
1.料理が美味しくても、お客様が入らない理由

「料理には自信がある。」
「一度食べてもらえれば、良さは分かってもらえる。」
そう考えている飲食店経営者は少なくありません。
実際、料理は美味しい。
価格も決して高くない。
接客も悪くない。
それでも、お客様がなかなか入ってこない店があります。
その原因は、料理ではなく、外観にあるかもしれません。
お客様は、店に入る前に料理を食べることはできません。
味も分かりません。
接客の良さも分かりません。
店主がどれだけ真面目に料理を作っているかも分かりません。
外から見て判断できるのは、
店の明るさ。
看板。
入口。
清潔感。
店内の様子。
掲示されているメニュー。
そして何より、
「この店、美味しそうだな」
と感じるかどうかです。
飲食店の外観には、単純な正解があるわけではありません。
看板を大きくすればいい。
のぼりを増やせばいい。
照明を明るくすればいい。
それだけで、お客様が入りたくなる店になるわけではありません。
外から見た瞬間に、
「何となく美味しそう」
「何となく入りやすそう」
「ここなら失敗しなさそう」
そう感じさせられるかどうか。
私は、これは飲食人としてのセンスだと思っています。
ただし、ここでいうセンスは、生まれ持った才能ではありません。
繁盛店を見てきた数。
失敗している店を見てきた数。
自分の店で改善を繰り返した数。
お客様の反応を見てきた数。
どんな飲食店で働き、
どんなことを考え、
どんな飲食人として数年を積み重ねてきたのか。
その経験の積み重ねが、店を見た瞬間に違和感を感じ取る力になります。
毎日ただ料理を作り、
言われた作業だけをこなし、
営業時間が終わるのを待っているだけでは、この感覚は身につきません。
一方で、
「なぜ、あの店には人が入るのか」
「なぜ、この店は入りにくく見えるのか」
「自分がお客様なら、この入口から入りたいと思うか」
そんなことを考え続けてきた人は、店の外観を見ただけで、少しずつ改善点が見えるようになります。
飲食人として積み重ねるべきものは、調理技術だけではありません。
お客様が店をどう見るのかを感じ取る力。
それもまた、飲食人として身につけるべき大切な能力です。
そして、その力がない店は、料理を食べてもらう前に、お客様から選択肢から外されてしまいます。
どれだけ美味しい料理を作っていても、入店してもらえなければ、その美味しさは伝わりません。
飲食店の勝負は、厨房の中から始まっているのではありません。
お客様が店を見つけた瞬間から、すでに始まっています。
2.お客様は料理を見に来ているわけではない

飲食店経営者は、
どうしても料理を中心に考えてしまいます。
新メニューを作る。
原価を上げる。
盛り付けを工夫する。
もちろん、それらはとても大切です。
しかし、お客様は料理を見る前に、
まず店を見ています。
道路を歩いている人も、
車を運転している人も、
最初に目に入るのは店の外観です。
「美味しいかな。」
ではありません。
「入りたいかな。」
これを一瞬で判断しています。
だから、お客様は料理を評価する前に、
店そのものを評価しています。
店構え。
看板。
入口。
駐車場。
照明。
ガラス越しに見える店内。
それらを無意識のうちに見て、
「この店なら入ってみよう。」
「今日はやめておこう。」
を決めているのです。
私は飲食店を見ると、
料理より先に外観を見ます。
この店は何を売りたいのか。
誰に来てほしいのか。
どんな時間を提供したいのか。
それが外観から伝わる店は強い。
逆に、料理は美味しいのに、
外観から何も伝わってこない店は、
本当にもったいないと感じます。
飲食店の入口は、
ただの入口ではありません。
お客様との最初の接客です。
だから私は、
外観を整えることは、
料理を磨くことと同じくらい大切だと考えています。
3.外観で損している飲食店の特徴

では、外観で損をしている飲食店には、どんな共通点があるのでしょうか。
私は飲食店を見るとき、
まず「美味しそうかどうか」を見ます。
次に、
「入りたいと思えるか。」
この二つを見ています。
そして繁盛しにくい店には、いくつか共通点があります。
① 何屋なのか分からない
一番多いのがこれです。
看板を見ても、
何を食べられる店なのか分からない。
店名だけ大きく書かれていて、
料理が見えない。
これでは初めて来るお客様は入りにくくなります。
店名より先に伝えるべきなのは、
**「何が食べられる店なのか」**です。
② 店内の様子が見えない
人は分からないものに不安を感じます。
店内が暗い。
窓が隠れている。
中の様子が全く見えない。
これだけで、
「入りづらそう。」
という印象になります。
安心感も商品の一つです。
③ 清潔感がない
これは掃除だけではありません。
入口のマット。
ガラス。
植木。
のぼり。
メニュー。
駐車場。
店の外には、
その店の考え方が表れます。
細かい部分まで手入れされている店は、
料理も丁寧そうに見えます。
逆に、
外が雑な店は、
厨房まで雑なのではないかと想像されてしまいます。
④ 「美味しそう」が伝わらない
これが一番もったいない。
料理は美味しい。
でも、その魅力が外から全く伝わらない。
写真がない。
メニューが見えない。
おすすめも分からない。
これでは、お客様は興味を持てません。
飲食店は、
料理を作る仕事である前に、
料理を食べたいと思ってもらう仕事でもあります。
だから私は、
「美味しい料理を作ること」と同じくらい、
「美味しそうに見せること」を大切にしています。
4.「美味しそう」と感じる力は、経験で身につく

