外食売上6.8%増で、飲食店経営は楽になったのか?|業界の成長と、自分の店に残る利益を考える

外食の売上は伸びている。それなのに、自分の店の経営が楽になった実感はない。そんなとき、業界ニュースをどう受け止めればよいのでしょうか。
この記事では、2026年7月の外食産業市場動向調査を入口に、売上の内訳、利益、現場の受け入れ能力、働く人の時間まで考えます。調査で確認できる事実を整理したうえで、RBRの経営観に沿って、自店で実行できる改善へつなげていきます。
2026年9月9日時点の資料に基づく考察です。本文中の店舗モデルは説明用の仮定であり、実在店舗の実績ではありません。画像は内容を伝えるために作成したイメージです。
第1章 外食売上が伸びた。そのニュースを経営者はどう読むか

外食の売上が伸びたというニュースを見ると、少し安心する経営者もいれば、「うちの店ではそんな実感がない」と感じる経営者もいると思います。同じ業界のニュースを読んでいるのに、受け止め方が違う。そこに、自分の店を考える入口があります。
日本フードサービス協会が2026年8月25日に公表した7月度の外食産業市場動向調査では、全体の売上高は前年同月比106.8%でした。前年より6.8%増えたという意味です。客数は103.2%、客単価は103.5%、店舗数は101.1%。調査対象は234事業社、37,272店舗で、新規店も含む会員企業の全店データです。前年比は税抜きで比較されています。
同協会は、天候の安定などを客足回復の背景として挙げる一方、値頃感を伝える施策の有無によって集客が左右される状況にも触れています。売上の伸びという結果の裏側で、各社が集客の工夫を続けていたことが読み取れます。
ここで確認しておきたいのは、この調査が一つひとつの飲食店の利益を示す資料ではないことです。日本中の個人店を同じ条件で調べた結果でもありません。自店の売上が6.8%伸びていないから経営に失敗した、と結論づける使い方には無理があります。
反対に、自店が同じくらい伸びているから大丈夫、と安心するのも早い。ニュースの数字と経営者の実感がずれるときは、どちらかが間違っていると決める前に、見ている対象をそろえる必要があります。
全国なのか商圏なのか。全店なのか同じ一店舗なのか。月間合計なのか一営業日当たりなのか。売上なのか利益なのか。この確認だけでも、次に調べるべきことが変わります。
RBRとして今回のニュースを読むなら、問いは「外食は好調なのか」だけでは終わりません。その動きを、自分の店のどの数字と照らし合わせるのか。そして、明日の営業をどう変えるのか。そこまで考えて初めて、業界の情報が経営に役立つと考えます。
出典:日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 2026年7月度 結果報告」(2026年8月25日公表)。第2章以降の経営上の説明・計算例は、本記事による考察です。
第2章 売上が増えた理由を、客数・客単価・店舗数に分ける

一店舗の売上を考える基本は、客数と客単価です。たとえば延べ来店客数が月に2,000人、客単価が1,500円なら、月商は300万円になります。どちらか一方が増えれば、もう一方が変わらなくても売上は増えます。
ただし、「売上が増えた」という同じ言葉でも、店で起きていることは違います。来店客が増えた店では、注文、調理、配膳、会計、片付けが増えます。客単価が上がった店でも、高価格の商品が選ばれたのか、追加注文が増えたのか、価格を改定したのかで、必要な作業は変わります。
今回の集計では客数と客単価の両方が前年を上回っています。したがって、全体の売上増をすべて値上げだけで説明することもできません。一方、客単価には商品構成や注文内容の変化も含まれるので、客単価の上昇率をそのまま値上げ率と呼ぶこともできません。
さらに全店データでは、新しく出店した店舗の販売も含まれます。店舗数が増えれば、同じブランドの総売上が増えることがあります。その総売上の伸びと、以前から営業している一店舗の成長は、別々に確認したい数字です。なお、全店の客数には店舗の増減による影響も含まれるため、客数と客単価を掛けた数字に、店舗数の伸びをさらに掛けてはいけません。
自分の店では、まず昨年と今年の月商、延べ客数、客単価、営業日数を横に並べます。営業時間を短くした、定休日を増やした、宴会を一件多く受けた、といった条件もメモします。月商が横ばいでも、営業日が減っているなら一日当たりの売上は改善しているかもしれません。
次に、ランチと夜、平日と週末、店内と持ち帰りなどに分けます。全体では5%増えていても、夜の常連客が減り、その分を別の販路が埋めている可能性があります。合計が良いと、こうした変化は見過ごしやすいものです。
確認する目的は、表を細かくすることではありません。増えた理由を理解して、もう一度実行できる改善を見つけることです。たまたま大きな宴会が入った月と、平日の再来店が積み上がった月を同じ成功として扱うと、翌月の計画を誤りやすくなります。
出典:日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 2026年7月度 結果報告」(2026年8月25日公表)。第2章以降の経営上の説明・計算例は、本記事による考察です。
第3章 値上げによる売上増を、店の成長と呼べるのか

