店内と持ち帰り、価格はどう分けるか|外食の税率差拡大を飲食店経営で考える

店内と持ち帰り、価格はどう分けるか|外食の税率差拡大を飲食店経営で考える
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日本フードサービス協会は2026年9月11日、「食料品の消費税率引き下げによる外食との税率差拡大について」という意見を公表しました。食料品の税率が下がり、外食との税率差が広がる可能性が議論されると、飲食店の現場では単に税金の話では済まなくなります。お客様は店内飲食、持ち帰り、場合によってはデリバリーを、これまで以上に価格で比べるようになるからです。

RBRとして大事だと思うのは、制度の是非だけを語ることではありません。制度が変わったときに、自分の店の売価、粗利、説明、注文導線、スタッフの負担をどう整えるかです。価格差が生まれるなら、それを放置せず、店の設計として扱う必要があります。

参考:日本フードサービス協会「食料品の消費税率引き下げによる外食との税率差拡大について」(2026年9月11日確認)

店内飲食と持ち帰りのレシートを比較する飲食店経営者

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税率差のニュースを「自店の会計」に置き換える

外食業界団体が税率差の拡大に懸念を示す背景には、店内飲食が相対的に高く見えやすくなる問題があります。お客様から見れば、同じ料理なら安いほうを選びたい。けれども店側から見れば、店内飲食と持ち帰りは同じ料理でも、かかっている仕事が違います。

店内飲食には席、空調、食器、洗い場、接客、滞在時間があります。持ち帰りには容器、袋、包材、受け渡し導線、受注管理があります。税率だけを見て「持ち帰りを安くすればいい」と考えると、包材費や手間を見落とします。逆に、店内飲食を値上げで埋めようとすると、常連客が違和感を持つ可能性があります。

まず必要なのは、税率差をニュースとして眺めるのではなく、自店の会計に置き換えることです。店内飲食と持ち帰りを分けて、客単価、原価、包材費、人件費、ピーク時の負荷を見ます。そのうえで、どちらを伸ばすのか、どちらを守るのかを決めるべきです。

飲食店の厨房で原価と粗利を計算する様子

税率が違っても、見るべきは粗利と手残り

飲食店の経営で最後に残るのは、売上ではなく手残りです。税率が変わると、税込価格の見え方は変わります。しかし、経営判断で見るべきなのは「お客様が払う金額」と「店に残る粗利」の両方です。

たとえば、店内飲食のランチを税込1,200円、持ち帰りを税込1,150円にしたとします。お客様には50円差に見えますが、店側では容器代、箸、おしぼり、袋、受け渡しの手間が増えます。さらに注文が集中すれば、店内の提供速度にも影響します。税込価格だけで判断すると、売れているのに利益が薄い商品が増えることがあります。

だから価格表を作る前に、メニューごとに三つを確認したいところです。第一に、税抜売価で見た粗利。第二に、持ち帰りにだけ発生する包材費。第三に、ピーク時に現場が回るかどうかです。この三つがそろって初めて、店内と持ち帰りの価格差をいくらにするか判断できます。

テイクアウト準備と店内営業を同時に行う飲食店の厨房

店内飲食とテイクアウトは同じ料理でも別の仕事

税率差の議論で現場が混乱しやすいのは、同じ商品名でも仕事の中身が変わるからです。唐揚げ定食を店内で出すのと、唐揚げ弁当にして持ち帰りで渡すのでは、盛り付け、温度管理、受け渡し、会計、クレーム対応まで違います。

店内飲食では、料理の満足度に加えて空間や接客が価値になります。持ち帰りでは、待ち時間、持ち運びやすさ、冷めた後の品質、容器の開けやすさが価値になります。お客様が比べるのは価格だけではありません。自分にとって便利か、納得できるか、次も使いやすいかを見ています。

つまり、価格差をつけるなら、その差に意味が必要です。店内は「出来たてを落ち着いて食べられる価格」。持ち帰りは「家や職場で使いやすい価格」。このように価値の違いを言葉にしておくと、単なる値段の差ではなく、選び方の提案になります。

店内価格と持ち帰り価格のメニューを説明する飲食店経営者

価格差を見せるなら、分かりやすさを最優先にする

価格が分かりにくい店は、それだけで選ばれにくくなります。店内価格、持ち帰り価格、税込表示、税抜表示、セット価格、単品価格が混在すると、お客様もスタッフも迷います。迷いは会計前の不安になり、不安はクレームや離脱につながります。

もし店内と持ち帰りで価格を分けるなら、メニュー表では同じ場所に並べて表示したほうがよいです。「店内」「持ち帰り」を別々のページに分けると、お客様は差を探さなければいけません。差を隠すほど、会計時に説明が必要になります。

おすすめは、主力商品の価格ルールを先に決めることです。全商品で細かく変えるより、看板商品、ランチ、弁当、単品、セットのようにグループで考える。店内と持ち帰りの差額をバラバラにしすぎない。スタッフが一言で説明できる。これだけで現場の負担はかなり減ります。

飲食店スタッフがメニューとレシートを見ながら価格ルールを確認する会議

スタッフが説明できるルールにする

価格や税率の話は、最終的にレジ前のスタッフが説明することになります。経営者が頭の中で理解していても、スタッフが言葉にできなければ現場では使えません。特にランチピークでは、長い説明はできません。

だからルールは短くするべきです。たとえば、「店内は食事体験込みの価格です」「持ち帰りは容器代込みでこの価格です」「セットは店内と持ち帰りで内容が違います」のように、スタッフがそのまま言える文章にします。税率の細かい説明に入りすぎるより、価格に含まれる価値を伝えるほうが納得されやすい場面もあります。

また、会計システムとメニュー表がずれていると、現場は必ず混乱します。メニュー変更の前に、POS、モバイルオーダー、デリバリー設定、店頭掲示、SNS、Googleビジネスプロフィールまで確認しておく必要があります。価格変更は紙のメニューだけの作業ではありません。

飲食店の棚で在庫を確認しながら価格設計を考えるスタッフ

RBRの見解――税率差に振り回されず、店の続け方を設計する

今回のような税率差の議論は、飲食店にとって外部環境の変化です。店側だけで決められる話ではありません。しかし、外部環境が変わるたびに利益がぶれる店と、変化を織り込んで運営を組み直せる店では、長い目で見て大きな差が出ます。

RBRは、飲食店が取るべき姿勢は「安く見せること」ではなく「納得して選んでもらうこと」だと考えています。店内飲食には店内飲食の価値があります。持ち帰りには持ち帰りの価値があります。その違いを、価格、商品設計、導線、説明の四つで整えることが必要です。

まずは主力メニューを十品だけでもよいので、店内と持ち帰りで数字を分けて見てください。税込売価、税抜売価、原価、包材費、粗利、作業時間を書き出す。そこから、価格差をつける商品、同じ価格でいく商品、持ち帰り対象外にする商品を決める。これが、制度変更に振り回されないための最初の一歩です。

飲食店経営は、ニュースを読んで終わりではありません。ニュースを自店の数字と現場に置き換えたとき、初めて経営判断になります。税率差の議論も、店の価格設計を見直すきっかけとして使っていきましょう。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。