
~RBRが考える、弱者のマネジメント論~
はじめに

私は25年以上、飲食業界で働いてきました。
その中で、多くの繁盛店を見て、多くの失敗も経験してきました。
以前の私は、
「もっと効率良く。」
「もっとオペレーションを改善しよう。」
「もっとマニュアルを整備しよう。」
そんなことばかり考えていました。
もちろん、それは間違いではありません。
しかし、ある経営戦略との出会いが、私の考え方を根本から変えました。
それが、
ケイパビリティ・ベースド・ストラテジーです。
この考え方を学んだ時、
私は一つの疑問を持ちました。
「なぜ私たち中小飲食店は、大手が一番得意な土俵で勝負しようとしているのだろう。」
その瞬間から、
私の飲食店経営は大きく変わりました。
マニュアルを否定するようになったわけではありません。
オペレーションを軽視するようになったわけでもありません。
そうではなく、
「何を競争力にするのか。」
その考え方が変わったのです。
そして私がたどり着いた答えが、
ホスピタリティと、考える飲食人を育てること。
これこそが、中小飲食店が大手と戦うための武器だと考えています。
この記事では、その理由を私なりの考え方でお伝えします。
1.大手と同じ経営を目指してはいけない

個人店や中小零細企業が運営する飲食店は、大手飲食チェーンと同じ経営を目指すべきではない。
私はそう考えています。
ただし、これは大手の経営手法を否定しているわけではありません。
大手企業の経営には、学ぶべきことが数多くあります。
商品品質の安定。
衛生管理の徹底。
教育制度。
数値管理。
仕入れの仕組み。
店舗オペレーション。
ブランドの統一。
複数の店舗で、一定水準以上のサービスを提供し続けるために、大手企業は長い時間と多額の費用をかけて仕組みを作っています。
その完成度は非常に高い。
だからこそ、私たちは大手から学ばなければなりません。
しかし、学ぶことと、そのまま同じ経営を目指すことは別の話です。
大手と個人店では、そもそもの条件が違う
大手企業と個人店では、持っている経営資源が大きく異なります。
資金。
人材。
知名度。
広告予算。
商品開発力。
仕入れ力。
システム。
教育にかけられる時間と費用。
一つの店舗で問題が起きたときに、それを支えられる本部機能もあります。
大手飲食チェーンは、こうした豊富な経営資源を使いながら、多数の店舗を安定して運営する仕組みを作っています。
一方で、個人店や中小の飲食企業は、限られた人数と資金で店を運営しています。
経営者が商品開発を行い、採用を行い、教育を行い、広告を考え、現場にも立つ。
店長も、管理だけではなく、調理や接客に入りながら店舗を動かしていることが少なくありません。
同じ飲食店であっても、経営の前提が違います。
前提が違うのに、同じやり方だけを追いかければ、どこかで無理が生じます。
大手の完成形を小さく再現しても、大手にはなれない
中小飲食店が経営を学ぼうとすると、どうしても大手の成功事例が目に入ります。
マニュアルを作る。
業務を標準化する。
接客用語を統一する。
誰が働いても同じ商品を出せるようにする。
作業を細かく分解し、個人の判断を減らす。
これらは、多店舗を展開するうえでは非常に有効な方法です。
しかし、それを個人店がそのまま再現しようとしても、大手より精度の高い仕組みを作ることは簡単ではありません。
大手には、仕組みを作る専門部署があります。
現場の問題を集め、マニュアルを更新し、研修制度を改善し、数百、数千店舗で検証できる環境があります。
個人店が同じ土俵で、
「どちらのマニュアルが優れているか」
「どちらのオペレーションが安定しているか」
という勝負をしても、資本と経験の差がそのまま出てしまいます。
大手が得意とする戦い方で、大手以上の成果を出そうとする。
これは、弱者の戦い方ではありません。
同じことをして、価格まで負ければ選ばれる理由がなくなる
大手飲食チェーンには、安心感があります。
どの店舗へ行っても、ある程度同じ料理が出てくる。
接客や店内環境も大きく外れない。
初めて入る店舗でも、利用方法が分かりやすい。
しかも、仕入れ量や生産効率を生かし、価格を抑えられる場合もあります。
