消耗品費や水道光熱費はいくら増えたのか
  • 最終的に営業利益はいくら増えたのか
  • 口座の現金はいくら増えたのか

売上だけ増えても、営業利益や現金が増えていなければ、経営は改善していません。

忙しさだけが増えています。

売上とは、店の規模を表す数字です。

しかし、利益は店の強さを表す数字です。

そして、最後に残った現金は、その店が未来へ進める力を表します。

だから経営者は、

「いくら売れたか」

だけではなく、

その売上から、最終的にいくら残ったのか。

を見なければなりません。

売上が増えることは、もちろん大切です。

しかし、売上を増やすこと自体が経営の目的ではありません。

売上を利益へ変え、利益を現金として残すこと。

その仕組みがあって初めて、店は本当の意味で成長していくのです。

2.利益率の低い商品ばかり売れている

「今月はよく売れた。」

そう思って売上データを見ると、確かに数字は伸びています。

しかし、銀行口座の残高は思ったほど増えていない。

そんな経験はありませんか。

実はその原因は、売上ではなく「売れた商品の中身」にあるかもしれません。

飲食店経営では、売上の金額だけでは店の強さは判断できません。

本当に見るべきなのは、

「どの商品で利益を生み出しているのか」

です。


同じ1万円でも価値はまったく違う

売上は同じでも、利益は商品によって大きく変わります。

例えば、次のようなケースです。

項目商品A商品B
売上10,000円10,000円
原価・変動費5,000円9,500円
粗利益5,000円500円
粗利益率50%5%

どちらも売上は1万円です。

しかし、お店に残るお金は10倍違います。

売上だけを見れば同じ成果に見えますが、経営への貢献度はまったく別物です。

つまり、経営者が本当に見るべきなのは売上額ではなく、利益をどれだけ生み出したかという視点です。

だから私は、

「売上=良い商品」ではない。

「利益を残す商品こそ、本当に価値のある商品」

だと考えています。


利益が薄くなりやすい商品の例

飲食店には、売上は作るものの利益を圧迫しやすい商品があります。

例えば、

  • 原価率が高い看板商品
  • ボリュームを出しすぎた定食
  • 値引きクーポン経由の商品
  • 配達手数料が高いデリバリー商品
  • 飲み放題で大量に注文されたアルコール

もちろん、これらの商品自体が悪いわけではありません。

問題なのは、

これらばかり売れる状態

です。

売上は伸びているのに、お金は残らない。

そんな店になってしまいます。


売れているのに苦しい店の共通点

売上ランキングを見ると、

1位 からあげ定食
2位 ハンバーグ定食
3位 飲み放題

と並びます。

すると多くの経営者は、

「人気商品だからもっと売ろう」

と考えます。

しかし、その商品が利益率15%しかないならどうでしょう。

一方で、

利益率40%の商品があまり売れていないなら、

本来伸ばすべきなのは後者かもしれません。

売上ランキングだけでは、

利益を削って売れている商品

を見抜くことはできません。


見るべきは「商品別粗利益額」

本当に見るべき数字は、

商品別粗利益額

です。

例えば、

商品売上粗利益率粗利益額
ハンバーグ定食40万円25%10万円
ドリンク15万円70%10.5万円
デザート10万円65%6.5万円

この表を見ると、

売上ではハンバーグ定食が圧倒的です。

しかし、お店に残している利益はドリンクの方が多くなっています。

つまり、

店を支えているのは売上トップの商品とは限らない

ということです。


「何を売るか」で利益は変わる

利益を増やす方法は、

売上を増やすことだけではありません。

利益率の高い商品を増やすことでも利益は伸びます。

例えば、

  • ドリンクを一杯追加してもらう
  • デザートを注文してもらう
  • セットメニューを提案する
  • 原価率の高い商品の構成を見直す

こうした積み重ねだけでも、利益は大きく変わります。

だから繁盛店ほど、

「何が売れたか」だけではなく、「何で利益が出たか」

を見ています。


売上ランキングは経営を惑わせる

売上ランキングは分かりやすい指標です。

しかし、それだけで経営判断をすると危険です。

人気商品だからといって、

値引きを続ける。

ボリュームを増やす。

広告を集中させる。

その結果、

さらに利益率が下がってしまうこともあります。

売上だけを追えば追うほど、

利益は遠ざかる。

そんな皮肉な現象は、飲食店では決して珍しくありません。


まとめ

売上には「質」があります。

同じ1万円でも、

利益を5,000円残す売上と、

500円しか残さない売上では、

経営への貢献度はまったく違います。

だから私は、

売上ランキングだけでは経営しません。

商品別粗利益額を見る。

どの商品が利益を生み、

どの商品が利益を削っているのか。

そこまで見えて初めて、

売上ではなく利益を育てる経営が始まるのです。

3.忙しくなるほど、人件費が膨らむ

「売上が増えたら利益も増える。」

そう思われがちですが、飲食店では必ずしもそうはなりません。

なぜなら、売上が伸びるほど人件費も一緒に膨らんでいくからです。

飲食店は、人が価値を生み出す商売です。

だから売上が増えれば、人も必要になります。

しかし、人件費は売上のように都合よく動いてくれません。


人はピークだけ働けるわけではない

例えば、夕方5時から10時までが混雑するお店があったとします。

お客様が来るのは5時からですが、スタッフは5時に出勤すればいいわけではありません。

開店前には、

  • 仕込み
  • 清掃
  • レジ準備
  • 食材の補充
  • 引き継ぎ

が必要です。

営業終了後も、

  • 洗い物
  • 片付け
  • レジ締め
  • 清掃
  • 翌日の仕込み

があります。

つまり、お客様がいない時間にも、人件費は発生しているのです。


売上は数時間、人件費は一日

この違いをイメージすると、こんな状態になります。

売上人件費
ピークの2〜3時間で一気に発生開店準備から閉店作業まで一日中発生
お客様がいる時間だけ増えるお客様がいなくても発生する
売れた時間しか作れない必要な作業時間すべてに発生する

