飲食店のオペレーションは、料理を運ぶ技術ではない。

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

飲食店のオペレーションは、料理を運ぶ技術ではない。
この記事は約 37 分で読めます

〜マニュアルでは作れない「文化」が、飲食店最大の競争力になる〜

1.仕事ができる人とは、どんな人なのか。

飲食店で、

「仕事ができる人」と聞いて、

あなたはどんな人を思い浮かべるでしょうか。

料理を作るのが早い人。

提供スピードが速い人。

オーダーミスをしない人。

ピークタイムでも落ち着いて店を回せる人。

多くの人は、

このような人を「仕事ができる人」だと考えます。

もちろん、

私もこれらの能力はとても大切だと思っています。

実際、飲食店は忙しい仕事です。

料理が遅ければ、お客様を待たせます。

提供が遅ければ、満足度は下がります。

オーダーミスが増えれば、信頼も失います。

だから、

スピードや正確さを身につけることは欠かせません。

しかし、

私は25年以上飲食業界で働いてきて、

一つの疑問を持つようになりました。

本当に、それだけが「仕事ができる人」なのでしょうか。

例えば、

料理を30秒早く運べる人と、

お客様が「ありがとう」と笑顔になるような運び方ができる人。

本当に価値が高いのは、

どちらでしょうか。

私は、

後者こそが飲食店にとって本当に必要な人材だと考えています。

そして、この違いを理解したとき、

私は「オペレーション」という言葉の意味を、まったく違う角度から考えるようになりました。

2.飲食店は、人が商品である。

飲食店は、

料理を売る仕事。

そう思われることがよくあります。

もちろん、

料理は大切です。

美味しくなければ、

お客様は二度と来てくれません。

しかし、

私は25年以上この業界で働いてきて、

一つ確信していることがあります。

飲食店は、料理だけを売る仕事ではありません。

もし料理だけが商品なら、

同じレシピ、

同じ食材、

同じ調味料を使えば、

どこの店も同じ売上になるはずです。

でも、

現実は違います。

同じ商品を出していても、

繁盛する店もあれば、

お客様が離れていく店もあります。

その違いを生み出しているのは何でしょうか。

私は、

「人」だと思っています。

笑顔で迎える人。

安心感を与える人。

お客様の小さな変化に気付ける人。

「また来ますね。」

と言われる人。

料理そのものではなく、

料理を通して価値を届ける人。

これこそが、

飲食店の本当の商品なのです。

だから私は、

飲食店を「人が商品である業界」だと考えています。

そして、

もし人が商品なのであれば、

本当に磨かなければならないものは何なのか。

私は、

そこに多くの飲食店が気付いていないと感じています。

3.それなのに、評価されるのはテクニカルスキルばかり。

飲食店で働いていると、

仕事ができる人は高く評価されます。

それは当然のことです。

料理を早く作れる。

包丁が上手い。

提供が早い。

オーダーミスが少ない。

ピークタイムでも冷静に店を回せる。

これらはすべて、

飲食店には欠かせない能力です。

だから私は、

テクニカルスキルを軽視するつもりはまったくありません。

むしろ、

プロとして身につけるべき基本能力だと考えています。

しかし、

私が25年以上この業界にいて感じる違和感があります。

それは、

評価の基準が、そこだけで止まってしまっていることです。

例えば、

提供が30秒早くなったスタッフは評価される。

包丁が上手くなったスタッフも評価される。

オーダーミスが減ったスタッフも評価される。

では、

お客様を安心させたスタッフはどうでしょう。

新人が働きやすい空気を作ったスタッフはどうでしょう。

忙しい中でも笑顔を失わなかったスタッフはどうでしょう。

お客様が

「またあの人に会いたい。」

と思う接客をしたスタッフはどうでしょう。

こうした価値は、

数字になりにくいため、

評価されないことが少なくありません。

私は、

ここに飲食業界の大きな課題があると思っています。

テクニカルスキルは、

料理を提供するためには必要です。

しかし、

お客様が「また来たい」と思う理由は、それだけではありません。

飲食店は、

人が価値を届ける仕事です。

だから本来は、

技術だけでなく、

人としての在り方も同じように評価されるべきなのです。

4.だから多くの飲食人は勘違いする。

人は、

評価されるものを伸ばそうとします。

これは、

飲食業界に限った話ではありません。

勉強ならテストの点数。

スポーツなら試合の結果。

会社なら人事評価。

人は、

評価されるものに時間を使い、

努力し、