個人店が大手と同じような商品を提供し、同じような接客を行い、同じような店づくりをしたとしても、価格や知名度、安心感では不利になりやすい。
そこでお客様から、
「この店でなければならない理由は何か」
と問われたとき、答えられなくなります。
料理も似ている。
サービスも似ている。
雰囲気も似ている。
それなのに価格は少し高い。
知名度もない。
駐車場や立地も大手ほど良くない。
それでは、選ばれる理由を作ることができません。
中小飲食店が大手の劣化版になってしまえば、勝負は始まる前から決まっています。
小さいことは、弱みだけではない
中小飲食店は、大手より資金が少ない。
人も少ない。
設備も限られている。
確かに、不利な条件はあります。
しかし、小さいことは弱みだけではありません。
意思決定が早い。
今日気付いたことを、明日から変えられる。
目の前のお客様に合わせて対応を変えられる。
地域のお客様の声を直接聞ける。
経営者の考えを、現場まで近い距離で伝えられる。
スタッフ一人ひとりの個性を生かせる。
新しい商品やサービスを、小さく試すこともできます。
大手企業が全店舗で変更を行うためには、多くの確認や準備が必要です。
しかし、個人店なら、現場で得た気付きをすぐに改善へつなげることができます。
この柔軟性こそ、小さな会社が持つ大きな能力です。
問題は、この強みを捨てて、大手と同じようにすべてを固定してしまうことです。
マニュアルをなくせと言っているのではない
ここは明確にしておかなければなりません。
私は、マニュアルが不要だと言っているわけではありません。
料理の分量。
調理方法。
衛生管理。
清掃基準。
アレルギー対応。
金銭管理。
事故やクレームが発生した際の対応。
こうした部分には、明確な基準が必要です。
人によって判断が変わってはいけない仕事は、仕組み化しなければなりません。
マニュアルは、品質と安全を守るために必要です。
ただし、マニュアルは経営の目的ではありません。
あくまで、店を運営するための土台です。
その土台の上で、何を競争力にするのか。
ここを考えなければなりません。
大手は、標準化によって店舗数を増やし、品質を安定させることに強みがあります。
では、個人店は何を強みにするのか。
私は、その答えの一つが、人が考えて生み出すホスピタリティだと考えています。
お客様一人ひとりに合わせられることが、小さな店の強さ
お客様は、全員が同じサービスを求めているわけではありません。
静かに食事をしたい人もいます。
料理について詳しく知りたい人もいます。
急いでいる人もいます。
小さなお子様を連れている人もいます。
常連のお客様もいれば、初めて来店されたお客様もいます。
すべてのお客様に、決められた言葉と決められた動作だけで対応しても、本当に喜んでいただけるとは限りません。
目の前のお客様を見て、
今、何を求めているのか。
何をすれば安心していただけるのか。
何をすれば、より快適に過ごしていただけるのか。
それをスタッフ自身が考え、行動する。
これは、標準化だけでは生み出しにくい価値です。
そして、小さな店だからこそ実現しやすい価値でもあります。
経営者と現場の距離が近く、スタッフ同士の関係も近い。
お客様の反応を直接受け取り、店全体で共有できる。
一つの気付きが、その日のうちに店の行動へ変わる。
この速さと柔軟性は、大手には簡単にまねできません。
弱者は、大手にできないことを強くする
弱者の戦略とは、大手と同じことを少ない資金で行うことではありません。
大手が強い場所を避け、自分たちが強くなれる場所を選ぶことです。
広告費で勝てないのであれば、地域のお客様との関係を深くする。
仕入れ価格で勝てないのであれば、商品に独自の価値を加える。
知名度で勝てないのであれば、一度来店してくださったお客様を徹底的に大切にする。
マニュアルの完成度で勝てないのであれば、目の前のお客様を見て判断できる人を育てる。
自分たちが持っていないものを嘆くのではなく、自分たちだからこそ持てる能力を磨く。
それが、中小飲食店に必要な経営だと私は考えています。
目指すべきは、大手の縮小版ではない
個人店や中小飲食企業が目指すべきなのは、大手チェーンを小さくしたような店ではありません。