このズレこそが、人件費率を押し上げる大きな原因です。


売上が読めないほど、人を多く入れる

さらに難しいのが、飲食店は未来の売上が分からないことです。

例えば土曜日。

「今日は混みそうだ。」

そう思えば、多めにスタッフを入れます。

しかし、天気が崩れたり、近隣でイベントが中止になったりすると、売上は一気に落ちます。

すると、

今日は売れるかもしれない
     ↓
多めにシフトを組む
     ↓
思ったほど売れない
     ↓
人件費だけが残る

という状態になります。

人件費は一度シフトを組めば、簡単には減らせません。

だから売上予測が難しい店ほど、人件費率は悪化しやすいのです。


本当に売れた日も、人件費は増える

逆に予想以上に売れた日も安心はできません。

忙しすぎれば、

  • 残業が発生する
  • 深夜手当が増える
  • 他店舗から応援を呼ぶ
  • 翌日の仕込みを増やす

など、新たな人件費が発生します。

流れにすると、このようになります。

予想以上に売れる
    ↓
残業が発生
    ↓
深夜手当が増える
    ↓
応援スタッフが必要
    ↓
翌日の仕込み時間も増える
    ↓
人件費が膨らむ

つまり、売上が増えたからといって、その分がそのまま利益になるわけではありません。


売上が100万円増えても、人件費も増える

例えば月商が500万円から600万円になったとします。

一見すると100万円も売上が増えています。

しかし、その裏では、

増えたもの
アルバイト時間+80時間
残業代+5万円
深夜手当+3万円
応援スタッフ+4万円
仕込み時間+20時間

というように、人件費も確実に増えていきます。

だから経営者は、

「売上が増えた」ではなく、「利益はいくら増えたのか」

まで見なければなりません。


本当に強い店は、人件費の増え方をコントロールしている

繁盛店は、単に売上を追いかけているわけではありません。

  • ピーク時間を分析する
  • シフトを細かく調整する
  • オペレーションを改善する
  • 提供時間を短縮する
  • 教育によって一人当たりの生産性を高める

こうした積み重ねによって、

売上以上のスピードで人件費を増やさない仕組み

を作っています。

これが、利益を残せる店と、売れているのに苦しい店の大きな違いです。


まとめ

売上はピークの数時間で作られます。

しかし、人件費は開店前から閉店後まで一日中発生します。

さらに、売上を予測して人を配置する以上、

売れなくても人件費は発生し、

売れすぎても残業や応援で人件費は増えていきます。

だから私は、

「売上が増えた」ことでは喜びません。

「その売上を、どれだけ効率よく利益に変えられたか。」

そこまで見て初めて、本当に強い経営だと考えています。

4.売上の増加が、店の処理能力を超えている

「売上が増えるほど儲かる。」

そう考えられがちですが、飲食店には一つ大きな落とし穴があります。

それは、

売上には上限がないが、店の処理能力には上限がある

ということです。

どれだけ注文が入っても、お店の設備やスタッフの能力が急に増えることはありません。

限界を超えた瞬間から、利益は増えるどころか減り始めます。


店には必ず「処理能力」がある

飲食店には、それぞれ処理できる量の限界があります。

例えば、

  • 厨房の広さ
  • コンロやフライヤーの台数
  • オーブンの容量
  • 洗い場の処理能力
  • 客席数
  • スタッフの人数
  • 料理人の技術
  • オーダーシステム
  • 配膳・提供の導線

これらすべてが組み合わさって、

「1時間に何食までなら、品質を保って提供できるか」

が決まっています。

つまり、売上ではなく処理能力こそが、本当の上限なのです。


限界を超えた瞬間に店は崩れ始める

例えば、

1時間に40食までならスムーズに提供できるお店があるとします。

ところが、その時間帯に60食の注文が入ったらどうなるでしょうか。

処理能力以内処理能力オーバー
提供がスムーズ提供時間が遅れる
盛り付けが丁寧盛り付けが雑になる
オーダーミスが少ないオーダーミスが増える
スタッフに余裕があるスタッフが焦る
お客様が満足するクレームが増える

一見すると、

「20食多く売れたから成功」

のように見えます。

しかし現場では、まったく逆のことが起きています。


売上の裏で増える「見えない損失」

処理能力を超えると、目に見えないコストが一気に増えます。

例えば、

注文が集中する
   ↓
提供が遅れる
   ↓
料理が冷める
   ↓
作り直しが発生する
   ↓
謝罪対応が増える
   ↓
スタッフが疲弊する
   ↓
口コミが悪化する
   ↓
リピーターが減る