成長していきます。

だから、

もし会社が

「料理を早く作れる人」

「提供が速い人」

「店を回せる人」

ばかりを評価していたら、

スタッフは何を目指すでしょうか。

もっと速く動こう。

もっと効率良く回そう。

もっと作業を覚えよう。

そう考えるのは、

ごく自然なことです。

つまり、

会社の評価基準が、その会社で育つ人材を決めているのです。

だから多くの飲食人は、

「仕事ができる人」とは、

店を早く回せる人だと思うようになります。

もちろん、

それも大切な能力です。

しかし、

もしその考え方だけで成長してしまったら、

どうなるでしょうか。

お客様の表情を見る時間は減ります。

仲間を育てることより、

自分が動くことを優先します。

「どうすればもっと喜んでもらえるか」よりも、

「どうすればもっと速く終わるか」を考えるようになります。

私は、

これが悪いと言いたいのではありません。

会社がそう評価してきたのだから、

そう育つのは当然なのです。

だから本当に変えなければならないのは、

スタッフではありません。

会社が何を評価するのか。

その基準なのです。

5.本当にお客様が見ているもの。

では、

お客様は何を見ているのでしょうか。

料理でしょうか。

価格でしょうか。

もちろん、

どちらも大切です。

しかし、

お客様は料理を食べる前から、

すでにその店を評価し始めています。

入店した瞬間の挨拶。

スタッフの表情。

店内の空気。

席への案内。

料理を置く所作。

お客様への気配り。

スタッフ同士のやり取り。

忙しい時間帯でも感じる安心感。

お客様は、

こうした一つひとつを無意識のうちに受け取り、

「この店は居心地がいい。」

「また来たい。」

という印象を作っています。

逆に、

料理がどれだけ美味しくても、

スタッフ同士が険しい表情で働いていたり、

店内に張り詰めた空気が流れていたりすれば、

その料理の価値まで下がってしまいます。

つまり、

お客様が評価しているのは、

料理だけではありません。

人。

空気。

安心感。

居心地。

料理を中心に、

その店で過ごした時間すべてを評価しているのです。

言い換えれば、

お客様は料理を評価しているのではありません。

その店で過ごした「体験」を評価しているのです。

だからこそ、

どれだけ料理の技術を磨いても、

体験の質が伴わなければ、

「また来たい店」にはなりません。

私は、

ここに飲食店経営の本質があると考えています。

料理は、

体験の中心にある商品です。

しかし、

その体験を完成させているのは、

そこで働く人であり、

店全体の空気であり、

お客様との関わり方なのです。

6.マニュアルとは何か。

ここまで、

「人が商品であること」

「お客様が評価しているのは体験であること」

についてお話ししてきました。

では、

その体験は、

どのように作られているのでしょうか。

多くの会社は、

まずマニュアルを作ります。

料理の作り方。

商品の提供方法。

オーダーの取り方。

レジの操作。

清掃の手順。

新人教育。

どの会社にも、

何らかのマニュアルがあります。

私は、

マニュアルを作ること自体はとても大切だと思っています。

なぜなら、

マニュアルは、

誰がやっても一定の品質を保つための土台だからです。

しかし、

私は長年飲食業界で働く中で、

一つの違和感を持つようになりました。

それは、

多くの会社が、マニュアルを作れば良い店になると思っていることです。

でも、

現実はそうではありません。

同じマニュアルを使っていても、

お客様から愛される店もあれば、

そうでない店もあります。

同じ手順で料理を提供していても、

「また来たい」と思われるスタッフもいれば、

そうでないスタッフもいます。

つまり、

マニュアルだけでは、

その違いを説明することはできません。

なぜなら、

マニュアルとは、

「何をするか」を決めるものだからです。

料理を運ぶ。

注文を取る。

笑顔で挨拶をする。

テーブルを片付ける。

それは、

仕事の内容を決める手順書です。

しかし、

その仕事を

どのような想いで、どのように実行するのか。

そこまでは、

マニュアルだけでは決めることができません。

私は、

その違いこそが、

飲食店の競争力を大きく左右していると考えています。

7.オペレーションとは何か。

では、

マニュアルでは決められないものは、

何なのでしょうか。

私は、

それをオペレーションだと考えています。

世の中では、

オペレーションという言葉を

「効率良く仕事を回すこと」

という意味で使われることが少なくありません。

もちろん、

それも間違いではありません。

しかし、