大手には大手の強さがあります。
個人店には個人店の強さがあります。
両者は、同じ飲食業でありながら、磨くべき能力が違います。
大手から学ぶべき仕組みは学ぶ。
品質、安全、数値管理など、取り入れるべきものは取り入れる。
その一方で、自分たちの強みまで大手に合わせて捨ててはいけません。
小さいからこそできる対応。
一人ひとりのお客様に向き合う姿勢。
スタッフが自分で考え、店を良くしていく力。
こうした能力を、意識して育てていく必要があります。
大手と同じ経営を目指してはいけないというのは、大手から何も学ぶなという意味ではありません。
大手の強みを理解したうえで、自分たちが同じ武器では勝てないことを認める。
そして、自分たちにしか作れない競争力を選び、磨き続ける。
それが、限られた経営資源で戦う個人店や中小飲食企業に必要な、最初の戦略だと考えています。
2.マニュアルとオペレーションは、大手最大の武器

「大手のような店を作りたい。」
飲食店を経営していると、一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。
料理の品質が安定している。
提供スピードが速い。
店内はいつも清潔。
スタッフの対応も一定の水準を保っている。
どこの店舗へ行っても、大きな差がありません。
これは偶然ではありません。
大手企業は、長い年月をかけて、
マニュアルとオペレーションを磨き続けてきた結果です。
しかし、この二つは似ているようで、役割はまったく違います。
マニュアルとは「仕事のやり方」
マニュアルとは、仕事のやり方を統一するためのものです。
例えば、
・ハンバーグは何グラムで提供するのか。
・ソースは何ccか。
・手洗いはどの手順で行うのか。
・レジの締め作業はどの順番で行うのか。
こうした内容は、人によって変わってはいけません。
誰が働いても、同じ品質の商品を提供するために必要なのがマニュアルです。
つまり、
マニュアルは品質を守るための仕組みです。
オペレーションとは「仕事の約束事」
一方で、オペレーションは仕事の約束事です。
例えば、
・誰がホールを見るのか。
・誰が洗い場へ入るのか。
・料理を出す順番はどうするのか。
・混雑したら、誰がどのポジションへ入るのか。
これは料理の作り方ではありません。
店を円滑に回すための約束事です。
だからオペレーションは、現場の状況によって改善され続けます。
より早く。
より安全に。
よりお客様を待たせないように。
そのために、何度も見直されます。
大手は、この二つを極限まで磨いてきた
大手飲食チェーンは、
マニュアルで品質を守り、
オペレーションで効率を高めています。
だから新人でも短期間で戦力になり、
何百店舗、何千店舗という規模でも、一定の品質を維持できます。
これは本当に素晴らしい仕組みです。
私は、この考え方を否定するつもりはまったくありません。
むしろ、飲食店経営者として学ぶべきことは数え切れないほどあります。
しかし、それだけでは個人店は勝てない
問題はここからです。
大手は、
マニュアルとオペレーションを磨くことに莫大な時間と資金を投資しています。
個人店が同じことをしようとしても、
その完成度で勝つことは極めて難しいでしょう。
それならば、
「大手より優れたマニュアルを作ろう。」
「大手より完璧なオペレーションを作ろう。」
と考えるよりも、
大手には簡単に真似できない競争力を育てる方が、弱者の戦略として合理的です。
そして私は、その競争力こそが、
ホスピタリティと、考える飲食人の育成だと考えています。
3.弱者には、弱者の戦い方がある

私はこれまで、経営戦略を学ぶ中で様々な考え方に触れてきました。
その中でも特に影響を受けたのが、
ケイパビリティ・ベースド・ストラテジーという考え方です。
名前だけ聞くと難しく感じますが、考え方はとてもシンプルです。
「自社にしかない能力を競争力にする。」
という戦略です。
つまり、ライバルが強い場所で勝負をするのではなく、自分たちだけが持つ能力を磨き、その能力で選ばれる会社を作るという考え方です。
飲食店も同じです
私は、この考え方は飲食店にもそのまま当てはまると思っています。
