店内営業とデリバリーを両立させる商品設計

Restaurant Business Reform または 飲食店経営改善ブログ

店内営業とデリバリーを両立させる商品設計
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1. デリバリー市場は大きく変わり始めている

数年前までのデリバリー市場では、実店舗を持たない「ゴーストレストラン」が急速に増えました。

厨房さえあれば営業できる。
家賃も抑えられる。
スタッフも最小限で始められる。

初期投資が少なく参入しやすいことから、多くの事業者がデリバリー市場へ参入しました。

しかし、現在は市場環境が大きく変わり始めています。

以前は「美味しそうな写真」と「価格」だけでも注文が入りましたが、今のお客様はそれだけでは選びません。

「このお店は実際に営業しているのか。」
「どんな雰囲気のお店なのか。」
「口コミはどうなのか。」
「本当に人気があるのか。」

こうした情報まで確認した上で注文するお客様が増えています。

さらに、Uber Eatsでも以前のようなデリバリー専用価格ではなく、店内価格に近い価格設定を採用する店舗が増えてきました。

つまり、お客様は以前よりも「商品」だけではなく、「お店そのもの」を購入するようになってきたのです。

だからこそ、これからのデリバリーで強いのは、

「デリバリー専門店」ではなく、実店舗という信用を持ったブランドです。

「あのお店のハンバーグが家でも食べられる。」

「あのお店で人気の定食を今日は自宅で楽しもう。」

この安心感や期待感は、実店舗を持つ飲食店だからこそ提供できる価値です。

デリバリーは、店舗とは別の事業ではありません。

店舗で積み上げてきた信頼やブランドを、自宅という新しい食卓へ届けるサービスです。

これからの商品設計で最も重要なのは、「デリバリー専用の商品を作ること」ではなく、店舗で育てたブランド価値を、そのままデリバリーでも体験してもらうこと。

デリバリー市場が成熟してきた今、その考え方がこれまで以上に重要になっていると私は考えています。

2. 店舗とデリバリーは別ブランドにしない

デリバリーを始める飲食店の中には、店舗とは別にデリバリー専用ブランドを立ち上げるケースがあります。

もちろん、それが成功する場合もあります。

しかし私は、これからの時代は「別ブランドを増やすこと」よりも、「一つのブランドを育てること」の方が重要だと考えています。

例えば、お客様が店舗で食べたハンバーグを気に入り、

「今日は家でゆっくり食べたい。」

と思った時に、Uber Eatsを開いて同じ商品が並んでいたらどうでしょうか。

「あのお店の料理が家でも食べられる。」

この安心感は、新しいブランドでは簡単に作れるものではありません。

店舗で積み重ねてきた接客、料理、口コミ、Googleマップの評価、SNSでの発信。そのすべてがデリバリーの信用へとつながります。

だから私は、デリバリー専用の商品を一から作るのではなく、

店舗で支持されている商品を、デリバリー向けに最適化する。

この考え方を大切にしています。

もちろん、そのまま持ち帰れば良いという話ではありません。

店内では熱々の鉄板で提供できても、デリバリーでは20〜30分後にお客様のもとへ届きます。

そのため、

  • お肉のグラム数
  • ご飯とのバランス
  • 容器
  • ソースの量
  • 盛り付け

こうした部分はデリバリー用に調整する必要があります。

しかし、それは料理を変えるのではなく、提供方法を変えるという発想です。

ブランドは一つ。

商品も一つ。

違うのは、お客様が食べる場所だけ。

この考え方なら、店舗で人気の商品はそのままデリバリーでも人気商品になりやすく、デリバリーで得た評価も店舗のブランド価値へ還元できます。