売上は増えています。

しかし、その裏では、

  • 食材ロス
  • 人件費の増加
  • お客様満足度の低下
  • ブランドイメージの低下

といった損失が積み重なっています。

これらは決算書には載りません。

だからこそ、多くの経営者が見落としてしまうのです。


一番怖いのは「常連」を失うこと

提供が少し遅れる。

料理が少し冷める。

スタッフに笑顔がなくなる。

こうした変化は、一度だけなら許してもらえるかもしれません。

しかし、それが続けば、

「今日はやめておこう。」

「前より満足できなくなった。」

そんな理由で、常連のお客様は静かに離れていきます。

飲食店にとって最も大きな損失は、

一日の売上ではありません。

何度も来てくれるお客様を失うことです。


売上より「処理能力」を高める

本当に強い店は、

無理に注文を増やそうとはしません。

まず改善するのは、

  • 調理導線
  • オペレーション
  • レイアウト
  • 仕込み方法
  • メニュー構成
  • スタッフ教育

つまり、

店そのものの処理能力です。

処理能力が上がれば、

同じ人数でも、

同じ設備でも、

より多くの売上を、品質を落とさず利益へ変えられるようになります。


売上の限界ではなく、利益の限界を見る

経営者が見るべきなのは、

「あと何万円売れるか」

ではありません。

見るべきなのは、

「今の店は、この売上を本当に処理しきれているか」

という視点です。

処理能力を超えた売上は、

利益を増やすどころか、

店の信頼を少しずつ削っていきます。


まとめ

飲食店には、売上の限界ではなく、

処理能力の限界があります。

その限界を超えて注文を受ければ、

提供の遅れ、ミス、作り直し、クレーム、スタッフの疲弊、口コミの悪化へとつながります。

一時的に売上は増えるかもしれません。

しかし、その代償は決して小さくありません。

だから私は、

能力を超えた売上は、利益ではなく事故を生む。

そう考えています。

本当に目指すべきなのは、売上を無理に伸ばすことではなく、

店の処理能力を高め、利益を生み続けられる仕組みを作ることなのです。

5.売上を取りにいくために、値引きしすぎている

売上が落ちると、多くの飲食店が最初に考えるのが値引きです。

  • 10%OFF
  • 500円引き
  • ドリンク無料
  • ポイント2倍
  • 半額キャンペーン

確かに、お客様は増えるかもしれません。

売上も一時的には伸びます。

しかし、その代償として、一番削られるのは利益です。


値引きは利益から引かれる

多くの人は、

「10%値引きしただけ」

と思っています。

しかし経営では違います。

値引きされるのは売上ですが、削られるのは利益です。

例えば、1,000円の商品を考えてみましょう。

項目通常価格10%値引き
売価1,000円900円
原価350円350円
粗利益650円550円
粗利益率65%61.1%

一見すると、

「100円しか値引きしていない」

ように見えます。

しかし実際には、

粗利益650円が550円になり、利益は約15%も減っています。

値引きは、売上以上に利益へ大きなダメージを与えるのです。


500円引きなら、ほとんど利益は残らない

さらに大きな値引きをするとどうなるでしょうか。

項目通常価格500円引き
売価1,000円500円
原価350円350円
粗利益650円150円

売上はあります。

しかし、お店に残る利益は150円です。

洗剤代、水道代、ガス代、電気代、人件費、家賃などを考えれば、

この150円ではほとんど利益は残りません。

つまり、

売上は作れても、お金は残らない。

そんな状態になってしまいます。


値引きは一度始めると止められない

さらに怖いのは、お客様の行動です。

値引きで来店したお客様は、

値引きがあるから来店したのであって、

定価に価値を感じて来店したわけではありません。

すると、

値引きをする
   ↓
お客様が増える
   ↓
売上が上がる
   ↓
利益が残らない
   ↓
また値引きをする
   ↓
値引きがないと売れなくなる

という悪循環に入ってしまいます。

これが「値引き依存」の状態です。


本当に増えたのは売上ではない

値引きをすると、

レジの数字は増えます。

しかし、本当に増えたのは売上でしょうか。

そうではありません。

増えたのは、

  • 来店客数
  • 注文数
  • レシート枚数

かもしれません。

一方で、

利益は減り、

キャッシュは残らず、

スタッフは忙しくなります。

つまり、

利益を削って忙しくなっているだけ

という状態になることも珍しくありません。


強い店は値引きではなく「価値」を増やす

繁盛店もキャンペーンを行うことはあります。

しかし、それは単純な値引きではありません。

例えば、

  • セットメニューで客単価を上げる
  • デザートを追加してもらう
  • ドリンクを注文してもらう
  • 限定商品で来店理由を作る
  • 接客や空間の価値を高める