仕入れや人にかかる費用が変われば、販売価格を見直す必要が出てきます。価格改定は、店を続けるための経営判断の一つです。ただ、その結果を売上だけで評価すると、お客様の変化を取りこぼします。
ここからの数値例は、仕組みを説明するための仮定です。RBRの実績や今回の調査対象店の事例ではありません。
客単価1,000円、月間客数3,000人の店を考えます。売上は300万円です。平均の支払額が1,100円になり、客数が2,800人になった場合、売上は308万円。売上は増えていますが、延べ来店客数は200人減っています。
この結果だけで、価格改定が成功とも失敗とも言い切れません。客数の減少が天候や営業日の影響かもしれませんし、利益が改善している可能性もあります。必要なのは、価格を変えた前後に何が変わったかを追うことです。
特に見たいのは、注文点数、よく選ばれる商品、来店頻度です。一回の会計が上がっていても、月に四回来ていた方が二回になれば、その方からの月間売上は減る場合があります。平均客単価だけでは、その変化は見えません。個人を過剰に追跡する必要はなく、日々の接客や再来店施策の集計から把握できる範囲でも役立ちます。
また、安い商品だけが選ばれるようになったときに、すぐ「お客様がお金を使わなくなった」と決めつけないことです。メニューの説明が足りない、価格差の理由が伝わらない、セットの選択肢が分かりにくい、といった店側の問題もあり得ます。
価格の納得感は、料理だけで決まるものでもありません。清潔さ、待ち時間、注文のしやすさ、接客の安心感、量、居心地。お客様はその全体に対して支払います。経営者が原価の話をしている間にも、お客様は食事の体験を見ています。
だから価格を見直したら、数週間単位で販売数と利益額を確認し、接客で聞かれたことも残します。売上が増えたか、来店が続いているか、その価格で満足してもらえているか。これらを一緒に見て、次の修正を考える必要があります。
第4章 月商が増えても、利益が減ることはある

忙しくなったのに、お金が残る感覚がない。そういうときは、売上の増加額と費用の増加額を並べると、原因が見えてくることがあります。まずは単純な月次モデルで考えてみます。
以下はすべて仮定の税抜き金額です。営業利益を説明するため、食材原価、人件費、その他経費に集約し、その他経費には家賃、水道光熱費、広告費、手数料、減価償却費などを含める想定です。借入元本の返済や法人税等は、この表の営業利益には含めません。
| 項目(税抜き) | 前 | 後 |
|---|---|---|
| 売上 | 300万円 | 320万円 |
| 食材原価 | 90万円 | 105.6万円 |
| 人件費 | 90万円 | 100万円 |
| その他経費 | 90万円 | 95万円 |
| 営業利益 | 30万円 | 19.4万円 |
売上は20万円増えました。しかし費用は合計30.6万円増えているため、営業利益は10.6万円減りました。売上が増えたことも、経営が苦しくなったという感覚も、両方正しい状態です。
食材原価率を見ると30%から33%へ上がっています。ここには仕入れ価格の変化だけでなく、商品構成、使用量、廃棄、在庫の計上など、複数の原因が考えられます。請求書の金額だけを原価として扱わず、期首在庫に仕入れを足し、期末在庫を引くという関係も確認します。仕入れを前倒しした月の支出と、その月に使った食材の原価は一致しないことがあるからです。
人件費も同じです。時間当たりの費用が変わったのか、労働時間が増えたのか、教育のために配置を厚くしたのか。原因によって取るべき行動は違います。必要な教育まで削ってしまえば、翌月以降の運営を弱くする可能性があります。
販路が増えたときは、手数料や容器代にも目を向けます。店内とデリバリーを合算した原価率だけでは、何を売るとどれだけ残るのかが分かりにくくなります。商品や販路ごとに、販売額からその注文に伴う費用を引いて確認したいところです。
そして、営業利益が出ていても、その金額がそのまま預金に増えるわけではありません。入金と支払の時期、借入元本返済、設備購入なども資金に影響します。月次損益と資金の予定を別々に確認すると、「利益の問題」と「支払時期の問題」を混同しにくくなります。
RBRの視点では、売上を増やす計画と一緒に、増やした売上からいくら残すのかを決めておくことが大切です。追加の20万円を作るために、何にいくら使っているのか。その問いが、忙しさを経営改善につなげる入口になります。
第5章 業界平均と、自分の店を比べる前に