例えば、大手飲食チェーンは、
マニュアルがあります。
教育制度があります。
ブランド力があります。
広告費があります。
大量仕入れによる価格競争力があります。
これらは、大手だからこそ築ける強みです。
そこへ個人店が真正面から挑んでも、勝負は簡単ではありません。
だから私は、
「大手が強い場所で戦うのではなく、自分たちが強くなれる場所で戦うべきだ。」
と考えるようになりました。
中小飲食店の最大の武器は「人」です
個人店には、大手ほどのお金はありません。
知名度もありません。
広告費も限られています。
しかし、一つだけ、大手より伸ばしやすいものがあります。
それが、
人です。
経営者の想いが現場へ届く距離。
スタッフ同士の距離。
お客様との距離。
この近さは、小さな会社だからこその強みです。
経営者の考えが、翌日には現場で実践される。
現場で生まれた改善案が、その日のうちに採用される。
お客様からいただいた一言が、すぐ店づくりへ反映される。
このスピードは、大手には簡単に真似できません。
人はコストではなく、競争力になる
私は、人件費を単なるコストだとは考えていません。
もちろん、人件費は管理しなければなりません。
利益も残さなければなりません。
しかし、それ以上に、
人を育てることそのものが、店の競争力になる。
そう考えています。
料理は真似されます。
価格も真似されます。
店舗デザインも真似されます。
キャンペーンも真似されます。
しかし、
「この店は居心地がいい。」
「またあのスタッフさんに会いたい。」
「この店は自分のことを覚えてくれている。」
こうした価値は、簡単には真似できません。
だから私は、人を育てることを経営戦略として考えています。
私が育てたいのは「作業員」ではありません
ここで誤解してほしくないことがあります。
私は、仕事を正確にこなす人を否定しているわけではありません。
飲食店では、正確な仕事ができることは大前提です。
その上で私が育てたいのは、
作業をこなす人ではなく、考える飲食人です。
「このお客様には、こちらの席の方が過ごしやすいかもしれない。」
「料理を待たせているから、一言お声掛けしよう。」
「今日はいつもよりお子様連れが多いから、取り皿を先に準備しておこう。」
誰かに言われたからではありません。
お客様を見て、自分で考えた結果として動ける人です。
この能力こそが、中小飲食店が育てるべきケイパビリティ、つまり競争力だと私は考えています。
戦う場所を間違えてはいけない
経営では、
「何を頑張るか」
以上に、
「どこで戦うか」
が重要です。
大手と同じ武器を磨いても、大手には勝てません。
だから私は、
マニュアルやオペレーションを土台として整えながらも、
その先にある、
ホスピタリティ。
考える力。
人としての成長。
ここに時間を使います。
それこそが、大手には簡単に真似できない、中小飲食店だけの競争力になると信じているからです
4.RBRが競争力として選んだもの

では、中小飲食店は何を競争力にすれば良いのでしょうか。
私は、その答えが
ホスピタリティだと考えています。
ここで言うホスピタリティとは、
「笑顔で接客しましょう。」
「元気よく挨拶しましょう。」
そんな表面的な話ではありません。
お客様の立場に立って考え、
自分で判断し、
自分から行動する力。
私は、それこそがホスピタリティだと考えています。
ホスピタリティは、マニュアルでは作れない
例えば、お客様のお水が少なくなっている。
マニュアルには、
「お水が半分になったら注ぎましょう。」
とは書いていません。
それでも、
「そろそろお水をお持ちした方がいいかな。」
そう考えて動くスタッフがいます。
お子様連れのお客様が来店されたら、
言われる前に取り皿を用意する。
荷物が多ければ椅子を用意する。
料理を待っている時間が長くなれば、
「もう少々お待ちください。」
と一言添える。
これらは、
誰かに指示されたからではありません。
目の前のお客様を見て、
自分で考えて行動した結果です。
だから私は、
ホスピタリティとは、
「考える力」そのものだと思っています。
人は、マニュアルどおりの店ではなく、心地よい店を覚えている