つまり、

価格を下げるのではなく、価値を上げる。

これが利益を残せる店の考え方です。


値引きは「未来の利益」を先に使っている

値引きをすれば、

今日の売上は作れます。

しかし、その利益は確実に減ります。

さらに、お客様が値引きに慣れてしまえば、

次回も値引きを期待するようになります。

つまり、

今日の売上を作る代わりに、

未来の利益を先に使ってしまっているのです。


まとめ

値引きは、売上を作る最も簡単な方法です。

しかし、その一方で、

利益を最も簡単に失う方法でもあります。

だから私は、

売上が落ちたからといって、すぐに値引きはしません。

まず考えるのは、

「どうすれば価格を下げずに、お客様に選ばれる理由を作れるか。」

その積み重ねこそが、

値引きに頼らず利益を残し続ける、強い飲食店をつくるのです。

6.売上を作るための広告費が重すぎる

「広告を出したら売上が伸びた。」

これは間違いなく良いことです。

しかし、そこで安心してはいけません。

飲食店経営で本当に重要なのは、

「売上が増えたか」ではなく、「広告費を払ったあとに、いくら利益が残ったか」

だからです。


売上だけを見ると成功に見える

例えば、

広告費10万円を使って30万円の売上を作ったとします。

一見すると、

10万円が30万円になった。

大成功のように見えます。

しかし、本当にそうでしょうか。


広告費を含めると利益はどうなる?

例えば、30万円の売上だった場合を計算してみます。

項目金額
売上300,000円
原価▲105,000円
人件費▲90,000円
広告費▲100,000円
決済・デリバリー手数料など▲15,000円
営業利益▲10,000円

売上は30万円あります。

しかし、お店には1円も残っていません。

むしろ赤字です。

つまり、

売上は買えた。

しかし、

利益は買えなかった。

ということです。


広告を止めると売上も止まる

さらに問題なのは、

広告で集めたお客様は、広告が止まれば来なくなることです。

つまり、

広告を出す
   ↓
新規のお客様が来る
   ↓
売上が増える
   ↓
広告を止める
   ↓
売上も元に戻る

この状態は、

広告によって作られた売上です。

店そのものに選ばれているわけではありません。


ブランドと広告は違う

ここで勘違いしてはいけないのが、

広告とブランドはまったく別物だということです。

広告で売れる店ブランドで売れる店
広告を止めると売上が落ちる広告がなくても来店する
新規客が中心常連客が中心
集客費が毎月必要紹介・口コミが増える
売上を買っている信頼を積み上げている

広告は、

お客様に知ってもらうための手段です。

しかし、

来店し続けてもらう理由は広告では作れません。


本当に見るべき数字

広告を出したら、

見るべき数字は一つです。

「広告を使って、最終的にいくら利益が残ったのか。」

例えば、

指標見るだけでは危険本当に見るべき
売上30万円30万円
広告費10万円10万円
最終利益見ていないいくら残ったか

広告は売上を増やします。

しかし、

利益まで増やしているとは限りません。


新規客だけでは、永遠に広告費がかかる

さらに怖いのは、

新規客ばかりを集める経営です。

流れにすると、こうなります。

広告を出す
   ↓
新規のお客様が来る
   ↓
一度だけ来店する
   ↓
リピートしない
   ↓
また広告を出す

これでは、

毎月同じ広告費を払い続けなければ売上を維持できません。

つまり、

売上を毎月買い続けている状態です。


常連が育つ店は広告費が資産になる

一方で、広告をきっかけに常連が育つ店は違います。

広告を出す
   ↓
新規のお客様が来る
   ↓
満足してリピートする
   ↓
常連になる
   ↓
口コミや紹介が増える
   ↓
広告への依存が減る

この場合、広告費は単なる経費ではありません。

未来の常連を作る投資になります。

広告が利益を生むかどうかは、

広告そのものではなく、

リピーターを育てられる店かどうかで決まるのです。


まとめ

広告は、売上を作る力があります。

しかし、

利益まで作ってくれるとは限りません。

広告費を払い続けなければ維持できない売上は、

本当の意味で強い売上ではありません。

だから私は、

広告の成果を売上では判断しません。

広告費を払ったあと、いくら利益が残ったか。

そして、

そのお客様が常連になってくれたか。

そこまで見て初めて、

広告は成功だったと言えるのです。

7.デリバリー売上を、店内売上と同じように考えている

デリバリーの売上が伸びると、多くの経営者は喜びます。

「今月はデリバリーで100万円売れた。」

数字だけを見れば、大きな成果です。

しかし、その100万円は本当に100万円の価値があるのでしょうか。

実は、店内売上とデリバリー売上は、同じ売上でも中身がまったく違います。


デリバリーには多くのコストが隠れている

店内営業では発生しないコストが、デリバリーには数多く存在します。

例えば、

  • プラットフォーム手数料
  • 広告費
  • 容器代
  • 袋代
  • カトラリー
  • 食材原価
  • 調理人件費
  • 注文ミスによる作り直し
  • 返金対応
  • キャンセル対応

つまり、売上が増えるほど、これらのコストも一緒に増えていくのです。


2,000円売れても、残るのはいくらか

例えば、2,000円の注文が入ったとします。

項目金額
売上2,000円
プラットフォーム手数料▲700円
食材原価▲600円
容器・袋・カトラリー▲150円
広告費▲100円
追加人件費▲200円
残るお金250円