業界の数字は、自店の外側で何が起きているかを知るために役立ちます。ただし、それを自店の合格点にしてしまうと、判断が粗くなります。立地も客層も違う店が、同じ増加率を目指す必要はありません。
たとえば大規模な企業には、仕入れ数量、商品開発の体制、広告の届く範囲などで強みを持つ場合があります。一方で、組織を維持する費用や調整の難しさもあります。個人店には、地域のお客様の反応を見て、その日の説明や商品の組み合わせを変えられる柔軟さがあります。どちらかを一括りにして優劣をつける話ではありません。
比較したいのは、結果を生んだ条件です。近くの店がセット販売を強化していても、自店とは厨房の設備や仕込みの方法が違うかもしれません。価格だけを合わせると、同じ販売数でも利益や作業負担は違ってきます。
自店の経営を評価するときは、まず前年の自店と計画値を確認します。その次に、似た曜日、似た時間帯、同じ販路を比べます。業界のデータは、その変化を考える補助線として使う。この順序の方が、改善箇所を見つけやすいと思います。
前年の数字にも注意が必要です。昨年は改装で休んでいた、特別なイベントがあった、大口の宴会が集中した、という場合、前年比の高低だけでは通常の営業力を判断できません。比較する月の営業条件を記録しておくと、見かけの増減に振り回されにくくなります。
また、同じ月商でも、その売上を作るために使っている時間は違います。営業時間を延ばしてようやく前年を上回ったのか、同じ時間で販売額が増えたのか。経営者自身が休日返上で穴を埋めているなら、それも含めて状態を見たいところです。
店の目標は、ニュースに出てくる数字を追いかけて決めるものではありません。必要な人員、支払、設備維持、今後の投資、経営者の生活まで考え、どれだけの利益と資金が必要かを整理して設定します。業界の追い風があるなら活用する。向かい風があるなら備える。そのために外の数字を読むのです。
第6章 客数を増やす前に、受け入れられる店になっているか

売上が足りないとき、広告やクーポンを考えるのは自然です。ですが、広告で来店が増える時間と、店に余力がある時間が一致するとは限りません。すでに混み合っている時間に注文が集中すれば、売上を増やす施策が現場の混乱につながることもあります。
席が空いているから受け入れられる、とも限りません。調理の火口、盛り付け台、食器、洗い場、会計、それぞれに処理できる量があります。客席より先に、厨房の一工程が限界に達している店もあるはずです。
たとえば、十分な席があっても、注文後に同じ鉄板を使う料理ばかりが重なれば提供が遅れます。別の作業ができる人を増やしても、その鉄板が詰まっている限り、すぐには解決しません。どの工程で待ちが生まれているかを見る必要があります。
そのために、忙しかった日だけでも、注文時刻、最初の料理の提供、最後の料理の提供、会計待ちを確認してみます。すべてを厳密に測るところから始めなくても、特に遅れた注文を記録し、原因を振り返るだけで改善の材料になります。
改善策は増員だけではありません。仕込みの段取りを変える、よく出る食器を近くに置く、注文を取る際の説明をそろえる、同時に出しやすいメニューを組み合わせる。品質や衛生を守ったうえで、移動や探す時間を減らせる部分を探します。
販促も、余力のある時間に合わせて設計できます。週末のピークをさらに混ませるより、平日の早い時間に来店する理由を作った方が、店全体の利益につながる可能性があります。デリバリーを扱う場合も、店内注文と重なる時間の処理能力を確認してから増やしたいところです。
来てくれたお客様が、長い待ち時間や説明不足で不満を持って帰る。その状態では、新規客を増やしても再来店が積み上がりにくくなります。集客した人数だけでなく、その方をきちんと迎えられたかを振り返ることが必要です。
RBRが考える売上改善では、集客と受け入れ能力を一緒に整えます。もっと来てもらうための工夫と、来てよかったと思ってもらうための工夫。その両方に経営者が時間を使うことで、売上の伸びを続く成果に変えていきます。
第7章 忙しさを、スタッフの負担だけで吸収していないか

