高い料理を置くだけでは「高付加価値」にならない|インバウンドの5,463億円を地域の店に残す現場設計

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2026年4〜6月期の訪日外国人旅行消費額は、2兆5,125億円。そのうち飲食費は5,463億円で、全体の21.7%を占めました。宿泊費、買物代に次ぐ大きな市場です。
さらに観光庁は2026年10月16日、「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」の中間報告会開催を発表しました。観光庁がいう高付加価値旅行者とは、旅行中の着地消費が1人100万円以上の訪日客です。全国14のモデル観光地で誘客と受入体制の整備が進められています。
この数字を見ると、「高額なコースをつくる」「高級食材を仕入れる」「外国人向け価格を設定する」と考えたくなるかもしれません。
しかし、料理の価格を上げただけでは、高付加価値にはなりません。
予約時に質問へ答えられない。アレルギーや食習慣への対応範囲が曖昧。料理の背景をスタッフが説明できない。会計時に利用できる決済方法が伝わっていない。こうした小さな摩擦が一つでも残れば、料理に込めた価値は客席へ届く前に失われます。
逆に、店が小さくても、地域の食材や文化を正確に伝え、予約から会計まで安心して過ごせる流れをつくり、その流れを特定のスタッフだけに頼らず再現できれば、大手とは別の競争力を持てます。
高付加価値化とは、単価を上げることではありません。お客様がその価格を払う理由を、店全体でつくり、毎回ぶれずに届けることです。
この記事では、5,463億円という飲食需要を一つの店の売上だけで終わらせず、生産者、働く人、地域へ残すために、店長・マネージャーが何を設計すべきかを考えます。
第1章 5,463億円は「店に入ってくるお金」ではない

まず、数字の意味を分けて考える必要があります。
観光庁が2026年9月30日に公表したインバウンド消費動向調査では、同年4〜6月期の訪日外国人旅行消費額は2兆5,125億円でした。一般客1人当たりの旅行支出は24万4,733円で、前年同期比3.4%増。費目別では宿泊費が9,207億円、買物代が6,821億円、飲食費が5,463億円でした。
飲食費の構成比は21.7%で、前年同期の21.0%から上昇しています。訪日客の消費全体に占める「食」の存在感は小さくありません。
ただし、この5,463億円は、高付加価値旅行者だけの飲食費ではありません。業務目的や親族・知人訪問を含む訪日外国人全体が、全国で使った四半期の飲食費です。すべてが地方へ流れたわけでも、個店へ均等に届いたわけでもありません。
一方、観光庁が2026年3月に更新した資料では、2023年時点の高付加価値旅行者は訪日旅行者全体の約2%、約59万人にすぎないものの、消費額では約19%、約1兆円を占めたとされています。そして、その消費は大都市圏に偏り、地方への波及が少ないことも課題として示されています。
さらに、10月16日に発表された高付加価値インバウンド施策では、「着地消費100万円以上/人」を目安に、14のモデル観光地で地域への誘客を進めています。
ここで誤解してはいけないのは、100万円が「一回の食事代」でも「飲食店が狙うべき客単価」でもないことです。宿泊、移動、食、体験、買物など、旅行先に残る一連の消費を指します。
つまり、飲食店が考えるべき問いは、「100万円使う人に、いくらの料理を売るか」ではありません。
その旅行者が地域で過ごす時間の中で、自店はどんな価値を担い、次の体験や地域の事業者へどうつなぐのか。
この問いへ変えなければ、高付加価値化は高級食材の仕入れ競争になります。資本力、設備、広告費、仕入れ量で優位に立つ大手と同じ土俵へ上がることになり、中小店・個店にとって有利な戦い方にはなりません。
ここまでは公表資料から確認できる事実です。ここからがRBRの考察です。
小さな店が狙うべきものは、「高級店らしさ」ではありません。地域の食、つくり手、季節、暮らしを一つの体験として編集し、それを現場で再現する能力です。
同じ地域食材は、近隣の店も仕入れられます。同じ翻訳アプリも、同じ予約システムも導入できます。しかし、予約で得た情報を厨房とサービスで共有し、料理の背景を短く正確に伝え、お客様の反応に合わせて説明の深さを変え、会計後に次の地域体験まで案内する。その一連の動きをスタッフ全員が繰り返せる店は、簡単にはまねできません。
問題は、高い商品がないことではありません。価値が、予約から会計までの途中で切れていることです。
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この先では、予約から会計までのどこで価値が失われるのかを分解し、予約情報カード、三層の料理説明、食習慣対応の約束、QSC+H、利益の見方、一つのコースから始める14日間の実証方法まで、店長・マネージャーが現場で実行できる形に落とし込みます。
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出典
この記事を書いた人 Wrote this article
新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性
RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。