外食売上4.9%増でも、雨の日に強い店は作れるか|天候を言い訳で終わらせない現場設計

外食売上4.9%増でも、雨の日に強い店は作れるか|天候を言い訳で終わらせない現場設計
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一般社団法人日本フードサービス協会は2026年9月25日、2026年8月度の外食産業市場動向調査を公表しました。外食全体の売上高は前年同月比104.9%、客数は102.6%、客単価は102.3%でした。

数字だけを見れば、外食市場は伸びています。しかし同じ資料には、台風や局地的大雨が月後半の客足にマイナスとなり、業態ごとに明暗が分かれたことも書かれています。業界全体がプラスでも、自店の雨の日が赤字なら、経営者の不安は消えません。

RBRが考えたいのは、天気を正確に当てる方法ではありません。天候が変わったとき、経営者の判断を店長が現場の行動へ翻訳し、スタッフが迷わず動き、お客様への価値と働く人の時間を守れるか。その力を、店のケイパビリティとして育てることです。

1.ニュースの要点:売上は4.9%増、客足には天候で明暗

雨の店内で外食市場の資料を確認する経営者と店長

日本フードサービス協会の資料は、協会会員社を対象に、新規店を含む全店データを集計したものです。2026年8月は、全体の売上高が前年同月比104.9%、店舗数が101.2%、客数が102.6%、客単価が102.3%でした。

協会は、お盆期間の帰省・観光需要、冷たい季節商品、客単価の上昇が売上を支えた一方、中下旬の台風や局地的大雨が月後半の客足に影響したと説明しています。

業態別では、ファーストフードの売上は105.8%、ファミリーレストランは103.7%、ディナーレストランは105.5%でした。一方、パブ・居酒屋は100.6%にとどまり、パブ・ビアホールは売上98.8%、客数96.3%でした。喫茶も売上104.7%に対し、客数は99.1%で、客単価105.6%が売上を支えています。

ここで事実として言えるのは、回答企業全体では売上が伸びたこと、そして天候の影響が業態や時間帯によって異なったことです。この全国集計から、個々の店の利益や雨天日の経営状態まで判断することはできません。

2.平均値より、自店の「天候感応度」を知る

雨の日と晴れの日の店舗データを比較する店長

売上が前年を上回ったというニュースを見て、安心する必要も、疑う必要もありません。自店に必要なのは、雨や暑さが売上、客数、注文内容、作業量へどの程度影響するかを知ることです。

まず直近八週間について、曜日、営業時間帯、天候、客数、客単価、テイクアウト件数、廃棄額、残業時間を一枚に並べます。雨の日と晴れの日を比べるときは、曜日や祝日、イベントの有無が違う日を単純に比べないようにします。同じ曜日、近い気温、似た予約状況で見ることが大切です。

たとえば雨の日に客数が15%落ちても、温かい料理や追加ドリンクが動き、客単価が上がる店があります。反対に、客数は大きく変わらなくても、来店時刻が集中して厨房が詰まり、残業と廃棄が増える店もあります。

一般論では「雨の日は集客が落ちる」で終わりがちです。RBRでは、天候が店のどこに作用するかを分解します。入口の滑りやすさ、予約キャンセル、仕込み量、ピーク時刻、注文構成、スタッフの帰宅手段まで見て初めて、経営に使える数字になります。

3.天気予報ではなく、判断の基準を共有する

雨天対応の三段階基準をスタッフへ伝える店長

雨の日の現場が疲れるのは、雨そのものより、判断が遅れるからです。仕込みを減らすのか。スタッフの出勤時刻を変えるのか。テラス席を閉じるのか。テイクアウトを案内するのか。判断が人によって違えば、現場は何度も確認に追われます。

経営者は、天候に応じた三段階ほどの判断基準を決めます。たとえば「通常」「注意」「切り替え」です。注意段階では予約確認と入口対策を行う。切り替え段階では仕込みの一部を後ろ倒しにし、テイクアウト導線を整え、閉店後の片付け人数を見直す。基準には降水量だけでなく、警報、交通状況、予約数、店の立地を含めます。

店長は、その基準を具体的な行動へ翻訳します。「今日は雨だから頑張ろう」では伝わりません。「17時に予約数を確認し、炊飯を一回分保留する」「入口マットを追加し、十五分ごとに床を確認する」「お客様の傘を置く場所を先に作る」と言えば、スタッフは動けます。