売上が増え、人件費率が下がった。数字だけを見ると、効率が良くなったように見えることがあります。しかし、同じ人数が休憩を取りづらくなり、閉店後の作業が延び、経営者が無理を重ねているなら、その状態を安定した改善と呼べるでしょうか。
ここは、RBRとして大切にしたい視点です。働く人の時間は、売上の不足を埋めるために無制限に使えるものではありません。経営者自身の時間も含めて、店を続けるために守るべき資源です。
人件費率は、人件費を売上で割った数字です。売上が上がれば、配置や仕事の進め方が同じでも率は下がることがあります。だから、その率だけで「人が余っている」「まだ減らせる」と判断すると、現場の変化を見落とします。
確認したいのは、総労働時間と、その時間の使い方です。営業前の準備、営業中の対応、閉店後の片付け、教育、発注。どこに負担が集中しているのかを分けます。記録されていない作業を前提に利益が出ているなら、計画そのものを見直す必要があります。
たとえば、毎日閉店後に食器探しや備品補充で時間がかかっているとします。担当者の手際の問題にする前に、置き場所、補充のタイミング、在庫の持ち方を変えられないかを考えます。仕事を速くするよう求めるだけでは、同じ問題が繰り返されます。
新人の教育時間も、単なる余分な費用として扱わない方がよいと思います。教える時間を確保しなければ、任せられる仕事が増えず、いつまでも特定の人に負担が集まります。今日の人件費率と、数か月後の運営体制を一緒に見る必要があります。
改善を確認するときは、売上や利益に加え、休憩が取れたか、予定時刻に終われたか、ミスが減ったかを振り返ります。数字を厳しく見ることと、人を大切にすることは両立させたいものです。無駄な作業を減らして利益を作り、その余力を働きやすさや教育に戻す。そういう循環を目指したいと考えます。
スタッフに聞く際も、「何が遅いのか」だけでなく、「どの場面でやりにくいのか」を聞く。改善の情報は、日々その仕事をしている人が持っています。経営者が一人で考え込むより、現場と一緒に整理する方が、続けられる方法に近づきます。
第8章 値下げやキャンペーンは、何を増やすために行うのか

お得な施策で来店が増えたという話を聞くと、自店でも値下げを試したくなるかもしれません。その前に、何を成果とするのかを決めておきたいところです。販売数を増やすことと、利益を増やすことでは、必要な設計が違います。
ここでも仮の計算で考えます。税抜き1,000円の商品について、一食ごとに増える食材などの変動費を400円とすると、一食当たりの限界利益は600円です。100食売れば6万円になります。限界利益とは、売上からその販売に伴って増える変動費を引いた金額で、ここから固定費などを賄います。
同じ商品を900円に値下げし、変動費が400円のままなら、一食当たりは500円。元の6万円を確保するには120食が必要です。売上額を元に戻すだけでは、残る金額まで元に戻るとは限りません。しかも、この例には販促による追加の広告費や増員費は入れていません。
もともと買う予定だったお客様も割引を使うなら、その分の負担も考える必要があります。キャンペーンで売れた全数を、施策によって新しく増えた注文として数えると、効果を大きく見積もってしまいます。
もちろん、初回来店のきっかけを作るために、当日の利益を抑える判断はあり得ます。その場合は、予算、対象、実施期間、再来店の確認方法を決めます。いつまでに、何を見て、継続か修正かを判断するのか。始める前に基準を用意しておきます。
値頃感を伝える方法も、一律値引きだけではありません。内容が分かりやすいセット、追加する価値が伝わる一品、量を選べる仕組み、短い時間でも食べやすい提供方法など、自店の強みに合う形を考えられます。ただし、品数を増やした結果、仕込みや廃棄が増えるなら、その費用も含めて検討します。
最初は対象を絞り、同じ曜日や時間帯の通常営業と比べてみます。客数、限界利益の合計、提供時間、追加作業を確認し、可能な範囲で再来店も追います。天候やイベントの差が大きいときは、その影響も残しておきます。
売れたから続ける、反応が薄かったから全部やめる。その二択にせず、誰に何が伝わり、どこで費用が増えたのかを整理する。小さく試す意味は、失敗を避けることだけでなく、次に使える判断材料を得ることにもあります。
第9章 経営者が今月、自分の店で確認したいこと

