食品ロスを「食べ残したお客様」のせいにしない|小さな飲食店が育てる、食べきれる店の力

食品ロスを「食べ残したお客様」のせいにしない|小さな飲食店が育てる、食べきれる店の力
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皿を下げたとき、料理が残っている。忙しい営業中なら、つい「量が多かったのかな」「お客様の好みに合わなかったのかな」と思うかもしれません。けれども、理由を確かめないまま捨てれば、食材だけでなく、店を良くする手掛かりも失います。

食品ロスの話は、節約や環境配慮として語られがちです。RBRはそこから一歩進めます。食べきれる量を提案し、料理の状態を整え、安心して相談できる接客をつくることは、お客様の体験を良くし、原価を守り、現場の判断を育てる経営の仕事です。

1.ニュースの要点:10月の食品ロス削減月間を前に

食品ロスに関する資料を読む飲食店経営者(AI生成イメージ)

関東農政局は2026年9月15日、10月の食品ロス削減月間に向けた特別展示を発表しました。展示は9月25日から始まる予定です。発表では、日本の食品ロスは年間約461万トンという2024年度の推計値を示しています。そのうち事業系は約237万トン、家庭系は約224万トンです。農林水産省の資料では、2024年度の外食産業分は約70万トンとされています。

ここで日付を分けておきます。発表は2026年9月15日、展示の開始予定は同年9月25日、食品ロスの数字は2024年度の推計です。新しい発表に載っている数字だからといって、「2026年の発生量」と読んではいけません。

このニュースから飲食店が受け取るべき問いは、「残したお客様にどう食べきってもらうか」だけではないはずです。そもそも注文時に量を想像できたか。料理は最もおいしい状態で届いたか。食べ進めながら追加注文を選べたか。残りそうな時に相談しやすかったか。店の提供方法も、食べ残しを左右します。

2.まず、捨てた理由を一つにまとめない

残された料理を見て原因を話し合う飲食店の店長と料理人(AI生成イメージ)

食品ロスを減らすために「廃棄量を減らそう」とだけ掲げても、現場の行動は変わりません。仕込みすぎ、発注過多、調理ミス、提供前の品質劣化、食べ残しは原因が違うからです。前者は在庫や仕込みの設計、後者はメニューの説明、量、提供順、接客の設計を見直す必要があります。

とくに食べ残しは、お客様の意志の弱さとして扱わないことが大切です。量の案内が伝わらなかった可能性もあれば、提供の間隔が合わなかった可能性もあります。もちろん、体調や予定など、店がコントロールできない理由もあります。皿だけを見て理由を断定しない。必要なときに、責めない言葉で聞く。これがRBRの出発点です。

たとえば「お口に合いませんでしたか」と決めつけるより、「量はいかがでしたか。次回のご案内の参考にさせてください」と尋ねる方が、答えやすい場面があります。質問は義務にせず、相手の表情や状況を見て短く行います。店にとってのデータ集めより、お客様の気持ちを優先します。

記録も細かくしすぎません。料理名、残り方、分量の案内の有無、提供までの時間、聞けた場合だけ理由を、匿名の簡単なメモに残します。個人情報を集める必要はありません。数日たつと「ある一品だけ量が多い」「遅い時間の注文に偏る」など、改善すべき場所が見えてきます。

3.「少なくする」より、選べる設計をつくる

二種類の料理の量をお客様に説明する飲食店スタッフ(AI生成イメージ)

一般的な食品ロス対策では、盛り付け量を減らす、メニューを絞る、食べきりを呼びかけるといった施策が挙がります。どれも使えますが、すべての皿を一律に小さくすれば、満足感や価格への納得を損なう恐れがあります。小さな店が育てたいのは、単なる削減技術ではなく、お客様に合う量を提案できる力です。

まず、初めての人が量を想像できるようにします。「二人で分けやすい」「ご飯は軽めにもできます」「一品目としてはしっかりした量です」。写真、器の大きさ、ひと言の説明をそろえれば、注文前の迷いは減ります。少量を選べるなら、価格と原価の関係を確認したうえで、選択肢として明示します。少量を無条件に安くすれば、手間が同じまま利益が減ることもあります。

次に、注文を一度で完結させない設計を考えます。最初は食べたい品を少し選び、食事の進み具合を見て追加できるようにする。ホールと厨房が「追加注文をいつまでなら無理なく受けられるか」を共有しておけば、お客様を急かさず、厨房にも過剰な負担をかけません。