私は25年以上飲食業界で働き、

経営を続ける中で、

オペレーションとはもっと大きな意味を持つものだと考えるようになりました。

私にとってオペレーションとは、

組織の約束事です。

料理はどう運ぶのか。

お客様をどう迎えるのか。

仲間にどう接するのか。

困っているスタッフを見つけたらどう動くのか。

クレームをいただいたとき、

どんな姿勢で向き合うのか。

忙しい時間帯でも、

笑顔を忘れないのか。

これらすべてが、

オペレーションです。

つまり、

オペレーションとは、

仕事を早く回す技術ではありません。

組織として、何を大切にして仕事をするのか。

その約束事なのです。

だから、

マニュアルには書かれていなくても、

「この店ではこうする。」

という共通認識が生まれます。

その積み重ねが、

店の雰囲気を作り、

スタッフの行動を変え、

お客様が感じる空気を作っていきます。

私は、

ここに飲食店経営の本質があると思っています。

8.私はオペレーションを「心を運ぶ約束事」だと考えている。

私は、

オペレーションを効率化の技術だとは考えていません。

もちろん、

効率は大切です。

料理を早く提供することも、

無駄な動きをなくすことも、

飲食店には欠かせません。

しかし、

効率だけを追い求めても、

お客様の心は動きません。

だから私は、

オペレーションを、少し違う視点で捉えています。

オペレーションとは、心を運ぶ約束事である。

これが、

RBRの定義です。

例えば、

料理をテーブルに置く。

これはマニュアルにも書ける行動です。

しかし、

笑顔で料理名を伝えるのか。

「お待たせしました」と目を見てお出しするのか。

熱いお皿だから気を付けていただくのか。

食べやすい向きに置くのか。

その一つひとつには、

相手を思いやる気持ちが込められています。

同じ料理を、

同じ時間で運んでも、

お客様が受け取る価値は大きく変わります。

つまり、

運んでいるのは料理だけではありません。

安心感。

気遣い。

感謝。

歓迎する気持ち。

そうした「心」も一緒に運んでいるのです。

そして、

その心は、

お客様だけに向けるものではありません。

困っている仲間を自然と助けること。

新人が安心して働けるように声を掛けること。

忙しい時ほど感謝を言葉にすること。

これもまた、

組織の中で運ばれる「心」です。

だから私は、

オペレーションを単なる仕事のやり方ではなく、

心を届けるための約束事だと考えています。

その約束事が積み重なることで、

店に同じ価値観が生まれ、

同じ空気が生まれ、

お客様は「この店は居心地がいい」と感じます。

料理は、

人が運びます。

そして、

その人の行動を支えているのが、

オペレーションです。

だから私は、

オペレーションとは、心を運ぶ約束事である。

そう定義しています。

9.料理を運ぶことと、価値を運ぶことは違う。

例えば、

ハンバーグを一つ提供するとします。

厨房で丁寧に焼き上げ、

熱々の鉄板に乗せ、

テーブルまで運ぶ。

ここまでは、

誰でもできます。

マニュアルにも書けます。

でも、

その料理を無言で置く人と、

「お待たせしました。熱い鉄板ですのでお気を付けください。」

と笑顔でお出しする人では、

お客様が受け取る印象はまったく違います。

さらに、

お子様連れのお客様なら、

お子様の前ではなく、

保護者の方の前に熱い鉄板を置く。

ご年配のお客様なら、

取りやすい向きに料理を置く。

お客様が会話の途中なら、

タイミングを少し待ってからお声掛けする。

これらは、

料理そのものの価値を変えているわけではありません。

しかし、

料理の価値の伝わり方を大きく変えています。

つまり、

運んでいるのは料理ではなく、

その料理を一番気持ちよく味わっていただくための価値なのです。

だから私は、

料理を運ぶことと、

価値を運ぶことは違うと考えています。

料理は、

手で運べます。

しかし、

価値は、

人にしか運べません。

そして、

その価値を誰が提供しても同じ水準で届けられるようにするもの。

それが、

私の考えるオペレーションなのです。

10.オーナーの指示も「運ぶもの」である。

私は、

オペレーションで運ぶものは、

料理だけではないと考えています。

オーナーや店長の指示も、

運ぶべきものの一つです。

ただし、

運ぶのは情報ではありません。

意図です。

例えば、

オーナーが、

「もっと笑顔で接客しよう。」

と指示を出したとします。

この言葉だけを伝えれば、

スタッフは、

「笑顔を作ればいいんだ。」

と受け取るかもしれません。

でも、

オーナーが本当に伝えたかったことは、

笑顔そのものではありません。

