フードは拭いた、その奥はいつ掃除したか|繁忙期前、店長が厨房火災を防ぐ油管理

フードは拭いた、その奥はいつ掃除したか|繁忙期前、店長が厨房火災を防ぐ油管理
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閉店後の清掃表には、毎日チェックが入っている。フードの表面も拭いている。それでも「内側を最後に確かめた日」「グリス除去装置の状態」「ダクト清掃を頼んだ範囲」を聞かれると、答えが曖昧になる。揚げ物・焼き物を扱う店では、繁忙期に入る前に、この空白を埋めておきたいところです。

RBRの提案は、清掃の量を増やすことより先に、部位ごとの状態と、確認する人・日付をつなぐことです。

目次

厨房フードの清掃済み表面と油が付着した内部の対比
表面の拭き上げと、フード・ダクト内部の状態確認は分けて管理します。

公的資料から確認できる火災のリスク

大阪市消防局が2026年3月5日に公表した情報によると、大阪市内の飲食店火災は2025年に84件、2021〜2025年の5年間で348件でした。2025年の件数は公表時点の速報値です。これは大阪市内の数字であり、全国の件数ではありません。

同局は、排気ダクト内にたまった油脂等への着火にも注意を促し、ダクトやグリスフィルターの点検・清掃を挙げています。火気使用中にその場を離れないこと、こんろ周辺の整理整頓も基本です。出典:大阪市消防局「飲食店での火災が増えています!!」

東京消防庁のガイドラインも、排気ダクト等に付着・堆積した油脂が、火災を広げる媒体になり得ると説明しています。フード外面の拭き上げ記録だけでは、その奥の状態まで確認したことにはなりません。出典:東京消防庁「飲食店の厨房設備等に係る火災予防対策ガイドライン」

点検の目安と、清掃の時期を分ける

同ガイドラインでは、天蓋(フード)やグリス除去装置など外観から確認できる部分は日常的に、排気ダクト内部など確認しにくい部分は概ね1年ごとに点検する目安を示しています。店舗の規模や機器の使用状態に応じた頻度が前提です。「年に一度清掃すればよい」という意味ではなく、点検結果から必要な清掃時期を判断します。

また、消防庁は2026年7月3日、焼肉店等の調理器具の周囲で使う上引き排気ダクトについて、構成や区間に応じた管理の運用を通知しました。一般厨房のフード・ダクトすべてに同じ周期を当てはめるものではありません。通知は自治体等への助言で、関連する条例例の改正に示された施行日は2027年4月1日です。自店への適用は、所轄消防署や管理会社に確認してください。出典:消防庁の運用通知、火災予防条例(例)の改正通知

繁忙期前に店長が進める三つのこと

ここからは、公的資料を踏まえたRBRの運用提案です。確認できない箇所は「異常なし」にせず、「未確認」として次の行動を決めます。

厨房設備の点検記録と日程を確認する店長
記録を集め、未確認の部位・担当者・期限を一つずつ決めます。

1.清掃の記録を「部位」で読み直す

過去の請求書、作業報告書、写真を集め、次の部位をどこまで点検・清掃したのか整理します。日付が見つからなければ、推測で埋めずに不明と記録します。

  • フード:外面だけか、内面も対象だったか。
  • グリス除去装置:フィルターだけか、ケースや油の回収部分も対象だったか。
  • 排気ダクト・ファン:作業した区間と、作業対象外だった区間はどこか。
  • 防火ダンパー等:誰が、いつ、どの範囲を点検したか。

2.安全に見える範囲の変化を残す

機器の取扱説明書に従い、停止・冷却後、安全な足場から無理なく確認できる範囲で、フード内面の油汚れ、油のたまり・漏れ、フィルターの目詰まりや損傷を見ます。写真には日付と部位を添え、前回と比べられる状態にします。

内部を見るための危険な分解、高所作業、防火ダンパーの作動確認などを、見よう見まねで行う必要はありません。確認できない箇所や、判断に迷う状態は、設備に詳しい専門業者へ点検を依頼します。

3.相談を「誰かが」で止めない

最終点検日が不明、前回の作業範囲が不明、油汚れや損傷が気になる。このいずれかがあれば、店長が相談担当者と連絡期限を決めます。期限は清掃の安全基準ではなく、相談を先延ばしにしないための店内ルールです。

業者には設備写真と過去の報告書を送り、「点検が必要な範囲」「清掃の要否」「店舗側で続ける確認」「次回の判断時期」を相談します。賃貸店舗では、建物側と店舗側の管理範囲も管理会社に確かめておくと、依頼先を決めやすくなります。

安全を店の習慣にする

農林水産省・厚生労働省の「省力化投資促進プラン―飲食業―」は、店長・マネージャー等の店舗管理人材の不足を課題に挙げています。担当者が忙しいほど、設備の履歴を記憶だけでつなぐ運用は見直したいところです。出典:省力化投資促進プラン―飲食業―

消火器等については、対象設備の点検と報告書作成を支援する消防庁の「消防用設備等点検アプリ」もあります。厨房排気設備の清掃管理とは対象が異なるため、利用できる設備や条件を確認しましょう。出典:消防庁「消防用設備等点検アプリ」

RBRは、店長の役割を「全部を自分で掃除する人」ではなく、安全に営業するための判断をスタッフへ伝え、引き継げる形にする人と考えます。部位・状態・日付・担当者がつながれば、人が替わっても確認を続けられます。その反復が、お客様が安心して食事を楽しめる店の力になります。

まず今日、最後の作業報告書を一枚探し、記載のない部位を「未確認」と書き出してみてください。

この続きはnoteの有料記事をお読みください。記事単品300円です。記事専用の✅シートPDFは、noteの無料部分から購入前でもダウンロードできます。有料部分では、部位別の確認手順、責任者と期限の決め方、本文内の完全版実践シートを用意しています。繁忙期前の油管理を、実行できる形にする

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。