これからの飲食店に必要なのは、「店舗用の商品」と「デリバリー用の商品」を別々に育てることではありません。

一つのブランドを軸に、店内でも自宅でも同じ満足を届けること。

その積み重ねが、「あのお店なら間違いない」という信頼を生み、店舗とデリバリーの両方を強くしていくのです。

3. 商品設計で変えるのは「料理」ではなく「規格」

デリバリーを始めると、多くの飲食店は「デリバリー専用メニューを作ろう」と考えます。

しかし私は、その考え方にはあまり賛成していません。

なぜなら、お客様が求めているのは「別の料理」ではなく、お店で食べたあの味を、自宅でも楽しめることだからです。

そのため、変えるべきなのは料理そのものではありません。

変えるべきなのは”規格”です。

例えば、店内では250gのハンバーグが人気でも、デリバリーではご飯とのバランスや価格帯を考え、180gや200gの方が満足度が高くなることがあります。

店内では熱々の鉄板で提供していた商品も、デリバリーでは容器の中で蒸気がこもります。

そのため、

  • 肉のグラム数
  • ご飯の量
  • ソースの量
  • 盛り付け方
  • 容器の種類
  • 保温性
  • 食べやすさ

こうした部分は、お客様が一番美味しく食べられるように調整する必要があります。

つまり、設計し直すのは料理ではなく、ポーション(規格)なのです。

例えばガブ飲み食堂でも、店内とデリバリーでは一部の商品で内容量を変更しています。

これは原価を下げるためではありません。

デリバリーという提供方法に合わせ、お客様が最も満足できるバランスを考えた結果です。

また、デリバリーでは蓋を開けた瞬間の見た目も重要です。

店内では鉄板の音や香りも演出の一つですが、デリバリーではそれがありません。

だからこそ、容器を開けた瞬間に「美味しそう」と感じてもらえる盛り付けも、商品設計の一部になります。

同じブランド。

同じ料理。

しかし、お客様が食べる環境はまったく違います。

だからこそ必要なのは、新しい料理を増やすことではなく、その環境に合わせて最適な規格へ進化させることです。

料理の価値を変えず、届け方を変える。

それこそが、店内営業とデリバリーを両立させる商品設計で最も重要な考え方だと私は考えています。

4. 店舗とデリバリーは”別市場”として考える

店内営業とデリバリーを成功させるためには、もう一つ重要な考え方があります。

それは、店舗とデリバリーを「別市場」として分析することです。

同じブランドで販売していても、お客様はまったく同じではありません。

店内では、

「今日は家族で食事を楽しみたい。」

「仕事帰りにゆっくり食べたい。」

「友人とお酒を飲みたい。」

という目的で来店される方が多くいます。

一方、デリバリーでは、

「家から出たくない。」

「仕事の合間にすぐ食べたい。」

「子どもがいるから外食できない。」

など、お客様が商品を選ぶ理由そのものが違います。

当然、注文される商品も変わります。

店内ではボリューム満点の定食が人気でも、デリバリーでは食べやすさや価格を重視した商品が売れることがあります。

逆に、デリバリーでは人気の商品でも、店内ではあまり注文されないケースも珍しくありません。

つまり、店内で売れる商品が必ずしもデリバリーでも売れるとは限らないということです。

だから私は、「どちらが正しいか」を考えるのではなく、それぞれを独立した市場として分析することが大切だと考えています。

例えば、新商品を販売したら、

  • 店内では何食売れたのか。
  • デリバリーでは何食売れたのか。
  • 利益率はどうだったのか。
  • お客様のレビューはどうだったのか。
  • リピート率はどうだったのか。