お客様は、
ハンバーグが250gだったことを覚えているでしょうか。
ソースが30ccだったことを覚えているでしょうか。
もちろん、美味しかったという印象は残ります。
しかし、
「店員さんが気付いてくれた。」
「居心地が良かった。」
「また来たいと思えた。」
こうした感情は、もっと強く記憶に残ります。
だから飲食店は、
料理だけを売っているのではありません。
空間を売り、
時間を売り、
人を売っています。
そして、その価値を作るのは、
ホスピタリティです。
ホスピタリティは、店長一人では作れない
ここが一番重要だと思っています。
店長だけがお客様を見ていても、
繁盛店にはなりません。
社員だけでも足りません。
アルバイトも含め、
働く全員が、
「もっとお客様に喜んでいただくにはどうすればいいか。」
そう考えられる店になって初めて、
ホスピタリティは店の文化になります。
だから私は、
ホスピタリティを店長だけの能力にしたくありません。
店全体の能力にしたいのです。
人こそが、中小飲食店最大の資産
私は、
設備投資もします。
広告も出します。
商品開発も続けます。
しかし、一番時間をかけるのは、
人を育てることです。
考えられる人。
改善できる人。
お客様を最優先に考えられる人。
仲間を助けられる人。
こうした人が一人増えるたびに、
店は少しずつ強くなります。
そして、その積み重ねは、
大手には簡単に真似できません。
私が目指しているのは「人が競争力になる店」
私は、
ホスピタリティをサービスの一つとは考えていません。
経営戦略そのものだと考えています。
設備は真似されます。
商品も真似されます。
価格も真似されます。
しかし、
「この店のスタッフだから、また来たい。」
そう思っていただける店は、
簡単には真似されません。
だからRBRは、
商品だけではなく、
人を育てます。
マニュアルだけではなく、
考える力を育てます。
そして、
ホスピタリティを、
会社全体の競争力にしていきたいと考えています。
5.だから私は「考える飲食人」を育てる

私はスタッフに、
「言われたことだけをやる人」
になってほしいとは思っていません。
私が育てたいのは、
自分で考え、お客様のために行動できる飲食人です。
なぜなら、ホスピタリティは指示されて生まれるものではないからです。
お客様に喜んでいただくためには、
目の前で起きていることを見て、
考え、
判断し、
自分から行動する力が必要になります。
だから私は、
「どう動けばいいですか?」
と聞かれる店ではなく、
「こうした方がお客様が喜ばれると思います。」
という言葉が自然に出てくる店を目指しています。
考える力は、一日では身につかない
考える力は才能ではありません。
毎日の積み重ねです。
例えば、
お客様が料理を待っている。
その時、
「まだですか?」
と言われてから動く人と、
「少しお時間をいただいております。」
と自分から声を掛ける人では、お客様の印象は大きく変わります。
この違いは、
接客マニュアルを何ページ覚えたかではありません。
お客様を見ているかどうか。
そこにあります。
私は、すぐに答えを教えません
スタッフから相談を受けた時も、
私はできるだけ先に答えを言わないようにしています。
「あなたならどうする?」
「お客様だったらどう感じると思う?」
「もっと良い方法はないかな?」
そう問い掛けることがあります。
それは意地悪をしているのではありません。
自分の頭で考える習慣を身につけてほしいからです。
答えだけを教え続ければ、
その場の問題は解決します。
しかし、
次に同じような場面が来れば、
また答えを待つ人になってしまいます。
私は、その場だけ解決できる人ではなく、
次から自分で解決できる人を育てたいのです。
考える人が増えるほど、店は強くなる
一人の店長が考える店には限界があります。
経営者一人のアイデアにも限界があります。
しかし、
社員が考える。
アルバイトが考える。
全員がお客様のために改善を考える。
そうなれば、
店は毎日少しずつ進化していきます。
昨日より今日。
今日より明日。
少しずつ良い店になっていく。
これが、私が目指している組織です。