店長は天気を管理する人ではなく、経営者の価値判断を現場へ伝承する人です。安全、品質、利益、働く人の帰宅をどう守るか。その優先順位を毎回同じように翻訳できることが、組織としての能力になります。

4.雨の日メニューは値引きではなく、再現性で設計する

雨の日にも再現しやすい料理と持ち帰り商品を準備する厨房

客足が弱い日に、すぐ値引きへ向かう店もあります。しかし安さだけで来店を促すと、粗利が減り、忙しさだけが残る場合があります。小さな店は、大手の販促規模や広告費と正面から戦う必要はありません。

雨の日に強い商品は、単なる限定品ではなく、天候が変わっても現場が安定して提供できる商品です。温度が下がった日に選ばれやすい。持ち帰っても品質が崩れにくい。仕込みを別の商品へ転用できる。少人数でも提供時間を守れる。こうした条件を満たす一品を選びます。

新商品を増やす前に、既存メニューの組み合わせを見直します。温かい汁物をセットにする、持ち帰り可能な主力商品を分かりやすく示す、雨の日でも受け取りやすい予約方法を整える。価格だけでなく、注文、調理、包装、会計まで一つの流れとして確認します。

オペレーションとは作業を速くする手順ではありません。経営者が届けたい価値を、条件が変わっても繰り返し再現する仕組みです。雨の日メニューが店の強みになるのは、料理のおいしさと現場の再現性が結びついたときです。

5.雨の日ほどQSC+Hが店の差になる

雨に濡れたお客様へタオルと傘袋を渡すスタッフ

雨の日、お客様は入店する前から小さな不便を抱えています。服や荷物が濡れている。足元が滑りやすい。傘の置き場所に迷う。交通の遅れで時間に余裕がない。こうした不安を解くことは、特別な演出ではありません。

Qualityでは、料理の温度と提供時間を守る。Serviceでは、濡れた荷物の置き場所や会計までの動線を整える。Cleanlinessでは、入口と通路の水滴を放置しない。そしてHospitalityでは、お客様の状態を見て、タオルや傘袋、席への案内を自然に提案します。

ホスピタリティを「気が利く人」に任せると、その人が休んだ日に消えます。開店前に入口担当を決める。傘袋とタオルの位置を統一する。声かけを短い言葉で共有する。店長が営業後に一つだけ良かった行動を伝える。こうして反復できる形にします。

行動が反復されれば習慣になり、共有された習慣は文化になります。大手が同じ備品を買うことはできても、全員が自然に動く店の文化は簡単に真似できません。雨の日のQSC+Hは、弱者が育てられる競争力です。

6.二週間で「雨の日に強い店」を小さく試す

雨天対応の二週間の記録を振り返る飲食店チーム

一度に全店舗、全時間帯を変える必要はありません。二週間、ランチかディナーのどちらかに絞り、雨の日の対応を試します。

一週目は現状を記録します。天候、予約数、来店数、客単価、売れた上位五品、廃棄、提供時間、残業、ヒヤリとした場所、お客様から受けた質問を残します。数字は細かくしすぎず、営業後五分で記録できる量にします。

二週目は一つだけ変えます。予約確認の時刻を決める、仕込みを二段階に分ける、入口担当を置く、持ち帰り商品を一つ目立たせるなどです。結果は「売上が増えたか」だけで判断しません。利益が残ったか、提供品質を守れたか、残業が増えなかったか、お客様の不安を減らせたかを確認します。

良い結果が出たら、店長が手順と理由を一枚にまとめ、新人にも説明できる形にします。うまくいかなければ、誰かを責めず、判断時刻、情報、道具、役割のどこで迷ったかを直します。

天候の波を止めることはできません。しかし、変化を数字で捉え、経営者の判断を店長が翻訳し、スタッフが反復し、店の習慣へ変えることはできます。雨の日でも価値、利益、働く人の時間を守れる力こそ、小さな店が育てるべきケイパビリティです。

出典

※本調査は協会会員社の全店データです。個々の飲食店の売上や利益を示すものではありません。本文では調査結果とRBRの考察を区別しています。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。