
~飲食店は”料理”ではなく”体験”を売る仕事~
1.なぜ美味しい店が潰れるのか

飲食店を経営していると、売上が落ち始めた時に、多くの人がまず考えることがあります。
「もっと美味しくしよう。」
「もっと早く提供しよう。」
「もっと盛り付けを綺麗にしよう。」
料理人であれば、この発想はごく自然です。
私自身も25年以上飲食業に携わる中で、料理の味、提供スピード、盛り付けには何度も向き合ってきました。
だからこそ断言できます。
料理を磨くことは、決して間違いではありません。
しかし、長年現場で数多くのお店を見てきた中で、一つの疑問を持つようになりました。
本当に「美味しい料理」だけで繁盛店になれるのでしょうか。
もしそうであれば、美味しいと言われるお店が閉店することはありません。
料理人が腕を磨けば磨くほど、お客様は増え続けるはずです。
しかし現実は違います。
食べログで高評価のお店が閉店することもあります。
料理人として高い技術を持っているにもかかわらず、経営が苦しくなるお店も少なくありません。
一方で、「そこまで特別美味しいわけではない」と言われるお店が、毎日満席になっていることもあります。
この違いは何なのでしょうか。
私は、その答えは料理以外にあると考えています。
料理人は、一皿一皿に魂を込めます。
火加減を調整し、
ソースの味を整え、
盛り付けのバランスを考え、
一秒でも早く提供できるよう厨房の中で必死に動きます。
それ自体は素晴らしいことです。
しかし、その一方で見落としてしまいがちなものがあります。
それがお客様です。
料理ばかりを見ていると、
お客様の表情が見えなくなります。
料理ばかりを気にしていると、
お客様が何を求めているのかが見えなくなります。
料理ばかりを追い求めると、
お客様が満足しているのか、不満を感じているのか、その小さな変化にも気付きにくくなってしまいます。
例えば、お客様が料理を待っている間、何を感じているでしょうか。
スタッフ同士が険しい表情で仕事をしていたら。
店内に活気がなかったら。
水が空になっても誰も気付かなかったら。
入店した時に笑顔で迎えられなかったら。
料理がどれだけ美味しくても、その時間の積み重ねは、お客様の印象に残ります。
逆に、料理を待つ時間であっても、
スタッフの気遣いや笑顔があり、
居心地の良い空気が流れていれば、
料理への期待は自然と高まっていきます。
つまり、お客様は料理だけを評価しているわけではありません。
お店で過ごす時間そのものを評価しているのです。
私は飲食店の仕事とは、
「料理を提供する仕事」
ではなく、
「お客様に満足して帰っていただく仕事」
だと考えています。
料理は、その満足を作るための大切な要素です。
しかし、それはあくまで数ある要素の一つに過ぎません。
どれだけ料理が美味しくても、
笑顔がなければ。
居心地が悪ければ。
店全体の印象が悪ければ。
「また来たい」と思っていただくことは難しくなります。
だから私は、料理を磨くことと同じくらい、
お客様を見ることを大切にしています。
料理の完成度ばかりを追い求めるのではなく、
お客様が今どんな表情をしているのか。
何か困っていないか。
何を求めているのか。
そこに気付けるお店こそが、本当の意味で繁盛店になれるのではないでしょうか。
そして、この考え方を理解するためには、もう一つ知っておかなければならないことがあります。
お客様は料理を買っているのではありません。
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この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。