「お客様に安心して過ごしていただきたい。」

「気持ちよく帰っていただきたい。」

その想いを形にした結果が、

「笑顔で接客しよう。」

という言葉なのです。

つまり、

指示とは、

意図を実現するための手段です。

手段だけが伝われば、

人は言われたことしかできません。

しかし、

意図まで伝われば、

「お客様に安心していただくには、自分は何ができるだろう。」

と、自ら考えて行動できるようになります。

私は、

ここに組織の大きな違いが生まれると思っています。

指示だけが飛び交う組織は、

指示待ちの人を育てます。

一方で、

意図が共有される組織は、

自ら考え、動ける人を育てます。

だから私は、

オーナーの仕事は、

指示を出すことではないと考えています。

その指示の奥にある意図を、組織全体へ運ぶこと。

それこそが、

経営者にしかできない仕事なのです。

11.伝達と伝承は違う。

私は、

「伝えること」と「伝わること」は違うと思っています。

そして、

伝達伝承は、

さらに大きく違います。

例えば、

オーナーが店長に、

「笑顔で接客をしよう。」

と伝えたとします。

店長がそのままスタッフへ、

「オーナーが笑顔で接客しろと言っています。」

と話した。

これは、

伝達です。

言葉は届いています。

でも、

そこに込められた意図までは届いていません。

では、

店長が、

「お客様に安心して食事を楽しんでいただきたい。そのために笑顔が大切なんだ。」

そう自分の言葉で伝えたらどうでしょう。

これは、

理解して伝えている状態です。

さらに、

店長自身がその考えに共感し、

普段から自ら笑顔で接客し、

その姿をスタッフに見せながら伝えていたらどうでしょう。

スタッフは、

言葉だけではなく、

店長の姿勢からも学びます。

これは、

もう伝達ではありません。

伝承です。

伝承とは、

言葉を伝えることではありません。

価値観を受け継ぐことです。

だから、

どれだけ立派なマニュアルを作っても、

どれだけ正しい指示を出しても、

共感がなければ、

文化は生まれません。

私は、

組織とは、

言葉で動くものではなく、

共感で動くものだと考えています。

だからこそ、

オーナーの想いは、

「伝える」だけでは足りません。

理解され、

共感され、

次の世代へ自然と受け継がれていく。

そこまでいって初めて、

私は伝承と呼べるのだと思っています。

12.店長は「翻訳者」でなければならない。

私は、

店長の一番大切な仕事は、

シフトを作ることでも、

売上を管理することでもないと思っています。

もちろん、

それらも大切な仕事です。

しかし、

それ以上に重要な役割があります。

それは、

オーナーの想いを、現場の言葉へ翻訳することです。

オーナーは、

店の未来を考えています。

経営理念を考え、

どんな店でありたいかを考えています。

でも、

その想いをそのまま現場へ伝えても、

スタッフには伝わりません。

「もっとお客様を大切にしよう。」

「ホスピタリティを高めよう。」

それだけでは、

何をすればいいのか分からないからです。

だから、

店長が必要になります。

例えば、

「ホスピタリティを高めよう。」

という想いを、

「料理を置くときは、お客様の目を見て一言添えよう。」

「空いたお皿に気付いたら、すぐにお声掛けしよう。」

「困っている仲間がいたら、自分から動こう。」

そんな具体的な行動へ変換する。

これが、

店長の仕事です。

つまり、

店長は、

オーナーの言葉を繰り返す人ではありません。

オーナーの想いを理解し、現場で実践できる言葉へ翻訳する人です。

そして、

その翻訳が正しく行われるほど、

オーナーの価値観は現場へ浸透し、

スタッフ一人ひとりの行動となり、

やがて店の文化になっていきます。

だから私は、

優れた店長とは、

現場を管理する人ではなく、

理念と現場をつなぐ翻訳者だと考えています。

オーナーの想いを、

スタッフが理解できる言葉へ。

スタッフの悩みを、

オーナーが理解できる言葉へ。

その橋渡しをすることこそ、

店長にしかできない仕事なのです。

13.現場はオペレーションで文化を学ぶ。

人は、

文化を教えられて覚えるものではありません。

毎日の行動の中で、

自然と身につけていくものです。

例えば、

新人スタッフが入社したとします。

誰も

「この店の文化はこうです。」

とは教えません。

でも、

先輩が笑顔で挨拶をしていれば、

新人も自然と笑顔で挨拶をするようになります。

困っている仲間を見つければ、

誰かが当たり前のように助けに行く。

料理を提供するときは、

必ずお客様の目を見て一言添える。

ありがとうを言葉にする。