売上は2,000円あります。

しかし、お店に残るのは250円です。

つまり、

2,000円売れたことより、250円しか残らなかったことの方が重要なのです。


店内売上と同じ感覚で見てはいけない

例えば、

店内売上100万円。

デリバリー売上100万円。

数字だけ見ると同じ100万円です。

しかし、中身は大きく違います。

比較店内売上デリバリー売上
売上100万円100万円
手数料少ない高い
容器代ほぼ不要必要
広告費比較的少ない増えやすい
利益率高くなりやすい低くなりやすい

だから、

100万円の店内売上と100万円のデリバリー売上は、同じ価値ではありません。


デリバリーを否定しているわけではない

ここで誤解してほしくないのは、

デリバリーが悪いと言いたいわけではありません。

私自身、デリバリーを経営の重要な柱として活用しています。

天候が悪い日。

平日の昼。

客席が空いている時間帯。

こうした時間に売上を積み上げられるデリバリーは、とても大きな武器です。

問題なのは、

売上だけを見て判断してしまうことです。


デリバリーは「キャッシュ」を見る

デリバリーで本当に見るべき数字は、

売上ではありません。

例えば、

見る数字判断
デリバリー売上100万円× これだけでは判断できない
手数料控除後の入金額
すべての経費を引いた利益
最終的に残ったキャッシュ◎◎

経営に必要なのは売上ではなく、

現金がどれだけ残るかです。

デリバリーは、売上よりもキャッシュフローの視点で管理する必要があります。


デリバリーを伸ばすなら「利益が残る商品」を売る

デリバリーで利益を残すためには、

売上を追うだけでは不十分です。

例えば、

  • 容器代が安い商品を増やす
  • 原価率を見直す
  • セットメニューで客単価を上げる
  • 広告効率を改善する
  • 手数料負担を考えた価格設計にする

こうした改善を積み重ねることで、

同じ100万円の売上でも、残る利益は大きく変わります。


まとめ

デリバリー売上は、飲食店にとって大きな武器です。

しかし、

店内売上と同じ感覚で見てはいけません。

デリバリーには、

手数料、広告費、容器代、人件費など、多くのコストが含まれています。

だから私は、

デリバリーを「売上」で評価しません。

評価するのは、

「手数料や経費をすべて引いたあと、最終的にどれだけキャッシュが残ったか。」

その視点を持つことで、

デリバリーは売上を増やす手段ではなく、利益を積み上げる武器へと変わるのです。

8.メニューが増えすぎて、見えないコストが増えている

売上を増やしたい。

その思いから、多くの飲食店はメニューを増やしていきます。

「これもあった方がいい。」

「お客様の要望に応えよう。」

「競合店にもあるから追加しよう。」

一つひとつは正しい判断に見えます。

しかし、その積み重ねが店の利益を少しずつ削っていくことがあります。


メニューは増えるほど管理コストも増える

メニューが1品増えるということは、料理が1品増えるだけではありません。

その裏では、多くの仕事が増えています。

例えば、

  • 新しい食材を仕入れる
  • 保管スペースを確保する
  • 仕込みを増やす
  • レシピを管理する
  • スタッフへ教育する
  • 提供方法を覚える
  • 在庫を管理する
  • 賞味期限を確認する

つまり、

メニューが増えるたびに、店の仕事も増えているのです。


見えないコストは意外と多い

メニューを増やすことで発生するコストを整理すると、次のようになります。

メニューが増える発生するコスト
✅食材の種類が増える在庫が増える
✅仕込みが増える人件費が増える
✅保管品が増える冷蔵庫が圧迫される
✅レシピが増える教育時間が増える
✅調理工程が増える提供時間が延びる
✅管理項目が増えるミス・廃棄が増える