私はよく、
「この店、美味しそうですね。」
「この店、入りたくなりますね。」
と言います。
すると、
「センスがありますね。」
と言われることがあります。
確かに、センスなのかもしれません。
でも私は、
このセンスは生まれつきの才能ではないと思っています。
飲食店を何百軒、何千軒と見てきた経験。
繁盛店を見てきた経験。
潰れていく店を見てきた経験。
そして、自分自身が何度も改善を繰り返してきた経験。
その積み重ねが、
「何となく美味しそう。」
「何となく入りたい。」
という感覚を育ててくれます。
逆に、
毎日同じ仕事を繰り返し、
言われたことだけをこなし、
店全体を見ようとしなければ、
何年飲食店で働いても、この感覚は身につきません。
私はこれが、
「作業員」と「飲食人」の違いだと思っています。
作業員は、自分の持ち場しか見ません。
飲食人は、お客様の目線で店全体を見ることができます。
だから繁盛店へ食事に行っても、
「美味しかった。」
だけでは終わりません。
入口はどうだったのか。
看板は何を伝えていたのか。
駐車場は綺麗だったか。
照明は明るかったか。
店内へ入った瞬間に何を感じたのか。
スタッフの第一声はどうだったのか。
料理以外にも、
学ぶことは無数にあります。
だから私は、
飲食人には繁盛店へ行ってほしいのです。
料理を食べるためではありません。
繁盛する理由を感じるためです。
その経験を積み重ねることが、
自分の店を「美味しそう」と感じてもらえる店へ育てる、一番の近道だと考えています。
5.ガブ飲み食堂でも、外観には徹底的にこだわっています

ガブ飲み食堂でも、
料理だけを見せようとは考えていません。
お客様が車を降りた瞬間。
歩道を歩いている瞬間。
信号待ちをしている瞬間。
その数秒で、
「美味しそう。」
「ちょっと入ってみようかな。」
と思っていただける店づくりを意識しています。
だから私たちは、
外観を何度も改善してきました。
ランチのドリンク無料。
ご飯・味噌汁おかわり自由。
夜でも定食が食べられること。
期間限定メニュー。
季節限定商品。
こうした情報を店頭で分かりやすく伝えています。
もちろん、POPを貼れば繁盛するわけではありません。
でも、
何も伝えなければ、
お客様は何も知ることができません。
だから、
「お客様は何を知りたいのか。」
「何を見たら安心するのか。」
「何を見たら食べたくなるのか。」
その視点で店頭を何度も見直しています。
私は店の前を通るたびに、
自分がお客様ならどう感じるだろうと考えます。
本当に美味しそうに見えるか。
本当に入りたくなるか。
この問いに「はい」と答えられない限り、
改善する余地はまだあると思っています。
外観は一度作って終わりではありません。
お客様の反応を見ながら、
何度も改善を繰り返していくものです。
その積み重ねが、
「なんとなく入りたくなる店」を作り上げていくのだと、私は考えています。
6.外観は、24時間働く営業マン

飲食店は、
料理を作る仕事ではありません。
お客様に選んでいただく仕事です。
だから私は、
外観を24時間働く営業マンだと考えています。
営業時間外でも、
店の前を通る人はいます。
「こんな店があるんだ。」
「今度行ってみようかな。」
そんな印象は、毎日少しずつ積み重なっています。
逆に、
看板が古い。
外観が暗い。
何屋なのか分からない。
そんな状態では、
24時間、お客様に「入りたくない理由」を伝え続けているのと同じです。
高い広告費をかける前に、
SNSを頑張る前に、
まず店の前に立ってみてください。
そして、お客様の気持ちになって考えてみてください。
「自分なら、この店に入りたいと思うだろうか。」
この問いに自信を持って「はい」と答えられる店は、それほど多くありません。
だからこそ、
外観を少し改善するだけで、お客様の印象は大きく変わります。
飲食店は、料理だけで繁盛する時代ではありません。
店の外から始まる体験まで設計して、初めて「選ばれる店」になる。
私は、そう考えています。
7.まとめ

料理が美味しいことは、とても大切です。
でも、お客様は料理を食べる前に、
店を見ています。
だから私は、
料理を磨くことと同じくらい、
外観を磨くことも大切だと考えています。
「この店、美味しそう。」
その一言は、
高い看板だから生まれるわけでも、
派手な外観だから生まれるわけでもありません。
飲食人として積み重ねてきた経験。
お客様目線で店を見続けてきた経験。
その積み重ねが、
店全体の雰囲気となって表れます。
私は繁盛店へ行くと、
料理だけを見ません。
入口。
看板。
駐車場。
照明。
店内の空気。
スタッフの表情。
そのすべてを見ています。
なぜなら、
繁盛する店には、繁盛する理由があるからです。
飲食人とは、
料理を作る人ではありません。
お客様に「また来たい」と思っていただける店を作る人です。
その第一歩は、
厨房ではなく、
店の外から始まっています。
お客様が最初に見るのは料理ではありません。
あなたのお店です。
この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。