忙しい時ほど声を掛け合う。

そんな毎日の積み重ねを見て、

新人は、

「この店では、それが当たり前なんだ。」

と学んでいきます。

つまり、

文化とは、

一度教えられるものではありません。

毎日のオペレーションを通して身につくものなのです。

だから私は、

オペレーションを単なる作業手順ではなく、

文化を育てる約束事だと考えています。

一つひとつの約束事は小さくても、

それを毎日積み重ねることで、

やがて店全体の空気となり、

誰もが自然に同じ行動を取れる組織になっていきます。

文化とは、

特別なものではありません。

毎日の約束事が積み重なった結果なのです。


14.文化はマニュアルでは作れない。

では、

文化はマニュアルに書けば作れるのでしょうか。

私は、

そうは思いません。

もちろん、

マニュアルは必要です。

仕事の手順を統一し、

品質を保つためには欠かせません。

しかし、

マニュアルが教えられるのは、

何をするかまでです。

「ありがとうを言う。」

「笑顔で接客する。」

「困っている仲間を助ける。」

これらは、

文章として書くことはできます。

でも、

その言葉にどんな想いを込めるのか。

なぜ、それを大切にするのか。

そこまでは、

マニュアルだけでは伝えられません。

だから、

同じマニュアルを使っていても、

店によって雰囲気が違うのです。

同じチェーン店でも、

「また来たい」と思う店舗と、

そう思わない店舗がある。

その違いは、

料理でも、

設備でもありません。

文化です。

そして、

文化は、

毎日のオペレーションの積み重ねによってしか育ちません。

私は、

文化とは、

会社が作るものではなく、

毎日の約束事を守り続けた結果として育つものだと考えています。

だから、

文化を作りたいのであれば、

立派なスローガンを書くことではありません。

毎日守れる約束事を作り、

それを全員で積み重ねること。

それが、

文化を育てる唯一の方法なのです。

15.だからホスピタリティは再現できる。

「ホスピタリティはセンスだから。」

「気が利く人にしかできない。」

飲食業界では、

そんな言葉をよく耳にします。

私は、

そうは思いません。

もちろん、

生まれ持った気配りの上手さには個人差があります。

しかし、

飲食店で求められるホスピタリティの多くは、

仕組みで再現できます。

例えば、

料理を置くときは、

お客様の目を見て一言添える。

空いたお皿に気付いたら、

すぐにお声掛けする。

お帰りの際は、

必ず感謝を言葉で伝える。

これらは、

特別な才能ではありません。

毎日のオペレーションとして約束事にすれば、

誰でも実践できるようになります。

もちろん、

最初は形からで構いません。

でも、

毎日続けるうちに、

その行動は習慣になり、

やがて相手を思いやることが自然になります。

だから私は、

ホスピタリティとは、

一部の人だけが持つ才能ではなく、

組織で育て、再現できる力だと考えています。

その土台になるのが、

オペレーションです。

心を運ぶ約束事があるから、

誰が担当しても、

お客様は同じ安心感を受け取れる。

それこそが、

私の考える強い飲食店です。

16.オペレーションは人を育てる。

私は、

オペレーションの本当の価値は、

店を効率良く回すことではないと思っています。

人を育てること。

そこに、

最大の価値があります。

毎日のオペレーションは、

毎日の約束事です。

料理を丁寧に提供する。

お客様の目を見て挨拶をする。

困っている仲間がいれば自然と助ける。

忙しい時ほど感謝を言葉にする。

一つひとつは、

決して特別なことではありません。

しかし、

その約束事を毎日積み重ねることで、

人は少しずつ成長していきます。

料理を早く、

正確に作れるようになる。

これは、

テクニカルスキルです。

相手の立場で考え、

仲間やお客様を思いやって行動できるようになる。

これは、

ヒューマンスキルです。

そして、

「なぜ、この約束事があるのか。」

「どうすればもっと良い店になるのか。」

そう考え、

自ら改善できるようになる。

これが、

コンセプチュアルスキルです。

この三つの力は、

別々に身につくものではありません。

毎日のオペレーションを積み重ねることで、

自然と育っていくものです。

だから私は、

オペレーションを単なる作業手順とは考えていません。

人を育てる仕組みです。

人は、

毎日の約束事によって育ちます。

そして、

その成長は、

やがて一人の力では終わりません。


17.その積み重ねがケイパビリティになる。

一人が成長すれば、

それは個人の能力です。

しかし、

その考え方や行動が仲間へ伝わり、