考えることには責任も伴う
もちろん、
何でも自由にやって良いという意味ではありません。
店には理念があります。
品質基準があります。
守らなければならないルールもあります。
その土台の上で、
どうすればもっとお客様に喜んでいただけるのか。
どうすればもっと働きやすい店になるのか。
どうすればもっと良い商品になるのか。
そこを考えてほしいのです。
自由とは、
好き勝手にすることではありません。
目的を共有した上で、自分の頭で最善を考えることです。
飲食人を育てることが、最大の投資になる
私は、
厨房機器にも投資します。
広告にも投資します。
店舗にも投資します。
しかし、それ以上に価値があると思っているのが、
人への投資です。
考えられる人が一人育てば、
その人は何年にもわたって店を良くしてくれます。
新しいスタッフを育てる側にもなります。
お客様との信頼も築いてくれます。
設備は時間が経てば古くなります。
商品も、いつか真似されます。
しかし、
考える飲食人は、
店の文化を作り、
店の未来を作ります。
だから私は、
マニュアルだけを教える教育ではなく、
考える力を育てる教育に時間を使っています。
それこそが、
中小飲食店が大手にはない競争力を築く、一番確実な方法だと信じているからです。
6.自主性は放置ではない

ここまで読んで、
「自由にやらせているだけではないか。」
そう感じた方もいるかもしれません。
しかし、それは違います。
私はスタッフに、
好き勝手に仕事をしてほしいとは思っていません。
自主性を尊重することと、
放置することは、
まったく別の話です。
自由には軸が必要です
私は、細かい接客方法までは指示しません。
お客様への声の掛け方も、
状況によって変わるでしょう。
仕事の進め方も、
もっと良い方法があれば改善してほしいと思っています。
しかし、
店として絶対に守らなければならないものがあります。
それが、
理念です。
理念があるから、
それぞれが違う考え方を持っていても、
同じ方向へ進むことができます。
理念がなければ、
自主性はただのバラバラな組織になってしまいます。
判断基準は「お客様にとってどうか」
私はスタッフに、
「自分がどうしたいか。」
ではなく、
「お客様にとってどうか。」
を考えてほしいと思っています。
楽だから。
面倒だから。
自分の担当ではないから。
そのような理由で判断してしまえば、
ホスピタリティは生まれません。
だから私は、
何か判断に迷った時には、
一つだけ基準があります。
「その行動は、お客様にとって本当に良いことなのか。」
この基準があれば、
現場で起こる多くの問題は、
自分で答えを見つけられるようになります。
ルールは、人を縛るためにあるのではない
ルールという言葉には、
どこか窮屈なイメージがあります。
しかし私は、
ルールは人を縛るためではなく、
理念を守るためにあるものだと考えています。
例えば、
衛生管理。
料理の品質。
時間を守ること。
これらは、
お客様に安心していただくためのルールです。
つまり、
ルールそのものが目的ではありません。
ルールは、
理念を実現するための手段です。
だから私は、
ルールを増やすことよりも、
理念を理解してもらうことを大切にしています。
考える人ほど、理念が必要になる
マニュアルだけで動く組織なら、
細かく指示を出せば済みます。
しかし、
考える人を育てようとするなら、
共通の価値観が必要になります。
それぞれが自由に考えるからこそ、
全員が同じ方向を向いていなければなりません。
だからRBRでは、
技術より先に、
考え方を共有します。
何のために働くのか。
誰のために働くのか。
どんな店を目指すのか。
ここが共有できていれば、
判断は多少違っても、
向かう方向は同じになります。
自主性とは、理念を実現する力である
私は、
自主性という言葉を、
「好きなように働くこと」
とは考えていません。
理念を理解し、
その理念を実現するために、
自分で考え、
自分で判断し、
自分から行動すること。
それが自主性だと思っています。
だから私は、
細かいことまでは言いません。
しかし、
理念だけは何度でも伝えます。
店の競争力は、
設備でも、
価格でも、