どれも原価表には載りません。

しかし、確実に利益を削っています。


月に数食しか売れない商品の落とし穴

例えば、

月に3食しか売れない商品があるとします。

「3食売れたから良かった。」

そう考えてしまいがちです。

しかし、その商品のために、

  • 食材を仕入れる
  • 冷蔵庫で保管する
  • 賞味期限を管理する
  • 棚卸しをする
  • 仕込みをする

こうした作業は、毎日発生します。

つまり、

売れていない日にもコストは発生しているのです。


売れない商品が、売れる商品の邪魔をする

さらに怖いのは、

売れない商品が、売れる商品の効率まで下げてしまうことです。

例えば、

  • 冷蔵庫がいっぱいになる
  • 調理台が狭くなる
  • 食材を探す時間が増える
  • オーダー確認に時間がかかる
  • 提供ミスが増える

すると、

本来ならスムーズに提供できる人気商品まで、時間がかかるようになります。

つまり、

売れない商品が、売れる商品の利益まで削ってしまうのです。


メニューは多いほど選ばれるわけではない

「選択肢が多い方がお客様は喜ぶ。」

そう思われることもあります。

しかし、実際には違います。

選択肢が増えすぎると、

  • 何を選べばいいか迷う
  • 注文まで時間がかかる
  • 看板商品が埋もれる
  • 店の特徴が伝わらない

という問題も起こります。

つまり、

メニューを増やせば増やすほど、売上が増えるわけではありません。


本当に強い店は「増やす」より「磨く」

繁盛店ほど、

やみくもにメニューを増やしません。

代わりに、

  • 売れない商品を定期的に見直す
  • 人気商品をさらに磨く
  • 食材を共通化する
  • 仕込みを減らす
  • オペレーションを単純化する

こうして、

少ないメニューで、高い利益を生み出す仕組みを作っています。


「売上機会」と「利益機会」は違う

メニューを増やせば、

売上機会は増えるかもしれません。

しかし、

利益機会が増えるとは限りません。

例えば、

発想結果
メニューを増やす売上機会は増える
管理が複雑になるコストが増える
オペレーションが乱れる利益が減る
人気商品まで非効率になる店全体の生産性が下がる

だから経営者が考えるべきなのは、

「何を増やすか」ではなく、「何を減らすか」

という視点です。


まとめ

メニューを増やせば、お客様に選ばれる機会は増えるかもしれません。

しかし、その裏では、

在庫、仕込み、教育、管理、廃棄、オペレーションなど、多くの見えないコストが積み重なっています。

そして一番怖いのは、

売れない商品が、売れる商品の利益まで削ってしまうことです。

だから私は、

メニュー数の多さを競いません。

利益を残す商品を磨き、利益を残さない商品は見直す。

その積み重ねこそが、

売上だけではなく、利益が残り続ける飲食店をつくるのです。

9.廃棄・ロス・ミスを原価に正しく入れていない

「うちの原価率は30%です。」

そう答える経営者は少なくありません。

しかし、その30%は本当に現場で使われた原価率でしょうか。

帳簿上では30%でも、現場では35%、あるいは38%になっていることは珍しくありません。

そして、その数%のズレが、利益を大きく削っているのです。


理論原価率と実際の原価率は違う

理論原価率とは、

レシピどおりに作り、

ロスもミスも一切ない状態で計算した数字です。

一方、実際の現場ではそうはいきません。

例えば、

  • 仕込みすぎ
  • 盛り付けのしすぎ
  • スタッフの賄い
  • 賞味期限切れによる廃棄
  • 食材の落下
  • 焦がして作り直し
  • 誤提供による再調理
  • 無料サービス
  • 計量ミス

こうしたロスが毎日少しずつ発生しています。

つまり、

理論原価率と実際の原価率は、同じではないのです。


見えないロスは積み重なる

例えば、理論原価率30%のお店でも、

現場では次のようなロスが発生しているかもしれません。

原価が増える原因内容
✅仕込みロス作りすぎて廃棄
✅盛り付け過多レシピ以上に使用
✅調理ミス焦げ・失敗・作り直し
✅誤提供作り直し・返金対応
✅在庫ロス賞味期限切れ・劣化
✅無料提供サービス・クレーム対応
✅計量ミススタッフごとのばらつき

一つひとつは小さな金額です。

しかし、毎日積み重なれば決して小さくありません。


わずか5%の差でも年間300万円

例えば、

月商500万円のお店を考えてみます。

原価率月間原価年間原価
30%150万円1,800万円
35%175万円2,100万円
差額25万円300万円

原価率がたった5%上がるだけで、

毎月25万円、

年間では300万円もの利益が失われます。

5%という数字だけを見ると小さく感じます。

しかし、金額にすると決して小さくありません。


売上が増えるほど、小さなミスは大きなお金になる

例えば、

レシピより10g多く肉を盛り付けていたとします。

1皿では数十円の違いかもしれません。

しかし、

1日100食。

1か月3,000食。

1年間では36,000食。

これだけ販売すれば、

数十円のズレは何十万円、何百万円という金額になります。

つまり、

売上が大きい店ほど、小さな管理不足が大きな損失になるのです。


繁盛店ほど管理を細かくする理由

「売れているから細かいことは気にしない。」

これでは利益は残りません。

本当に利益を残している繁盛店ほど、

  • レシピを統一する
  • 計量を徹底する
  • 廃棄を記録する
  • 盛り付けを確認する
  • 棚卸しを定期的に行う

といった管理を地道に続けています。

派手ではありません。

しかし、この積み重ねが利益を守っています。


見るべきなのは「買った原価」ではない

多くの経営者は、

仕入れた金額だけを見ています。

しかし、本当に見るべきなのは、

「仕入れた食材が、どれだけ売上になったか」

という視点です。

例えば、

100万円仕入れても、

10万円廃棄してしまえば、

その時点で実質の原価率は上がっています。

つまり、

仕入れた時ではなく、

使い切った時に初めて利益が決まるのです。


まとめ

理論原価率は、理想の数字です。

しかし、現場では、

廃棄、ロス、調理ミス、誤提供、盛り付け過多など、

さまざまな要因で原価率は少しずつ上がっていきます。

そして、その数%のズレが、

年間では何百万円もの利益を失わせることもあります。

だから私は、

帳簿上の原価率だけでは判断しません。

現場で実際に何が捨てられ、何が無駄になり、何が利益を削っているのか。

そこまで見えて初めて、

本当の原価管理が始まるのです。

10.利益が出ていても、現金が残らない

飲食店経営で一番危険な勘違いがあります。

それは、

利益が出ている=お金がある

と思ってしまうことです。

実際には、この二つはまったく別です。

決算書では黒字。

しかし銀行口座には現金がほとんどない。

そんな飲食店は決して珍しくありません。


利益と現金は別物

利益は会計上の数字です。

一方で、

現金は実際に口座へ入っているお金です。

つまり、

利益が出ていても、現金があるとは限りません。

例えば、

利益現金
会計上の数字実際に使えるお金
売上が立った時点で計上入金された時点で増える
黒字でも現金不足は起こる赤字でも現金が残ることもある

この違いを理解していないと、

「黒字なのに資金がない」

という状態に陥ります。


売上は先、入金は後

例えば、クレジットカードやデリバリーの場合です。

料理を提供した日には売上になります。

しかし、お金はその日に入りません。

流れにするとこうです。

料理を提供する
   ↓
売上は計上される
   ↓
仕入れ代を支払う
   ↓
人件費を支払う
   ↓
家賃を支払う
   ↓
広告費を支払う
   ↓
数週間後に売上が入金される

