飲食店売上5.9%増、働く人は0.9%減|忙しさを成長と呼ばない店の設計

飲食店売上5.9%増、働く人は0.9%減|忙しさを成長と呼ばない店の設計
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総務省統計局は2026年9月24日、「サービス産業動態統計調査」2026年7月分速報を公表しました。サービス産業全体の売上高は前年同月比5.0%増。そのうち飲食店は5.9%増えた一方、飲食店の事業従事者数は0.9%減りました。

売上が伸び、働く人が減っている。この数字は、一見すると「少人数で生産性が上がった」ように見えます。しかし、売上は経費を差し引く前の金額であり、事業従事者数だけでは労働時間や現場の負担、提供品質までは分かりません。

RBRが考えたいのは、人を減らして数字を整える方法ではありません。限られた人数でも、店が約束する価値を繰り返し届け、利益と働く人の時間を守れるか。そのための判断、役割、習慣を組織のケイパビリティへ変えることです。

1.ニュースの要点:飲食店の売上は増え、事業従事者数は減った

飲食店の売上と事業従事者数の資料を確認する経営者と店長

2026年7月のサービス産業全体の月間売上高は38兆3,553億円で、前年同月比5.0%増でした。統計局によると、サービス産業全体では57か月連続の増加です。

「宿泊業、飲食サービス業」の売上高は2兆6,067億円で6.1%増。このうち「飲食店」は1兆7,393億円で5.9%増、「持ち帰り・配達飲食サービス業」は2,489億円で2.5%増でした。

一方、事業従事者数は「宿泊業、飲食サービス業」で483万3千人、前年同月比0.8%減。「飲食店」は361万6千人で0.9%減、「持ち帰り・配達飲食サービス業」は54万2千人で1.9%減でした。

公表日は2026年9月24日、対象は2026年7月です。また、2025年に調査が統合・再編され、母集団情報の変更や標本交替などが行われているため、統計局は時系列比較に注意を求めています。

2.売上増と人員減だけで「生産性向上」と決めない

少人数で忙しい営業を続けるスタッフと全体を見る店長

売上高を事業従事者数で割れば、一人当たりの数字は改善したように見えます。しかし、それだけで現場が強くなったとは言えません。

この調査の売上高は、仕入高、給与、家賃、決済手数料などを差し引く前の金額です。値上げで売上が増えても、原価や人件費の上昇が大きければ利益は残りません。また事業従事者数は、店で実際に働く人の人数を示しますが、一人ひとりの労働時間、残業、欠員対応、休憩の取り方までは表しません。

少人数で売上を作った結果、料理の待ち時間が延び、清掃が後回しになり、店長が毎日穴埋めをしているなら、それは持続する生産性ではありません。数字の改善を、人の無理で買っている可能性があります。

RBRでは、売上と人数の関係を「少ない人でどこまで詰め込めるか」ではなく、「同じ品質を、無理なく、何度でも再現できるか」で見ます。

3.見るべき数字は一人当たり売上だけではない

売上や労働時間とQSC+Hの記録を一緒に振り返る店長とスタッフ

自店では、売上を客数と客単価に分け、その横に粗利額、労働時間、残業時間、提供時間、廃棄額、欠品数を並べます。さらにQSC+Hの変化を、短い記録で残します。

  • Quality:温度、盛り付け、作り直し、品切れは増えていないか
  • Service:案内、提供、会計の待ち時間は延びていないか
  • Cleanliness:入口、客席、トイレ、厨房の確認が飛ばされていないか
  • Hospitality:お客様の状況を見て動く余白が残っているか

ホスピタリティは、忙しくなると最初に削られやすい領域です。声かけが減る、困っているお客様に気づけない、常連客の小さな変化を拾えない。これらは帳簿にすぐ現れませんが、再来店の理由を少しずつ失わせます。

一人当たり売上が上がっても、QSC+Hが落ちているなら、その成長は将来の売上を前借りしています。利益と品質と時間を一緒に見ることが、小さな店の経営数字です。

4.店長の役割は、人手不足を気合で埋めることではない

営業前に守る優先順位と役割をスタッフへ伝える店長

人が足りない日に、最も働く人が店長になりがちです。しかし店長がすべての穴を埋めると、全体を見る人がいなくなります。結果として、注文の集中、仕込み不足、休憩の遅れ、クレームの兆候への対応が遅れます。

経営者は、忙しいときほど守る価値と、やめてよい作業を決めます。店長はそれを、現場の具体的な行動へ翻訳します。

たとえば「料理の温度と安全確認は省かない」「提供が一定時間を超えたら新規注文の案内を変える」「清掃担当を曖昧にしない」「店長が調理に固定される前に応援を呼ぶ」といった基準です。優先順位が言葉になっていれば、スタッフは迷いにくくなります。

店長機能とは、頑張りの量ではありません。経営者の思想を、誰でも実行できる判断へ変え、営業を通じて伝承する力です。

5.「余白」をコストではなく、価値を守る能力として設計する

急な来店にも落ち着いて案内と応援を行う飲食店スタッフ

人員配置の余白を見ると、無駄だと感じる経営者もいます。しかし飲食店には、予約の遅れ、急な団体客、機器の不調、新人への説明、お客様の個別対応など、表計算どおりに進まない出来事があります。

余白がなければ、変化が起きた瞬間にQSC+Hが崩れます。反対に、誰が全体を見るか、どの作業を止めるか、どの持ち場が応援に入るかが決まっていれば、同じ人数でも対応力は変わります。

大手のように人数や設備を増やせない小さな店ほど、すべてをやろうとしないことが大切です。メニューを一時的に絞る、予約枠を調整する、仕込みを二段階に分ける、閉店作業を営業中に前倒ししすぎない。自店の強みを守るために、やらないことを選びます。

この判断が店長だけの勘ではなく、チームで共有され、繰り返されると、余白は単なる人員ではなく、変化に対応する組織能力になります。

6.二週間で「忙しさの質」を測り直す

二週間の営業記録から一つの改善を決める飲食店チーム

まず一週間、ランチかディナーのどちらかに絞って記録します。売上、客数、粗利額、総労働時間、残業時間、最大提供時間、廃棄、欠品、作り直しを営業後五分で残します。QSC+Hについては「何が守れたか」「何が飛ばされたか」を一行ずつ書きます。

二週目は、問題が集中した一か所だけを変えます。ピーク前の仕込み時刻、案内の役割、注文を受ける順序、メニュー数、応援を呼ぶ基準などから一つを選びます。

結果は売上だけで決めません。粗利額が残ったか。残業や作り直しが減ったか。提供時間と清掃を守れたか。スタッフがお客様を見る余裕が戻ったかを確認します。

うまくいった方法は、店長が「いつ・誰が・何を判断するか」と、その理由を一枚にまとめます。新人にも説明でき、店長が不在でも再現できる形にして初めて、改善は組織のものになります。

売上の伸びは大切です。しかし、忙しさに耐えた結果だけを成長と呼べば、店は人と信用を消耗します。限られた人数で価値、利益、時間を守る。その繰り返しが文化となり、小さな店の模倣されにくいケイパビリティになります。

出典

※調査結果は全国の事業活動を集計した統計であり、個々の飲食店の利益、労働時間、サービス品質を示すものではありません。本文では統計上の事実とRBRの考察を区別しています。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。