これらを別々に検証します。

その結果、

「店内では人気だが、デリバリーでは伸びない。」

あるいは、

「デリバリーでは圧倒的に売れるのに、店内では伸びない。」

ということも見えてきます。

この違いこそが、商品開発のヒントになります。

私はこの2つの市場を競わせるようなイメージで考えています。

店内のお客様が評価した商品。

デリバリーのお客様が評価した商品。

それぞれの結果を社内でランキング化し、「今月の店内人気No.1」「今月のデリバリー人気No.1」として分析する。

そして、その評価の高い商品をもう一方の市場へ展開していくのです。

デリバリーで圧倒的な支持を得た商品を店舗へ導入する。

店舗で長年愛されている商品をデリバリーへ展開する。

このように、お互いの市場で得られたデータを活用することで、一方だけでは気付けなかった新しい価値が生まれます。

店舗とデリバリーは売上を取り合う関係ではありません。

異なるお客様の声を集める、二つのマーケットリサーチの場でもあるのです。

この視点を持つことで、商品開発は勘や経験だけではなく、お客様の評価という確かなデータを基に進化させることができるようになります。

5. 商品開発は両市場を使って検証する

新商品を開発するとき、多くの飲食店は「店舗で販売して様子を見る」という流れを取ります。

もちろん、それも一つの方法です。

しかし、店舗営業とデリバリーの両方を展開しているのであれば、その強みを最大限に活かすべきだと私は考えています。

つまり、商品開発そのものを二つの市場で検証するという考え方です。

例えば、夏限定メニューを開発したとします。

その商品を最初から全店舗で大々的に販売するのではなく、まずはデリバリー限定で販売してみる。

すると、

  • どれくらい注文が入るのか。
  • お客様のレビューはどうか。
  • リピートされているのか。
  • 原価や利益率は適正なのか。

こうしたデータを短期間で集めることができます。

もし期待以上の結果が出れば、「デリバリーで人気を証明した商品」として店舗へ導入する。

逆に、店舗で販売した結果、

「想像以上に人気が出た。」

「リピーターが多い。」

「客単価アップにつながった。」

という商品であれば、その実績を持ってデリバリーへ展開する。

この流れなら、どちらの市場へ投入するときも「予想」ではなく「実績」を持って販売を開始できます。

さらに、お客様への伝え方にも説得力が生まれます。

例えば、

「Uber Eatsで人気急上昇中の商品が、ついに店内でも食べられるようになりました。」

あるいは、

「店内人気No.1の定食をご自宅でもお楽しみいただけます。」

このように、お客様から評価された実績そのものが販促材料になります。

私は、新商品を一つの市場だけで評価するのは少しもったいないと考えています。

店内には店内のお客様がいます。

デリバリーにはデリバリーのお客様がいます。

それぞれ好みも、利用シーンも、価値観も違います。

だからこそ、一方の市場だけで「この商品は成功」「この商品は失敗」と判断するのではなく、二つの市場で評価を集め、その結果を相互に活かしていくことが重要なのです。

商品開発とは、新しい料理を作ることだけではありません。

二つの市場から得られるお客様の声を活かし、商品を育て続けること。

その積み重ねが、他店には真似できない商品力とブランド力につながっていくのです。

6. データがお客様の信頼になる

飲食店では、料理の美味しさを伝えるために広告やPOPへ力を入れることが多くあります。

もちろん、それも大切です。

しかし、これからの時代、お客様が最も信頼する情報は、お店が発信する言葉ではありません。

実際に利用したお客様の評価です。

例えば、

  • 店内人気No.1
  • Uber Eats人気No.1
  • 今月デリバリー注文ランキング1位
  • Googleレビュー★4.8
  • 「累計販売〇〇食突破」
  • 「リピート率No.1」

こうした数字には、お店が自分で作ったキャッチコピーにはない説得力があります。

なぜなら、それはお客様が選び、お客様が評価した結果だからです。

だから私は、店舗とデリバリーを別市場として分析するだけで終わらせるのではなく、そのデータを積極的にお客様へ発信することが重要だと考えています。

例えば、デリバリーで圧倒的な人気を集めた商品があれば、店内ではこう伝えることができます。

「Uber Eatsで人気No.1!多くのお客様に選ばれている一皿です。」

逆に、店内で長年愛され続けている商品であれば、

「店内人気No.1をご自宅でもお楽しみいただけます。」

という形でデリバリーへ展開できます。

このように、一方の市場で得た実績を、もう一方の市場で信用として活用するのです。

さらに、このデータは商品開発だけではなく、スタッフのモチベーション向上にも役立ちます。

「今月の店内人気ランキング」

「今月のデリバリー人気ランキング」

「レビュー評価ランキング」

こうした結果を社内で共有すれば、「次はもっと上位を目指そう」という意識も生まれます。

つまり、データは経営者だけが見るものではありません。

ブランドを育て、スタッフを育て、お客様の安心感を育てるための資産なのです。

広告は、お店が「美味しいですよ」と伝える手段です。

一方で、人気ランキングやレビュー、販売実績は、お客様が「この商品は選ばれている」と証明してくれた結果です。

だからこそ、これからの飲食店に必要なのは、広告を増やすことだけではありません。

お客様が作ってくれたデータを、見える形で発信し続けること。

その積み重ねが、「この店なら間違いない」という信頼を生み、新しいお客様を呼び込む一番強いマーケティングになっていくのです。

7. 店舗とデリバリーがお互いを育てる

店内営業とデリバリーを別々の事業として考えると、「店内の売上」「デリバリーの売上」という数字だけを追いかけてしまいます。

しかし私は、この二つは競争する関係ではなく、お互いを成長させる関係だと考えています。

まず、ブランドを育てるのは店舗です。

料理の味はもちろん、接客、店内の雰囲気、Googleレビュー、SNSでの投稿など、お客様が実際に来店して感じた体験が「あのお店なら間違いない」というブランドを作っていきます。