つまり、

売上はあるのに、お金はまだない。

という状態が普通に起こります。


売上が伸びるほど現金は減ることもある

売上が増えると、

仕入れも増えます。

スタッフも増えます。

広告も増えます。

つまり、

先に支払うお金がどんどん増えていきます。

例えば、

売上が増えると…先に必要なお金
商品が多く売れる食材を多く仕入れる
来客が増える人件費が増える
集客を強化する広告費が増える
デリバリーが増える容器・包装資材が増える

売上は増えているのに、

口座残高は減る。

そんなことも十分に起こるのです。


利益が出ると、さらに支払いが増える

さらに利益が出ると、

今度は税金などの支払いが待っています。

例えば、

  • 消費税
  • 法人税
  • 社会保険料
  • 設備投資
  • 借入返済

ここで特に注意したいのが借入返済です。


借入返済は利益から払う

借入返済は、

口座から現金は減ります。

しかし、

返済した元本部分は経費になりません。

つまり、

項目会計上の利益現金
借入返済(元本)× 経費にならない○ 現金は減る

そのため、

決算書では利益が出ていても、

銀行口座にはお金が残らないという現象が起こります。


本当に見るべきなのは「口座残高」

経営者が毎日見るべき数字は、

売上だけでも、

利益だけでもありません。

本当に大切なのは、

「あと何か月営業できるだけの現金があるか」

という視点です。

例えば、

見る数字意味
売上お客様に選ばれた結果
利益経営成績
現預金店が生き残れる時間

飲食店は、

利益では倒産しません。

現金がなくなった時に倒産します。


黒字倒産が起こる理由

「利益が出ているのに倒産するなんてあり得るの?」

そう思うかもしれません。

しかし、

黒字倒産の多くは、

利益ではなく現金不足が原因です。

売上が伸びる
   ↓
利益は出る
   ↓
仕入れ・人件費が先に増える
   ↓
入金はまだ来ない
   ↓
税金・返済も重なる
   ↓
口座の現金が尽きる

これが、

黒字倒産の典型的な流れです。


まとめ

利益と現金は、同じではありません。

売上が増えれば、

仕入れ、人件費、広告費などの支払いが先に発生します。

さらに、

利益が出れば税金が増え、

借入返済では現金だけが減っていきます。

だから私は、

利益率だけを見て経営はしません。

本当に見るのは、今、口座にいくら現金があり、この先何か月営業を続けられるのか。

その数字こそが、

飲食店の本当の体力を表していると考えています。

関連記事👉利益率30%なのに、なぜ飲食店の口座にはお金がないのか?

11.経営者自身の労働を無料で計算している

「今月は30万円利益が残った。」

そう聞くと、多くの人は順調な経営だと思います。

しかし、その利益は本当に店が生み出した利益でしょうか。

もしかすると、

経営者自身の労働を無料で使うことで、利益が出ているように見えているだけ

かもしれません。

これは小規模な飲食店で、とても多いケースです。


経営者は何役もこなしている

飲食店の経営者は、社長である前に現場のスタッフでもあります。

毎日、

  • 仕込み
  • 調理
  • 接客
  • 買い出し
  • シフト作成
  • SNS更新
  • 経理
  • 清掃
  • クレーム対応

など、あらゆる仕事を一人でこなしています。

つまり、

店の利益は、経営者の長時間労働によって支えられていることが少なくありません。


もし経営者がいなかったら?

