
――蕎麦が弱いのではない。「立地×業態」で考える飲食店経営
1.イオンの担当者から聞いた、意外な一言

先日、イオンのフードコートに出店する飲食店を探している担当者と話す機会がありました。
その時、非常に興味深い話を聞きました。
「蕎麦で、フードコートで大きく当たった業態を、まだ見たことがないんですよね」
この言葉を聞いた時、私は少し不思議に感じました。
なぜなら、蕎麦は決してマイナーな料理ではないからです。
日本人にとって、蕎麦は定番中の定番です。
駅に行けば立ち食い蕎麦がある。
街を歩けば昔ながらの蕎麦屋がある。
ロードサイドにも蕎麦店がある。
年越し蕎麦のように、日本の食文化そのものに深く入り込んでいる料理でもあります。
さらに、蕎麦という業態そのものがチェーン化できないわけでもありません。
「ゆで太郎」のように200店舗を超える規模まで成長した蕎麦チェーンも存在します。
つまり、
「蕎麦には需要がない」
という話ではないのです。
むしろ、ここが面白いところです。
ラーメンはフードコートにある。
うどんもある。
ちゃんぽんもある。
丼もある。
カレーもある。
ステーキもある。
たこ焼きもある。
そして、全国のショッピングモールを見渡せば、これらのカテゴリーには「フードコートの勝ち組」と呼べるようなチェーンがいくつも存在しています。
ところが蕎麦になると、景色が少し変わります。
もちろん、フードコートに蕎麦店が存在しないわけではありません。
地域単位で繁盛している店もありますし、蕎麦を扱う複合業態もあります。
しかし、
「フードコートの蕎麦といえば、このブランド」
と全国的に認識されるような、絶対的な存在はなかなか思い浮かびません。
これは少し奇妙です。
蕎麦そのものには市場がある。
チェーン化の実績もある。
日本人にも馴染みがある。
提供時間も比較的短い。
一見すると、フードコートとの相性は悪くなさそうに見えます。
それなのに、なぜか大きな勝ち組が生まれていない。
ここで私は、一つの疑問を持ちました。
もしかすると、「蕎麦」という商品に問題があるのではなく、「蕎麦屋」という業態とフードコートの構造が噛み合っていないのではないか。
フードコートで注文先を迷っているお客様に、蕎麦のおいしさをどう伝えるか。英語の動画では、ラーメン店が店先で食欲をそそる工夫と比べながらお話ししています。
飲食店は、料理がおいしければどこでも売れるわけではありません。
同じ商品でも、
駅前で売れる商品。
ロードサイドで売れる商品。
繁華街で売れる商品。
住宅街で売れる商品。
そして、
フードコートで売れる商品。
それぞれ条件が違います。
フードコートという場所には、フードコート特有の「勝ち方」があります。
では、蕎麦はその勝ち方のどこで引っかかっているのでしょうか。
価格なのか。
客単価なのか。
家族需要なのか。
子ども需要なのか。
視認性なのか。
メニューの分かりやすさなのか。
それとも、蕎麦という料理そのものが持つ「利用動機」に原因があるのでしょうか。
イオンの担当者から聞いた、たった一言。
「蕎麦で、フードコートで大きく当たった業態をまだ見たことがない」
この言葉を起点に調べていくと、単なる「蕎麦屋の話」では終わらない、かなり面白い構造が見えてきました。
なぜ丸亀製麺はフードコートで強いのに、蕎麦では同じような巨大ブランドが生まれないのか。
なぜロードサイドでは繁盛する蕎麦業態が、フードコートでは同じ勝ち方ができないのか。
そして、
フードコートで本当に売れているのは「料理」なのか、それとも別の何かなのか。
ここから、一つずつ検証していきます。
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この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。