量を選べることは、単なるロス対策ではありません。一人客、子ども連れ、高齢のお客様、その日の空腹具合が違う人に、同じメニューを押し付けないというホスピタリティです。原価と満足を両立する設計こそ、小さな店の強みになります。

4.店長がQSC+Hを「食べきれる体験」に翻訳する

営業前に食べきれる体験の提供方法を共有する飲食店チーム(AI生成イメージ)

RBRは店舗品質をQSC、つまり料理の品質、サービス、清潔さだけで捉えません。HospitalityのHを加えたQSC+Hとして考えます。食べきれる体験も、この四つを切り離すと成立しません。

料理の温度や味が安定していることはQです。量や提供順を分かりやすく伝えることはSです。器やテーブルが清潔で、食事を最後まで気持ちよく続けられることはCです。そして、相手の食べる速さや人数に合わせて提案を変えることがHです。笑顔だけでロスは減りませんし、量を減らすだけではHになりません。

この考えを現場で再現するのが店長の仕事です。経営者が「食べきれる店にしたい」と言うだけでは、スタッフごとに解釈が分かれます。店長が「初めての注文には量の目安を一言添える」「大皿は取り分けやすさを確認する」「残りが目立つ一品は営業後に共有する」といった行動へ翻訳します。

そして、良い対応を見つけて伝えます。「今日は量を減らせた」だけでなく、「一人のお客様に二品の量を説明したら、無理のない注文を選べた」というプロセスを称えます。こうした対話を続けると、ホスピタリティが気の利く個人だけの特技ではなく、店の習慣になります。

5.ロス削減を、利益と働く人の時間で確かめる

食材原価と働く時間を見ながら改善案を考える飲食店経営者と店長(AI生成イメージ)

捨てる量だけを指標にすると、別の負担を見落とします。小分け対応が増えて厨房の手数が大きくなったり、説明が長くなってホールが回らなくなったり、追加注文のたびに提供が遅れたりすれば、ロスは減っても店の利益やスタッフの時間を損なうかもしれません。

だからRBRは、食材原価、粗利益、調理と接客の時間、お客様の満足を一緒に見ます。たとえば、ある料理の食べ残しが減ったとしても、少量対応で利益額が大きく落ち、スタッフの残業が増えれば、改善とは言い切れません。逆に、量の説明を短く統一したことで、食べ残しも注文時の迷いも減り、客単価と満足が保たれたなら、仕組みとして続ける価値があります。

最初から複雑な計算は不要です。対象料理を一品に絞り、提供数、残食が目立った皿の数、選ばれた量、追加注文、粗利益の概算、担当者の負担感を二週間記録する。売上だけでなく、閉店後の作業時間も見る。数字はスタッフを責める材料ではなく、仮説を直すための道具です。

食べ残しの持ち帰りも選択肢になり得ますが、衛生上の判断を伴います。農林水産省は、まず食べきりを優先し、残った場合は店との相談のうえで検討するよう案内しています。持ち帰りを一律に約束するのではなく、消費者庁・厚生労働省のガイドラインと自店の衛生管理を確認して運用します。

6.二週間の小さな実験を、真似されない能力に変える

小さな改善実験の結果を振り返る飲食店スタッフ(AI生成イメージ)

一週目は、食べ残しが目立つ料理を一品だけ選びます。提供数と残り方を数え、スタッフに「注文前に迷いやすいところ」「残りやすい場面」を尋ねます。お客様のせいと決めず、量、説明、提供順、味、温度、食べる時間を候補に挙げます。

二週目は、仮説を一つだけ試します。たとえば「二人分の量」をメニューと口頭で伝える。あるいは、小盛りの選択肢を設ける。変えるのは一度に一つです。複数を同時に変えると、何が効いたか分かりません。店長は営業前に重点行動を共有し、営業後に一分だけ結果を確認します。

二週間後、残食だけでなく、お客様の反応、粗利益、追加注文、スタッフの作業負担を見て、続けるか修正するか決めます。効果が出なければ、仮説を変えてよいのです。記録の目的は正解を証明することではなく、自店のお客様に合う方法を見つけることです。

この循環が続くと、経営者の「食べきれる店にしたい」という意思が、店長の言葉になり、スタッフの行動になり、共有された習慣になります。量の案内、調理、提供、観察、振り返りがつながるほど、競合がメニューだけを真似しても再現できない価値になります。これがRBRのいう、組織としてのケイパビリティです。

食品ロスを減らすことは、皿の上を空にする競争ではありません。お客様に合う一皿を届け、原価と働く人の時間を守り、その方法を店全体で繰り返せるようにすること。小さな飲食店は、そこに独自の競争力を育てられます。

出典

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。