一度、こんなことを考えてみてください。

もし明日から経営者が1か月休むことになったら、

店は今までどおり営業できるでしょうか。

もし営業を続けるなら、

代わりの人が必要になります。

例えば、

経営者がしている仕事必要になる人件費
調理調理社員
接客ホール社員
シフト作成店長業務
発注・仕入れ管理業務
SNS・販促広報業務
経理事務作業

その人件費をすべて計算したとき、

利益は本当に残るでしょうか。


利益ではなく「経営者の犠牲」で成り立っている

例えば、

経営者が、

  • 月300時間働く
  • 月30万円しか受け取っていない

とします。

すると、

項目数字
労働時間300時間
報酬30万円
時給換算約1,000円

しかも、この1,000円には、

  • 経営責任
  • 借入の返済責任
  • 売上が下がるリスク
  • クレーム対応
  • 将来への不安

まで含まれています。

これで本当に「儲かっている」と言えるでしょうか。


帳簿は黒字でも、人生は赤字

会計上は利益が出ている。

しかし、

経営者は休めない。

家族との時間もない。

体力も限界。

将来のための貯金もできない。

そんな状態なら、

それは本当に成功でしょうか。

私は違うと思います。

経営とは、

決算書を黒字にすることではありません。

経営者の人生まで豊かにすることです。


本当の利益は「代わりがいても残る利益」

本当に強い店とは、

経営者が一週間休んでも、

一か月休んでも、

利益が残る店です。

つまり、

経営者が現場から抜けても利益が出る仕組み

を作れている店です。

逆に、

経営者が一日休んだだけで営業が回らないなら、

その利益は、

店が生み出している利益ではありません。


経営者の仕事は「自分が頑張ること」ではない

もちろん、創業期は誰でも必死に働きます。

私も現場に立ちます。

しかし、

ずっとその状態では会社は強くなりません。

経営者の仕事は、

自分が300時間働くことではなく、

300時間働かなくても利益が残る仕組みを作ることです。

だから、

  • 人を育てる
  • オペレーションを整える
  • 権限を委譲する
  • 標準化する

こうした仕事に時間を使うことが、経営者本来の役割なのです。


まとめ

小さな飲食店では、

経営者が長時間働くことで利益が出ているケースが少なくありません。

しかし、

その利益は店の利益ではなく、

経営者の労働力を安く使って生み出した利益であることもあります。

だから私は、

利益を見るときに、

決算書だけは見ません。

「もし自分が現場から抜けても、この店は利益を残せるか。」

その問いに「はい」と答えられたとき、

初めて本当に強い飲食店になったと言えるのだと考えています。

12.この問題の本当の恐ろしさ

ここまで読んで、

「うちも当てはまるかもしれない。」

そう感じた方もいるかもしれません。

実は、一番危険なのは売れていない店ではありません。

売れているのに利益が残らない店です。


売れていない店は、まだ気づける

売上が少ない店は、問題がすぐに表面化します。

お客様が来ない。

売上がない。

口座残高が減っていく。

だから危機感を持ちやすく、改善にも取り組みやすいのです。


本当に危険なのは「忙しい店」

一方で、売れている店は違います。

毎日忙しい。

お客様もたくさん来る。

スタッフも走り回っている。

レジは鳴り続ける。

口座にも一度はまとまったお金が入る。

すると経営者は、

「うちは繁盛している。」

と思ってしまいます。

しかし、その忙しさは、本当に利益につながっているのでしょうか。


繁盛しているように見えても…

こんな状態になっていないでしょうか。

  • 税金を払うと口座が苦しくなる
  • 賞与を出したくても出せない
  • 厨房機器が壊れてもすぐ買い替えられない
  • 修繕費をためらってしまう
  • 経営者が休めない
  • 店長を採用する余裕がない
  • 2店舗目へ投資できない
  • 想定外のトラブルが起きると資金が尽きる

もし一つでも当てはまるなら、

それは利益が十分に残っている状態とは言えません。


それは繁盛店ではなく「忙しい店」

忙しいことと、儲かっていることは違います。

忙しい店本当に強い店
売上は多い利益が残る
経営者が現場に張り付く仕組みで回る
常に資金繰りが苦しい現金が積み上がる
修繕や投資を先送りする将来への投資ができる
売上が止まると不安数か月売上が落ちても耐えられる

本当に強い店とは、

忙しい店ではなく、利益と現金が残る店です。


売上は、こうやって利益になる

経営は、

売上だけを見ても判断できません。

本当に見るべきなのは、

売上から何が引かれ、最後に何が残るのかです。

まずは営業利益です。

売上
- 食材原価
- 人件費
- 販売手数料
- 販促費
- 消耗品費
- 水道光熱費
- 家賃
- 修繕費
- 管理費
==========
営業利益

ここまでは、多くの経営者も見ています。

しかし、本当に重要なのは、この先です。


さらに現金は減っていく

営業利益は、そのまま使えるお金ではありません。

ここからさらに、

営業利益
- 税金
- 借入返済
- 設備投資
- 将来の修繕積立
==========
本当に残る現金

になります。

だから、

利益が100万円あっても、

口座には100万円残るとは限らないのです。


最後に見るべき数字

そして、RBRではもう一つ数字を見ます。

本当に残る現金
÷
経営者の労働時間
==========
その店が生み出した本当の豊かさ

例えば、

項目数字
本当に残る現金60万円
経営者の労働時間300時間
1時間あたりの豊かさ2,000円

もし毎月300時間働いて、

時給換算で2,000円しか残らないなら、

その店は本当に豊かな経営と言えるでしょうか。

逆に、

経営者が180時間働き、

同じ60万円が残るなら、

経営者の人生は大きく変わります。

私は、この違いこそが経営だと思っています。


RBRが目指す経営

私は、

売上日本一を目指しているわけではありません。

利益率だけを追いかけているわけでもありません。

私が目指しているのは、

経営者が豊かになれる飲食店です。

だから見る順番は、

  1. 売上
  2. 利益
  3. 現金
  4. 経営者の時間

この順番になります。

売上は、お客様に選ばれた証拠です。

利益は、経営の成果です。

現金は、店の体力です。

そして最後に、

経営者の時間が、その経営が本当に人生を豊かにしているかを教えてくれます。


まとめ

売上が多いことは素晴らしいことです。

しかし、

売上だけでは店の強さは分かりません。

利益が残る。

現金が残る。

将来への投資ができる。

経営者が休める。

スタッフが育つ。

新しい挑戦ができる。

ここまで揃って、初めて本当に強い飲食店だと言えます。

だから私は、

「売上はいくらですか?」

ではなく、

「最後に、何が残りましたか?」

この問いを、いつも自分自身に投げかけながら経営をしています。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。