そのブランドへの信頼があるからこそ、お客様はデリバリーでも安心して注文してくださいます。

一方、デリバリーには店舗にはない強みがあります。

それは、圧倒的な販売データが集まることです。

どの商品が売れているのか。

どの価格帯が選ばれているのか。

どんな組み合わせが人気なのか。

レビューでは何が評価され、何が改善点として挙がっているのか。

こうしたデータは、お客様のリアルな声そのものです。

そして、そのデータを店舗へフィードバックすることで、新しい商品開発やメニュー改善につなげることができます。

さらに、店舗で改良された商品は、再びデリバリーへ展開する。

デリバリーでは、その改良が本当にお客様に受け入れられたのかを再び検証する。

この繰り返しによって、商品は少しずつ磨かれ、ブランドも少しずつ強くなっていきます。

私はこの流れを、一方通行ではなく循環だと考えています。

店舗がブランドを育てる。

デリバリーがデータを集める。

データが商品を進化させる。

進化した商品がブランドの価値をさらに高める。

このサイクルが回り始めると、店舗とデリバリーはそれぞれが独立した事業ではなく、一つのブランドを成長させる両輪になります。

これからの飲食店経営で本当に目指すべき姿は、店舗とデリバリーのどちらかを伸ばすことではありません。

店舗で積み重ねた信頼をデリバリーへ届け、デリバリーで得たデータを店舗へ還元する。

その循環を止めずに回し続けることこそが、商品力とブランド力を長期的に高め、競争の激しい市場で選ばれ続ける飲食店をつくる最大の武器になると私は考えています。

8. まとめ

店内営業とデリバリーは、単に売上の柱を二つに増やすための仕組みではありません。

一つのブランドを、二つの市場で育てるための仕組みです。

店舗では、お客様との接点を通じて信頼を積み重ね、ブランドを育てる。

デリバリーでは、お客様の注文データやレビューから新たな気付きを得て、商品を磨き上げる。

そして、その改善された商品を再び店舗へ展開し、店舗で育った人気商品をデリバリーへ届ける。

この循環を繰り返すことで、商品力もブランド力も着実に高まっていきます。

これからの飲食店経営で目指すべき商品設計とは、「店内用」と「デリバリー用」でまったく違う料理を作ることではありません。

大切なのは、一つのブランドとしての世界観を守りながら、それぞれの市場に合わせて提供方法や規格を最適化していくことです。

店内で食べても美味しい。

家で食べても美味しい。

どちらを選んでも「あのお店らしい」と感じてもらえる。

そんな一貫したブランド体験こそが、お客様の信頼につながります。

飲食店の競争がますます激しくなるこれからの時代、必要なのは商品数を増やすことではありません。

一つひとつの商品を、店内とデリバリーという二つの市場で磨き続けること。

その積み重ねが、他店には簡単に真似のできないブランドをつくり、長く愛される飲食店へと成長させてくれるのだと私は考えています。

この記事を書いた人 Wrote this article

新田 敏之

新田 敏之 RBR合同会社 統括 / 男性

RBR(Restaurant Business Reform)代表。 鉄板焼きの現場で25年。 これまで数多くの飲食店の立て直しを中心とした経営改善に携わり、売上改善、商品開発、人材育成、オペレーション構築、デリバリー事業の立ち上げなど、現場に入りながら支援を行ってきました。 現在は「ガブ飲み食堂」を運営しながら、主力商品の開発・ソースや商品の卸事業、デリバリーFC事業の展開、そして飲食店の経営改善支援を行っています。 このブログで発信するのは、机上の理論ではありません。 すべて現場で試し、失敗し、改善を繰り返してきた実践知です。 料理だけでは、お店は続きません。 利益が残る仕組み、人が育つ環境、お客様に選ばれ続ける理由。 私は、その「経営」を一人でも多くの飲食人に届けたいと考えています。 飲食店を増やしたいわけではありません。 利益が残る飲食店を、一店舗でも増やしたい。 その想いを胸に、今日も現場で挑戦を続けています。