組織全体の当たり前になったとき、

それはもう、

個人だけの能力ではありません。

組織全体が持つ能力になります。

私は、

この組織全体が持つ能力こそ、

ケイパビリティだと考えています。

料理が美味しい人がいる。

接客が上手な人がいる。

それだけでは、

強い店とは言えません。

その人が休めば、

店の力も落ちてしまうからです。

本当に強い店とは、

誰か一人の能力に頼らなくても、

同じ価値を提供し続けられる店です。

新人が入っても、

ベテランが異動しても、

お客様が受け取る価値は変わらない。

それは、

一人ひとりが同じ約束事を守り、

同じ価値観を共有し、

同じ文化の中で行動しているからです。

だから、

競争力は、

料理だけでは生まれません。

設備だけでも、

マニュアルだけでも生まれません。

毎日のオペレーションが人を育て、

人が文化を育て、

その文化が組織全体の能力になる。

私は、

この積み重ねこそが、

飲食店最大の競争力だと考えています。

そして、

この組織の能力は、

簡単には真似できません。

だから私は、

競争力とは商品ではなく、

組織の中に宿るものだと思っています。

18.真似されるのは商品ではない。

飲食店では、

よくこんな話を聞きます。

「あの店のメニューを真似された。」

「あの店と同じ商品を出された。」

確かに、

商品は真似できます。

レシピも、

盛り付けも、

価格も、

ある程度は真似できます。

でも、

私はそれほど怖いことだとは思っていません。

なぜなら、

本当に真似することが難しいのは、

商品ではないからです。

例えば、

同じ料理を作り、

同じ器を使い、

同じ価格で販売したとしても、

同じ店にはなりません。

そこには、

働く人が違います。

価値観が違います。

文化が違います。

毎日の約束事が違います。

つまり、

オペレーションが違います。

だから、

お客様が受け取る価値も、

まったく違うものになります。

商品は、

見れば真似できます。

でも、

文化は見えません。

だから真似できません。

私は、

飲食店の本当の競争力とは、

真似されない商品を作ることではなく、真似できない組織を作ることだと考えています。

商品は入口です。

しかし、

お客様を何度も足を運びたくなる店にするのは、

その店でしか味わえない空気であり、

文化であり、

組織そのものなのです。


19.飲食店最大の競争力とは何か。

飲食店最大の競争力とは何か。

ここまで、

私は、

マニュアルとオペレーションの違いについてお話ししてきました。

そして、

オペレーションは、

人を育て、

文化を育て、

やがて組織の能力になることもお伝えしました。

では、

飲食店最大の競争力とは何でしょうか。

料理でしょうか。

価格でしょうか。

立地でしょうか。

もちろん、

どれも大切です。

しかし、

それだけで繁盛店になることはありません。

私は、

25年以上飲食業界で働き、

一つの答えにたどり着きました。

飲食店最大の競争力とは、組織が持つ文化です。

文化があるから、

人が育ちます。

文化があるから、

誰が働いても同じ価値を届けられます。

文化があるから、

お客様は安心し、

「また来たい」と思ってくださいます。

そして、

その文化は、

毎日のオペレーションからしか生まれません。

だから私は、

料理を磨くことと同じくらい、

オペレーションを磨くことを大切にしています。

料理は、

お客様のお腹を満たします。

オペレーションは、

お客様の心を満たします。

その積み重ねが、

人を育て、

文化を育て、

組織の能力を育て、

他店には真似できない競争力になっていく。

私は、

飲食店経営の本質は、

ここにあると考えています。

20.まとめ

飲食店のオペレーションは、

料理を運ぶ技術ではありません。

人を育てる約束事です。

その約束事は、

毎日の積み重ねによって文化になります。

そして、

文化は組織全体の能力、

ケイパビリティへと育っていきます。

料理は真似できます。

価格も、

設備も、

メニューも真似できます。

しかし、

人が育ち、

文化が育ち、

組織全体の能力として根付いたケイパビリティは、

決して簡単には真似できません。

だから私は、

飲食店最大の競争力とは、

料理でも、

価格でも、

立地でもなく、

人を育て、文化を育て続ける組織そのものだと考えています。

だからこそ、

私はオペレーションを、

「料理を運ぶ技術」ではなく、

「心を運び、人を育てる約束事」

だと定義しています。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。