ニュースを読んだあと、いきなり大きな方針転換をする必要はありません。まず一枚の表に、自分の店の状態を書き出してみます。数字を集めること自体を仕事にせず、次の行動が決まる範囲から始めるのがよいと思います。
一つ目は、売上の内訳です。前年同月と今月の売上、客数、客単価、営業日数を並べ、ランチと夜、平日と週末を分けます。すべてを細分化するのが難しければ、いま気になっている時間帯だけでも構いません。
二つ目は、残る金額です。原価率と原価額、人件費率と人件費額、広告費や手数料を確認します。率だけでなく金額も見ると、どこで増えた売上が使われたのかが分かりやすくなります。在庫や費用の計上時期がそろっているかも確認します。
三つ目は、売れている商品の変化です。販売数の多い商品だけでなく、一品当たりに残る金額と、仕込み・提供にかかる手間を見ます。注文が多い商品を急にやめるのではなく、価格、内容、仕込み方法、見せ方のどこを調整できるか考えます。
四つ目は、現場の詰まりです。遅れが起きた時間、欠品、作り直し、閉店後に延びた作業を挙げます。スタッフの感想も添えると、数字だけでは説明しにくい原因を探せます。
五つ目は、資金の予定です。近い支払日までに入る金額と出る金額、設備の修理や税金などの予定を確認します。売上が伸びて仕入れも増える時期ほど、入金までの時間を意識したいところです。
ここまで見たら、課題を一つ選びます。たとえば「平日の夜の客数が落ちているが、週末は提供が遅い」なら、店全体への一律販促を急ぐより、平日の来店理由を作り、週末は工程を整えるという判断ができます。同じ店でも、時間帯によって必要な施策は違います。
実行する内容は、担当者と確認日まで決めます。「メニューを改善する」より、「今週、主力三品の説明を変え、二週間後に販売数と注文内容を確認する」と書いた方が、行動に移せます。
確認日に結果が出ていなくても、すぐ失敗とは限りません。必要な期間が足りないのか、実行が不十分なのか、仮説が違ったのかを分けます。ただし、いつまでも様子見にしないよう、次の判断日を置きます。経営の改善には、金額と同じように時間の管理も必要です。
第10章 RBRの見解――業界の好調を、自店の経営改善にどう生かすか

今回の売上増は、外食を利用する動きが集計上で前年を上回ったという情報です。経営者にとって、外部環境を考える材料になります。ただ、それを自分の店の成績表として受け取ると、大切な判断が抜け落ちます。
RBRが重視するのは、店の中で利益が生まれ、その利益を続けて残せる状態を作ることです。お客様が満足し、スタッフが育ち、経営者が次の改善を考える時間を持てる。その状態に近づいているかを見たいと考えます。
売上が上がった月には、伸びた理由を言葉にする。何が選ばれたのか。誰が来てくれたのか。どの時間帯に増えたのか。そして、その売上を作るために使った費用と時間を確認する。これを続ければ、偶然の好調と、再現できる改善を少しずつ区別できます。
反対に、業界の数字ほど伸びていない月も、焦って店の個性を変える必要はありません。自店のお客様に選ばれている理由を確認し、弱くなっている部分を直す。価格だけを周囲に合わせる前に、商品、接客、提供方法、販路の組み合わせを見直せます。
人を減らして数字を合わせる方法だけを考えると、店の受け入れ能力や教育の時間まで失いかねません。働く人を守るには、利益が必要です。その利益を作るために、働く人の負担をどこまでも増やすという循環からは離れたい。作業を整え、適切な価格と商品を考え、店の強みを生かす方法を探すことが経営者の役割だと思います。
今ある厨房、設備、スタッフ、商品力。その組み合わせを見直す余地が、自分の店にも残っているかもしれません。新しい施策を足す前に、現状を具体的に知る。それは地味ですが、改善を続けるうえで欠かせない仕事です。
今日の売上を確認したら、もう一歩だけ進めてみてください。その売上から何が残ったのか。お客様にどんな体験を届けられたのか。働いた人が明日も無理なく仕事を続けられる状態だったのか。
この三つを数字と現場の両方から確かめ、小さな改善を重ねる。業界ニュースを読む時間を、自分の店を良くする時間につなげる。今回のニュースから、RBRとして考えたいのはそのことです。
出典・関連資料
日本フードサービス協会:2026年7月度 結果報告(PDF)
同協会:市場動向調査の説明と資料一覧
RBR:飲食店経営ブログと発信方針
RBRでは、今ある店舗の強みを生かしながら、利益が残る経営を考えています。関連する実務記事は、飲食店経営ブログでもご紹介しています。
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日常の延長では、もう選ばれない|地域の飲食店が作るべき「良空間」
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この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。