広告でもありません。
同じ理念を共有し、
同じ方向を向きながら、
一人ひとりが自分で考えて行動できる人が増えること。
それこそが、
RBRが目指している組織です。
7.私が本気で叱るのは、たった二つだけ

ここまで読んでいただくと、
「自主性を尊重するなら、叱らないのですか。」
そう思われる方もいるかもしれません。
答えは違います。
私は、叱ります。
しかも、本気で叱ります。
ただし、それは私の機嫌や感情ではありません。
店として絶対に守らなければならない価値観を壊した時だけです。
私は、スタッフを自分の思いどおりに動かしたいわけではありません。
しかし、お客様や仲間を傷つける行動だけは見過ごしません。
一つ目は、お客様を最優先にできないこと
RBRには、何よりも大切にしている考え方があります。
**「お客様最優先主義」**です。
飲食店は、お客様がいて初めて成り立つ仕事です。
だから私は、
自分の都合を優先する。
面倒だから後回しにする。
お客様より楽を選ぶ。
そのような考え方だけは認めません。
例えば、
目の前でお客様が困っているのに動かない。
忙しいことを理由に、お客様への気配りをやめる。
自分の仕事ではないからと見て見ぬふりをする。
こうした行動は、能力の問題ではありません。
考え方の問題です。
だから私は叱ります。
技術はあとから教えられます。
経験も積めます。
しかし、
お客様を大切にするという姿勢だけは、店として絶対に譲れません。
二つ目は、仲間の仕事を邪魔すること
飲食店は、一人では営業できません。
ホールがいて、
キッチンがいて、
洗い場がいて、
全員がつながって初めて店が動きます。
だから私は、
仲間を助けられないことよりも、
仲間の仕事を邪魔することを問題視します。
陰口を言う。
責任を押し付ける。
空気を悪くする。
自分だけが楽をしようとする。
こうした行動は、
一人の問題では終わりません。
チーム全体の雰囲気を壊し、
結果として、お客様にも迷惑を掛けることになります。
だから私は、
仲間を大切にできない人も叱ります。
叱る基準が明確だから、自由に任せられる
私は、
料理の盛り付け方を細かく注意することは、ほとんどありません。
接客の言葉遣いも、
その人らしさを大切にしてほしいと思っています。
改善案があれば、どんどん提案してほしい。
仕事の進め方も、
もっと良い方法があるなら変えてほしい。
そう考えています。
それでも安心して任せられるのは、
叱る基準が明確だからです。
「ここまでは自由に考えていい。」
「ここだけは絶対に守る。」
その境界線がはっきりしているから、
スタッフも安心して挑戦できます。
感情ではなく、理念で叱る
私は、
その日の気分で叱ることはありません。
機嫌が悪いから怒ることもありません。
叱る理由は、いつも同じです。
その行動は、
お客様を大切にしているのか。
仲間を大切にしているのか。
その二つだけです。
もし、この二つを守れているのであれば、
失敗しても構いません。
改善案がうまくいかなくても構いません。
挑戦した結果なら、一緒に振り返ればいい。
しかし、
理念を忘れた行動だけは、
見逃すことはできません。
人を管理したいのではない。理念を守りたいだけ
私が守りたいのは、
ルールではありません。
人を支配することでもありません。
守りたいのは、
店の理念です。
お客様を最優先にすること。
仲間を尊重すること。
この二つが守られている限り、
私は細かなことまで口を出しません。
むしろ、自分で考え、
自分らしく行動してほしいと思っています。
だから私は、
叱る回数を増やしたいとは思っていません。
本当の理想は、
叱る必要がない組織です。
理念を全員が理解し、
自然と同じ方向を向ける組織。
それこそが、私が目指している飲食店です。
8.考える飲食人が、店の競争力になる

私は、
飲食店の競争力は料理だけではないと考えています。
もちろん、美味しい料理は必要です。
品質も大切です。
価格も重要です。
しかし、それだけでお客様に選ばれ続ける時代ではありません。
どれだけ美味しい料理を提供していても、
お客様が「また来たい」と思えなければ、繁盛店にはなれないからです。
店の価値を作るのは、人です
私はこれまで、
たくさんの繁盛店を見てきました。
その中で共通して感じたことがあります。
それは、
人が輝いている店は強い。
ということです。
スタッフ同士が自然に助け合っている。
お客様の表情を見て行動している。
困っている人がいれば誰かがすぐ動く。
その店には、
マニュアルには書けない空気があります。
そして、お客様はその空気を敏感に感じ取っています。
だから、
「あの店は居心地がいい。」
「なんとなくまた行きたくなる。」
という感情が生まれるのです。
人は、店の文化を作る
設備は買えます。
厨房機器も買えます。
広告も出せます。
しかし、
店の文化は買えません。
文化は、
毎日の積み重ねでしか作れません。
お客様を大切にする文化。
仲間を助ける文化。
改善を楽しむ文化。
考える文化。
これらは、
一人の経営者が作るものではなく、
働く全員が作るものです。
だから私は、
「教育」とは技術を教えることではなく、
文化を受け継ぐことだと考えています。
人が育つほど、経営は強くなる
スタッフが一人育つ。
それは、
一人戦力が増えるという話ではありません。
その人がお客様を喜ばせる。
その人が後輩を育てる。
その人が改善を提案する。
その人が店の文化を広げる。
つまり、
一人育つことで、
店全体が成長していきます。
だから私は、
人材育成をコストではなく、
未来への投資だと考えています。
中小飲食店の未来は、人で決まる
私はこれからも、
マニュアルを作ります。
オペレーションも改善し続けます。
数字も見ます。
利益も追求します。
しかし、
最後に店を強くするのは、
人です。
考えられる飲食人が増えれば、
店は変わります。
ホスピタリティが文化になれば、
店は選ばれるようになります。
そして、
その積み重ねは、
大手にも簡単には真似できない競争力になります。
だから私は、
今日も人を育てます。
料理人ではなく、
作業員でもなく、
考える飲食人を育てます。
それが、中小飲食店が未来に向かって生き残るための、一番大きな競争力になると信じているからです。
9.まとめ

飲食店経営をしていると、
つい大手飲食チェーンを目標にしてしまいます。
マニュアルを整備する。
オペレーションを改善する。
効率を上げる。
もちろん、それらは非常に重要です。
私も今でも取り組んでいます。
しかし、経営戦略を学ぶ中で、私は一つのことに気付きました。
中小飲食店が、大手と同じ土俵で戦う必要はない。
ということです。
大手には、大手の強みがあります。
豊富な資金。
ブランド力。
広告力。
教育制度。
マニュアル。
オペレーション。
これらは、何十年という時間と莫大な投資によって築き上げられた競争力です。
その土俵で勝負を挑んでも、簡単に勝てる相手ではありません。
だから私は、戦う場所を変えました。
私が選んだ競争力は、
ホスピタリティです。
そして、
考える飲食人を育てることです。
マニュアルは品質を守ります。
オペレーションは店を円滑に回します。
しかし、
お客様の心を動かすのは、人です。
目の前のお客様を見て、
何を求めているのかを考え、
自分で判断し、
自分から行動できる人。
そんな飲食人が一人増えるたびに、
店は少しずつ強くなります。
私は、これからもマニュアルを作ります。
オペレーションも改善し続けます。
数字も見ます。
利益も追求します。
ですが、それ以上に大切にしたいものがあります。
人を育てることです。
考える人が増えれば、
ホスピタリティが文化になります。
文化になれば、
お客様はその店を好きになります。
そして、その文化は、
どれだけ資金があっても、
どれだけ広告費を掛けても、
簡単には真似できません。
私は、それこそが中小飲食店最大の競争力だと信じています。
飲食店は、
料理を作る場所ではありません。
人が人を喜ばせる場所です。
だから私はこれからも、
マニュアルだけでは育たない、
「考える飲食人」
を育て続けます。
それが、RBRが考える弱者の戦略であり、
これからの飲食業界に必要な経営だと信じています。
この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。